航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

77 / 87
172.スターヴェーク復興

 アロイス王城を落としてから一週間後、王城の会議室は喧騒に包まれていた。

 元スターヴェークの近衛だったものや、貴族だったが魔の大樹海へ逃れた者達が集まっている。

 貴族一覧を編纂している編纂部のメンバーを取り囲み、口々に話しかけている。

 それぞれ自分の家がどうなったか確認をしていたのだ。

 

 クレリアは侵攻前にある程度事前に調べていたが、さらに奪還後に聞き取り調査を行っていた。

 今日は取りまとめていた状況を発表していたのだ。

 

「傾注! クレリア女王様のお言葉である」

 

 ざわざわしていた場がしんと鎮まる。

 

「皆よく聞いてくれ 先ずはここまで苦難を共に行動してくれたことに礼を言わせて欲しい

 諸君たちの力が無くては、スターヴェークを取り返すことは叶わなかった

 本当に感謝している」

 

 そう言い頭を下げるクレリアは最近ずっと女王モードだ。

 王の態度が苦手な俺は、その姿勢に頭が下がる。

 

「頭を下げていただくとは恐れ多い事でございます

 皆の者に気に掛けていただき、誠にありがたいお言葉に感謝します」

 

 ダルシムが皆を代表して感謝の返答を行う。

 

「ここに集まってくれた諸君らの処遇について話がある

 既に分かっている話だが、アロイスの為に半数の者は家を取り潰された

 残り半数は潰されずに残っていたが、ようやくどのような状況だったかを掴むことが出来た」

 

 全員が息をのむ。

 

「その内容を発表する前に言っておくことがある

 諸君らには二つの選択肢がある

 最初の選択肢だが、諸君らが望むのであれば家があろうとなかろうと当主となり新規に家を興す事を許す

 場所はアレス国でもスターヴェーク王国でも構わない、最大限希望を考慮する」

 

「「おお」」

 

 これはアランとも事前に話していた内容であったが、皆予想外だったようで場がざわつく。

 一族が粛清されスターヴェークに縁がなくなった者達も居る。

 長い年月で家族が増え魔の大樹海の街(セレスティアル)が故郷になった者も多い。

 逆に生まれ育った地に愛着を持つ者も多く居るため、選べるようにしたのだ。

 

「ただし新しく興した場合は、元の家との関係は消滅することになるので注意して欲しい

 爵位については働きに応じてとはなるが、ここまで共に行動してくれた恩には報いるつもりだ」

 

「「ありがとうございます」」

 

「もう一つの選択肢は元の家に戻る事だ

 家が取り潰されていた場合は、取り潰された家を復活させることになる」

 

「しかし家がまだ存続していた場合は少し複雑になる

 元の家が処分対象であった場合は、強制的に現当主を引責させその家の当主になる事も可能だ

 その場合家は処分を免れる様に配慮する」

 

「最後は元通りの家に戻る場合だが、状況により個別対応になるだろう

 処分対象でなければ褒賞を与える

 処分対象であればここまで着いて来てくれた働きによる褒賞と、元の家がアロイスの簒奪にどれほど関わったかによる処分で相殺する」

 

 全員がざわざわし始めたがクレリアは最後を締め括った。

 

「今日はそれぞれの状況を確認して持ち帰り、一カ月以内に意志を示してくれ

 なおルドヴィーク辺境伯家については我が子が成人後に当主となり再興するつもりだ

 そして最後に諸君らに頼みがある、スターヴェークを奪還したがこの国は激しく傷ついている

 この国の礎を盤石とするために、全力で復興に励んで欲しい

 以上だ」

 

「ルドヴィーク家の再興が成るのか…素晴らしい」

 

「クレリア女王様のお子様か、将来が楽しみだ」

 

「スターヴェークの復興か、この身に代えてやり遂げねば」

 

 最後の言葉に参加者は口々に思いを漏らす。

 その後状況を確認したり知り合いとどうするかと会話したりしながら退室していった。

 

「ああ、ダルシム達の叙爵や陞爵についてはすまないがこの先もう少し待ってくれ

 各地の平定がまだなのでもう一働きして貰う、頼んだぞ」

 

「はっ! クレリア女王! 準備を進めます」

 

 ダルシムが敬礼で命令を受け、準備の為退室していく。

 

 アロイス落城後にスターヴェークの国内については基本的にクレリアが指示する様に切り替えていた。

 アレス王国とスターヴェーク王国の指揮系統に混乱が生じるからだ。

 とは言えダルシムなどは基本アレス国軍の指揮官となっているので、この先どうするか再編しなければならない。

 

 

「リア お疲れ様」

 

 私室に帰ってきたクレリアに声を掛ける。

 

「ありがとう、アランには感謝してもしきれないわ」

 

「おいおい、今更それは良いって 最初の約束だからな」

 

「それでも私の、いいえスターヴェークの民の悲願が叶ったのよ

 それに女神ルミナスに誓ったルドヴィークの再興までも見えてきているわ

 こんな素晴らしいことがある?」

 

 クレリアは嬉しそうな泣きそうな笑顔で返事をする。

 

「ああ、おめでとう リアは本当によくやったさ」

 

「それだってアランが居てくれたからこそなしえられたのよ、本当にありがとう」

 

 クレリアの感謝は終わりそうも無かった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「それは一体何が違うっていうの?」

 

 新スターヴェーク王国についてアレス国との関係性について、最初に話した時は拒否反応がすごかった…

 実際は独立した国ではなくアレス国の属国となり、自治権はあるがアレス国の指示には従う必要がある。

 この世界の国の関りは精々同盟程度しかなく、連合王国や、合衆国、連邦などの概念が無かったのだ。

 それをいきなり新しい事をしようとしているのだから仕方ない。

 

「自治権というのはちょっとややこしいが、アレス国の一部としてスターヴェーク王国があるということだ

 基本的にはスターヴェーク王国は独立した国であり、アレス国と同じ法律が適用される属国でもある

 高度な自治権をあたえられることがこれから併合しようとする国とはちょっと違うけどね」

 

「やっぱり違いが判らないわ…」

 

「スターヴェークは一定の範囲内においては普通の国の様に、自分たちで運営決定を行う権利を持つことだよ」

 

「なるほど、それであれば最初に言っていたように、学校の事に関する事以外は自分たちで決めていいという事なのね」

 

「そうだ、アレス国の方針と矛盾を起こさない範囲なら問題ないから殆ど元通りになるはずだ

 だけどアレス国が重大な方針を決めた場合は従ってもらう必要はある」

 

「判ったわ、アランの事は信じているからそれで行きましょう」

 

「宣誓しようか?」

 

 笑いながらクレリアが返してくる。

 

「それ言っちゃ締まらないわよ、私達の間には必要ないでしょ」

 

「とにかく先ずはスターヴェーク国内の安定を目指さなくちゃ

 それが終わったら軍の再編が必要だ、アレス軍とスターヴェーク軍とに分けて次に備える必要がある」

 

「そうね、何よりスターヴェークを安定させないとアランの野望に支障が出るものね」

 

「野望ね、大陸統一にはまだまだかかるさ

 とは言え次の世代(子供たち)に期待できるよう基礎を固めておかないとね」

 

 野望と言うよりは使命だよな、と心の中で思う。

 バグスからこの星の人類を救うという大それた使命だ、何時か子供たちに引き継がねばならないのだろう。

 

「私は王としてこの国の統治に努めてアランを開放しないといけないわね」

 

「もうしばらくは一緒に行動できるさ」

 

 スターヴェーク王国が再興すればクレリアは王としての使命が優先される。

 帝国軍を退役し王としての任務を全うするため別行動になると判っていた。

 一緒に行動できる期間は限られる。

 

 

「ここに再びスターヴェーク王国が復興したことを宣言する」

 

 その宣言がクレリア女王の口からなされたのは一年後であった。

 

(イーリス クレリアの宣言は終わった、次のステージに移る)

 

[了解です、艦長]

 

 そしてアレス国は軍を再編し、周辺の国を新たに併合すべく動き始めた。

 

 





評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
週一日曜日更新予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。