童貞社畜が社畜エロ羊となるまで   作:タイツ信者真君

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元社畜甘雨が巨大ヤマガラを保護するまで

削月築陽真君に占ってもらってから早数週間、またしても修行に行き詰まってしまった。自分の仙力なんてどうやったら掴めるんじゃい!誰か教えておくれ…

 

ちなみに、仙人の誰かに見られている可能性もないわけじゃないから、もうサボって動物たちと戯れたりはしていない。嘘ですたまに遊んでます。

 

ただ、遊びまくってたおかげでもう絶雲の間は僕のホームグラウンドと化した。今なら誰がどこにいようが、麒麟としての本能で分かるわ。

ここ最近は、迷い込んだ薬草取りの子供や女性たちを村までこっそり送り返すという善行を積んで、万が一見られていたときの為に「遊んでるわけじゃないですよぉ~」とアピールをしているから一安心。

 

しかし、僕は人助けをすることで気が大きくなって忘れていた。いや、むしろ調子に乗っていたと言うべきか。

僕自身が、自分でも驚くぐらいには人見知りであることを…

 

 

 

 

 

「はいよ!絶雲の唐辛子が20個と夕暮れの実が10個で500モラね、全部状態が良いからおまけしとくよ!」

「はっ、はひぃ!ありがとうございます!」

 

僕は今、帰離原の露天で、絶雲の間から採ってきた木の実を売っております。

威勢の良いお姉さんが店番をしており、女性免疫のない僕からしたら目を合わせることすら難しい。めちゃくちゃキョドってる。

 

しかも店内には、防犯のためか鋭利な刃物まである。それもそうだ。比較的平和とは言え、仮にも戦争中。食料を売ってる商店の警備なんて厳重なものに決まってる。

よく見ると店の奥には屈強な男が張り込んでるし。客が変な動きをしようものならすぐさま殺すべし、って態度だ。

 

ただでさえよそ者である僕は、先ほどから町中から好奇な視線で見られているのだ。

ここで僕の今の服装を見てみよう。ゲームでも甘雨ちゃんが着てたエロタイツと、万が一の身バレ防止用に、角を隠すための頭巾を深くかぶっている。どう見ても不審者です本当にありがとうございました。

 

あぁ…終わったかもしれん。このまま挙動不審な変質者として通報されて、一生お偉いさんの慰み者エンドかも知れん…

 

「くっ、せめてひと思いにやっちゃってください…」

「なに言ってんだい旅の人!ほら、早くモラ受け取りな!」

 

そう言って渡されたのは、不思議な模様が施された金色の硬貨。

僕がこの世界に来てから初めてのお金である。うれしい。

 

(へぇ~こんな感じだったんだぁ~。意外と重たいし、ゲームとは少し違う感じがするなぁ)

 

なんだか初めてバイト代を受け取ったときを思い出した。こういうのは、両親にプレゼントを買うのがセオリーだよね。

父親知らんし母親は行方不明だけど。じゃあ留雲真君に何か買って帰るか。何買えるかなぁ。

 

まじまじとモラを眺めながらそう考えていると、何故か得意げな様子の店主の姉ちゃんが話しかけてくる。

 

「嬢ちゃん、これを見るのは初めてかい?これは岩の魔神って神様が作った『モラ』ってものさ!これのおかげで、物の交換がしやすくなってねぇ」

 

曰く、この人の先祖は元々岩の魔神の民で、岩の魔神が塵の魔神と盟約を交わした結果ますます発展したこの帰離原に商売をしに来たらしい。

帰離原はこれらの神々と人間との『契約』で守られており、ここ周辺の地域では最も治安が良いんだとか。

 

ここで、まず大前提として『魔神』は人々の信仰によって力をつけるという法則がある。

 

この帰離原において人々は契約によって安全が保たれ、その安全性故に人口は増え続けている。対して魔神は人々の信仰が増えると更に力を増す。まさにWin-Winの関係。

こう考えると、この魔神戦争時代における『契約』って制度はチートじゃない?雪だるま式に信仰マシマシ、力もマシマシじゃん。

 

また、モラクスには戦士の神とか商売の神といった異名があり、生み出した『モラ』という貨幣によって、労働、商売、果ては未来まで、様々な人間の営みが保証された。

この姉ちゃん一族はそのことをめちゃくちゃ感謝しており、周囲の人にその素晴らしさを布教しているものの、周りは『塵の魔神』信者ばっかりで話すら聞いてくれないらしい。

 

まぁ、多分現代のオタクの「俺の推しのほうがかわいいから!」「いや、拙者の推しのほうがもっとイケてるでござる!」みたいなものだろう。

だから、初めて見るお客にはモラクスの素晴らしさを無理矢理説き伏せて、信者にしているそうだ。安心して下さい、僕は元々岩神好きです。

 

でもこの姉ちゃんオタク特有の超絶早口を披露し始めたわ。長くなりそうだからこっそり帰ろうかな…

そう思って抜け出そうと足を踏み出した矢先、僕の動向に気づいた姉ちゃんはすぐさま口を開く。

 

「ねぇ、さっきの木の実を見るに、アンタ絶雲の間に入ったね?」

「えっ、は、はい…もしかして、いけないことだったでしょうか?」

 

ギクッ!何故バレたし。…まあ確かに絶雲の間の植物はその辺りのものと比較すると高品質だったり巨大だったりする。だから気づかれたのかも。

この前なんて、通常の四倍くらい大きなスイートフラワーを見つけた。珍しかったから食べ終わった後にこっそり種を持ち帰ったけど、その種もこれまた四倍と巨大だった。栽培するのが今から楽しみである。

 

えっ、でももしかして、帰離原において絶雲の間に立ち入ったり植物を採ったりすることは重大な犯罪になる場合があったりするのか?

嘘やろ…終わったかもしれん。このまま無礼千万な不法侵入者として通報されて、地下牢監禁性奴●エンドかも知れん…

 

「悪いことじゃあないけど、絶雲の間には仙人がいてね。助けてくれる方もいりゃ、歌いながら木々を飛び回る変な方もいるのさ。気をつけておきな!」

 

 

 

 

 

 

(うっ、まさか僕の奇行がまた見られてたなんて…)

 

逃げるように町を後にした僕は、顔を耳まで真っ赤にしながら絶雲の間への道を引き返していた。

いや、だって仕方ないじゃん。周りに誰もいないとさ、多少は開放的な気分になるものじゃん。

 

無人島に流れ着いたらかめは●波の練習をしたくなったり、全裸で走り回ったりするようなあれだよ。だから僕は悪くねぇ!

でもなぁ…ものすごく恥ずかしいなぁ…

 

「あはは、何この鳥~」

「枝で突っついてみようぜ!」

「ひぇぇ!助けてくださぁい!」

 

ま、まあ気を取り直して、今日も修行のメニューを考えよう。この前は狂風のコア?とかいう元素生物くんと一緒にかけっこして負けたから、そのリベンジでもしにいこうかな。

あのときは僕もかなりの速さで駆け回ったんだけど、流石に超高濃度の風元素生命には勝てなかったよ…

 

「い、痛い!止めて下さい!」

「ほら、逃げんなよ!」

 

でも、負けて終わりの僕ではない。風の抵抗が少ない走りを研究し、着々とリベンジの準備を進めていたのだ。

そしてようやく、完璧なナ●ト走りを身につけた。これで絶対に負けないってばよ。

 

ちなみにこの走り方、世代によって呼び方に差があるらしいね。僕はナル●走りやエ●リア走りだったけど、若い子達は禰豆●走りって言うらしい。ネットニュースで見て、ジェネレーションギャップに絶望したね。

 

「…あの、すみません。貴方たちは先ほどから何を…?」

「よそ者のねーちゃん、見て分かんないの?変なヤマガラで遊んでるんだよ!」

 

僕の思考の裏側で行われている寸劇を無視することが出来ずに、ついつい声を掛ける。

見ると、数人の子供たちが、確かに普通の数倍は大きい奇妙なヤマガラを虐めていた。木の棒で突っつかれて痛そう(適当)。

 

いや待って…これは多分…仙獣じゃない?まだ未熟なためか分からないが、このヤマガラ自身からはそれほど仙力を感じない。しかし、もう一つ、これまで僕が会った仙人たちと同じくらいのそれが周辺に漂っている。巧妙に気配を消したものだったから気づかなかった。

 

大方仙獣の子供とかで、親とはぐれてしまったのだろう。仙獣なんて、どう転んでも虐めていいものではない。というか、万が一このクソデカヤマガラの親に虐めていたのがバレようものなら、死など生ぬるいほどの苦痛が待っているに違いない。早急に止めさせねば。

 

「えっと、そんな可哀想なことをするものじゃありません。良い子たちでしょう?」

「なんだい。なんだい。かまうものかい!」

 

くっそ、このガキども聞こうともしねぇ!いじめは良くないって学校で習うだろ!倫理観どうなってんだ。

あっ、でも学校とか無いのか。それなら仕方ないな。

 

僕が勝手に納得していると、子供たちはまた、仰向けにひっくり返して足で蹴ったり上から砂を被せたり、果ては石を投げつけたりし始めた。

いやいやいや、エグいエグい!いじめの内容に遠慮がない!いくら何でも価値観が暴力的すぎでしょ。

 

流石に可哀想だ、なんとかして助けてあげたい。どうにか穏便に解決する方法ないかな。うーん…

 

「あっ、じゃあ、私にその鳥さんを売っていただけませんか?ここにちょうど500モラがあります」

 

今の僕が出来る最善の解決策は、お金でこのクソデカヤマガラを買うことだと判断した。

というか、それ以外の解決策がない。僕の所持品は頭巾とエロタイツと防犯用の鈴くらい。だから買収する他はないのだ。

 

「うんうん、ねーちゃんがモラをくれるなら売ってやってもいいよ!」

 

そう言って子供たちは手を差し出してくる。想定通りの反応だ。僕はその手にモラ袋を乗せて、虐められてた仙獣をもらい受けた。

うっ…僕の初給料が…後で留雲真君にお土産買って帰る予定だったのに。まあ、これでこの子が助かったのならいいか。

 

僕からモラを受け取った子供たちは、予想外の収入が手に入ったと嬉しそうにしている。なんて純粋な笑顔をしているんだ。畜生、それは僕の初めてなんだぞ…大事に使いやがれ。

 

「ねーちゃんありがとう!また買っておくれよ!」

 

 

 

 

 

 

「ありがとうござます!ヤマガラと間違えられましたが、おかげで助かりました。私は『壺の精霊』、名前は…名前、何でしたっけ?」

「私に聞かれましても…」

 

糸目で、鮮やかな青色の毛並みをもつヤマガラは、呆けたトーンで僕に話しかける。

さっきから集中してこの子の仙力を感じ取ろうとしてるけど、やっぱり微量ながらもあるわ。それ以上に周りの仙力のほうが大きいけど。

 

しかし大丈夫かなこの子。もしかしたら最強属性の糸目キャラのくせしてアホの子属性も持ち合わせてるタイプか。

あんまり関係ないけど、基本的に鳥のケモっ娘ってアホの子にされがちじゃない?アニメ業界は鳥の子に恨みでもあるんか?

 

でも、ちょっとだけ親近感感じちゃうわ。僕も前世では「三日経ったら忘れる鳥頭」として有名だったからな。おかげで学生時代の暗記系の科目のテストは散々だった。かなしい。

 

「まあ…とりあえず「マル」と読んで下さい。お礼に、後で私の住処に案内させてくださいね」

「分かりました、マルさん。どうしてあんなことになっていたのですか?」

 

仮にも仙獣なのに、どうしたって人間の子供なんかに虐められたりしたんだ。正直見てられないくらい情けない姿だったぞ。

もっと威厳ある姿をみせて、人間を屈服させないと。僕みたいに。

 

「…実は、私には仙人の友人がいるのですが、その洞天の雑務をしている途中にこの現実へと落ちてしまったのです。すごく心細くて…なんて、凡人の方に言っても分からないですよね…」

 

なんじゃこの子、僕が仙獣であることに気がついてなかったのか?

あっ、でも、僕もまだ自分の仙力が掴めてないから感じ取られなかったのかも。しかたないなぁ。

 

僕は頭の頭巾を外して、仙獣の証である角を晒す。黒のベースに赤のラインが入っていて、ちょっとだけ禍々しい気もするけど自慢の角だ。

最近は寝る前に留雲真君が撫でてくれるので、毎日安眠できております。なでなで気持ちよすぎだろ!

 

「ええと、私は半獣で、今の話も大体分かります…」

 

要するに、友達とはぐれちゃって迷子になったんやろ。僕も今でこそ留雲真君って保護者がいるから安心して暮らしているけど、もしいなかったらと思うとぞっとする。

だから、この子の気持ちはよく分かるのだ。せめてこの巨大ヤマガラちゃんが、その友達のところに帰れるまでは面倒をみてあげよう。ついでに体毛をモフろう、絶対気持ちいい。

 

「えぇ!凄いです!仙人なのに凡人と常識的に会話出来るなんて、それこそ『ピン』や『帰終様』以外に聞いたことがありません!あっ、痛っ、痛たた……」

「どっ、どうしました!?どこか痛むんですか?ちょっと見せて下さい…」

 

突然マルがうずくまる。声もくぐもってて体調が悪そうだ。

そこを見ると、鮮やかな体毛が少一部分むしり取られていて、石で引っかかれたような傷跡が残されていた。流石に臓器まではいかないものの、結構な深さでえぐれている。少し遅れて、辺りに濃厚な血の匂いが充満し始めた。

 

「…酷い怪我。すぐ手当しないと」

 

うっわ、あのガキども怖すぎだろ。僕が子供の頃はそこまで危険思想持ってなかったぞ。今度会ったら絶対説教するわ、許せん。

 

僕は傷跡の周りの毛を撫でながら考える。ど、どうやって手当てするべきか…

まずは止血することが最優先だ。血が流れている以上、肉食の動物が匂いを嗅ぎつけて寄ってくる危険性がある。

 

あっ、確か止血の効果がある薬草が、この辺りに生えていた気がする。以前僕が転がり落ちちゃって怪我をしたとき、理水畳山真君がそれを使って手当してくれたんだ。

 

「…ちょっと待ってて下さいね。今から急いで薬草を摘んでくるので、動物に見つからないようその木の陰に隠れててください…って、あれ?」

 

ちょっと考え事をしつつ目を離した隙に、結構エグかった傷は八割方塞ぎきっている。なんで?

あれ、仙獣って自然治癒能力が高かったりするのか?それともこの子の種族が故の特性?

 

そう思っていたのもつかの間、僕は体の内側から力があふれ出てくるのを感じたと同時に、急に辺りが淡い青色に輝き始めて僕とマルを包み込み始めた。

 

ああ……あああああ~~っ!目がぁぁ~!目がぁぁぁぁあっ!!

 

 

 

 

 




甘雨(偽)は めのまえが まっさおに なった!▼
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