いや、本当にすみません。
『レイノモノカクニンス』、その報告を聞いてニヤリとする。
「カリナ 三日後に何時もの場所だと返信しておいてくれないか」
「承知しました」
夜の帝国軍の士官…と言っても実際は三人とイーリス名誉大尉だけだが…の会議で報告する。
「どうやらギニー・アルケミンの在処が判明したようだ」
「アラン 本当に?」
「ああ、さっき届いた連絡がそうだ」
「それにしてもようやく見つけられたのね」
「そうだな、セリーナ、思ったよりも時間がかかったな」
「それだけ厳重だったという事でしょ」
シャロンの指摘は正しかった。
「まったくだ 流石
国家として成立する条件とも言われたギニー・アルケミンだ。
エルヴィンたちが約束してから数年になっていた。
幾らエルヴィン達が手練れといえども、国家機密なのだから調査に手間取るのも仕方ない事だった。
ただし擁護をするなら、万が一発覚してエルヴィン達が粛清されても困るため、急ぐ必要はないと後回しにさせていたのも理由だ。
「という事でセリーナ このギニー・アルケミンの奪取は宙兵の実戦経験にも良さそうだがどう思う?」
「そうね、情報を聞いてからでないと判断できないけれども、毎日訓練と狩りばかりだし実戦として生かしたいわね」
「では出動させる方向で考えよう、初の実戦だ」
「判ったわ、アラン 人選しておきます」
「参加人数は十五~三十名までにしよう
調査次第で人数が多くなりそうなら、国を興してから奪取でも構わないからな」
「了解」
◇◇◇◇◇
「閣下 ギニー・アルケミンの在処、時間がかかり申し訳ありませんでした」
「いや、よくやってくれた」
「大まかなギニーの流れは判明していたのですが、決め手に欠けておりました
この度管理するものが替わるとの事でようやく確証が取れた次第です
宰相の更迭が無ければもっとかかっていたことでしょう」
「いや、急がなくていいと言ったのは俺の方だから気にすることは無い」
「ありがたきお言葉」
「それでもう管理の引継ぎは終わっているのか?」
王家の秘宝ともいうべきアーティファクトだ。
奪われたとなると下手すれば一族郎党の首が飛びかねない。
引き継いだばかりで貧乏くじを引くのはあまりに不憫だろう。
「いえ、まだでございます」
「ふむ、今の管理者は誰だ?」
「ノクス家でございました 現当主はイシュタルです」
どこかで聞いたことがあるな。
[艦長 ガンツ伯の不正にも係わっていた人物です]とイーリスからフォローが入る。
(なるほどな)
「どのような奴だ?」
「バールケべったりで評判は良くありませんでした」
「ふむ、それであればあまり心は痛まないな」
「奪われたとなると、少なくとも当主の失脚は免れません
理由を公表するわけにはいきませぬから、何らかの理由をつけ密かに抹殺される事でしょう」
「まあそうなるか」
正直、人死は出来る限り避けたいところだが、王家もメンツもあるから難しい所だ。
「それで、場所はどこだ?」
「はい、王都から三日ほどの距離にある鉱山に隠されておりました
こちらでございます」
手書きの地図で場所が示される。
「規模は小さいのですが金や銀、それに希少な鉱物を産出しております
その為それなりの人数が出入りしており、巧妙に偽装されていた次第です」
「廃鉱でないのであれば、人の目があるな」
「それ程大勢の鉱夫は住んではおりませんが、常に人眼はあると考えて差し支えないでしょう
また鉱夫は殆どが兵士かまたは元兵士と思われ、よく訓練されている模様です」
「強奪に対する備えは万全という事か
そうなると密かに夜襲するが最善の策になりそうだな」
「はい、寝静まっている時間を選ぶ必要がありますがそちらが成功率は高いと思われます」
「警備は?」
「薬草売りの者を装って訪問してみましたが、非常に警戒されていました
鉱山へ続く入り口の門、それから鉱山の門では常に見張りをしております
それらしい施設にも厳重に見張りが付いておりました」
「ふむ」
(イーリス 今の地図で場所は確定できるか?)
[はい艦長 該当する場所を確認しました]
視界に地図が表示される。ここからもそれ程離れていない場所だ。
次第にズームインされ、比較的狭い谷間を通り奥に入っていく。
その先にある鉱山が俯瞰で表示される。
ドローンで探査していた時の情報を編集した映像のようだ。
最後に鉱山の入り口から少し離れた場所にある施設が表示されたところで止まった。
(ここは?)
[以前探査したした時の情報を分析しました
エルヴィンからの情報と合わせるとこの建物が有力です]
(イーリス 監視ビットを打ち込み情報収集する事は可能か?)
[はい艦長 この建物であれば可能です]
(よし、判った、しばらく情報を収集してくれ、ああ建物の内部のスキャンも頼む)
[了解しました]
「さてエルヴィン 判った、よくここまで調べてくれた」
「はは、ありがたきお言葉ありがとうございます」
「お前たちに任すという事であったが、これほどの規模であれば後は俺たちでやることにしよう」
「閣下 しかしそれでは」
「聞く限り正面突破は大軍を率いないと無理だろう
お前たちなら潜入してからの簒奪も可能性はあるが、万が一成功しても街道を運ぶ間に追跡される可能性が高いぞ?」
「…それは確かにそうですが」
「我々ならば取れる策もある」
「…承知しました」
「心配するな、これで約束の件は十分だ、報酬は後程手配する」
「ありがとうございます」
「これからも十分に働いてもらうからな」
「ハッ!この命に代えましても果たして見せます」
「ああ、頼むぞ」
◇◇◇◇◇
イーリスから報告があったのはそれから五日ほど後の定期会議だった。
[艦長 調査結果がまとまりました]
「思ったより早いな」
[調査対象が明確で、規模も小さいですから]
「ふむ、でどうだ?」
[まず地形から判断して正面突破、つまり下流の谷間から押し入るのはやはり難しいでしょう
谷の入り口に最初に門があり、先に進むと鉱夫たちの住居があります
居住地区は道を挟んで左右に広がっているため、深夜早朝でも誰かに見咎められる可能性が高いと判断します]
「なるほど、予測通りだな」
[坑道の入り口はここで、左に精錬所の建物があります
その反対側にあるこの建物が該当の施設です]
石造りの三階建ての建物だった。
[坑道には二交代で鉱夫が出入りしており、その時間帯は常に人眼があります
最初に艦長が判断されたように、隠密での夜襲としても時間を外す必要があります]
「判った、それも考慮して侵入可能なルートを調べておいてくれ」
[了解です]
さて方針は決まった。
この後数日掛けて皆と詳細を詰めていく事にしよう。
領地運営ばかりで溜まっていた鬱憤を晴らせそうだ。
評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
ちょっと不確実な状況ですが、次回は近日公開します。
仕事もかなり落ち着いてきたのでこれ程間隔は空かないと思います。