航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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139.辺境伯1

 ただいま登城するため馬車で王城に向かっている。

 前回からすでに三年になるが、あの時は毒を盛られてグローリアを呼んでと散々だったのを思い出し、少し重い気分になった。

 城門で止められたが、御者台に座る従者が紋章を見せるとまた馬車は進みだした。

 

 守備兵が両側にずらりと並ぶ中を馬車は進んでいく。

 兵の中にはナノムが表示したタグが幾つかあり、見知った者も残っていそうだ。

 城の表の入り口前で馬車が止まると、予定通りヘルマンが待ってくれていた。

 

 今回のために王都に着いてからの一週間で念入りに準備をしておいたのだ。

 その中の一つに護国卿の権限で特別に申し出をしていて、ヘルマンの随行を認めてもらっていた。

 王都守備軍団長の肩書が生きて良かったと思う。

 

「おはよう、ヘルマン」

 

「おはようございます、閣下」

 

「すまないね 厄介ごとに巻き込んで」

 

「とんでもない! 護国卿閣下に信頼して頂いたのですから身に余る光栄です」

 

「今日はよろしく頼むよ」

 

「お任せください」

 

 侍従達が恭しく開けてくれたドアから城の中に入った。

 城に入ると変わらず展示された大きな絵画や金ぴかの鎧などと並んで、俺が納めたドラゴンの牙の剣が輝いている。

 ふーむ、こういう感じで加工されるのか、なるほどと感心する。

 デザインも装飾も芸術品としてなかなか素晴らしいものだった。

 

 侍従達の案内で城内を進んでいく。どうやら今日も拝謁の間のようだ。

 到着すると拝謁の間にはまだ王の姿はなく、近衛と思われる騎士達がずらりと並んでいた。

 同席する貴族はすでに並んでいてガンツ伯の姿も確認した。

 ここまでは予定通りだ。

 

 ヘルマンと一緒に所定の位置に片膝をつき王の登場を待っていると、王とバールケ宰相が入室してきたので頭を垂れる。

 

「直答を許す……よく来たな、コリント卿」

 

「はっ! 陛下のお呼びとあらば、いつ如何なる時であろうと参上いたします」

 

「先日、王都より遣わせた領地の査察の報告を確かに受け取った

 見事に魔の大樹海を開拓したそうだな」

 

「はッ、ひとえに私を信じて頂けた陛下の御威光の賜物かと存じ上げます」

 

 嘘では無いな。うん。

 

「そして魔の森のスタンピードから見事領地を護ったとの報告も受けておる よくやった、大儀である!」

 

「はッ、ありがたきお言葉」

 

「今は領地に民は何名になった?」

 

「はッ、およそ三万人が住んでおります」

 

「なんと、報告では一万を超えたと聞いていたが、そんなに居るのか

 それでは街が出来ていたと聞いたのも納得だ」

 

「はッ、大半は冒険者や職人などですが、王都で募った者に加えまして、商売人やそれに各地の棄民などが噂を聞き集まってきております」

 

 棄民とは土地を手放し逃げ出したり、放浪したりしている者達だ。

 

「この短期間で見事だ まことに大義である」

 

「はッ! 感謝いたします」

 

「では、約束により樹海を開拓した報奨としてコリント卿に辺境伯の位を与える」

 

「ははッ! 有り難き幸せ 我が剣は、陛下のために、国のために在ることを此処に誓います」

 

「そして正式に護国卿として任命する」

 

「陛下、お待ちください!」

 

 護国卿は予想していなかったが、宰相ヴィリス・バールケ侯爵が口を開くのは想定内だ。

 

「辺境伯に護国卿とはいささか権力を与えすぎかと思われます」

 

「ほう、余の決定に意見をするというのか?」

 

 宰相の言葉に王もさすがに不満気な表情だった。

 

「……いえそうではないのですが、まず護国卿の席は全部で三つ

 今後の国政に支障がでるやもしれませぬ」

 

「ほう、しかしお主より近隣諸国で問題が起きそうとは聞いておらん

 さらに三年前から変わっておらんに支障が出たか?」

 

 明らかに王は不機嫌な声になってきた。

 バールケは引きつったような顔をしながら続ける。

 やはりセシリオの王子の話は王には届いていないようだ。

 

「……それにユルゲン・ガンツ伯爵よりコリント卿には問題があると報告を受けております」

 

 予定通りの主張で展開してきた。

 

「何だと?」

 

「ガンツ領を無視して商いを行い、挙句の果てには税を逃れるため他の地域と取引を始める始末です」

 

 近衛騎士は十数名しかいないことを強調していたので、常套手段である反逆の罪は諦めたらしい。

 

「コリント卿 宰相の言うことは本当か?」

 

 さぁて、ここから大芝居を始めないとな。

 

「陛下、それは違います 恐れ入りますが、聞いていただけますでしょうか?」

 

「うむ、話せ」

 

「先ず、税を逃れるために他の地域との取引を始めた件でございます

 先日の王都よりの査察があった後、急にガンツとの取引は税を取引額の五割にすると宣言されました

 それでは領の経済が立ち行かなくなりますゆえ、仕方なく他の都市との取引を行わざるを得ませんでした」

 

「なんと五割だと! 誰の指示だ?」

 

「ユルゲン・ガンツ伯爵の指示で、家令のデニスが私に伝えに来ました」

 

「何だと!嘘を申すな」

 

 宰相が慌てる。

 

「いえ、嘘ではございません、通達の書類も持っております」

 

 勿論デニスを取り込んだ後に作らせたものだが、ガンツ伯の公印を推してあるので言い逃れはできない。

 

「…なんだと」

 

「コリント卿 続けてくれ」

 

「そして我が領はまだ納税は免除されておりますが、将来に備えてすべて計算を行っております

 以前より我が領地との取引が増加しているのに、納める税は増えていないとのうわさを聞いておりました

 

 それで恐れながら我々がかつて取り引きした額と、ガンツ領から国に納税した額を調べさせていただきました

 増税された分、ガンツ領でそれだけ税金が増えてないとおかしな計算になります

 果たしてこの二年間ガンツ領の納税額は全く増えておりませんでした

 ましてや半年前に五割にも増やした少なくない額の税はどこに消えたというのでしょうか…」

 

「…貴様 王の前で出鱈目を言うのか!」

 

 引きつりながら宰相が黙らせようとしてくる。いいぞ。

 

「陛下、先程も申したように我が領では将来に備えてすべての税に計算を行っております

 それが正しいかは査察の際にも確認して頂いております

 さらに今回王都に来て主任主計官のナダルスにもすべて確認して頂いておりました

 勿論正しい数値ではあったのですが、我が領が出来て三年で増えたはずの分がガンツ領の方には反映されておらず消えておりました

 税が消えるとなれば王家に対する泥棒ですので、恐れながら護国卿の力を使わせて頂き、消えた税の流れを解明いたしました

 この場で報告してもよろしいでしょうか?」

 

「なんと!言ってみろ」

 

 我ながら強引な理論であると思うが、陛下は食いついてきた。

 

 





週二回、水曜、日曜に更新予定です。
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