その夜に行われた祝宴会はかなりよそよそしい感じで始まった。
それはそうだろう、あれだけのスキャンダルがあったのによく中止にならなかったものだと思うほどだ。
おそらく王家のメンツとして行わない選択肢はなかったのだろうと推測せざるを得ない。
で、何と今は陛下と直接会話中だ。
男爵と言う下っ端に比べると、辺境伯はやはりそれなりの地位なので許されるのであろう。
もう一体何度目だろうという話であるが、陛下にとっては直接聞く初めての話なのでリップサービスをしておく。
「そうです、ドラゴンは人と同じかそれ以上に賢い生き物なのです」
「なんと」
「身振り手振りで意思疎通できた時には大変驚きました」
「まことであるか、今はもっと出来ておるのか?」
「ええ、彼女はグローリアと言う名前なのですが、人の生活に興味を持っており正門の上でずっと街を守ってくれています」
「その話はまことであったか、余も一度は見てみたいものだ」
「もう少し整備できれば是非視察にいらしていただければ光栄でございます」
その後スタンピードの話を散々したところで、従者に促されてやっと解放してくれた。
それがきっかけで宰相に抑えられていた貴族達を中心に盛り上がっていく。
やはり一番の興味は魔の大樹海の領地の話になり、陛下にも話したように何度も話を行う羽目になる。
勿論一番受けたのはドラゴンが街を護っている件だった。
静かに始まった祝宴会は大いに喜び盛り上がり、今回は毒を盛られることなく無事終了した。
屋敷に向かう馬車の中でイーリスに報告する。
(やれやれ、ミッションコンプリートだ)
[艦長 お疲れさまです]
(こういう畏まった場は本当に慣れないな)
[これから先はどんどん増えてきますので、慣れてください]
(勘弁してくれよ…)
アマド国王はなかなか有能なようで今日は助かった。
だが今後この国を簒奪するとなると気が重いのを再認識したのだった。
イーリスとの通信を切った後、セリーナとシャロンから通知が来ていたことに気づいた。
そういえば数日はバタバタして連絡してなかったと思い返し、久しぶりに声を聴くために通信する。
(ああ、セリーナ、シャロン、こっちは予定通り終わったよ)
(アランお疲れ様)
(無事に終わって何よりだわ)
(ああ、それに予定外に領地が広がったよ、ガンツ領を下賜された)
(え! 本当に)
(凄いじゃない 王様も随分と太っ腹だわね)
(正式にはガンツ伯が失脚したらだけどな、領地は隣り合わせだし迷惑料替わりかも知れない)
(ともあれこれで動きやすくなるわね)
(ああ、正式に護国卿にも任命されたので、堂々と兵力が増強できる)
(素晴らしいわね、じゃあ帰ってくるまでに部隊の編成を進めておくわ)
(よろしく頼むよ、体には気をつけて)
宿に着くと出迎えに出ていた者たちが居たので、労いながら中に入ると皆に取り囲まれる。
「ダルシム、マックスウェル卿、カリナ、カトル、予定通り辺境伯に任命されたぞ」
「「「おめでとうございます アラン様」」」
口々に祝福される。
「マックスウェル卿 これでバールケは失脚するだろう、こちらも筋書き通りだ」
「ありがとうございます アラン様 これで私の恨みは少し晴れます 残るは奴の首のみです」
「そうだな、しかし重罪ではあるが、あれだけでは首を取るまでには難しいだろうな」
「はい、良くて本人が廃嫡、精々が王都での資産没収と領地からの外出禁止でしょう
なあに、奴が失脚して地元に戻る時がチャンスになりますゆえ」
「なるほど、このタイミングで追い打ちをかけておくのか、ならバールケの動きは引き続き監視しておこう
その夜はささやかな宴で締めくくった。
◇◇◇◇◇
翌日、朝からヘルマンが部隊を引き連れて訪ねてくる。
「閣下、朝早くに申し訳ありません 王都守備軍、ヘルマン・バール到着しました」
「ご苦労、ヘルマン! 今日から王都に寄生する害虫退治だ、張り切っていこうか」
「はっ!」
「先ずはガンツ伯の屋敷に向かい、救出すべき人たちを保護する」
「承知しました」
「不正の捜査する者たちは?」
「別途主計局より派遣されております」
「よし、此方からは近衛兵十名と兵士五名が参加する
ああ、前回みたいに我々が先陣を切るとは言わないので、ヘルマンの部隊に存分に働いて欲しい」
「判りました」
「それじゃ向かおうか」
ガンツ伯の屋敷に着くと驚くほどの建物だった。
ヘルマンが言うのは王都でも上から数えるほどだそうだ。
如何に魔の大樹海からの利益が大きく、長年に渡り税をごまかしていたかがよく分かる。
門のところで若干の抵抗はあったものの、王の通達と護国卿の盾を見せると従わざるを得なかったようですぐに門が開く。
執事頭を捕まえ、救出する者たちが監禁されている場所を案内させ、保護するよう兵士に指示する。
ガンツ伯の性癖は正直胸糞悪い光景であったが、無事救出できたのは救いだった。
不正調査のための資料を運び出すよう指示をするが、本人に身の覚えのない資料が紛れていたとしても誰も気づくまい。
ガンツ伯の屋敷で一通りの指示をし、次いでバールケ宰相の屋敷に向かう。
こちらも余程私腹を肥やしていたのだろう、びっくりするような屋敷だった。
ヘルマンが言うには勿論王都で王城に次ぐ建物だそうだ。
こちらは流石に一筋縄ではいかず、開門に当たり開けろ、開けないとひと悶着があった。
小競り合いの末、結果的に門を破壊し押し入るしかないと判断する。
「埒があきませんね、ここは私にお任せいただけますか?」
「ああ、いいぞ」
「それでは、破城槌部隊、前へ!」
「おう!」
「突撃!!」
「「「うぉぉぉ!!!」」」
物々しい物体が前進し轟音と共に門が破壊された。これが破城槌か。
確かにあれなら城門でも破壊できそうで、多少頑丈と言えど屋敷の門などひとたまりもない。
「抵抗する奴は鎮圧しろ、構わんから反逆罪でひっとらえよ!」
ヘルマンの号令で兵たちが駆け込んでいく。
しかしヘルマンが破城槌や魔法部隊まで手配して、門を破るのにはちょっと驚いた。
流石に魔法部隊は活躍の場がなかったが、ここまで予想していたのであればたいしたものだ。
「さてダルシム では我々も突入するか」
「はっ! 騎士団前へ! 進め!」
「おう!」
「流石ダルシム、よく訓練されている これならヘルマンの部隊に見劣りすることは無いな」
「ありがとうございます」
褒められたダルシムは鼻高々である。
宙兵には門の外を見張らせ、不審な動きをするものが居ないかイーリスを通じてチェックさせる。
実際野次馬にまぎれ監視や斥候と思われる者たちが様子をうかがっていたので全てマーキングしておく。
バールケの方は救出するものが居ないので、鎮圧した後書斎を中心に捜査を進める。
こちらにも身に覚えのない書類が見つかったのは言うまでもない。
週二回、水曜、日曜に更新予定です。