童貞社畜が社畜エロ羊となるまで   作:タイツ信者真君

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歌塵浪市真君の口調分からなすぎ問題


元社畜甘雨が老婆仙人(大嘘)に説かれるまで

謎の淡青色な光に包まれた後、マルは何故か全回復していた。それどころか、普段よりも体の調子が良いって言ってる。

多分…いや、先ほどの光は確実に僕から発せられたものだ。光と同時に、体の中から仙力がさらさらと流れ出る感覚があった。今のが…僕の仙術、ってコト!?

 

少しだけ「あれ、何かやっちゃいました?」的な台詞を吐こうかなと思ったんだけど、それ以上に動揺が大きい。

あれ以後、自分の周りの仙力に敏感になっている気がする。仙力の核心に百歩ほど近づいた感覚だ。

 

これまでは意識しないと周りの力の流れに気がつかなかったのに、まるで呼吸するかのように自然に行われている。

まさに圧倒的全能感。常時マ●オのスター状態だ。何だって出来そう。

 

「えぇっと、マルさんの友人の仙力は、この岩の隙間から感じますね」

 

ほら、赤外線の放射強度を感知するサーモグラフィーってあるじゃん。暗闇の中で蓄光塗料が光ってる感覚でもいい。

そんな感じで、力の出所が分かるのだ。ゲームで言うところの『元素視覚』の仙力版みたいな。

 

今はマルの周囲に残っていた友人さんの仙力を辿って、元の場所へと送り返している最中だ。

というか、削月築陽真君のアドバイス通り、自らの仙力の領解が他の仙人のそれに触れることだとしたら、僕が仙力を掴めるようになった契機は明らかにマルの友人によるものだ。さっきマルの毛に触れてたときに、いつの間にかその友人さんのに触れてたっぽい。

 

なのでマルを送り届けるついでに、少しぐらいのお礼を言いたい。コミュ障にはちょい厳しいかもしれんけど。

 

しかし、仙力の出所である岩の間を覗いても、そこにあるのは小さく奇妙な柄をした緑色の壺だけだった。あれ~おかしい。絶対にここだと思ったのに。

 

「…すみません、間違えちゃったみたいです。こんな変な壺があるだけなんて」

「いえ、確かにここで合ってますよ。これは『外景』の力で作られた洞天で、元々の私の住処もここです。おそらく『ピン』もここで待っていることでしょう」

 

ファッ!この壺が住処だったん?あっ、でも、璃月の魔神任務では『洗塵の鈴』を借りるために壺の中に入ったような気がする。そのときのおばあちゃんの名前は…『ピンばあや』?だっけ。

 

じゃあマルの友人ってのはあのおばあちゃんか。確かに最後で仙人だって明かされてたしな。仙人の中でも唯一ゲーム内で優しかった人だったような。特に璃月防衛戦でのばあやの衝撃波はめちゃくちゃテンション上がったわ。

 

あれっ、僕転生してもう数ヶ月は経ってるのに、良くゲームの内容なんて覚えてるな。ゲームだけじゃない。リアルでの知り合いとか趣味のことも覚えてるわ。なんでだろ?

……まあ詳しく考えたところで分からん。記憶力は元々そんなに良くなかったから、転生したときに何かあったのかな?

 

「それでは参りましょうか。私は先に壺へ入りますね」

「はっ、はい!って、ええぇぇ!!あぁ…吸い込まれていった…」

 

僕が考えを巡らせていると、マルはすでに壺の中にダイブしたようだ。

まるでランプに魔神が吸い込まれていくみたいになってて草。体ゆがんでたんだけど、痛くはないのかな?

 

というかそもそも、この壺の中に入ること自体質量保存の法則をガン無視している。

でも、このテイワットには前世の法則が成り立たないことのほうが多いから別に大したことないか。中に仙人がいるってなら、特段危険ってこともないでしょ。

 

よ、よし!男は度胸!女も度胸!オカマキャラは大体最強!ゆくぞ、のりこめー^^

 

 

 

 

 

 

 

洞天への長いワープが終わるとそこは琴の音が鳴り響く仙境であった。そしてその音は、まるで我が子を見守る親の気持ちかのような、美しくも優しいものだった。

 

僕も以前、学生時代の音楽鑑賞か何かで生演奏を聴いたことがある。しかし、ここの仙境で奏でられている音楽とは、比べることさえおこがましい。

全く違うのだ。旋律が、込められた想いが、そして、それを発する魂の重みが。

 

ここの音楽の形態は、琴という単純な音色を発する楽器による独奏。だが、例え現代で、どんな人数、どんな楽器を揃えたとしても表現しきれない感情が、そこには確かに存在した。

 

「あっ、ようやく来ましたね。向こうでピンが待ってますよ。早く行きましょう」

 

僕はこれまで、音楽なんてただ聞き流す程度のものだと考えていた。初めての経験だ。意識を引き込まれるほど音楽を謹聴したのは。

マルに手を引かれるまで、自我を持ち直すことさえ出来なかった。

 

てか、マルはなんでこの音色に耳を傾けてないんだ。一瞬でも聞き逃すことが惜しいようなものだろうが。

…と、思っても口には出さない。もし口を開いて、自分の声がこの絶唱を遮ることになったとしたらそれこそ呪わしい。

 

 

 

半ば引きずられる形で仙境の深部にたどり着いたとき、僕たちを待ち構えていた仙人は確かに人間の姿をしていた。

だが、その容姿は僕が想像していた『ピンばあや』という名の老婆ではなく、絶世の美女という言葉で表しても決して嘘ではないお淑やかな女性。

 

青緑色の髪を輪状にして簪でまとめており、髪と同じ色が配色された中国の伝統衣装である水袖に似た服をお召しになっている。

非常に整った顔立ちと、青空のような薄群青の瞳。肩からは素肌が見えており、太ももから下は布地がなく御御足が丸見えだ。おまけに薄い生地なのか、胸がかなり強調されている。だが、それには一切の下品さは感じられない。

 

また、音楽初心者の僕でも、まるで流れるように琴を弾く仕草から洗練された優美なものだと分かる。それに、今まで会ってきたどんな人よりも優雅で、柔らかさと優しさが感じられる、そんな印象。

 

…いや、超絶美人なんですけど!誰だよおばあちゃんだなんて言ってたやつ!

もしこんな人が現代にいたら、道行く人は男女問わず振り向くし芸能事務所のスカウトが止まらないレベルだよ!

 

僕たちが目の前に着くと、彼女は琴を弾く手を止めて微笑みながら一瞥する。ちょ、やめてくださいよ…僕童貞だから笑顔なんて見せられたらすぐ惚れちゃいます…

そうしてゆっくりと、鈴の鳴るような綺麗な声色で言葉を紡いだ。

 

「はじめまして、我は『歌塵浪市真君』。仙獣の子、友人を助けてくれてありがとう。急にこの洞天からいなくなってしまってな」

「い、いえっ!私は甘雨といいます!お気になさらないでください!」

 

うっわ歌塵浪市真君めっちゃ綺麗な声!!中国ドラマとかに出てくるすっごく高貴な女性って感じがする。どうしようこの仙人様の風格に威圧されて小学生レベルの感想しか出てこない。

 

あかん、手汗がびっしょり出てきた。も、もちつけ…プレゼントした清心を嬉しそうに食べてる留雲真君を思い出せ………

 

僕の頭の中には、「別に妾には食事など必要ない」だとか、「渡したところで妾が修行を軽くすることはないぞ」などと言いながら、こっそり清心を隠して夜中にちびちび味わいながら啄む留雲真君の姿が浮かんできた。かわいいね。あっ、ちょっとだけ落ち着いたかも。

 

これまで僕が遭遇した仙人は総じて荘厳な動物の姿をしていた。それに、どの仙人も僕に害をなすことはないと確信があった。

言うなれば、絶対に噛んでこない虎が、僕を甘やかしてくれていたようなものである。

 

でも今回は初めて人型の、それもとびっきりの美女とのご対面だ。感覚的には、超絶美人芸能アイドルか敏腕美女上司とサシで会話しているのと同じ。

他の仙人を軽んじているわけではないけど、姿が動物の仙人と人のでは緊張の度合いが格段に違う。

 

えっと、こんなときには、何を言えば良いんだっけ?会話ネタの引き出しが少なすぎる僕には荷が重いぞ……

と、取りあえず褒めよう!女性は褒めるべしって昔読んだ本にあったぞ。褒める相手いなかったから役に立たなかったやつだけど。

 

「え、えっと、凄く綺麗な音色ですね!真君の感情が籠もっている気がしました!」

「ふふっ、ありがとう。甘雨は我と感じ方が似通ってるやも知れぬ」

 

僕は、演奏を聴いて感じたことを素直に話した。元陰キャ(今もだけど)故に何度もどもりながらの言葉となってしまったが、歌塵浪市真君は所々で頷きつつ、僕の賞賛を表情をほころばせながら聞いてくれた。

 

曰く、音楽とは魂が発する感情ありきの声だと長年考えており、そこに気づいてくれて嬉しいと。

 

マルは音楽にはそこまで興味がないし、他の仙人たちも同じ。唯一音楽に理解のある友人とは意見の衝突が起きていて、自分の見解には同意してくれる人がいなかったと。

 

は?こんな美人の意見に耳を貸さないなんて、あーそれは他の仙人たちが悪いわ。

僕だったらそんな思いさせないのになぁ。僕で良ければまた聞かせてください。との旨を途切れ途切れにつたえると、話終わった頃には喜色満面という雰囲気。

 

歌塵浪市真君のそんな表情を見て、僕も最初ほどの緊張はなくなっていった。

職場で高値の花だと思ってた美人上司が、自分の言葉で表情をコロコロ変えながら喜んでくれている感覚。所謂ギャップ萌えってやつを感じる。

 

「音楽についてこれほど語り合えたのは初めてだ。甘雨、我のことは『ピン』と呼ぶが良い」

「はっ、はいっ、わかりましたピンさん!」

 

日頃からギャルゲーで鍛えていた成果が出たのかも知れない。僕は特に地雷を踏み抜くことなくファーストコンタクトを見事に成功した。

なんかめっちゃニコニコしながらこっちを見てくれてる。えっ、好きになっちゃいそう…

 

「ピン、甘雨さんはすごいんですよ。私よりも若いのにもう仙術を使えるようになって」

「ふむ…仙術で助けてもらったようだな。礼は言ったか?マル、いや、『銷虹霽雨真君』?」

 

声高に手放しで喜ぶマルを諫めるピンさん。あっ、やっぱりマルも仙人だった。「虹を消し雨を散らす完全なる主」って、意味壮大すぎだろ。絶対名前負けしてるやろ。

それに僕より年上だったんだ。感覚的に年齢はそこまで離れていないと思ってたから少し意外だ。

 

仙術…あっ、そうだ。多分仙術が使えるようになったきっかけはピンさんの仙力に触れたことなんだろうし、少しぐらいお礼を言っておかないと。美人すぎて忘れてたけど、そのためにここへ来たんだし。

 

「ピンさん、貴方のおかげで私も仙術が使えるようになりました。本当にありがとうございます」

「さあ、我の助力など塵ほどにも満たぬ。全て汝に『仙縁』があったに過ぎない」

 

はて?…『仙縁』?

 

文字通り考えると、…仙人との縁?

確かに僕は今まで留雲借風真君、理水畳山真君、削月築陽真君の三人+目の前にいる二人と出会ってるけど、僕にそんなのある?

 

「分からない、という顔だな。汝は生来、山水で動物や植物を大切にし、必要以上に互いに干犯することはしなかった。仙人の道もまた然り。故に、仙人たちはお前に手を貸す、それだけだ」

 

仙人の道とは、世を救い、人々を守ること。そしてここ一帯の仙人と呼ばれるものたちは人間だけでなく、世の万物を慈しむ。

万物の成長には理があり、その理に従えば豊かに成長して、互いに侵害することもない……らしい。どうやら、それを真に実行できるのは少ないのだとか。

 

これを、ピンさんは本に書いてある道理のように淡々と述べた。

うーん…えっ、僕そんな大層なことしてなくない?

 

僕からすると、麒麟の体はお肉を食べなくても健康でいられるから食べてないだけだし、植物も必要以上採っちゃうと結局捨てないといけないからもったいないと思ってるだけ。

 

ましてや、あんな可愛い鳥や狐たちを肉にするなんてとんでもない。今でも偶に一緒に遊んだりモフったりするんやぞ。僕の癒やしを自ら殺しちゃうわけがない。ゲームではなんとなくで肉にしちゃって申し訳なく思ってます。

 

この程度のことをするだけで仙人に気に入られるってなら、もうちょっと仙人の弟子がいても不思議じゃないんだけどなぁ。

まぁ他の仙人たちも新たに弟子をとろうとしないから、意外と出来ないことなのかもな。僕にとっては現代日本の価値観だから当たり前のことではあるんだけど。

 

 

 

 

 

 

去り際、ピンさんは僕の手を握って、再び少しばかりの仙力を流してくれた。…ア゛ァ゛ァ゛!!!顔が近い!めっちゃ良い匂いする!ほんのり椿っぽい匂いする!

 

「これから汝は、幾何もの凄惨たる闘争に巻き込まれるだろう。そして、厖大な人命が散りゆく刻を目にする。」

「故に、我の仙力の一端を伝授する。愛憐の情を失わない限り、我らは何時でも汝に助勢しよう」

 

あっ、あれっ?何か凄い力が流れ込んでくる…急に触れられたから限界化して話聞いてなかった。

えっ今なんて仰った?めちゃくちゃ申し訳なさそうな表情しながら、僕の存在を確かめるように手を結んでくる。

 

まるで、戦争に出兵する息子との別れを母親が惜しむかのような雰囲気だ。ガチでなんて言われたの???

 

出来れば聞き直したいんだけど、今の空気的に聞きづらいな……いやでも、めっちゃ大事なことだったら不味いしもう一度聞かせてもらおう。

 

「す、すみません。もう一度…」

「さあ、お行きなさい。そろそろあの心配性な留雲が煩悶とする頃だ」

「は、はいぃ……」

 

やべっ、つい反射で返事しちゃった!しかも今僕が立ってる足場が光り出してる!!

あっダメだこれ。多分ワープするやt……

 

 

 

「…汝の心事は、仙人からしても尊いもの。何時の日か、我らでさえ至ることの出来ない境地へと導かれるやも知れぬ」

 

 

 

 









ちょっとした後書き

歌塵浪市真君時代はピンばあやとはまた違った口調や性格をしてるんだろうなぁ~と思って、妄想で書きました。
でも妄想を文章にするのってムズカシムズカシネ…
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