航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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147.閑話:新しい家族

「う~ん、まだか、まだなのか…」

 

 もう何度扉の前の廊下を行ったり来たりしたか分からない。

 動物園の熊の様になってから随分と経つ。

 

[艦長 落ち着いてください 貴方が慌てても何も変わりませんよ]

 

 そんなアランにイーリスはやれやれという感じで声を掛ける。

 

(扉の向こうからクレリアの呻き声が聞こえてくるのに、落ち着けるわけないじゃないか)

 

[大丈夫です クレリアのナノムから送られてくるテレメトリーの値は正常範囲内です]

 

 ちょっと呆れた口調を感じるのは気のせいだろうか?とアランは思う。

 

(だからと言って安心できるわけないじゃないか、自然分娩だぞ!)

 

 帝国では医療が高度に発達しているのだ。

 基本は無痛で帝王切開による出産になる。

 場合によっては人工子宮での生育ですら可能なのだ

 仮に分娩するとしても無痛分娩で出産するのだというのは、アランでも知る一般常識である。

 だから自然分娩は極限られた人たちが選択する出産方法という認識だった。

 

[クレリアが望んだからですよ 何度も言いますが艦長が今行う事はどっしり落ち着いて待つことです]

 

 このやり取りも既に何度目か判らない。

 

(しかしこうなんだ、せめて痛覚を軽減するくらいはしてみてもいいだろう?)

 

[クレリア達この世界の人々にとっては自然分娩が普通ですからね

 無痛分娩は理解が及ばない部分もあるのでしょう]

 

(そうなのか?)

 

[当たり前です アランが育った常識とクレリアが育った常識は違うのですから]

 

(それはそうだが…)

 

[いいですか? モニタリングしていますし、ナノムもあるので心配いりません]

 

 イーリスに断言されても、安心できていないのは一目瞭然だった。

 そう、やはりずっと歩き続けているのであった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「オギャーーー! オギャーーー! オギャーーー!」

 

「!!生まれたのか!!」

 

 慌てて飛び込んで行こうとした時にセリーナから通信が入る。

 

(アラン 無事生まれたわ だけどまだ入っては駄目よ、後で呼ぶからもう少し待っていて)

 

(え!? 入れないのか?)

 

(まだよ、産湯とかリアの処置もあるからね

 私の時には立ち会ってもらうから、今はちょっと待って頂戴)

 

 ここでお預けを食らうとは思っていなかったのでさすがに辛い。

 しばらく待ち、後産の処置が終わってようやく室内に入ることが許された。

 入るとクレリアは産着に巻かれた赤子を胸に抱いていた。

 鼻を赤くして目の周りを腫らしており、辛そうではあるが愛おしそうに眺めていたのを見てほっとする。

 

「…アラン!」

 

「リア お疲れ様、おめでとう」

 

「元気な赤子だぞ! ただ、その…女の子であった、すまない」

 

「謝る必要はないさ 男だろうと女だろうと関係ないよ

 無事生まれるほど嬉しいことは無いからな」

 

「そうだけれどもやはり男子でないと…」

 

「健康に生まれてきて、リアも無事だったのだから何も言わない、いいね?」

 

「判った」

 

 クレリア的にはやはり家を継ぐべき男子が欲しかったのであろう。

 この世界で男児が尊ばれるのは仕方がないが、本当にどちらでも良かったのだ。

 だから子供の性別も事前には調べないように

 

「アラン 抱いてやってくれないか?」

 

「ああ、わかった」

 

 クレリアからそっと赤ん坊を受け取る。

 

「アラン 赤ん坊を抱くのは初めてなのに大丈夫なの?」

 

「流石に勉強したよ」

 

 イーリスに頼んでライブラリを探してもらい、赤ん坊の世話は一通り目を通した。

 とは言え知識と実践は別物だ。 ぎこちない動きで赤ん坊を抱く。

 抱かれてもすやすや眠り続ける娘を見た後、クレリアと目を合わせ微笑む。

 ようやく父親になるとはこういう事かと実感する。

 

「名前はアランが決めて欲しい スターヴェークでは家長が決める習わしなの」

 

「そうか、じゃぁいい名前を考えないといけないな」

 

 

 こうしてアランの最初の子供が生まれ、新しい家族が増えたのだった。

 その後一カ月余りの間で一男三女が無事生まれ、大家族なっていくのである。

 アランはひたすら悩んで、可愛い子供たちの名前を決めたのだった。

 

 クレリア第一子(女児)エイラ

 シャロン第一子(男児)イヴァル

 セリーナ第一子(女児)アストリッド

 アリスタ第一子(女児)レーニャ

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「みんな集まったか?」

 

「ええ、揃っていますよ」

 

「じゃあ、撮影してもらうぞ」

 

「はい」

 

 ある晴れた日、中庭で集合して家族写真を撮る幸せなアラン達が居た。

 

 





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