童貞社畜が社畜エロ羊となるまで   作:タイツ信者真君

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元社畜甘雨が『契約』するまで

「よーく狙って、ファイヤー!!」

 

持ち前の仙獣血脈の視界を生かし、高速で6本の矢を打ち出す。まるでFPSゲーで倍率スコープをつけたときのように、高倍率のズームで狙いを定めた。

 

発射された矢はまっすぐに飛んでいき、100mは離れた岩の上に座ってもらっていたスライムたちのど真ん中に突き刺さった。岩スライムと氷スライムはシールドが展開されていたので刺さってはいなかったけど。

 

「よっし!全弾命中、狙いは超正確!」

 

仙力を目だけに集中させることで仙獣の索敵能力を最大限発揮し、目標の動きを完全に捕捉出来るようになることを発見して以来、僕の弓術はぐんぐんと頭角を現していった。

 

しかし、仙力の部分集中は意外と簡単なことではなく、初めて試したときは集める仙力が多すぎたのか視界がゆがんでぼやけ、水晶体も濁ってそのまま一日は視力が元に戻らなかった。

僕はこのまま失明してしまうのかと思ってガチ泣きした。精神年齢がもうすぐ40歳を迎えることなんて気にせずワンワン泣いた。

 

でもその時、僕以上に大慌てだったのは留雲真君だ。ジェット機でもかくやと思われるスピードで僕を抱きながら空を飛び回り、雷が止まない島国の薬屋や、清水溢れる湖の精霊に頼み、灼熱の日光と砂嵐が照りつける王国の秘宝までをも探しに行ったのだ。

 

自分より慌てている人がいると、返って冷静になれるときってあるじゃん。

僕は逆に落ち着いて、自分の仙術を細々と眼球に流し続け、なんとか無事に視力を回復させたのだ。

 

だが、その後は体毛を激しく逆立てた留雲真君に丸一日説教されて、僕が繊細な仙力操作ができるようになるまで同じことは厳禁となった。

そのため僕は、『縹笛からくり』を使ってまさに3年もの間練習に練習を重ねた。今の僕の演奏はプロ並みであると胸を張って言えるね。

 

仙力を風のように操って、そこそこ遠くにいる人の部分欠損まで回復することまで可能だ。もうこれナイチンゲール超してるだろ。

 

「んっ?……あっ、スライムくんたちありがとね。うぉぉ!!良ぉお~~~しッ!よしよしよしよしよし」

 

自画自賛に没頭している間に、いつの間にかスライムたちが体に鏃が刺さったまま跳ねてきた。おそらく痛覚はないのだろう。

僕は1時間ぐらい的と化してもらっていた選りすぐりの極小サイズのスライムたちを労うように、なで回しながらよしよしした。

 

ここ最近、ますますスライムや仙霊などの元素生命が周囲に近づいてくることが増えた。

と言うことはつまり、僕の元素力も日に日に増大しているのではないだろうか。見てますか神様、僕に『神の目』、渡してくれてもいいんですよ?

 

 

この世界において『神の目』は、持つ者と持たざる者に天と地ほどの差が生まれる。

元素力を感知し引き出せるようになるだけでなく、身体能力だって一般人とは比べものにならないぐらいほど増強される。

 

だから、神の目すら持たない凡人は、基本的に所持者にはへこへこしながら生きていかなければならない。

これを是としない『岩の魔神』を初めとする帰離原の為政者たちは、神の目を持つ者には無理のない範囲で兵役を課し、弱者を守る立場をとらせるようにしている。確か、「千の権力には千の責任が伴う」だっけ。流石帝君、優しすぎるわ。

 

 

でも、神の視線は『強い渇望』に反応して注がれるものであるため、対象者の善悪は無関係だ。

ごくまれにその力を使って悪さをしようとする者も現れる。僕もこの前変な男に襲われて連れ去られかけた。しかも町中で子供たちと遊んでいるときに。

 

偶然居合わせた法師の少女が炎元素の神の目を使って撃退してくれたんだけど、僕はこれまたガチ泣きしかけた。泣きすぎて頭巾が外れて角が出てることさえ気づかずに、助けてくれた少女に泣きついてしまった。

 

少女は若干恍惚した?表情を浮かべたんだけど、文句を言わずに抱きしめてくれた。やさしい。

 

だって仕方なくね?襲ってきた不審者、くっそイケメンなのに「あぁ、僕は貴方様に救われてから、ずっと、ずっと貴方の愛が欲しかったのですッ!!!」なんてハイライトが消えた目で近づいてきたんだよ。こんなん大人でもちびるわ。

 

しかもお前誰だよ。こんなイケメン助けた覚えないわ。イケメンで神の目持ちなんてモテモテだろうに、どうして僕みたいな未成熟少女を襲ってきたんだ。光源氏かよ。

 

加えて、僕の仙術は回復かサポート特化っぽいし、弓だって接近されたら使えない。あのときは本当に絶体絶命の状況だった。

そんなだから、僕は今、『神の目』がめちゃくちゃ欲しいのだ。お願いです神様、これまで良い子にしていたんで、クリスマスプレゼントだと思って僕に下さい!

 

 

 

もう枕元に靴下でも置いて、「神の目」って書いた紙を入れておこうかなと思い始めた矢先、僕の視線に奇妙な少女が映った。

 

ピンさんと少しだけ似ているが、その体格の割にぶかぶかな着物を着ている。小柄でモデルみたいに顔が小さく、灰色の髪を両側で前に長く伸ばして後ろは首の高さで簪で束ねている少女。

上半身は萌え袖でぶかぶかなのに対して、下半身は短めのスカートの下はつま先まで裸足だ。痴女かな?

 

全体的に小っちゃく、一見ミドルティーンの少女のように見える。『瑠璃百合』を擬人化したともとれるようなシルエットだ。

 

「すみません、そこのお嬢さん。こんなところで座り込んで、何をなさっているんですか?今のところは何もいませんが、ここには妖魔も現れますよ」

 

ただ湖の方を向いて座って、ぼけーっとしてるだけように見えたので、一応声を掛ける。今日は天気が良いから、ひなたぼっこをしたくなる気持ちも分かる。

だが、法師の集団が妖魔退治をしているとは言えはぐれ妖魔や普通に魔物も出るから、こんな野原でのんびりしてはいられない。せめて荻花州の方へと避難させないと。

 

「はじめまして、私は帰終。……ところで甘雨、あそこには元々何があったか分かるかしら?」

 

わー帰終ちゃん綺麗なお声。だが、僕の言葉に返事はするものの、こちらの方を振り返ることはない。

先ほどからずっと向いている方角を指さして、僕に質問を投げかけてきた。

 

「帰終ちゃんはそんなことが知りたいんですか?あそこは元々、『塩の魔神』っていう魔神が統治していた場所ですよ。………って、どうして私の名前を知ってるんです?」

 

説明はしたものの、僕の名前を当然かのように口にするこの少女を怪しく思い質問仕返した。が、その瞬間…

 

「えっ!なっ、何ですか!?地震!?」

 

突如として地面が揺れ始めた。かなりの震度で、思わず立っていられなくなる。

 

実のところ、地震は特段珍しいものではない。日本ほどではないにせよ、ここ一帯でもそこそこの頻度で発生している。

だが、今回のはいつもと全く性質がことなるものだった。

 

いっさいの兆候がないのだ。普段はリスや魚が教えてくれるし、僕も麒麟の勘でなんとなくの発生が予測できる。

ということは、これは自然由来の地震ではない。何者かが人為的に起こしたものだ。

 

警戒しろ、武器を構えろ、何かが来る。本能でそう分かった。

 

「実に滑稽ね。どんなに優しい魔神でさえ、死んだ後の『残滓』だけで、民達を傷つけることになるなんて」

 

大地がうねり、大きな地響きがする。湖は波立ち、鳥たちは遅れて逃げ始めた。

そして、『塩の魔神』が住んでいた大穴から、一匹の巨大な影が飛び出してきた。

 

「あれは……『ビシャップ』?でも、通常個体よりも数倍は大きいです…それに、なんだか苦しそう…」

 

 

 

 

 

「グゥアアアアアアアァァ!!!!!」

 

苦しみの混じった咆哮を上げながら、僕と帰終ちゃんを認識したビシャップはこちらへと突っ込んできた。

黒く禍々しいオーラを放ちながら、ものすごいスピードで体当たりをしかけてくる。

 

ただでさえ表面が硬い岩元素の鱗で覆われている竜なのだ。数倍もの大きさの個体となると、その衝撃もすさまじい。当たったら終わり、絶対に避けなければ。

だが、突進の延長上にいたままの少女は、危険が間近に迫っているにも関わらず動かない。

 

「帰終ちゃん危ないです!速く逃げて!!」

 

僕はできる限りの大声で注意を呼びかけたのだが、帰終ちゃんは動かない。それどころか、呆然とその場で立ち尽くしている様子。クソっ、なんで逃げないんだ。

どうする、どうすればいい?このままだと、あの子は突進で吹き飛ばされる。当たり前だが耐えられるようなものではない。かくなる上は…

 

僕は足の筋肉に仙力を注いで跳躍し、ビシャップが少女に接触する直前に体を滑り込ませた。

 

「くっ!」

 

痛みに耐えるために、目をぎゅっと閉じる。だが……

 

「……って、あれ?痛くない?」

 

決死の覚悟で飛び込んだのだが、想定していた衝撃は僕の体には伝わってこなかった。最悪全身複雑骨折しようが、仙術でなんとかなるやろって考えだったのに拍子抜けだ。

その代わり、僕と帰終ちゃんの周りには、琥珀色の浮遊物が取り囲むように展開されている。

 

「な、なにこれ!?これは…超濃密な岩元素?」

「そう。これはね、玉璋防壁って言うの。そして、ほら、やっぱり来てくれた」

 

少女はそういって、西の空を指さす。そこには、半分麒麟で、半分龍の姿をした、琥珀色の龍神が天へと昇っていた。

そして、大地が揺れ、全ての生き物が平伏する一声を放つ。

 

「天道、ここにあり」

 

 

 

 

 

場所は変わり、僕は帰離原の内で一番大きな神殿の石の食卓の前で座って待っていた。

 

 

あの後、帰終ちゃんに連れられて一度帰離原に戻ることとなった。なんでも、話したいことがあるというのだ。

だが、その帰る手段が問題となった。なんと、帰終ちゃんは、まるでいつもそうしているかのように巨龍の背中に飛び乗って、「さあ、貴方も乗って、甘雨」なんて言い出すのだ。

 

私は当然焦った。この龍は、この方は、どう考えても『岩の魔神』、『岩王帝君』、『武神』etc...

 

とにかく絶対に僕なんかが背中に乗って良いような存在じゃない。そもそもなぜこの少女はそんなに無礼なことをしでかしているのだ。

 

出会ったときから、帰終ちゃんからは仙力も元素力すら感じなかった。おそらくはただ格好が痴女なだけの凡人さんなのだろう。それを凡人と呼ぶかは怪しいが。

 

なのにどうしてこんなに傍若無人な態度をとることが出来るのだ。なにが「安心して、この人は一見怖そうだけどただ不器用なだけだから。ねっ、モラクス?」やねん!!

 

これはダメだ、絶対乗れない。こんな威厳溢れる存在を、対極な存在である僕が踏みつけるわけには行かない。

そう思って走って帰ろうとしたが、次の瞬間「ふん、早く乗れ」という声が聞こえていつの間にかお背中に座っていたのだ。今、何をなさったのでしょうか....

 

帰離原へと空を飛行して帰っている途中、僕は恐れ多くてずっと縮こまっていた。

だから、隣で行われている「俺は勝手に一人で行くなと再三言っただろう、帰終!」「大丈夫よ、だって貴方が来てくれるでしょう?」とか言う新婚バカップルみたいな会話が聞こえてきても、口を開くことさえ出来なかった。

 

 

 

僕は、食卓の前で震えながら待っていた。きっと、岩王帝君を踏みつけてしまった罰を受けることになるんだ。

最近帰離原の町には塩の民など余所からの人も移り住み、ますます『塵の魔神』や『岩の魔神』の信者が増えている。

 

きっと、そうした信者たちによって、僕は不敬罪で断首刑やら絞首刑やら受けることになるんだ。

今からは最後の晩餐が運ばれてくるに違いない。僕はついに観念して、辞世の句を考え始めた。

 

だが、食卓のある大広間に現れたのは豪華な食事でも、最後の時ハイクを詠ませてくる処刑人でもなかった。

 

ニコニコした表情でやってくる先ほどのぶかぶかファッションの少女。それと、長袍をアレンジしたような、全体的に茶色な荘厳な服を着た麗人。まんま鐘離先生だ、雰囲気はゲームより強気で俺様系な気がする。

 

その次の瞬間、僕は悟った。悟ってしまったのだ。そして、訪れるであろう残酷な(運命)を受け入れることにした。

 

「あぁ留雲真君、私は不敬罪で直接処刑されることになります……あなたの汚点となることをお許し下さい………」

「…うーん、貴方が何かを勘違いしていることは分かったわ。ふふっ、面白い子ね」

 

お二人も同様に、食卓の椅子に座った。相変わらず帰終ちゃんはニコニコして、帝君は仏頂面をしている。

あれ、処刑されるとかじゃないんだ。…じゃあなんだろ、ここ最近町をうろついている不審者はお前だな、とか言われるんかな。

 

「さて、改めて。私は『塵の魔神』、別名『ハーゲントゥス』。こっちは気づいてそうだけど『岩の魔神』、別名『モラクス』。」

「ずっと気づいてくれないんだもの。私の方がこの辺りじゃ有名なのに、ちょっと自信なくしちゃった。まあ凡人として扱われるのも面白かったけどね!」

 

……えっ!?

 

………えっ!?

 

「申し訳ありません!神聖な気配が全くしなかったので勘違いしておりました!重なる不敬をお許し下さい帰終様!」

「だって気配は隠してたからね、気づかなくても仕方ないよ。でも、様呼びはちょっとヤだな。さっきみたいに帰終ちゃんって呼んで?」

 

確かにおかしいなとは思ったよ!『塩の魔神』の集落の跡地を眺めていたところとか、帝君とやたら距離が近かったところとか。あと痴女みたいな服装してるところとか。僕も痴女だけど。

出会ったときと変わらず、フランクな言葉遣いで話してくる。でも、偉大な統治者である『塵の魔神』をちゃん呼びなんて絶対ダメだ。

 

「ですが、ちゃん呼びなど不敬…」

「呼んで」

「はい……」

 

僕が抗議しようと口を開いてすぐに、たった3文字の言葉で僕を黙らせてきた。

さっきからずっとニコニコしてるけど、僕をのぞき込む瞳の奥が、ずっと奥まで続いているような気がして恐ろしくなったのだ。圧倒的な力を感じる。ここは素直に従おう。

 

すっかり抵抗する気が無くなった僕に対し、黙りきっていた帝君がようやく口を開く。

 

「俺たちは、お前にある『契約』を持ちかけにきたのだ」

「契約…ですか?」

 

はて、契約?いきなり過ぎて、まるで意味が分からんぞ!

確か仙人は帝君と契約することで、「三眼五顕仙人」として力を扱えるようになるって留雲真君が言ってた。それのことだろうか。

 

全ての仙人は元素エネルギーを操る能力を元来持っており、帝君と契約することでその制御が確たるものになる。

これを神の目を手に入れることと同じと考え、「三眼」という名称になったらしい。

 

えっ?ということは、ここで帝君と契約できれば、僕も元素力を扱えるかも知れないってこと?…ちょっと契約したくなってきたな。

 

「もう!説明も無しに本題から伝えたら困惑されるって前から言ってるじゃない!」

 

帰終様は、頬を膨らませながら帝君に怒る。擬音で表現するなら「ぷんぷん!」って感じで怒っている。かわいい。

今気づいたけど、この二人って長年連れ添ったカップルみたいな雰囲気なんだけど。クソッ、羨ましい。僕も甘雨ちゃんとこんな感じでイチャイチャしたい。

 

「えーっと、私たちは貴方が仙獣であるにも関わらず、町の人たちと上手くやれていることに注目したの。」

 

曰く、僕が以前から、帰離原の町で子供遊んだり商人と交流したりしてるいるのを見ていたらしい。

 

仙人は普通は尊ばれる存在。だが、価値観の違い故に対立も生じる。その点、僕が特にトラブルを起こすこともなく仲良く出来ていることが珍しく思われたそうだ。

 

「いえ!私はただ、子供たちに遊んでと言われて遊んでいただけで!それに、私なんかよりも、『契約』を遵守し人々を守るお二人のほうがよっぽど素晴らしいです!」

 

これは僕の本心だ。この帰離原がどれだけ前から存在したのかは知らないが、この魔神戦争の時代にこれほど治安が良くて格差も少ない町を作れることは相当な偉業である。

 

「そう卑下しないで。私たちは、『魔神』や『仙人』として民の上に立つことは出来るけど、貴方のように『人間』として隣に立つことは出来ないもの」

「その証拠に、私は「帰終様」って敬われることはあれど、「帰終ちゃん」なんて呼ばれたことはないわ」

 

帰終様はこちらを向いて可愛らしくウインクする。あざとかわいい。

いやでも、これ以上帰終ちゃんって呼んじゃったことイジらないで……

 

「それにどういうわけか、貴方は人間についての理解も深い。ほーんと、留雲の弟子とは思えないわ!あの子ってこの前、悪党に口説かれたときには暴力で解決しようとしたのよ!」

 

留雲真君そんなことやらかしたんだ。暴力て、あの人が絶対やりそうにもないことなんだけど。ゴリラかよ。

それにあの仙鳥を口説こうとしたやつがいたんだ。ウケる、絶対ケモナーじゃん。口説かれたのか…?俺以外の奴に…

 

でもそうか。確かに僕には人間の常識があるし、ある程度の仙縁だってある。

分かった、お二人は僕に両者の仲を取り持って欲しいってことかな。言うなれば通訳者ってところ?

 

「なるほど。私が人間と仙人の架け橋となれば、二者の距離もより縮めることが出来るかもってことでしょうか?」

 

「そうだ、だから俺たちはお前に、『契約』を交わしに来た。それにお前には、その温厚な見た目と性格とは裏腹に内には盤石な意思があるだろう」

 

帝君が目を見開いてこちらを覗いてくる。いや、買いかぶりすぎですよ。僕に強靱な意志なんてないですって!

なんて言おうと思ったけど、すんでの所で思いとどまった。真面目な雰囲気だ、ちょっと黙ります。

 

「お前とは、『璃月の無数の命を守り幸福にする契約』を交わす。これは、仙人と人間の中間であるお前にしか履行できないものだ」

「だが、契約すれば、お前は我々の眷属ということになる。この魔神戦争でも戦わなければならないことになるだろう。それでも…契約してくれるか?」

 

マジか……戦争に出ないといけなくなるかも知れないんだ。

 

契約の内容はすでにピンさんから言われた仙人の道とほぼ同じじゃん!って思ったのに、戦わないといけないとなってくると話は変わる。

もちろん僕は戦うのなんて嫌だ。痛いのはいやだし、傷つけるのも嫌。

 

……でも、せっかく仲良くなった町の人を危険にさらすのはもっと嫌だ。

ガキどもはうるさいし、商店のお姉さんは陽キャだし、薬屋のイケメンは裏切りそうな顔してるけど、皆大切な友達なんだ。

 

こんなでも、半分仙獣の身。「千の権力には千の責任が伴う」ならば、僕も人々を守るために戦わなければならない時なのかも知れない。

戦う力があるのに、怪我が怖いから、なんて理由で逃げ続けたら、それこそ師匠の汚点となってしまう。もはや育ての母と言えるべき人にそんな不甲斐ない想いはさせられない。

 

……あわよくば、『三眼五顕仙人』みたいに三つ目の目を開いて、元素力を操り無双したいと言う下心くんもある。

もう二度と、不審者に絡まれて自分より精神年齢が幼い少女に泣きつくなんてしたくないからな。恥ずか死するわ。

 

「わ、わかりました。お二方のご期待に添えるように、この甘雨、頑張ります!」

 

僕は椅子から立ち上がって二人の前で膝をつき、頭を垂れた。

二つの手が頭に触れ、こんな声が聞こえてくる。

 

「『契約』、完了だ」

 

 

 








(ふむ。先ほど触れたときに感じた力……なるほど、妙な奴に唾をつけられたな)




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