航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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176.ゲルトナー法王

「これは、これは、アラン王、お元気そうで何よりです」

 

「ゲルトナー枢機卿も変わりなさそうで安心しました」

 

「半年ぶりくらいですか、今回は何用で王都にいらっしゃったのですか?」

 

「まだ正式発表はしておりませんが、ベルタ王国も我々と共に歩んで貰えることになりました

 その調印と布告、それに新しい学校の建設のためですね」

 

 流石に教会の偉い人にはそれくらい喋っても良いだろう。

 

「まことですか! セシリオ、アロイスに続いてベルタもアレス王国配下に置かれるのですか、素晴らしい」

 

「アマド国王が聡明な方でしたので、無駄に血を流さずに済みほっとしています」

 

「圧倒的力を持っておられるのに、それを行使せず平和的に解決される

 その姿勢は素晴らしいと思います」

 

「ありがとうございます、小心者なので自分たちの都合で他人に血を流させるのは嫌なのです」

 

 本心ではある。ただ、一方で高等士官教育も受けているため、いざ戦争になったら簡単に割り切ってしまうのも確かだ。

 それでも可能な限り人命の損失は避けたいと思う…

 

「それは素晴らしいですね、女神ルミナス様の加護がありますように」

 

「ありがとうございます」

 

 そうは答えたものの、ルミナス教については折り合いをつけるために切り出す。

 

「そして今日は二つお願いがあり参りました」

 

「ほう、アラン王に改まってお願いされるのは、開拓地への神官の派遣を受けて以来ですな、何でしょうか?」

 

「一つ目は学校を作るにあたり教会の方に教師——勉強を教える役目——をお願いしたい

 特に小さい子供について基礎的なことを教えて頂きたいとと考えております

 教える内容などはこちらで準備しますが、小さな子供向けに読み書き計算を教えていただけないでしょうか」

 

「読み書き計算ですか…、う~む、それは大事な役目ですね…」

 

 英才教育をするわけではないが、こういうのは早いうちから取り組むのが大事だ。

 

「ええ、そうですね こちらでもある程度の人材は確保したいのですが、如何せん理解が無いと出来ない事ですので…」

 

「……判りました、どれくらいの者が協力できるか確認させましょう

 孤児院の子供たちも学校に通うのであれば、人手を割くことも出来るでしょう」

 

「ありがとうございます」

 

 こういう話であればゲルトナー大司教は話が早い。本当にありがたい。

 

「そして二つ目はお願いと言うよりも説明になりますが…

 ご存じの通り我々はカガクという知識を持って世の中を変えていこうとしております」

 

「はい以前お話を聞きました、その時のマッチや新型馬車はすでに世間に広まっております

 それにあの飛行船! 恥ずかしながら見た時には腰が抜けそうになりましたよ」

 

 まぁマッチは化学、馬車は工学、飛行船は魔術も使っているけど。

 と、心の底で思うが説明が難しいので口には出さない。

 

「魔法や魔道具と同じようなものですよ、正しく使うなら便利なものですので恐れる必要はありません」

 

「なるほどそうですか、カガクを恐れる必要はないと」

 

「ええ、科学に関する知識と成果は悪でも善でもありません、すべてはそれを使う人の心によるものですからね

 魔道具もアーティファクトも同じですよ」

 

 そうは言ってみるが帝国の知識からすると魔法の方がよほど不思議なんだよなあ。

 

「確かにそうですな」

 

「そして我々は歩みを止めるつもりはありません

 この先飛行船のようなもっと大きな変革があるでしょう

 いずれ子供が水汲みなどの労働をすることなく暮らせるように考えております、それにより人はもっと豊かに暮らすことが出来ます

 その為に既にいくつか新しい取り組みは行っております」

 

「なんと! そんなことが!」

 

「我々は女神ルミナスの教えに逆らうつもりではありません

 ただ内容によってはもしかしたら相容れない所、ぶつかる所があるかもしれません

 しかし誤解しないでください、それは民のために行っている事なのですのでルミナス教の教えに逆らうものではないのです」

 

「アラン王の功績はすさまじいものです

 アレスでは学校と給食で多くの孤児たちが救われているのを知っています

 それなのにさらに民について気にしてくれて居ようとは…」

 

「いえ、私は単にきっかけにすぎませんよ、世界が成熟していけば何れ誰かが始める事です

 大昔に火を使えるようになり、魔法や言葉や文字を発達させたように、いずれ人々は科学を見いだして発展させるでしょう」

 

「アラン様がそういうのであれば確かかも知れません」

 

「約束しますよ、ゲルトナー枢機卿が生きているうちに世界は大きく変わります

 人は急に変わりませんが、十年二十年と経ち、世代が変わる頃には教育が行き届きます

 そうすれば今よりもっといい世界になる、私はそう願って実現にまい進するだけです」

 

「素晴らしいお話です」

 

「その為にも教会には力を貸していただきたい

 ゲルトナー枢機卿には、いえその頃にはもっと出世しているでしょうけれども

 我々の行動に理解を示していただけないでしょうか?」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 その数か月後、奇跡を後ろ盾に法王となったゲルトナーが説法する姿があった。

 

 





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