航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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今年もよろしくお願いします。



160.技術開発と新魔法陣

 ◇◇技術開発その三◇◇

 

 本格的に電気工学へ取り組んだのは領地に移ってから二年目が過ぎた頃だった。

 帝国航宙軍アレス方面軍宙兵隊最初の第一期生が入隊してからになる。

 入隊者の半分である十名を技術班に振り分け、ナノムとイーリスのサポートを受け開発に取り組みはじめたのだ。

 そのうち何名かを電気工学チームに割り振った。

 

 宙兵隊の入隊候補はイニシエーションによりある程度読み書きができるレベルにはなっている。

 しかしこの世界ではまだ科学や化学の知識はほぼ無いのだ。

 そのためさらに二回に分けて最低限必要な高等教育までの知識をナノムでアップデートしたのだ。

 それでも不足する知識を午前中は基地内で復習を兼ねて教育を受けることになっている。

 

 午後からはモーターの部品やバッテリーや電線などを作る基礎を習得し、職人などに指示して試作を重ねていく。

 その間にも最低限の体力作りや、格闘技や剣、魔法の習得のカリキュラムも追加されるのだ。

 結構キツいと言うよりは完全ブラックな労働環境だった。

 

 この世界、火水風の魔法はあるのに雷の魔法は無いのは不思議だがそういうものだと思うしかない。

 

 だけど大陸統一にはリアルタイムの通信は絶対に必要になるものだろう。

 それが宙兵に頼らず一般の者が操作できるのだから、画期的なブレイクスルーになる。

 

 無線通信馬車はバッテリーがある程度実用になるようになり、車軸に発電用のモーターを組み込めてようやく実用化できた。

 積載量は減るが普通に馬車としても使えなくもないのがメリットだった。

 お陰で商人に偽装して各国をうろつくには最適だった。

 

 

 ◇◇技術開発その四◇◇

 

 紙製ランタンから始まった空飛ぶ物は、一年後には熱気球を作成していた。

 それを基としてその後の飛行船へと進化させていったのだ。

 飛行船は試作までに五年近くかかったが、これが後日非常に役立つことになる。

 

 

「アラン これはもの凄いものを作ったわね」

 

 馬車数台程度の大きさの試作機が完成した時にはクレリアが大層驚いていた。

 これまでこの世界では空を飛ぶことは考えられたことは無いのだから、そりゃそうだろう。

 

「ああ これだと魔の樹海からガンツまで半日掛からずに着くからな

 試作品だけど馬車二台分の荷物は運ぶことが可能だよ」

 

「そんな事が出来るのね…」

 

「天気に左右されるし、魔石のコストもかかるから使いどころは考える必要はあるけどな」

 

「王都で貴族相手に遊覧飛行すれば大いに稼げそうですね」

 

「空からの景色なんて見ることは出来ないからきっと大人気になるわね」

 

 アリスタとカリナが商売人の顔をして算段している。

 

「王様に召し上げられてしまいそうだな」

 

 と苦笑する。本当に平和利用できるのなら言うことは無いのだけれども。

 

 

 飛行船の始まりは披露宴の後くらいの話だった。

 

「アラン様 相談したいことがあります」

 

 技術開発班のマディソン二等兵が声を掛けてきた。

 表示されたタグには選任研究テーマとしてワイバーンやドラゴンの飛行魔法を研究している事が書かれていた。

 

「どうした? マディソン二等兵」

 

「アップデートされた知識の中で航空機と言うものに興味を持ちました

 研究中のテーマとしてワイバーンやドラゴンの飛行の仕組みを解析して、魔法陣に落とし込めないかと考えています」

 

 そう言えばずっと以前にワイバーンは魔力で飛んでいるらしいと聞いたことがあったし、グローリアも魔力で飛んでいると言っていた。

 

「それは素晴らしいテーマだな、実用化出来たら素晴らしい成果になるぞ それでどうした?」

 

「はい、お願いが二つあります

 一つは私の階級ではアクセスできる情報のレベルが限られていますので制限の引き上げをお願いしたいのです

 もう一つはグローリア上等兵の飛行魔力の解析を行いたいので、上等兵に協力を依頼したいと思います」

 

「なるほど」

 

(イーリス 今の話はどうだ?)

 

[事前に相談を受けており、最終的には艦長の許可を得るように話してあります]

 

(それで俺のところに来たわけか)

 

[はい、本来であれば二等兵ではアクセスできない機密情報になります

 ただし現状我々のリソースとしては上級士官がおりません]

 

(今は上級士官が居ないから、特例で許可されるべきという事だな)

 

[はい]

 

「判った、特例で許可する 成果を期待しているぞ」

 

「はっ、ありがとうございます」

 

 

 まず別チームが炎の魔法具で空気を温める熱気球を作成した。

 電気が使えたので水素でも可能だったが引火すると危険だし、ヘリウムはまだ扱えないので熱気球だったのだ。

 そのままではそれほど実用にはならなかった熱気球だが、マディソン二等兵が開発を進めた魔力を使って浮遊・推進する魔法陣を組み合わせた飛行船になった途端実用性が高まった。

 

 魔法陣はグローリアのナノムが検知した内容を、イーリスが専用プロセッサまで割り当てて解析した成果だ。

 イーリスのリソースをもってしても基礎技術だけで年単位で時間がかかった。

 様々な魔法陣の解析から始まり、理論モデルの作成、試作魔法陣の作成、テストと改良によりようやく実用になるレベルまで持ってきたのだ。

 推進装置は風の魔法具と、浮遊は熱気球とグローリアから解析した空飛ぶ力の魔法具で構成されている。

 その為船体構造は技術的にはさほど難しくなかったのがメリットだった。

 魔石のコストは高かったが、大量の荷物を運べてしかも馬車より速度が速いので重宝した。

 ここまで数年かかったとはいえ飛行船の完成により、この先のアレス統一は大きく進むことになる。

 

 

 さらに何年か後には高速に飛行できるドローン型の航空機も作成した。

 航空力学と魔法の融合品だ。

 魔石と魔法陣を使えば複雑なエンジンも高度な精製が必要な燃料も必要ないのだ。

 魔法に科学知識を組み合わせたら、帝国の知識ですら凌駕する事があるのには苦笑するしかなかった。

 

 やはりこの世界はロストテクノロジーのアーティファクトや魔法が使えることを考えると、他の人類惑星に比べて何かおかしいと思わざるを感じる出来事であった。

 

 

 ◇◇技術開発その五◇◇

 

 イーリスが火の魔法陣を解析した副次効果により、ファイアーグレネードを魔法陣に落とし込むことが出来た。

 これにより爆発する魔法具となり、火薬に頼らず爆弾が作れてしまったのだ。

 爆発の規模は魔石のサイズによるが、小さなものでも十分な威力があった。

 これを鏃に組み込むことにより強力な武器となった。

 流石に個人の弓では難しいがバリスタであれば十分実用になるサイズになったのだ。

 

 この技術の恐ろしい所は魔法を使えない一般人でもファイアーグレネードを放つことが出来る。

 そして技術を真似するにも証拠となる魔法陣も一緒に破裂するので何時までも独占できるのだ。

 製作には精密な描画技術が必要で汎用ボットが行なったため、情報が漏れる心配もなかった。

 

 





変則的ですが更新出来たので公開します。
予定通りGWで終われるようにぼちぼち頑張ります。

評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
次回は月曜朝に更新予定です。
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