航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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149.ギニー・アルケミン2

「よし、全員揃っているな、これから第一回ブリーフィングを開始する」

 

 基地の一室で選抜された宙兵にブリーフィングを始めた。

 セリーナとシャロンはARモードで参加しているので、この場には不在だ。

 ナノムを通じて各メンバーの視覚情報に表示しながら説明を始める。

 最初にギニー・アルケミンが表示される。

 

「今回の作戦はこのアーティファクトの奪取だ」

 

 アーティファクトと聞いてメンバーにどよめきが起こる。

 その価値を知っている訳ではないが、アーティファクトと言う言葉に反応しているのだ。

 

「五名一組でアクア、ブラウン、カーマインの三部隊で構成する

 それぞれがドローンに搭乗し、計十五名の部隊だ

 ここにはそれ以上の人数が集まっているが、最終メンバーは追って決定する」

 

「メンバー選別は今後の訓練次第なので気を抜かずに取り組んで欲しい」

 

 各自の視覚に鉱山周辺の地形が表示される。

 表示された降下ポイントは鉱山の入り口から建物を挟んで反対側の山中だった。

 

「我々の計画ではここに降下し、建物を襲撃しアーティファクトを奪取する」

 

 そこだけ四方が比較的なだらかになっていて、ドローンの降下も可能な地形だ。

 鉱夫達の住居から離れているのもポイントが高かった。

 

「続いて襲撃ルートだ、各隊を色分けして表示してある」

 

 各自の視覚に周辺の地形と建物までの進攻ルートが重ねられる。

 建物へ取りつく為には斜面を横切り、塀を乗り越える必要があった。

 

「降下地点から建物は見ての通り比較的急な斜面となっている

 移動は足元に注意しろ」

 

 続いて対象の建物がズームアップ表示される。

 あらかじめあらゆる周波数でスキャンして再構成した建物の透視映像だ。

 石造りの建物とはいえ帝国の技術であれば内部構造までスキャンすることは難しくない。

 隅から隅まで丸裸にされて、内部は手に取るように判明している。

 

「反応から目標は中央のここに設置されている可能性が高い」

 

「まずアクア隊は外から正門の見張りを制圧する

 二名が歩哨しているので拘束して入れ替われ」

 

「カーマイン隊は屋上からだ

 屋上には警戒を知らせる警報用の鐘があるので無効化しろ

 無効化後にこのドアから侵入し、就寝している交代の者を制圧だ」

 

 映像の中に侵入経路が立体で表示され、制圧ポイントが示されていく。

 

「カーマインが突入し敵を上階へひきつけた後、ブラウン隊は一階の窓から侵入する」

 

「回収対象は厳重に管理されていると考えるのが普通だろう

 しかし我々の能力(テクノロジー)を持ってすれば奪取に支障はないと考えている」

 

 国の根幹を支えるものだけに厳重に警備されていることは想像に難くない。

 しかしどれほど厳重な設備であれ、電磁ナイフを使えばこの世界のすべての鍵は破壊可能だ。

 例え台座に固定されていても台座と切り離すだけだ。

 

「ブラウンとカーマインはギニー・アルケミンを奪取したら降下地点へ向かえ

 そこをドローンで回収する

 アクア隊はあたかも正門を使い運び出したように工作してから撤収だ」

 

 ブリーフィングはさらに数度行われ、細かい所まで詰めていく。

 さらに今後は実戦を想定した訓練が行われる。

 

 

 

 はずだったのだが、俺はちょっと呆れていた。

 

「どう? アラン」

 

「驚いたな、こんなのまで準備したのか…」

 

「当たり前でしょ、万全を期しておかないとね」

 

 セリーナが笑いながら自慢している。

 確かに少し前に汎用ボットの使用許可の申請がありOKしたのだが、これは想定していなかった。

 眼前にはギニー・アルケミンを設置してある建物が地形と共に再現されていたのだ。

 

「…これを作ったのか、流石だな」

 

「襲撃する方もされる側も、いい訓練になっているわよ」

 

「そうだろうね」

 

 確かに机上のシミュレーションだけでは確認出来ないところまで判るだろう。

 本番に向けてこれ以上の訓練は無い。

 

「それよりアラン、貴方現地に行くつもりじゃないでしょうね?」

 

「え? 俺が行かなきゃ始まらないだろ」

 

「ダメよ、もう少し司令官としての自覚をもって頂戴」

 

「何故だよ、指揮が取れないだろ?」

 

「ドローンに中継させてここから指揮できるじゃない

 ギニー・アルケミン奪取に託けて抜け出そうとしているのがバレバレよ」

 

 ピシャリと釘を刺される。

 

「ぐっ…」

 

 そうして決行の直前まで訓練は続けられたのだった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

[全員降下できたか?]

 

 ナノムを通じたモニタリングと、ドローンのセンサーで確認済みだが、念を押す。

 

[アクア隊、問題なし]

[ブラウン隊、問題なし]

[カーマイン隊、問題ありません]

 

[作戦開始だ!]

 

[アクアワン 配置に着きました]

[アクアツー 同じく配置完了]

「アクア隊は見張りを無力化して隠せ]

 

[ハッ!]

 

[カーマイン隊、突入準備は良いか?]

 

[はい!]

 

[GO!!]

 

 暗闇に紛れて動き出したアクア隊によって二人の見張りが崩れ落ちた。

 そのまま手早く拘束した見張りを担ぎ物陰に隠れる。

 入れ替わりに二人の宙兵が見張りに成り代わり歩哨を開始した。

 これで遠目には普段通り警備されているように見えるだろう。

 

[アクアワンよりリーダー 拘束完了、入れ替わりました]

 

[よしブラウンワン 突入だ! ぬかるなよ!]

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「ん? 何の音だ?」

 

 椅子で寛いでいた男が声を上げた。

 

「気のせいじゃないですか? 雨だしまた落石では?」

 

 向かいに座っている男がのんきに返事をする。

 

「そうか、その音かも知れんな」

 

 その時今度は明らかに破壊音が響いた。

 

「「「何事だ!」」」

 

「上階だ、誰か様子を見てこい」

 

 入り口付近にいた二人が駆け出していく。

 最初の男が指示を出す。

 

「ドアをロックしろ! 全員武装しておけ」

 

 とは言え指示をしているとは言え男にそれほど緊迫感は無かった。

 手順に従って指示を出しただけだ。

 

 何しろギニー・アルケミンがここに設置されていることを知るものはごく少ない。

 さらに要塞のような鉱山の構造も相まって、大規模な兵で攻めないと落とすことは無理だ。

 だからと言って潜入してからの奪取なども常識では考えられない。

 普通に考えると襲撃などありえないと、男からは油断している気配が読み取れた。

 

 そしてそれは目の前のドアが破られるその時までは、誰もがそう思っていたのだった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「動くな! 大人しくしていれば命までは取らない!」

 

 音に気付き起きたところで、剣を突き付けられて男は固まる。

 眼だけで周りをみて、すぐさま状況を把握した。

 勝ち目がないことを理解ししぶしぶといった風に手を上げた。

 

「拘束しろ!」

 

 予め準備していたのだろう。

 後ろ手に縛られ、目隠しと猿轡をされる。

 音を聴く限り三階にいた仲間は就寝中だったこともあり、あっさり拘束されたようだ。

 

 下から上がってくる音がしていたが、その時一階からも大きな音が響いた。

 まさか三階に押し入った賊だけでは無く、一階からも突入されたのか?

 ここに居る者たちはかなりの精鋭の者達だが、これだけ混乱させられれば普段の実力は出し様がない。

 

 三階に上がろうとしていた者達は下でも聞こえた音に右往左往しているようだった。

 混乱の中、怒号と争う音が暫くした後に、唸り声しか聞こえなくなる。

 まるで子供を相手にするように、あっという間に制圧されてしまったことにぞっとする。

 そして全員倒されたのであれば、救出も期待できない。

 このまま何時間このままか分からないと思うと、自分の不幸を心の中で嘆くのだった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 上階で争う音が聞こえた時に指示を出す。

 

「警報を鳴らせ」

 

「はっ!」

 

 一人の男が壁際にある紐を引く。しかし何の反応もなった。

 

「何やっている!」

 

「そ、それが、反応がありません」

 

「何だと!」

 

 襲撃者は警報装置に気づき対策していたのか…

 ここに至って襲撃を疑う余地は無い。男は次の指示を出す。

 

「奥の扉をロックしろ! それが終わればドアの脇に立って襲撃に備えろ」

 

「了解」

 

 しかしその準備が功を奏すことなかった。

 ドアの鍵が破られた瞬間、何か小さいものが投げ込まれた。

 一瞬の虚を突かれそちらを見たその瞬間、投げ込まれた物が破裂し閃光を発する。

 全員目が眩んで立ち往生したところでドアから襲撃者がなだれ込んで来た。

 気配があったところで、目が見えないためどうすることも出来ない。

 

 なすすべなく目が見える様になる前に拘束されていた。

 終始無言の襲撃者たちが不気味で恐怖に囚われていた。

 

 こうしてアーティファクトが奪取されるという、未曽有の事件が密かに行われたのである。

 後に見回りに来た部隊に開放された、襲撃を受けた者達全員何が起こったか理解できていなかった。

 ただギニー・アルケミンが強奪されたと、それだけの事実を理解したのみだった。

 

 





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仕事のピークは過ぎたけどちょっと不確実な状況です。
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