航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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気付けば20万PV超えてました。
ここまで来れるとは……
ありがとうございます(__)



152.セシリオ動乱2

「宰相様! 大変ですセシリア王国から使者が戻りました」

 

 御前会議中の宰相の元に部下が慌てて駆け込んできた。

 バールケを更迭した後に、新しく任命した宰相とその部下はライスターとも懇意にしていた良識ある者だった。

 その部下が礼儀を無視して駆け込んできたのだ。

 余程の事があったに違いない。

 

「どうした 先日セシリア新国王の件で送った使者だろう? 帰ったからと言って何が大変なのか?」

 

 ベルタ王国からもお祝いの意を示す使節団の派遣していたのだから普通の反応である。

 

「宣戦布告が届きました!

 我が国の使節団は追い返され、宣戦布告状を持った使者が来ました」

 

 宰相に布告状を差し出す。

 

「…なんだと! これは…」

 

 読み終えた宰相が宣戦布告状を国王に差し出す。

 受け取った布告状の中身を検めたベルタ国王は渋い顔をして吐き捨てるように言う。

 

「国王になった途端隣の国に兵を出すとはなっ!

 何様のつもりだ、あいつは!」

 

「しかしこれでは全くコリント辺境伯の言う通りではないですか」

 

「疑っていたわけではないが、まさか本当に戦争になろうとは…」

 

「バールケの所為で戦の準備も整わず、セシリアに簡単に攻め込まれるところであったではないか」

 

 御前会議の参列者は動揺を抑えきれず、不安と不満を口にしていた。

 その時、また違う者が飛び込んできた。

 

「商業ギルドより火急の使者が到着しました! コリント辺境伯より王に緊急の伝言とのことです!」

 

「何と! 読み上げろ」

 

「はっ 『ワレ ゴコクキョウノケンゲンニテ スデニタイオウチュウ シンパイムヨウ』とあります」

 

「なんとコリント辺境伯はこのタイミングで何が起こるかまで予想していたのか」

 

 周囲がざわつく。

 

「流石コリント辺境伯であるな それなら一安心だ

 セシリオの使者は追い返せ」

 

 そう王が告げたところで、その場は既に解決したかのように安堵の雰囲気に包まれるのであった。

 何故アランからの伝言がこのタイミングで届いたか。

 そんな事など誰も気に留めていなかった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 王国が宣戦布告を受け取ったその頃、アラン率いる辺境伯軍は国境付近の平原で展開を終えていた。

 土魔法使いにて既に陣地も築かれている。

 さらに近隣の領地からの増援も集結しつつあった。

 

 そして数日後、国境に現れたセシリオ軍は明らかに狼狽していた。

 使者と同時に軍を進めたのだ。普通であれば準備が間に合う筈はない。

 簡単に国境を越えられると高をくくっていたのだろう。

 ところが国境にはベルタ王国国旗とコリント=人類銀河帝国の旗を掲げた陣地が築かれていた。

 当然進軍出来なくなり、混乱に陥ったのである。

 遠目には面白いほど混乱した後、ようやく隊列を立て直したのは半日以上後だった。

 そうしてセシリオ王国軍は、待ち構えるベルタ王国の兵士とにらみ合う事となった。

 

(さて、いよいよだな イーリス、バトルフィールドマップを作成してくれ)

 

 仮想ウィンドウ上に戦闘用マップが表示される。 

 その上に色が分けられたアイコンで敵味方戦力が配置される。

 コリント辺境伯軍の陣営は騎兵ニ千名、魔法士五百名、歩兵五千名である。

 これに護国卿の立場の元に近隣の領主から徴集した騎兵二千名、歩兵五千名、魔道士若干が加わり、総勢一万五千名近くになっていた。

 

 対するセシリオの兵は騎兵一万、魔道士五百、歩兵二万となり、おおよそ倍の人数で侵攻して来ていた。

 騎兵は立派な装備と高そうな練度から正規兵だろうと判断した。

 それに対し歩兵は簡単な防具を着て盾と剣を装備しているが見た目はバラバラだ。

 徴用した農民や、冒険者などを混成した部隊のようだ。

 

 イーリスの分析では装備と練度では圧倒的にこちらが上である。

 さらにこの世界の戦争はさほど高度でもなく、複雑化もしていない様だ。

 城塞や砦はそれほど多くなく、戦線は面で集団とぶつかり、引いた方が負けと言う感じだ。

 平野に展開したセシリオ軍総勢三万の部隊も、前列が盾と槍を装備した歩兵だ。

 その後ろに魔法を使う部隊が少数。後列が騎士といった単純な陣形でしかない。

 

 しかもステルスモードで上空から偵察中のドローンにより、配置も陣容もすべてわかっている。

 そしてこちらはある程度魔法を使える者が居る上、武器も格闘も練度が高いのだ。

 

 本来であれば人数が二倍の戦力差は圧倒的に不利なはずだ。

 人数で差があるため全体としての戦力としては拮抗している。

 しかし作戦を含めた総合力では圧勝との予想だ。

 我々にとってはどうやっても負ける戦ではない。

 そうなると目標は如何に損耗を少なくして、勝利するかに移っていく。

 

 そこではたと大事なことを知らない事に気づいた。

 ダルシム近衛隊長改め辺境伯軍司令に聞いてみる。

 

「なあダルシム、にらみ合ったはいいが、この後どうすればいいんだ?

 勝手に攻撃していいのか?」

 

「……お互いに使者を立て口上を述べてから開戦です」

 

 さすがに少し呆れた風に返事がある。

 

「なるほどな」

 

 恐らくは様式として戦を考えており、無駄な衝突を避けるための慣例なのだろう。

 今回は威嚇行動ではないためにあまり意味をなしていないなと、ぼんやリ考える。

 

「しかし相手はさぞ驚いているでしょう

 我々が国境で待ち構えているとは思いもしてなかったでしょうから」

 

「そうだろうな 宣戦布告した数日後に陣地が出来ているとは悪夢だろうよ、まったく」

 

 セリーナが呆れるようにそっと耳打ちをしてくる。

 

「リアルタイムに連絡する手段がアーティファクトに限られるこの世界では、アランたちの対応能力は意味不明でしょうね

 相手の指揮官には同情するしかないわ」

 

「戦闘終了の条件はどうなのだ?」

 

「普通であれば相手が壊走するか、または降参するかになります

 勿論司令官の首を捕れば大体決まります」

 

 司令官の顔と名前もとっくに判明している。

 もしテントの中に居ても赤外線モードで丸見えだから見失いようがない。

 

「そうか、余り犠牲者も出したくないので、後者の案をとるか」

 

 ダルシムは流石にその言葉でピンと来たようだ。

 

「俺の行動に付いて来られるメンバーを二十人決めてくれ」

 

「アラン様 貴方のお立場でそれは許されません」

 

 と即座に制止される。

 

「ダルシム辺境伯軍司令 ここでアラン・コリントは相手にしたら非常に危険な存在だ!

 そう世界に認識させる必要があるのだ

 だから俺が圧倒的な力で指揮官の首を捕ることに意味がある

 壊走した敵兵が俺の噂を流してくれると、畏怖して動きが鈍くなるからな」

 

 事前にイーリス達と想定していた会話内容を告げる。

 不本意だがアラン・コリントは化け物だという事を知らしめて、抵抗は無駄だという流れにしようとしていた。

 その穴だらけの作戦には俺は反対したのだ。

 だけれどセリーナもシャロンも乗り気だったために決定されてしまったのだった。

 

「ああ残念だが君はセリーナと共にここの指揮を執ってもらうので駄目だぞ」

 

 そんな殺生な…と言う表情をしつつしぶしぶ返事をする。

 

「…はぁ、分りました」

 

「え、私も駄目なの?」

 

「当たり前だろ、両方一緒に動くのはリスクヘッジできないじゃないか」

 

「アランにそれを言われるとは思わなかったわ

 だったら司令官じゃなくて私が行くべきじゃないの?」

 

「いやいや、やはり俺が力を示さないといけないからな」

 

「そんなこと言ってその装備が嫌で、行きたいだけじゃないの?」

 

 図星を刺されたのだが、反論しても口では勝てそうにないと話題を変える。

 

「ダルシム、使者の準備を始めてくれないか 開戦し相手が動き出せば急襲する」

 

「使者は選定済みです 口上は任せていただいても?」

 

「ああ、俺は素人だからな、よろしく頼む」

 

(イーリス 樹海側からセシリオに展開する部隊は配置終わったか?)

 

[はい艦長 何時でも出撃可能です]

 

(よし、合図はこちらの状況で指示だす、準備するように伝えてくれ)

 

 そうして開戦の時は着々と迫りつつあった。

 

 





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