航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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170.王都攻略

「あれがアロイスの王都か?」

 

「は、そうです 既に門を締め切って籠城をしておりますね」

 

 隣にいるダルシムが答える。

 スターヴェークの近衛隊長だったダルシムにとっては懐かしの故郷だった。

 しかしその表情は厳しい。

 

「そんな厳しい顔をしなくとももうすぐだ

 それにしても籠城は想定範囲内だが、普通に厄介だな」

 

 アロイス軍はルドヴィーク地方での想定外(我々としては予定通り)の大敗を喫して敗走した。

 ずるずると王都手前まで後退した後、何とか陣地を築いてアレス軍の侵攻に備えたのだ。

 しかしその陣地もほどなく攻略されるが、何とか稼いだその間に王都で籠城を始めていた。

 

「そうですね、通常では籠城されると半年単位での攻略になりかねません」

 

「それほど時間はかけられないな 長く戦争が続けば王都内の市民が疲弊するだろう」

 

「はい、食料は貯め込んでいるでしょうが、市民が何とかなるのは三カ月でしょう」

 

「悠長に待つ必要も無いし、早いうちに攻城戦に持ち込もう

 我々の攻撃力なら門を突破するのも難しくないから、兵を十分に休ませたら始める」

 

「承知しました、短期決戦に向け準備します」

 

「王都内に潜入している部隊はどれくらいだ?」

 

「五台の無線馬車と二百五十名程度が市民に紛れています

 他に数百名程度の反アロイス組織が活動可能です」

 

 ふむ、それだけ居れば一か所は中から門を開放できそうだ。

 

「判った、追って指示を出すから備えておくように伝えてくれ」

 

「はっ!」

 

(イーリス 王都のマップを表示してくれ)

 

[はい艦長]

 

 視覚にアロイス王都の3Dマップが表示される。

 王都に入る門は十五か所あり、中心に王城がある。王都の規模は魔の大樹海のそれと遜色はない。

 違いはやはり街の中心にそびえる王城だった。三重の堀と城壁に囲まれた立派な王城は壮麗な作りだ。

 

 なるほど、ここで育っていたのであれば魔の大樹海の街を見た時に、城は要らないのかと言ったクレリアの気持ちも分からないでもない。

 

(続いて、敵勢力も表示してくれ)

 

 ドローンによる偵察で収集した情報が表示された。

 それぞれの門には相応の人数が配置され厳重に警備されている。

 

(やはり厳重だな、予定通りプランGで行こう、グローリア呼んでくれ)

 

[了解しました 艦長]

 

 ほどなくしてグローリアが現れた。

 

(族長 お呼びですか?)

 

(ああ、アロイス王都に攻め込むので、今回も威嚇行動を頼みたい

 それに今回は少し暴れて貰う と言っても城壁の上のバリスタを壊すくらいだがな)

 

(判りました!)

 

「ダルシム グローリアで敵兵の士気をくじき、脅威となるバリスタと投石機を破壊する

 王都内のメンバーにはドラゴンを見ても慌てるなと、無線で徹底してくれ」

 

「はっ、承知しました」

 

「侵攻予定は三日後にする 兵には王都を半円で包囲させた後、十分休息させておいてくれ」

 

「アラン様 それでは開いているところから脱出されるのではありませんか?」

 

「宙兵の部隊で周辺を警備するし、王都を捨てて逃げるならそれで構わない

 ……いや、逃げ出した奴らに近隣の村を襲われても元も子もないな

 少々手薄くなっても円形に取り囲んでおく事にしよう」

 

「判りました、手配を進めます」

 

(イーリス 攻城のシミュレーションを行いたい)

 

[了解です 艦長]

 

 ドローンでスキャンしたマップと敵味方兵力の情報を元に、イーリスとシミュレーションを重ねる。

 一カ所からの突入、二カ所からの突入~全部同時に突入までバリエーションを増やし評価していく。

 何度か行った結果を言えば正面を一点集中で突破した場合に一番損害が少なかった。

 

「ダルシム、正面の門を一点集中で攻略する

 同時に一番手薄な北西の門を王都内のメンバーで内側から解放できるか検討してくれ」

 

「はっ、確認します」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 三日後の朝、日の出とともに攻城戦が開始された。

 

「ヴァルター、ハインツ、ブルーノ、デリー、サーシャ、いよいよだけど、そんな硬い表情をしていたら持たないぞ」

 

「「ははっ」」

 

 流石にダルシムは随分落ち着いていたが、他の元近衛たちはガチガチだった。

 緊張を解そうと声を掛けてみたが変わらない。

 

「リア 君もだからな」

 

 苦笑しながら隣にいたクレリアにも声を掛ける。

 クレリアは三日間の準備期間に王都前の陣地まで移動して来ていたのだ。

 かつての城を前に、怒りの為か懐かしさの為か顔は引きつり気味だった。

 

「アラン そんなこと言われても気持ちが混乱していて無理よ…」

 

「もうすぐ王都は取り返せるから鷹揚に構えていればいいよ」

 

 そうは言ってみるが懐かしい故郷を目の前にして、感情の処理は難しいだろう。

 暫く会話しているうちにやがて時間となり号令をかける。

 

「全軍 進め!」

 

 王都から離れて包囲していたアレス軍は、王都までの距離を詰め包囲を狭めていく。

 

 遠くに現れた黒い影はやがてドラゴンの姿となり王都の上空にたどり着いた。

 開戦の合図はグローリアの咆哮であった。

 ルドヴィークの時と同様、アロイス兵は初めて見るドラゴンに怯え浮足立っていた。

 

(グローリア バリスタや投石機は徹底して破壊してくれ)

 

(任せてください 隊長)

 

 グローリアとドローンが城壁上のバリスタや投石装置を破壊していく。ほどなくして城壁上は沈黙した。

 安全に接近できるようになったところで、次の号令をかかる。

 

「魔法部隊、正門前へ進め! 門を破壊しろ!」

 

 魔法部隊が前に進み出て、数回にわたりファイアーグレネードを発射する。

 立派な正門は暫く魔法に堪えていたが、そのうちに完全に破壊され崩れ落ちた。

 

「総員突入!」

 

 ダルシムの号令により、正門から突撃兵が突入していく。

 城門の内側からは弓などによる反撃があるが、魔法部隊が応戦する。

 

(イーリス ドローンで出来る限り弓を無力化してくれ)

 

[了解です、艦長]

 

 混乱のどさくさで何が起こったか気づかれることは無いだろう。

 

「一般市民には手を出すな、敵兵の無力化だけを優先しろ!」

 

 一時間と経たないうちのさらに数か所の門が破壊された。

 そして幾つかの門も内側から解放され、アレス軍が王都内になだれ込んでいく。

 その光景はなかなかに壮観な眺めだ。

 

 王都が完全に陥落し、城を包囲するまでそれ程の時間は必要なかった。

 安全を確保したのを確認した後、王都内の城の前まで移動する。

 

「リア 制圧できたようだから王都に入ろうか」

 

「ああ、アラン いよいよだな」

 

「近くで見ると流石に素晴らしい建物だな、ベルタ王国の城にも劣らない

 これはスターヴェークの頃の物か?」

 

「そうね、元の形は変わってないわ 懐かしいわ」

 

 クレリアが答えるが、硬い声だった。

 懐かしさと悔しさの入り混じった複雑な感情で緊張の極みなのだろう。

 

「リア かなりの兵が籠城したようなので、兵糧攻めでも簡単に陥落できるだろう」

 

 しかしそれを待つつもりは毛頭なかった。

 

「待つ気は無いのでここで攻め落とす

 なるべく損害は出ないように指示はするが、何かあればすまないと先に謝っておく」

 

「いいえ、私たちが住んでいた頃の城とは変わっているでしょうし問題ないわ」

 

「そうか、ダルシム 魔道部隊の状況はどうだ?」

 

「はっ、既にある程度回復していると報告が上がっております」

 

「よし、攻城が出来そうなら一時間後に突撃しよう、兵達に備える様指示してくれ」

 

「はっ! 承知しました」

 

 一時間後、王城の上にグローリアの咆哮が響き渡った。

 

 





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