航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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新章です。



惑星アレス 統一編
158.苦悩


 アレス国の滑り出しは順風満帆だった。

 

 …とはいかないのが世の常である。

 建国宣言から数日後、既に膨大な書類に押しつぶされそうになっていた。

 

「陳情に訪れた貴族のリストです、優先順位をつけて頂きたいのですが」

 

「こちらが資産没収に関する草案です、確認をお願いします」

 

「各国より使者を送るので協議したいと先触れが来ております」

 

「南の領地で反乱の兆候があると報告が届きました」

 

「教会より面談の依頼が届いています」

 

「貴族一覧発行に当たり、早急に身分を確定していただきたく…」

 

「グローリア殿が壊した塔の復旧予定についてですが…」

 

「国庫の資産状況です」

 

「商業ギルドから挨拶の依頼が来ています」

 

(…ギニーアルケミンの件、管理者が判明しました…)

 

 etc…

 

 この星の人類では想像もつかない、イーリスと言う名の最高の秘書が居てこれである。

 もっともそのイーリスにしても情報を把握する必要がある。

 側仕えの宙兵達も寝る間を惜しんで働いているが、把握出来ていないことも多かった。

 そしてイーリスが予測していない書類や報告がどんどん上がってくる事でこの状況に陥っていた。

 

 なまじ綺麗に占領したために、以前の統治組織が有効に機能しているのだ。

 彼らにしてみれば上がすげ替わっただけで自分たちのやる事は変わらない。

 が、判断してもらう内容が増えたので大忙しという事になっていた。

 

 ともあれ何の報告や処理よりも優先させたのは居住区域の改装だ。

 領主館の快適な生活に慣れているので、風呂やトイレが辛い。

 切実な問題だったのである。

 勿論学校の開設についても優先で指示してあった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 建国式典から暫く後のとある午後。

 女性達と軽食だけの遅い昼食をとりながら会話をしていた。

 

「それにしても参った ちょっと落ち着いたら樹海を王都にしてひきこもるか…」

 

 勿論そんなことが出来る訳もないのだが、愚痴の一つも言いたくなる。

 

「そうですね、それが出来れば最高です」

 

 珍しくアリスタが同意して弱音を吐いていた。流石の彼女も疲れているらしい。

 セリーナとシャロンも口には出さないが疲れが見て取れる。

 

「アランともあろう人が弱音を吐くとは珍しいわね!」

 

 逆にクレリアはやる気満々だった。

 建国宣言で身分を明かし、悲願のスターヴェーク再興への道が開けたのだ。

 やる気にならない方がおかしいだろう。

 

「スターヴェークの民たちの為にも私はまだ頑張らないと」

 

 本人は張り切っているが気になることはあった。

 

「そうは言っても、みんな子供を領地に残してきているが良いのか?」

 

 その言葉で流石にクレリアもちょっとテンションが下がる。

 

「…ええ、信頼できる乳母たちにお願いしているし、カリナも居てくれているから」

 

「まだ小さいから長旅は難しいのよね…」

 

「医療も未発達だし、体調を崩す可能性も高くなるわ」

 

「それにまだこちらでやる事が山積みだから…

 此方に居ても余り相手できないのよね」

 

「まぁそれはその通りだけど…」

 

「そんなこと言って本当はアランが子供たちの姿を見たいのでしょ?」

 

「勿論だ!」

 

 そこは否定しない。する必要もない。紛れもない事実だからだ。

 

「そうだな、あと少し頑張って一度セレスティアルに顔を出すか?

 グローリアに頼めば一日掛からずに移動できる

 二泊三日くらいなら何とかなるだろう」

 

「そうね、それは良い考えだわ!」

 

「「賛成」」

 

「でももう一カ月以上会ってないから、顔を忘れられてそうで怖いわ」

 

「確かにそれはありそう」

 

 

 そこへノックする音が割り込む。

 

「アラン様 リッツです 報告に参りました」

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します と、食事中でしたか、後にしましょうか?」

 

「いや、悪いが食べながら聞く」

 

「はっ! 各国に伝わった建国宣言の状況について速報がまとまりました」

 

「よし、報告してくれ」

 

「はっ! まずセシリオ王都での住民の反応です

 こちらは概ね好評で、あからさまな不満を言う者は少数です

 ルージ元王が武力侵攻しようとしたことはそれ程支持が無かった感じです

 あと何と言ってもドラゴンが非常に話題になっています

 さすがにインパクトが大きいようで、アラン様への評価の高さにつながっています」

 

「貴族連中は?」

 

「今のところ表立って不満を漏らしているのはやはり開戦派だった貴族です

 大半の貴族は自分の利権に影響がないと知り、アラン王を歓迎しています

 開戦派は中立派や日和見の貴族を取り込み抵抗しようとしていますが、拒絶され孤立しかけています

 アラン王に忠誠を誓わない場合は処分されるとの恐れから脱落者も出ています

 なのでこれ以上の勢力拡大はなさそうです」

 

「ふむ、ならば足元はひとまず問題なさそうか」

 

「はい、イーリス名誉大尉の判断もその様に判断しています」

 

「判った、地方はどうだ?」

 

「元々王国と折り合いの悪かった領主や、野心のあった者たちがこの機会に独立しようと兵を集めています」

 

「ふむ、セリーナ、ダルシムに『鎮圧に向け兵を編成し差し向けてくれ』と伝えてくれないか

 反乱までいかなくても、火種がくすぶっている状況は良くないからな」

 

「判ったわ」

 

「続いてベルタ王国です

 国民の中は賞賛もあるものの、失望の声が多く聞かれています

 ベルタ国王や貴族については失望と怒りが大半でした

 ただ一部では戦争を回避してくれた事に感謝する向きもあるようです」

 

「こちらは残念だが、仕方ないか…」

 

「ベルタ王国から見たら、救世者から一気に反逆者だもの」

 

 シャロンが仕方ないわねと言う感じで言う。

 

「まぁそうだな、ベルタのフォローは別途検討しよう

 あとアロイスはどうだ?」

 

「アロイスではやはりクレリア様の生存と、建国宣言での発言が問題視されています

 元スターヴェークの国民は希望に満ち溢れていますが、アロイス側の国民は不安を募らせています」

 

「それも仕方ないか」

 

「アラン 本当に申し訳ない、つい口が滑ってしまったの」

 

「気にしなくていいよ、リア どうせ喧嘩を売るつもりだったからな

 セシリオの様に騙し討ちできるわけでもないから問題ない」

 

 まあそうはいっても真正面からぶつかるつもりもないけどそこまでは言わない。

 

「ありがとうアラン」

 

「王国内部の情報まではまだ詳しく収集が出来ておりませんが、かなり反発があるようです

 世論としても親スターヴェーク派に対してはさらに厳しく当たるべきだという声が少なからずあります

 また国境の警備を強化すべきと声高に叫ぶ者も居ます」

 

「判った、引き続きアロイスの動向は注意深く監視するようにしてくれ」

 

「承知ました」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 そんなやり取りの数日後、一行はグローリアの背中に乗って領地に向かっていた。

 皆休みを取るために精も根も尽き果て、ぐったりしていたのは言うまでもなかった。

 

 





評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
次回は何とか年内に更新したいと思ってます。
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