航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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151.セシリオ動乱1

[艦長 報告です セシリオ国王が崩御したと思われます]

 

(そうか、とうとうか来たか)

 

 想定はしていたが、いざ現実になると気も重くなる。

 

[かの国の規定ではルージ王太子が即位するのは半年後となっています

 今収集している情報ではその場でベルタ王国への侵攻を宣言する方針に変わりはなさそうです]

 

(よし、さらにドローンを数機追加し、セシリオ国王軍の動向監視に充てろ

 地方から徴集されてくる戦力で規模が推測出来るだろう)

 

[了解です]

 

(王都はエルヴィンの手の者と宙兵を組ませて監視させよう

 セリーナ 誰か適任者は居そうか?)

 

(そうね、ハロルド二等兵、ジェームス二等兵を推薦するわ

 いずれも精神的に安定していて、この大陸での知識も既に習得済みよ)

 

[異論はありません]

 

(分かった、二人は、と この時間だと訓練中か

 イーリス、一時間後にブリーフィングするように伝えてくれ)

 

[了解です]

 

 引き続きカリナ経由でエルヴィンに連絡するように手配する。

 今の時間待機しているのはと確認してナノム通信で呼び出す。

 

(リッツ二等兵 居るか?)

 

[はい アラン様]

 

 現在充実してきた帝国軍は、研修も兼ねて各地に派遣されるまでになっていた。

 領主館には宙兵数人がローテーションで側仕えとして常駐している。

 リッツは七人いるうちの一人だ。

 軍規的にはおかしな話だが、何かの拍子に役職で呼ばれるのは困る。

 なので、宙兵隊でも普段からアラン様で統一してあった。

 

 余談だが、彼らが来てからちょっとした雑用は全て頼めることになった。

 半面ずっとデスクに縛り付けられている。

 おかげでますます体を動かさなくなり運動不足も甚だしい。

 その時ストレス解消にひらめいたのは指導と称した訓練だった。

 

 時折彼らを相手に指導と称して体を動かしている。

 通常であれば上司から稽古をつけられるなど嫌がられそうなことである。

 しかし逆に『アラン様に直接指導してもらえる』と、やたら人気になってしまったようだ。

 おかげで側仕えの志願者も多く人選が難しいとセリーナがこぼしていた。

 ただ側仕えが出来るようになるには、人物関係から作法、しきたりと覚えることが多岐に渡る。

 そのため候補になる為のハードルはかなり高いのであった。

 

(商業ギルドに行ってエルヴィンに連絡を入れるようカリナに頼んでくれ 五日後の夜だと)

 

[了解しました]

 

 カリナは結局ナノムのインターフェースを作成しなかったので、現状は伝言になる。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「エルヴィン 久しぶりだな」

 

「これは閣下 相変わらず神出鬼没です」

 

 今回も少し離れたところでドローンから降り歩いてきていた。

 勿論ハロルドとジェームスを連れて来ている。

 

「今回も無事に連絡を受け取ってくれたようで何よりだ」

 

「それは勿論でございます」

 

「また頼みたいことがあるのだが、厄介事だ」

 

「武力が必要でしょうか?」

 

「いやそれは不要だ、実は先日セシリオ国王が亡くなった」

 

「…そうですか とすれば喪が明ければルージ王太子が動き出しましょうな」

 

「ああ、既にその動向はつかんでいる

 そこで実際にセシリオに実際に足を運んで現地の情報を収集してほしい

 大人数で無くて構わないからスピード優先だ」

 

「承知しました」

 

「ここからは如何に早く情報を入手し、対策を打つかにかかっている

 悠長に待ち合わせて情報を交換している訳にはいかなくてな

 その為連絡係としてこの二名をハロルドとジェームスを連れて来た

 腕前は保証するが、まだ経験が浅いのでそこのフォローはよろしく頼む」

 

 二人とも帝国格闘技(インペリアルアーツ)のコンバットレベルは訓練生の枠を超えた。

 魔法も幾つか覚えているし、もちろんコリント流剣術も修行中だ。

 荒事になってもちょっとやそっとのことで不覚を取ることは無いだろう。

 

「よろしくお願いします ハロルドです」

 

「よろしくお願いします ジェームスです」

 

 エルヴィンとその仲間も挨拶を返す。

 

「探る内容は主に何でしょうか?」

 

「一つはセシリオ内の派閥だな

 誰が開戦派で誰が慎重派か日和見かなどが判ると、どう攻略すればいいか判り易いからな」

 

「なるほど」

 

「渋々従っている派閥があれば切り崩すのもありだ

 費用を掛ければ工作出来そうならそれも選択肢に入る」

 

「承知しました」

 

「反対派の貴族に伝手は持ってないか?」

 

「細い糸ではありますが、下級貴族の二~三名ならば…

 商談を装い接触を図ってみます」

 

「くれぐれも慎重にな」

 

「はっ」

 

「続いて国内の世論だ

 どの程度が開戦賛成で、どの程度が反対かを肌で感じて来て欲しい」

 

「はは」

 

「最後はどれくらいの兵力を集めているか分かれば嬉しい

 装備を発注するだろうし、糧食の調達も必要だから、そちらから探るのでもいいだろう

 ただ深入りしないと探せないのであれば無理をすることは無い」

 

「はっ!」

 

「連絡はその二人から受け取るので、最低でも一日一回は情報を共有しておいてくれ

 ただし迂闊なところでは重要な会話をしない事、それだけは守れ」

 

「承知しました」

 

「ハロルド、ジェームス、お前たちも迂闊な行動は厳禁だぞ」

 

「了解です」

 

「うむ ではよろしく頼む」

 

 踵を返し待機しているドローンまで歩いて戻る。

 ちょっと過保護かと思うが念のために頼んでおく。

 

(イーリス 二人のモニタリング頼むぞ)

 

[了解です]

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「…閣下は戦争に勝つことを疑ってはおらぬようであるな」

 

 アランを見送りながらエルヴィンが呟く。

 

「そうなのですか?」 部下の一人が問う。

 

「優先があの国の派閥を探れであっただろう?

 勝った上であの国をどう戦後処理するかを考えておられるのだろう」

 

「二度とベルタ王国に弓を向けないようにですか」

 

「ああ、そうであろう

 戦争責任としてルージ王太子とその派閥をどう切り崩し、包囲するか考えておられる気がする」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「国王がお隠れになったそうだぞ」

 

「身罷られたのか、良い王様だったのだがなぁ、残念だ」

 

「長男のルージ王太子は好戦派だそうじゃないか」

 

「ベルタ相手に戦争をおっぱじめるのかね、やれやれだ」

 

「何を言ってるんだ!? 我々の国力を示せるんだ、良い事じゃ無ないか」

 

「そうだぜ! お高く止まったベルタ王国に一泡吹かせてやろうぜ」

 

「傭兵として名を上げるチャンスだな!」

 

「もう募集を始めてるって話だぜ」

 

「本当か!? 一旗揚げなけりゃな、どこだよ?」

 

「東門の方だとよ」

 

 酒場は喧騒に包まれていた。

 ハロルドたちは二手に分かれ、行商人に扮して街中と酒場で情報収集を行っている最中だった。

 少し声の落として会話をしている。

 

「市民の開戦賛成派は感覚ですが二~三割と言ったところですね」

 

「半数近くは反対に回っているが、開戦派の様に声が大きくないのでわかりにくい

 やはり国の方針に反対の声を上げ、弾圧されることを嫌がっているのだろう」

 

「もともとベルタ王国とそれ程揉め事が有った訳では無いですよね

 開戦賛成派は一部過激な者達か、王太子派の影響なのでしょう」

 

 さらにトーンを落としてひそひそ声で話す。

 

「反対派の貴族だが何名か話が出来た

 当たり前だがこの国の未来を憂慮しておられた

 勿論負けた時に取るべき手段はささやいてある」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「汝、ルージ王太子を、只今をもって王と認める」

 

 宣言と共に恭しくルージの頭に豪華な冠がのせられた。

 

 王を象徴する冠を頭に被ったルージ王が静かに振り返る。

 そして、彼を見つめる国内外の招待客や高官たちの前で宣言を始めた。

 

 「今、この国をさらなる栄光へと導く時が来た!

 我が国の力と威厳を他国に示すべきである!

 よって我はここに、ベルタ王国への戦争を宣言する!

 『力強き者が生き残り、弱き者が滅びる』ことを示す時が来たのだ!」

 

 彼の声は厳粛な静寂を破り、その言葉は戴冠式の参加者たちを包み込んだ。

 新王の宣言を聞き、戴冠式に臨んだ人々は様々な感情を浮かべていた。

 ある者は高揚し、歓声を上げていた、

 ある者は後悔の表情を浮かべ、うなだれていた。

 ある者は衝撃を受け、茫然としている。

 ある者は恐れと不安を感じ周りの者達と顔を見合わせていた。

 

「衛兵 ベルタの使者を拘束し、宣戦布告の書状と共に送り返せ!」

 

 どよめきが走るが、戴冠式の場であるため招待客は声を上げることはできなかった。

 

「出陣は一カ月後だ、全力を尽くせ!」

 

「「「おぉぉ! ルージ王万歳」」」

 

 ルージ国王を支持する強硬派たちの雄叫びが、王宮の大広間に響き渡ったのである。

 

 

 そしてその内容が正式にお触れとして掲示されたのは翌朝であった。

 これにより国民は戦争に向けて進む新たな王の決意に直面したのであった。

 

 

[アラン様 お触れが出されました、開戦です!]

 

 ハロルドからの報告が入ったのはお触れの出たすぐ後であった。

 





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