建国宣言から三か月後。
宙兵の増援を手配し、かなりの人数を割いていた。
ナノム経由で書類をスキャンし、イーリスにアップロードする為だ。
形振り構わない人海戦術である。
アップされた書類はイーリスが分類・仕分け・判断を行う。
その為今では大半の書類は宙兵で処理が終わるようになっている。
お陰で重要な物だけ判断すればよくなり随分と楽になっていた。
「う~ん、さてどうしたものかね」
「あらアラン、どうしたの? 珍しく悩んでいるじゃない」
そんな中、思案しているところにクレリアが通りかかったのだ。
「失礼だな、悩む事は一杯あるぞ!
ではなくて、この先の体制をどうするかが問題だな」
「アレス国の?」
「それもあるが、今悩んでいるのは学校関係だな
一気に建国まで持って行ったから現状はまだ統治すらおぼつかない
だから教育に割ける人員が居ないんだよな」
「領地の時の様に、教会のシスターにはお願いできないの?」
「勿論お願いはしているさ
それでもやはり国が広すぎる このセシリオ王都だけでも全然足りない」
ここでも使徒様にも出現いただき、全面協力を取り付けている。
「じゃぁ教養のある貴族の女性とか?」
「言ったら悪いが、お茶会をするか、夜会をするか、自分を着飾るかぐらいにしか興味がない人ばかりだぞ
平民に知識をなどと考える人はいなかったよ…」
「まぁ、それはそうよね…」
クレリアにも思い当たる節があるのか、語尾が小さくなる。
「ガンツの時は統治の心配がなかったから、学校関係に全力を掛けられたのだけどな
流石に今はやる事が多すぎて難しい」
「焦っても仕方ないわよ
あれもこれも欲張っていたら成功する事も失敗するわよ」
「…そうだな、やはり先ずは教師になる人材をどうにか育てるか
遠回りだが教師になる為の学校作りから考えよう」
「各地の教会に教師の候補者を出して貰うのはどう?
地域の情報をよく知っていそうじゃない?」
「ふむ、それは良い案かも知れないな」
「じゃぁそれは私の方でシャロンと話して手配しておくわね」
「すまない、よろしく頼む」
「任せて、じゃあまた後でね」
手を振り見送ると、アリスタを呼ぶように側仕えに伝える。
学校設立の費用は、王族から没収した資産で賄う予定だ。
教師の育成をするなら基本案を打ち合わせる必要がある。
「アラン お待たせ」
「すまない、ちょっと相談したいことがあってね
学校を作りたいのだけど人材がまるで足りていない
そのため教師を先に育成する必要があるって結論になってね」
「そのための費用が必要と言う事ね」
「ああ資金的なところを相談したい」
「判りました、ちょっと試算してみます」
没収したセシリオ王族の資産はかなりの額だったはずだ。
「王族から没収したうち、現金や換金性の高い宝石と貴金属は三分の一ほどです
半分はベルタ王国への支払いに充てています
残り半分が様々な支出に割り当てられているけれども、そこに入れ込む感じかしら
まだ全部集計できてないからこの件も入れておきますね」
「最優先で頼む」
「判っていますよ、規模はどれくらいを考えて?」
「先ずは百名程度を半年間滞在させて、集中教育かな
王都と東西南北で五か所は必要だろう」
「教える人はガンツから?」
「そのつもりだ、そっちの人選もしないと…やる事山積みだなぁ」
「学校の場所の確保も進めているのでしょう?」
「ああ、そちらは指示済みで、だいぶ候補が上がってきている」
ガンツでの立ち上げノウハウがるメンバーを中心に、セシリオのメンバーを割り当てていた。
最優先としているため進捗は悪くない。
◇◇◇◇◇
「これより御前会議を始める 頭を下げよ」
全員起立し、頭を下げたその姿を見て恭しく声が掛かる。
「コリント王、お願いいたします」
「…ライスター宰相、その堅苦しいのはどうにかならないのか?」
「なりません、王とは威厳と格式が求められる者でございます」
「えええ、毎回やるのか、これ?」
勘弁してくれと心底願う。
「待て、セリーナ、シャロン、クレリアまで何でやっている!」
「敬礼と変わらないでしょ?」
「えへへ、つい」
「王にならば当たり前だろう?」
いきなり砕けた会話が始まり、元セシリオの貴族たちは目を白黒させていた。
眉を顰め、ひそひそ話をする者も居る。
彼らの常識では王とは近寄りがたく絶対の存在である。
それなのにこの若い王はまるで世間話でもするように声を掛けてくる。
威張るでもなく驕るでもなく淡々とした物言いはただの青年のようである。
しかし立ち振る舞いをよく観察すれば貫禄が備わっている事が見て取れるのだが、そこまで気付くものは少なかった。
「ともかくそんな儀礼的な会議は不要だ、よろしく頼むよ、ライスター」
「そう言われても…困りましたな」
ライスターは心底困っている雰囲気を醸し出していた。
だからと言ってこちらも『直答を許す』などと言う小芝居をやる会議は意地でもやりたくない。
その為に示し合わせを行い一芝居打っていたのだ。
「俺は儀礼的な会議をしたくない
建国宣言でも言ったように能力次第では女性だろうが平民だろうが重用する
その様な人材を無碍にしていることが判明すれば重罰に処す
皆はそのつもりでやってくれ」
「承知しました
それではまず国内の状況からご報告いたします」
「元セシリオ王都については開戦派の処分が進んでおります
ただ一部の貴族が資産を放出し、新たにコリント王へ忠誠を誓いました
それ以外は問題ありません」
何人かは苦渋の決断をしたという訳だ。
「続いて南方の幾つかの領主の叛意の件です
ダルシム司令自らが対応するために出動しています
明確な反乱前に治安維持として動きましたので、領主を思い止まらせることに繋がっています」
「判った、それなら南部には半年以内に視察を行おう 段取りしてくれないか」
「何と、真でございますか?」
「ああ、新王が如何に素早く行動するか、挨拶もかねて念を押しておこうじゃないか」
「承知しました」
「ダルシムが南方に向かっているなら、軍の拡充はどうなっている?」
「はっ、第二軍のヴァルター副指令が取りまとめております」
アロイス侵攻の為に軍を拡大する必要がある。
第二軍を中心に、志願者や元スターヴェークの民、それに元セシリオ軍を解体・再編成している最中だ。
ヴァルターが奔走しているのは承知しているので、この場で周知する意味があった。
「諸君も知っての通り建国宣言の件がある
その為アロイスとの緊張はこの先も続くだろう
旧セシリオ軍を再編成しこの事態に備えるつもりだ」
「国境の様子はどうだ?」
「アロイス側の国境守備部隊は明らかに増加しております
ただ商人などの情報では国境を越えて攻め込むまでの増兵はしていない模様です」
「よし、引き続き監視を続けてくれ
後は何かあれば即応できるように抜かりなく兵を配置してくれ」
「はっ、承知しました
そしてベルタ王国との関係はひとまず改善いたしております
セシリオの侵攻とコリント領の独立にについて一定の対価を支払った事で王国のメンツが立ったと推測しております」
「承知した、こちらは引き続き対話を行うようにして欲しい
ベルタ王国と争うつもりは無いからな」
「承知いたしました」
とまあ本来ならば全員集めて行うまでも無い会議である。
旧セシリオの貴族へ方針を周知するために、開催をしているのであった。
内政の話は設定してて面白いのですが、読んでてどうかな?と思うので次回はちょっと別な話をになります。
統一編は書き溜めている下書きが少ないので、更新は四苦八苦しています。
今年の二月に初登校してから気が付けば終わっていました。
一年お付き合いありがとうございました。
仮に週一話で更新出来たら終わりが五月くらいかなぁ?
という事でエピローグの投稿日設定を2月からGW後半に変更しました。
来年ももう少しお付き合いください。
評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
次回は一週間後に更新したいと思ってます。