残り3話は投稿済みの為、実質このエピソードを最後に書いています。
ベルタ王国を併合した数年後だった。
「報告です アラム聖国に軍事行動の兆候があると連絡がありました
現在聖都へ向けて各地から兵が集まってきております」
「判った、迎撃部隊の編成を急ぐようダルシム司令官に伝えてくれ」
ちょっかいをかけるタイミングを伺っていたのだろう。まだベルタ統合に意識が向いている今ならと思ったに違いない。
「畏まりました」
「迎撃には新型飛行船の部隊を使うようにしよう、出し惜しみは無しだぞ! 次に続く国が無いように心を折っておきたい」
「ははっ!」
数か月後、国境のにらみ合いを経て開戦へと至った。
当たり前だが戦争ではアレスの相手になりえるはずも無かった。
国境に集結したアラム聖国の侵攻軍はわずか開戦三日で壊滅し、兵士たちは散り散りとなって敗走する。
そのまま追撃を行い一月ほどで聖都を陥落させる。ただし宗教は厄介で騎士団などは最後まで投降せず抵抗したので、此方にも相応の犠牲も強いられたのはきつかった。
しかしセシリオ、アロイスに続き強国と思われていたアラム聖国までもが一カ月余りで陥落したことは、周辺の国に大きな衝撃を与えられたようだ。
これにより幾つかの好戦的な国を除き、多くの国が穏便に傘下に入るべく交渉を持ちかけてくるようになったのは良い兆候だった。
多方面で兵を展開させる負担を避けるためにも非常にありがたい。
さらに後押しする様に各地での噂話や商人、貴族のネットワークでアレス国の優位性を流す。その為小国を中心にアレス国に逆らうのは得策でないと思わせることができた。
ただしアーティファクトの多い大国ザイリンク帝国とその友好国が反アレスに傾いて手を取り合い始めていた。その他にも幾つかの軍事国家や大国、独裁国も反アレスとして動いているのだ。
セリース大陸は今アレスと反アレスの二つに割れ、動乱の時代に突入しようとしていたのだった。
◇◇◇◇◇
アラム聖国統合の後も、数年に一つは国を併合していく。
それから数十年、ザイリンク帝国と近接した国を併合したその時点では、もう話し合いで解決を行う余地はなくなっていた。
そして今まさに国境沿いに展開されたザイリンクとその友好国の兵達は準備を終えていたのだ。
此方も対抗の為に輸送軍が大活躍で兵の展開と物資の移動を行っていた。
「アラン様 兵の配置は終わりました」
今はザイリンク帝国の砦から数キロメートルほど離れた場所だ。ここで兵を展開し対峙していた。
「そうか判った、予定通りやるのでタイミングを逃すなよ さっさと終わらせてこれで最後にしよう」
「承知しました」
伝言を持ってケニーが去っていく。後ろでダルシムが国王自ら兵を率いるなどありえないとぶつぶつ言っているが無視をする。
ザイリンクはなまじっかアーティファクトを大量に持っているためか、彼我の戦力差を把握できずに立て籠もっていたのだ。
遠く離れたこの地に兵を展開できる力の事を知らないと思われる。敵の指揮官はやれるものならやってみろと話した後に意気揚々と砦内に戻っていった。
だが砦とは言うものの城塞都市と呼んで差し支えない規模であったのだ。指揮官が自慢げになる理由も分からなくもない。
「やれやれだよな」
「アラン様のお力を知らなければ仕方ないでしょう」
「今までの戦いでどれだけの飛行船が活躍したかくらい知れそうなものを…」
「知ってはいても戦場でどう使われるかまで意識できないのでしょうかね…」
飛行船を実用化したことで、戦闘は平面から立体に移行していた。
魔法陣の改良により火薬の代わりに爆弾や鏃に仕込めるようになり、遥か上空からの遠距離で一方的な攻撃が可能になったのだ。
先端にファイヤーグレネードを仕込んだ爆弾や、鏃にファイヤーグレネードを仕込んだバリスタでの攻撃だ。避け様がない。
その為平面しか意識しない砦はもはやその優位性を失っていたのだが…
「準備が整いました」
伝令が駆け込んでくる。
「よし、打って出るぞ! 出撃!」
十数隻の飛行船が浮上する姿は壮観だった。
帝国航宙軍に比べると非常にささやかではあるが、これが今の艦隊だ。
地上部隊も砦との距離を詰めるべく進軍を始まる。
正直ドローンで司令官を狙撃するのが一番楽なのだが…こういう状況になっては、流石に敵も味方もそれだけでは収まらないのが悩ましい。
飛行船が進攻し上空からの攻撃で正門が破壊しようかと言うタイミングだった。
[パルスレーザーの反応を検知しました!]
突如イーリスから警告が入る。
(っ! なんだって!?)
[飛行船が被弾しました]
見ると気球を貫かれたのか一隻の飛行船が高度を下げつつある。外装が焼けたのか少し煙も出ている船もある。
(パルスレーザーだと!? なら飛行船を安全距離まで退避させろ!)
命令を受け取った飛行船は前進をやめ、全速で後退していく。
パルスレーザーは強力ではあるが、大気中の減衰は大きいのだ。距離を取ればそれ程脅威ではない。
しかしこれは誤算だったな。
ひとまずイーリスに確認する。
(イーリス あれはアーティファクトか? それとも我々以外の帝国の物か?)
我々が保有しているテクノロジーが奪われることは無い。あれば直ちにイーリスが感知しているだろう。
[推定の域を出ませんが、我々以外のテクノロジーは観測されていません
十中八九アーティファクトと思われます]
(脅威度はどう見る?)
[発射間隔からして、帝国式のようなエネルギーパック式ではなくチャージ式と思われます
画像解析では照準も手動ですので精度は高くありません
攻撃の威力は高いですが、数も少なく、さほど脅威となるとは考えにくいです]
(とは言え、飛行船の魔法陣を破壊されて、撃沈されるような事態は避けたいところだな)
奴らが妙に自信たっぷりに籠城したのはこれがあったからか。流石にちょっとまずいな。足の遅い飛行船であればいいカモだ。
それに連射速度が遅いとはいえ騎兵や歩兵相手にも、十分な脅威になる。
(アーティファクトをドローンで狙撃出来るか?)
[可能です]
(よしアーティファクトは少々勿体ないが、ドローンで沈黙させてしまおう)
[了解しました]
◇◇◇◇◇
イーリスとの会話を終えると指揮所の中は騒ぎになっていた。
飛行船が煙を上げて後退したのだ。軽くパニックになっている。
「落ち着け!!」
一喝して騒ぎを鎮める。
「敵がアーティファクトを持ち出した様だ 飛行船の何隻かが被弾したが問題はない」
「なんですと! それで奴らは強気だったわけですか
流石アーティファクトが豊富な国と言うだけある…」
ヴァルターが驚くが、構わず続ける。
「敵がアーティファクトまで持ち出して攻撃して来るなら出し惜しみはしない
魔道航空部隊を出撃させよう、準備を急がせろ」
「はっ!」
「何機出せる?」
「四機編成の小隊が十で合計が四十機、予備が四機です」
「よし、二列陣形で爆撃しよう、奴らに恐怖と畏怖を叩き込んでやれ!」
「はっ!」
やがて後方で待機していた魔道航空機が見えてくる。風切り音を残し上空を通過していったその直後だった。
「サイレン準備! セット!」
号令と共に突如悲鳴にも似た高周波音が響いてくる。けたたましい音を立てながら魔道航空機の編隊が砦の上空を旋回し敵軍へ突入していった。
見慣れない空を飛ぶ物と、不気味な高周波と爆発音に相手はパニックになって散り散りに逃げだし始めたのが見える。
惑星アレス史上初の戦闘形態だった。
飛行船の出撃も壮観だったが、航空機が敵部隊上空を蹂躙するのは圧巻であった。
現在の新型の爆裂の魔道具を投下していくたびに爆発が起こり、砦の壁が崩れていく。
「やはり音を出すようにしたのは正解だな」
「本当に…あれが味方で良かったとつくづく思います」
ダルシムがげんなりした顔で同意する。
試作で作った航空機は風切り音のみだったので、テストでは余り怖さは感じなかったのだ。その時ドラゴンの怖さの一つにその咆哮が有る事を思い出し、恐怖を感じさせる音を追加させたのだった。
仕組みはホイッスルに近い簡単なものだが、それの効果は思ったより高く、飛行船を見慣れたはずのテスト参加兵も見事に竦んでしまっていた。ダルシムも被害者の一人だった。
「逃げる者は無視していい、砦を徹底的に破壊しろと伝えろ」
「はっ!」
幸い追加のアーティファクトは無い様で、もう勝負にもなっていない。
開戦から数時間で城塞のようだった砦は廃墟と化して、勝負は明らかだった。
「ちょっとヒヤリとする場面もあったが、魔道航空機の初陣を祝おうじゃないか」
そうしてザイリンク帝国の緒戦で城塞を陥落したことで世界の趨勢は決定したのであった。
以後セリース大陸はアレス国の統一へ傾いていく事になる。
評価、誤字脱字報告、御指摘、感想、何時もありがとうございます。
これで惑星アレス 統一編は終了です。いや長かったなぁ。
残り最終章3話ですが、明日から終章を3日連続で更新して完結となります。
最後に謝意を
本来消費する側(読む専)だった自分が、この二次作品「貴族になる」を書こうという原動力なったのは「虹峰 礼」さんの「惑星アレスの魔女」を読んだからでした。
それで初めてハーメルンの存在を知って、続きがないなら自分で作ればいいのだと無謀にも書き始めてしまった次第です。
それがまさかここまで長く書く事になるとは思いませんでした。しかし完結出来て感無量です。
ありがとうございました。