航宙軍士官、貴族になる   作:あんさん

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いよいよ終章に入りました。あともう少しエピローグにお付き合いください。



終章
178.調印式


 厳かな雰囲気の中、それぞれの国の王が集まっている。

 良く通る声の司会により宣言がなされる。

 

「これより調印を開始します 各国代表の方は順にサインを行ってください」

 

 一人ひとり中央にある調印台に向かい、それぞれがサインを行っていく。

 全員が終わったところで再び宣言がなされた。

 

「これにて調印は終わり、セリース大陸が一つの国になりました

 これよりアラン・コリント様、クレリア・スターヴァイン様よりお言葉があります」

 

 幾つになってもこういうのは慣れないなと心の中で苦笑する。

 

「本日調印を行ってくれた方々に感謝します」

 

「今日は、この大陸が過去の分裂や紛争から解放された日です

 私たちは、この大陸を一つにまとめ、繁栄と平和を実現することができました

 これは、私たちの共通の夢と努力の結果です」

 

「この統一は、国民が必要な教育を受け、自由と平和を守り、幸福な生活を送る第一歩です

 私たちは、この大陸を一つの大きな家族と考え、全ての人々が平等に生活できるように努力します」

 

「これは私アラン・コリントと」

 

「私クレリア・コリント・スターヴァインにより約束します」

 

「「ありがとうございました」」

 

 

 割れんばかりの拍手が巻き起こる。

 全ての国の代表だった人たちが、今は一つの目的のために進んでいる。

 今この場でバグス襲来の脅威に対する警告は出来てないが、次世代に引き継ぐときには公開する必要がある。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

(イーリス やっと終わったぞ)

 

[艦長 大陸統一お疲れ様でした]

 

(あれから三十年、俺の代では無理だと思っていたが成し遂げたぞ、どうだ!)

 

[素晴らしいです 私は艦長の資質を読み誤っていました]

 

(そんなことはないさ、人に恵まれただけだ)

 

[人徳があって人に恵まれるのも資質ですよ]

 

(ああそうだといいな、これで第二ステップが完了した だが俺の役割はここまでだな)

 

[まだまだ元気でいてもらわないと困りますが…]

 

(暫くしたら後続に道を譲るよ 軍ならとっくに退役している歳だぜ

 後は俺とセリーナとシャロンの子供たちが上手くやってくれるさ)

 

[そうですね、未来は育っています]

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 それから三十年の間、アランとクレリアは国の統治と安定に、セリーナ・シャロンは教育と科学の発展に尽力してきた。

 全国にインフラの整備を行い、学校の基礎を作り、科学研究を行う施設を作り、軍を整備しナノムを持つ人材を育成していく。

 すべては遠い未来に軌道でリアクターを作るために。

 

 

 統一から三十年の節目でアランは退位し、シャロンとの間に生まれた第一子にその立場を譲った。

 その彼は三十年間立派に国を指導し、中興の祖として称えられる事になる。

 

 クレリアはスターヴェークの王座を息子に譲り、もう一人の息子はルドヴィーク家を復興した。

 娘は普通に嫁ぎ孫に恵まれている。

 

 セリーナの二人の子供は一人が科学技術局の長に、もう一人の子供は大学府の学長となっていた。

 自身は帝国軍人としての長を務めていたが、アランと同時期に後進に席を譲り第一線から退いた。

 

 シャロンは息子が人類代表となり、娘はある国の元王族に嫁ぎ幸せに暮らしている。

 自身は教育機関の長を務めていたが、やはりセリーナ同様第一線から退いた。

 

 エルナはアベル・ライスターと結婚し子供をもうけたが、航宙軍ではなくエルナ同様騎士の道を選んだそうだ。

 夫は亡くなり息子は独立したので、今はまたクレリアに付き添っている。

 

 アリスタは普通のおばあさんになり、今も変わらない付き合いのカリナとひ孫の世話をしている。

 アリスタ、カリナの子供たちはすでにサイラス商会を切り盛りしており、タルス商会としのぎを削っている。

 二人ともナノムのインターフェース作成は固辞したので、ナノムが有っても普通の人としての寿命を迎えるだろう。

 

 グローリアはすっかり大家族になり、一族の長として活動していた。

 ドラゴンの寿命は長いのでまだまだ元気との事だったが、AR通信の声はそれ相応に落ち着いたものになっていた。

 

 

 俺たちはたまにオブザーバーのような事をしながら、昔を懐かしむように何度か五人で旅に出ていたりもした。

 もちろんもう昔のように体が動くわけではないが、それでも普通の魔獣や盗賊が何かできるわけではなかったから身軽な旅だった。

 あの頃に比べると随分と装備も容貌も変わったけれども、みんな変わらず魚釣りが好きで、昔のように旅と冒険を楽しんだ。

 

 

 帝国歴二千三百五十九年

 

 退位から四十年後、クレリアたちに見守られながらアランがその生涯を閉じた。

 ナノムがあったせいか見た目は年齢よりは若かったが人類種としての寿命であった。

 全国民が一カ月喪に服したあと、改めて偉大な指導者に未来に向かって進むことを誓った。

 

 艦長からの最後の通信は「イーリス、ありがとう、子供たちの未来を頼む」だったのはとても彼らしい。

 しかしイーリスは感じるはずの喪失感に見舞われて戸惑っていた。

 艦長に声をかけようとしていないことに気付くのだ。

 この年アランのひ孫が戴冠し、しばらく後にクレリア、セリーナ、シャロンも静かに生涯を閉じた。

 

 

 帝国歴二千四百五十九年

 

 アランの死去から丁度百年後、アレス人類による初の軌道上への進出が果たされた。

 頼りない巨大な化学推進ロケットであったが、それはアレス人類の大いなる一歩だった。

 

 それから二十年、ついにアレスの人類が軌道上の戦艦イーリス・コンラートに接舷し搭乗を果たした。

 それは誰もが待ち望む全世界が沸き立った瞬間だった!

 

 

 

 帝国歴二千六百九年

 

 初の軌道進出から百五十年、軌道上に構築したドックで最初のリアクターが完成した。

 実験検証用で最低限の出力しかなく耐久性も判らないものであったが、ついにもう一つの目標は達成されたのであった。

 

 数度の起動試験後に実際に戦艦イーリス・コンラートへ仮接続し、利用可能なことが確認された。

 国民は再び沸き立ち、今後十年かけて本格的なリアクターを構築する計画に入っている。

 

[艦長 リアクターの作成は成りました、計画の達成まであと少しです]

 

 イーリスはもう居ないアランに報告を行い、喪失感を感じるのだった。

 

 





アラン達の長い旅路もここで終わりです。

この後のエピソードも書けば一杯ありますが、蛇足かな?と思って書いてた分もカットしました。

ここから先の話は2023年2月13日頃に書いています。
まだ十話しか投稿してないのに、エンディングを既に書いてたわけです。
これが書かれていたので完結までたどり着けました。
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