航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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142.王都にて3

 そうして始まったバールケとガンツの屋敷の捜索は、一週間ほどぶっ通しで集中的に行うことになる。

 さらには芋づるでルチリア卿、カリファ伯と捜査の手を広げていく。

 悪巧みの交友関係が広いため、これはこれで骨の折れる作業であった。

 特に位の高い貴族であるほど強硬に反対することが多く、ヘルマン達では手出し出来ないことが多い。

 

「ヘルマン、これはなかなかきついな 貴族はみんなあんな感じなのか?」

 

「貴族とは往々にして横柄な者がおりまして…」

 

「身分を盾にごり押しするのか」

 

「閣下のお力を借りることになりすみません」

 

「いやいいよ、それが俺の役目だからな」

 

「ありがとうございます」

 

「普段でも苦労するであろうに、自分の今後がかかるような今回の件ならなおさらか」

 

「はい」

 

 結局は足を運ぶ必要があり、ヘルマンに任せきることができなったのも仕方ない。

 

 

 そして夜は夜で貴族の招待状が大量に届き、毎夜の晩餐会が待ち受けていたのだ。

 招待は友好的な貴族だけでなく、バールケと懇意だった者達からの誘いまで来る始末だ。

 その為招待状は既に三桁に迫ろうかとしており、お陰で体を休める暇がない。

 周りの者たちは『三年で辺境伯になるほどの今を時めくドラゴンスレイヤー様!と王都では話題の主だから仕方ないですね』だそうだ。畜生!

 

 迸りを食ったのはパートナーとして同伴するカリナだ。

 まさかこれほど毎夜のパーティーになるとは思っておらず、さすがにぐったりしている。

 ナノムによる体調支援があるとはいえ、かなりへばっているのが感じられた。

 

 本来ならパーティーのパートナーはセリーナ達四人が対応するところを、カリナ一人で対応しているのだ。

 慣れていない貴族の作法で対応するためにも気を張る必要もありかなりきつそうだ。

 ん?とは言え一妻一夫なら当たり前か? いや、俺でなければここまで晩餐会が続くこともないから、普通ではないのか?

 などと疲れていると意識は無駄に空回りをする。

 

 結局バールケとガンツの捜査が一段落するのに一カ月ほどかかり、残る関係者の捜査はさらに長引きそうである。

 流石に陛下に掛け合い、専任の捜査担当を追加で任命してもらうことで何とか皆の負担を下げる。

 しかしパーティーの招待は終わる気配がない。

 

 ようやく捜査が少し落ち着いたところで、各ギルドを回り領民を集めていく作業に取り掛かった。

 先ずは職人ギルドに向かうと、ギルド長は前回のような好条件を期待していたようでもみ手で歓迎される。

 しかし開拓が成功した今、そこまでして募る意味は無いと告げると首をうなだれたのだった。

 それでも支度金と片道の手当だけでも募集人数を大幅に超える応募があったので、ギルドとしては少々潤ったようだ。

 

 魔術ギルドではガンツで手に入りにくい物資を手配するが、さすがに王都は品ぞろえが良い。

 併せて魔術師も募集するが、こちらも優秀な者が何人か集められそうであった。

 魔法陣のために夜なべしていた事を思い返し、全く魔術師だけはもっと早くに集めたかったと嘆息する。

 

 商業ギルドにはカリナを連れて顔を出して挨拶を行った。

 ギルド長からたっての頼みとして是非依頼を行ってくれないかと頼まれる。

 カリナから貸しになるとのアドバイスもあり引き受けることにする。

 

 依頼内容はガンツまでの道中で野宿になっている場所に、宿泊できる建物を建ててもらうことにした。

 王都からの街道整備は必要だと思っていたし、ガンツ領も治めることになったためやりやすくなった。

 この際思い切って手を入れたいので、ギルドには王都から領地までの間で二か所の宿泊交易所を整備することを依頼する。

 ガンツ伯が何故ろくに整備もせず野営になろうとも放置していたかはわからないのだ。

 

 領主の許可やその他の申請関係、職人や物資を手配など含め丸投げしておく。

 成功歩合だし、新しい宿場での商売や宿泊料の稼ぎは商業ギルドの取り分なので、うまくやってくれるだろう。

 

 忘れてはいけないゲルトナー枢機卿とも面会し、孤児の募集についても話を詰める。

 前回から三年しか経っていないため年長の孤児は少ないとの事だ。

 それでも十二歳以上である程度自分の面倒が見られる条件で改めて追加を行う。

 使徒の件はあいまいに数カ月後くらいを示唆しておく程度にしておいた。

 

 そのほか文官、鍛冶師、学者、錬金術師(どうやら科学者や化学者の祖先みたいなものだ)と広範囲に募り、今回も二千人近い規模になる。

 今回は領地の受け入れ態勢も整っているので、キャラバンにせず順次小グループで送り出して行く。

 前みたいな派手な出発式は無い代わりに、その分都度見送りに必要がありそれはそれで負担ではあった。

 

 そんな日々を過ごすうちに王都での滞在は予定に予定が重なり、優に二カ月を超えそうになっている。

 しかし王により調査が一段落するまでは出発せぬよう命令されているし、まだまだ捜査も終わっていない。

 当初の予定ではそろそろ帰りついているころだが、まだ王都を立つめどが立たないと思うと重い。

 身重の妻を抱える身としては内心はかなり焦ってきたのだ。

 

(イーリス 流石に限界だ、ドローンを一機回してくれ 一度セレスティアルに顔を出したい)

 

[艦長 了解です]

 

(後はどうやって飛び立つかだが)

 

[サイレントモードであれば日中に屋敷に降りられると思いますが、多少リスクはあります]

 

(ドローン前提ならそうだが、グローリアを言い訳にしないといけないから夜だろうな)

 

[夜は流石に音が響きますので、郊外からの方が良いでしょう

 しかし艦長が屋敷を抜け出して、さらに城門を抜けて郊外に出るのも難しいかと]

 

(むう、そういえば夜は城門が閉まるな、夕方閉まる前に城門を出ておく方必要があるのか)

 

[やはり出力を絞ってサイレント&ステルスモードで屋敷内に着陸し、出発するのが一番安全だと思います]

 

(分かった、その方向で予定してくれ)

 

 方針が決まったところで段取りを立てる。

 

「ダルシム 明日から三日間俺は完全にオフだ 誰とも会わないので連絡はカリナを通じてくれ」

 

「…アラン様、また何か企んでいませんか?」

 

 ダルシムもすっかり疑り深くなってやりづらい。

 

「いや、ちょっとグローリアに迎えに来てもらい領地に顔を出してくる」

 

「…なるほど、止めても無駄なのでしょうね…承知しました」

 

「上手く予定の調整を頼むぞ」

 

「承知しました」

 

「ああ、それから今日からは朝夕に訓練をやってくれないか、三十分でいいので敷地内で声を出してやって欲しい」

 

「何故でしょう?」

 

「俺が不在なのを気付かれたくないので、より一層鍛錬に励んでいるように見せて欲しい」

 

 本当はドローンの音をかき消すためなのだが、先の言葉で張り切っているので良いだろう。

 

 





評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
次回日曜に更新予定です。(少し仕事が立て込んでおります…)
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