航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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156.アレス建国1

 セシリオを掌握した後一時的に魔の大樹海セレスティアルに戻っていた。

 勿論ドローンを使ってひそかに移動している。

 皆わりと慣れてしまいドラゴンで移動しているのだろうと気にもしてない。

 

「マックスウェル卿 今更だけど建国ってどうすればいいんだ?」

 

 執務室で建国に向けた会議中でだ。

 我ながら今頃かという気もするが、そこはあまり考えてなかったのだ。

 何人かは何を今さら言っているのだ?と言う呆れ顔をしたのが目に入る。

 流石マックスウェル卿=ライスター卿はおくびにも出さず答えてくれた。

 

「基本的には国家体制を整えて国を興した宣言を行い、近隣の国に通達を行います

 アラン様は今回セシリオ王国を手中に収めています

 そこでまずベルタ王国コリント領とセシリオ王国を『国』とすると宣言します

 そしてベルタ王国、アロイス王国など隣国に使者を出し通達する形です」

 

「なるほど」

 

「そこで認められないという場合、各国は異議を唱えます

 賛成の場合でも形式的に一度異を唱えますし、中には本気で抗議する場合もあります」

 

「見分けはつくのか?」

 

「ええ、形式的な場合は慣用句で書かれているので直ぐ分かります

 書簡や会合で決着がつかなければ、最後は出兵ですね

 最悪は宣戦布告して実働隊を出し侵攻する事もあれば、実効支配をもくろむ場合もありますな」

 

「判った」

 

「ただアロイスなどからすればセシリオがアラン様の国になっても、普通あまり違いはありません

 此方から直ぐに敵対しないなら余り影響がある話とはならないでしょう

 しかし有力な辺境伯で護国卿が隣の国を乗っ取り、さらに領地を含め独立されたベルタ王国は問題です

 メンツが丸つぶれですので、流石に反発する者が大勢居るでしょう」

 

「まぁそうなるよな」

 

「しかしアラン様は人気も実力もある御方ですからね

 やり方が気に入らないとなどと言って、簡単に攻めるわけにもいきません

 だけれどもメンツもあり泣き寝入りも難しい話です」

 

「アランを崇拝している人達の一部は裏切りと思うかもしれないわね」

 

「人気があればそれが逆に働くこともありますね」

 

「そうだな、気を付けるとしよう…」

 

「ベルタは領土が減ると共に税収も減るので、大問題になるでしょう

 何せガンツは収入では王国有数の領地ですからな

 ギニー・アルケミンを失ってさらにこのダメージですから、財政的にはかなり厳しい

 国家が傾いても不思議ではありません

 私が宰相のままだとしたらどう対応するか頭を抱えていますよ」

 

 ライスター卿が苦笑しながら言う。

 

「そこまでのシナリオになるのか…

 アマド国王がろくでもない奴なら心は痛まなかったのだけど、それはちょっと申し訳ないなあ」

 

「アラン様はちょっと優しすぎますね

 でもアマド様もお優しい方ですし分別も自制心もあります

 とは言えさぞかし悩まれるでしょう」

 

「スターヴェークの件が無ければ違った未来もあったかな…」

 

「あの場合アロイスに付いたのは仕方ないでしょう

 私であったとしてもその選択を行った筈です」

 

「そうだろうな」

 

「気にしないでくれ、ライスター卿」とクレリア。

 

「ははっ!」

 

「メンツの問題は厄介だな…

 財政的な件は迷惑料として賠償金を払うのはどうだろう?」

 

「なるほど、案外それは良い案かも知れませんな

 金銭補償を受け取ることで、幾ばくかのメンツを立てることもできます

 形式的には旧ガンツ領を割譲する形に出来なくも無い」

 

「原資はセシリオ王国の開戦派貴族から資産を没収すれば良いからな

 元々奴らが仕掛けた戦争だし、ちょっとは痛い目を見てもらうか」

 

「そうですな、実被害が無かったとはいえ宣戦布告は受け取りましたから」

 

「よし、そうしよう、リア、どの程度の金額が良いかとか算定を頼めるか?」

 

「任せて、アラン」

 

「後は国家としての体裁か…

 セシリオの貴族の多くはそのまま使うとして、領地の者を叙爵する必要もある」

「そうね、元スターヴェークの者達は身分を戻してほしいわね」

 

「ああ、それにライスター卿も新しい国では身分を戻して侯爵としよう

 皆どうだ?」

 

「そうね、それは素晴らしい案だわ」

 

「それでは私の偽りの身分も終わりですな

 新しい身分も随分と馴染んできたのでちょっと残念ではあります」

 

 ちょっと愉快そうに言うのであった。

 

「後は改めて新しい国の宰相も任せたいのだが、どうだろう引き受けてくれないか?」

 

「アラン様、流石にそれは今の私には身に過ぎた役職かと」

 

 流石に予想外の言葉だったか、ライスター卿も少し慌てている。

 

「いや、現時点の領地のメンバーではまだ宰相まで任せられる人物が見当たらないだろう

 しかし、元セシリオの人材を中枢に用いることは難しい

 そうなるとせめてライスター卿以外に見当たらない

 国家の体制が整うまでで良いので是非頼みたい」

 

「…なるほど、それであれば後任が育つまでの間という事で謹んでお受けします」

 

「ありがたい

 早速の仕事のお願いだがベルタとアロイス、それに周辺国に送る使者の口上と文面を考えてくれないか

 アロイスにはこの後確実にケンカを売るつもりだから適当でいい

 ベルタ王国とは穏便に済ませたいから、そこはちょっと考えて欲しい」

 

「かしこまりました」

 

「国名は『人類銀河帝国アレス国』通称『アレス国』とする」

 

 名前については家紋同様イーリスから警告されているので抜かりはない。

 正確には『人類銀河帝国セレスティアル星系第三惑星アレス』である。

 流石にこれは長すぎで不便だし、この世界では理解できないであろうと諦めた。

 星系名は悩んだが街の名前と被っていても余り支障がないのでそのまま使ったのだ。

 

「アレスですか、大地の名前とはアラン様の目的を考えればふさわしい名前ですな」

 

「国の名前よりは何をなすかに重点を置きたいけれどもな」

 

「それは確かにそうですが、アラン様は既に皇帝として既に歴史に名が残る事を成し遂げておりますぞ」

 

「ああそれだ、帝国ではあるが皇帝は空位にして私は王を名乗ることになる

 皆に徹底して間違えないようにして欲しい」

 

「皇帝ではなく王ですか、ふむ承知しました」

 

 皇帝を名乗ると遠い将来に問題が起こるので絶対に空位でないといけないと、散々イーリスから注意されている。

 

「承知いたしました」

 

「あとはようやくクレリアの身分を公にできるが、どのように公布すればいい?」

 

「建国の宣言に組み込む形で広めるのが効果的でしょう

 アラン様は王と認められるだけの活躍をしておりますので名声は十分です

 なので、どのように宣言しても民に受け入れられるでしょう

 しかし一方で正当な王家の血筋というのもこれまた重要ですので、アラン様の立場はより盤石となりましょう」

 

「そうなのか」

 

 貴族の血筋の大事さはピンとは来ないが非常に大きいのは理解しているつもりだ。

 

「クレリア様については建国宣言で国民向けに演説する中で妻の一人として正体を明かして頂きましょう

 そして改めて元スターヴェーク国民に向けて可能であるならアレス国に集まるように呼びかけます

 そうすれば商業ギルドや出入りの商人のネットワークで広めてもらえるでしょう」

 

「よしそうしよう、後はどの場所で建国を宣言するかだな

 流石にここでは辺境すぎるからガンツかセシリオの王都になりそうだがどうだろう?」

 

「コリント領で宣言するより、セシリオで宣言する方がよろしいかと

 魔の大樹海、それにガンツとその周辺が領土になりますが、セシリオでの宣言がベルタ王国での反発が少ないと思われます

 それに何と言ってもセシリオ王都がやはり一番大きな街になりますので」

 

「判った、それで進めよう」

 

「しかしクレリア様の身分を明かすとなると、アロイスの反応も違うものになるかもしれません」

 

「そうだな、とは言っても精々我が国を警戒するくらいしか出来ないだろう

 ここで旧スターヴェークを弾圧などすると皆こちらに逃げてくるからな」

 

「そうですが、必ずしもアラン様のように正解を選ぶとは限りません

 アロイスの動向には注意しておいて越したことはありません」

 

「判った、エルヴィン達にもまた一働きしてもらおう」

 

「彼らも休まる暇はありませんな」

 

 ライスター卿はちょっと嬉しそうに言う。

 

「なに、貸しもあるし十分報酬は与えてあるし、こう見えても優しい上司だと思うけどなぁ」

 

「確かにどこかの元宰相に比べれば雲泥の差でしょう」

 

 アイツと比べられるのは釈然としないが異論はない。

 

「ロベルトはこの後クレリア達とセシリオ領に移動してくれないか

 向こうでダルシムと連携しながら旧スターヴェークの者たちを束ねて欲しい

 お願いできるか?」

 

「はは、この命に代えましても」

 

「頼むぞ ただ本当に命に代えるなよ

 スターヴェークの復興までは見届けてもらわないといけないからな」

 

「ははは、その通りでございますな」

 

 





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