アロイスとの国境付近で開戦に向けて陣地を展開していた。
セシリオとの戦争以来の陣地であるが、今回は侵攻側なので塹壕などは掘っておらず、平地に兵を布陣している。
陣地にはアレス国=人類銀河帝国の紋章とスターヴェークの旗がたなびいている。
眼前に備える兵は五万まで増加していた。さらに別方面に二万五千ずつ、総勢十万が今回のアロイス侵攻の全兵力だ。
対するアロイス軍も陣地を築き迎え撃とうとしている。奥には砦も築かれている。
集まったその兵力はドローンの画像解析で約十万と判明している。
正直よく集めたなと言う感想で、これだけの兵を集めるのは無理を重ねている筈だ。
こちらが準備した分相手も準備する時間があったのだから無理ではないが、アロイス国内はかなり疲弊しているだろう。
勝利した後の統治について考えると頭が痛くなる。
「全員集まってくれ」
主要メンバーを招集し、開戦前最後のミーティングを行う。
「これが現在のアロイス軍の配置だ」
ドローンで収集したデータをボードに書き込み見せる。もはやその情報をどう入手したのか誰も突っ込まない。
中央上に砦を示すマークが表示されている。
それを取り囲むようにアロイス軍が陣を敷いており、下側つまり前面は五重になっている。
側面もかなり手厚く配置されていた。
「単純に突入すれば防御され、膠着している間に側面から挟撃され崩されるだろう」
ボードに配置されていたアロイス軍の駒を少し動かし説明する。
「そこで我々はこの陣形で突撃する」
それは縦陣で中央と左右に分かれた三叉槍の形だった。
「メリットはやはり敵陣深く進撃しても、挟撃をされないことにあるとみている
ダルシムどう思う?」
「はっ、確かにこの陣形は突破力に優れたわが軍向けの陣形です
中央を単独突破する場合での問題点も考慮されているので、この案は最適でしょう
流石です、アラン様」
ダルシムの意見に皆うんうんと頷いている。
「誰か、質問や意見はあるか?」
トップが言う事に意見はし辛いと判ってはいるが、質問くらいは欲しいので聞いてみる。
しかし結局は誰も言わないので少し残念に思いながら締め括る。
「ではダルシム指令、宣戦布告の準備をしてくれ」
「はっ! 承知しました」
降伏することは無いだろうから、形だけの宣戦布告を行う。
その間に兵に向けてスピーチをする。
「傾注! アラン国王によるお言葉である!」
ダルシムの言葉で皆が跪く。
やれやれ、相変わらず似合わないなとは思うがここでは威厳を保たねばならない。精一杯厳格な顔をする。
「皆、よく聞け! この戦いは不当にその地位を奪われたスターヴェーク王国を取り戻す為の戦いである!
我らの使命はスターヴェーク王国を取り戻し、虐げられている元国民を開放する事だ!
勇気と団結を示せ! 敵に立ち向かい、勝利を掴め!
アレス国の者達よ! 我らの正義がここにあることを示すのだ!
元スターヴェークの者達よ! 祖国の誇りを守るのだ!」
「「「アレス国万歳!」」」
「「「コリント王万歳!」」」
「「「スターヴェークを取り返せ!」」」
兵達から歓声が上がる!
「武器を捨て逃げ出す奴は放置して構わない! 敵意のある者は見逃すな!
叛旗を翻し味方に転じた元スターヴェークの民たちに注意しろ! 腕に赤い布を巻いた者は味方だ!
そしてこの戦いは敵の士気をくじき、指揮系統を潰せば良い!」
スピーチを終えると民を幸福にする為と言う名目の元で、兵達を戦場に送り出すこの矛盾に軽く絶望する。
果たしてこれは正しいやり方なのかと自問するが、答えはない。
いっそドローンなどの兵力を使い、ピンポイントで支配者を排除することを考えたことはある。
しかしイーリスとのシミュレーションでは結果は芳しくなかった。
結局人類に連なる者にとっては力による決着が一番理解しやすいのだった。
気を取り直し、次の指示を行う。
(グローリア、待たせたな、準備は良いか?)
(はい、族長! 問題ありません)
(よし、予定通り敵陣の上空を旋回して威嚇してくれ、タイミングはイーリスから指示がある)
(了解です!)
(指示された行動が終了すれば速やかに戦場を離脱して魔の大樹海へ帰還するように、以上だ)
(了解です!)
続いて脇に控える宙兵に声を掛ける。
「通信兵!」
「はっ!」
「グローリアの咆哮を合図に無線で通信を入れてくれ、アロイス各地で蜂起するようにと」
こちらは戦場に直接関係しない陽動だが、増援を阻止する狙いがある。
「了解しました」
最後は攻撃部隊に組み込んだ宙兵だ。
(作戦参加の全宙兵に告ぐ 諸君らの役目は敵の指揮官クラスを速やかに鎮圧することだ)
既に前線に立つ部隊長には通達してあるが、先陣には宙兵の部隊を交えてある。
彼らが的確に指揮系統を潰すことになっており、効果的に戦闘を終了させることが可能になる手はずだった。
(深追いはするな、一番に守るべきは自分の命だと思え! 以上だ)
そうしているうちに双方の使者が主張を行い、相容れず引きあげて来ようとしていた。
タイミングを見計らい全部隊に合図を送る。
「全軍! 突撃!」
号令を合図に左辺、正面、右辺の兵が縦陣の陣形で整然と進軍していく。
流石によく鍛えられている動きだった。
それに比べるとアロイス軍は一体感に欠けた行動を始めていた。
予定していた元スターヴェークの者達が反乱やサボタージュを起こしたのだ。
とは言え全体の人数が多いため部隊としては依然纏まった防御陣を引いている。
そこへグローリアが飛来し、陣地の上空で咆哮を上げた。何度も周回しつつ咆哮することでアロイス兵は完全に腰砕けになっていく。
アレス軍は楔を打ち込むべく縦陣で攻めていたので、陣が崩壊しかけたアロイス軍はひとたまりもない。
面白いように突破されていく状況が、バトルフィールドマップに表示された。
自軍の動きをリアルタイムで把握できるので、それを眺めながら宙兵に指示を送り的確に突破していく。
一部の兵士たちは武器を投げ出し、逃げ出しているのが確認できた。
やがて縦陣の先頭が砦に取りつき、攻城戦が始まろうとしていた。
元ルドヴィーク辺境伯領を掌握し開放したのはおおよそ十日後だった。
その報告を聞いた時のクレリアの喜び様は忘れられないものになった。
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