「ルージ国王、お初にお目にかかります ベルタ王国辺境伯そして護国卿のアラン・コリントです」
面談の段取りを取り付けた俺たちは、王城の広間で国王と向かい合っていた。
遜る必要は無いので最低限の礼節だけで挨拶をする。
ルージ国王は青い顔をしている。
そりゃあ意気揚々と戦争を吹っ掛けた相手が、まさか自分の城に居るのだ。
捕虜にしたのであれば気分が良かっただろう。
しかし実際は逆で、身内を捕虜に乗り込んできている。
さらには王都に集まっていた部隊は武器を取り上げられ、無力化されたというではないか。
とても信じられる状況ではなかった。
「状況は聞かれていると思います
信じられないでしょうが、無駄な抵抗はやめた方が良いですよ
私達が本気になればここはあっという間に廃墟に出来ます」
そう言ってフレイムアローで広間に飾られたセシリオ王国旗を燃やす。
部屋にいた臣下たちが震え上がる。
「こんな風にね
ここに至るまで何度か狙われましたが、勿論全部返り討ちにさせていただきました
攻撃には反撃しますので、命が惜しければ抵抗しないことです」
「………ここまで乗り込んで何を望む コリント伯よ」
「ベルタ王国に弓を引いた代償は払っていただかねばなりません」
「…くっ」
「勿論首を差し出せとまでは言いません」
「…賠償金か」
「そうですね、通常であればベルタ王国に対する謝罪としてはそれでいいでしょう ただし」
「…ただし?」
「残念ですが私個人の望みは異なります
セシリオ王国にはここで消滅して頂きます」
これじゃ俺は極悪非道人じゃないか!
と心の底でこのシナリオを描いたイーリスに文句を言う。
「何だと!!!」
「敗北の宣言をして王の座を降りてください
そうして頂けるのであれば、命まで奪うことはありません」
「そんなことは出来るか! それに言葉を信じられるか!」
「ああ、私の元に下ってくれるのであれば幽閉とかもしません
最低限の生活は保障いたしましょう」
「おのれ身分をわきまえよ!」
ちょっと偉そうな人が騒いだのでフレイムアローを目の前に打ち込む。
ひっくり返って黙り込んだ人物に、呼びかける声が響く。
どうやら宰相らしい。隣にいたフレイザー侯爵は焦燥した顔で固まっている。
「次は当てますよ 黙っていてください」
本当に極悪非道だな…
「そんなもの認めるわけにいかぬ!」
「貴方の首を晒して国を乗っ取ることも簡単に出来るのですよ」
「ぐぬぬ、何だと!」
「それに私が世間でどう呼ばれているか、ご存じないわけではないのでしょう?」
「…噂のドラゴンスレイヤーか、どうせハッタリだろう」
返事は明確に嘲る雰囲気をはらんでいた。
「私の力を理解して頂いていないのは残念です
せっかくなので実感していただきましょう」
「何だと!?」
(グローリア 出番だ)
(了解 族長)
「こういう事ですよ」
ほどなくして上空からドラゴンの叫び声が響き渡った。
上空に待機させていたグローリアが下降してきて雄叫びを上げたのだ。
室内の者達が怯えた表情をする。
「聞こえましたか? 今ドラゴンを呼びました」
「何だと!!」
(グローリア 目立つように塔を壊してくれ 人に被害を出さないよう慎重に頼む)
(はい)
次の瞬間もの凄い叫び声の後に爆発音がする。
そして塔が崩壊する音に地響きが続いた。
外ではドラゴンの姿を見た者が悲鳴を上げている。
(次は顔を見せてくれないか、ここの広間に居る)
マップを転送し、グローリアが顔を出す窓を指定する。
破裂音が響き、窓が砕け散ったかと思うと、ドラゴンの顔が現れた。
(族長 ここですね!)
物凄いドラゴンの声が響き渡る。
気の弱いものは失神し、殆どの者は顔面蒼白になり震えている。
(ああ、ご苦労)
グローリアに向かって手を振る。
「どうですか? これで私の言うことを信じてもらえますか?
我々にかかればこの城など一瞬で木っ端微塵に出来ることを
貴方の命などは虫を潰す程度に簡単です」
国王を脅しながら、さすがにこれはたまらんとイーリスに連絡する。
(イーリス、やはりこのシナリオは酷すぎるぞ!
誰だよ、こんなの考えたのは!)
[艦長 奥様方の案です 皆さんノリノリでしたが、抗議されますか?]
(…いや、…それならいい)
彼女達の案であれば逆らうだけ無駄だ、残念ながら諦めよう。
国王を含め主だったものはショックを受け蒼白な顔で頭を抱えている。
「一晩考える時間を与えます、良い判断をしていただくことを期待しますよ
ああ、話しやすいように全員をこの部屋に集めておきましょう」
宙兵の部隊に指示し、王やフレイザー侯爵、名も知らない宰相も閉じ込め放置しておく。
そうしている間に王都内の兵力はほぼ投降するか捕縛され、武装解除を終えていた。
ドラゴンが現れたことで逃げ腰になっていたところを『投降しないとドラゴンに襲わせるぞ!』と脅したようである。
酷い話だ。
宙兵達は冒険者ギルドと商業ギルドは既に抑えていた。
残りの部隊は王城の正門を閉め籠城を開始する。
(グローリア 暫く王都上空を旋回しておいてくれ)
(はい)
(時々吠えて威嚇してくれると助かるな)
(了解です、ちょっと楽しいです)
(そうか、それは良かった)
城内でそれなりに偉そうな奴を捕まえて、王都内にお触れを出させる段取りをする。
ドラゴンに怯え過ぎて、終わる頃には日が暮れていた。
その一方で事前に篭絡しておいた友好派の貴族たちに連絡を入れ呼び寄せる。
夜にはコリント辺境伯に忠誠を誓う者達が集まり、宣言を終わっていた。
翌朝、広間に訪れる。
ルージ国王は憔悴しきった顔で敗北を認めた。
王の座を降りることを宣言させる。
こうしてコリント辺境伯がセシリオ王国の実質の支配者になったのだった。
【コリント辺境伯がドラゴンを連れ、王を屈服させこの国を支配した】
エルヴィンたちやギルドを通じてそうした噂を王都流すのは簡単だった。
なんといってもアランはグローリアの背に乗り、空を飛んで市の中央広場に降り立ったのだから。
王都の民はドラゴンへの恐怖と、ドラゴンスレイヤーと名高いコリント伯の憧れで遠巻きに取り囲んでいた。
その後敵対する勢力は残っていたが宙兵部隊により各地の指導者が制圧された。
一カ月ほどでセシリオ王国は完全に陥落したのである。
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