童貞社畜が社畜エロ羊となるまで   作:タイツ信者真君

9 / 22
ちょっと魔神任務序章のネタバレ注意


元社畜甘雨が風の精霊に見透かされるまで

鳴海栖霞真君の来訪から大体数ヶ月、弓の練習も段々板に付いてきた。

 

とは言え、仙人の中には誰も弓使いなんていなかったし、僕自身に弓道の経験なんてあったもんじゃないから、絶雲の間や碧水の原にやってくる狩人を観察して真似しているだけだ。

誰かに師事しているわけではないから完全に独学である。ガチでムズい。

 

留雲真君は暇なときに仙術で的を用意してくれるが、今は全然当たらない。本当にムズい。

 

もちろん町に行って誰かに弓を習うことも考えた。だが、一旦僕の『名将の絶弓』を見てみよう。

綺麗な紫色の紐、和風な黄土色の装飾や紋章、おまけに矢が自動で補充される謎機能付き。

 

こんなの誰が見たって貴重なお宝だって分かるやつ。町なんて歩いてたら、「嬢ちゃん、ちょっとあっちでお話しようや」なんてチンピラに声かけられて、そのまま暴力で弓を強奪、終いにはお話(意味深)エンドになっちゃう。

 

だから、弓の練習をするときはなるべく人に見つからないようなところでやっている。でも、心から信頼できる人が出来たり、僕がチンピラに絡まれても反撃出来るぐらい強くなったら持ち歩いてもいいかなと思ってもいる。

 

その点、留雲真君の『縹笛からくり』は気が楽でいいね。実質フルートだから隠せるし、見た目もそこまで高級そうじゃないから凡人は誰も欲しがらない。僕からしたら命の次ぐらいに大事な宝物だけどね。

 

それに、今は『魔神戦争』なんて物騒な時代。この一帯には妖魔が蔓延り、人々は日々を生きるのに精一杯だ。だから娯楽なんて二の次、僕の下手くそな演奏なんて聴こうともしない。

 

あっ、でもこの前、やることなくて暇そうな兄ちゃんは立ち止まって聞いてくれてたな。橋の上で片方眼帯、髪や髭はボサボサ、昼間なのに酒っぽいの飲んでて明らかな関わっちゃいけないやつ。

 

それでも演奏を最後まで聴いてくれたもんだから、僕は嬉しくてついついおまけにフルパワーで仙術を使っちゃったね。めっちゃ元気になってて草。眼帯も投げ捨てて喜んどる。

まるで憑きものが堕ちたかのように目を輝かせて僕の手を握り、激しく上下に振ってきた。あまりに勢いがついていたが為に、僕の頭巾がずれ落ちて危うく角が見られるところだった。全力で逃げたから、多分バレてない…はず。

 

 

 

そんな訳で、僕は仙人としての修行と、人間社会の闊歩を振り子のように繰り返していた。

 

 

今日は良い感じの瑠璃袋と清心、そして夕暮れの実と絶雲の唐辛子が採れた。だからそれを売るために、薬屋のイケメン兄ちゃんと、いつもの商店の姉ちゃんのところへ持っていっている。

 

あと、何故だか分からないけど、ある日を境に町の人がめっちゃ優しくなったんだよね。僕もようやく町の一員って認められたのかな。……いや、甘雨ちゃんのビジュアルが良すぎたせいで、多少怪しくても許してやりたくなってるのかな。そうに違いない。

 

 

「すみません、今日は夕暮れの実と絶雲の唐辛子を売りに来ました。今大丈夫ですか?」

「あっ、……いや、甘雨ちゃんじゃないか!いいよいいよ、おまけして1,000モラだ!」

「ん?でもこの前、これと同じものは500モラでしたよ?」

「あー…そうだね…今、夕暮れの実は高額買い取りしてるんだ!」

「なぁーんだ、そうだったんですね!」

 

 

「姉ちゃん仙人様だってほんとー?」

「角さわらせてー」

「ほらほら、私は仙人様なんかじゃないですよ?それに角なんてないです。ただの薬草取りの美少女です」

 

 

「頼まれてた朝摘みの清心と瑠璃袋、持ってきましたよ、先生」

「いつもありがとね甘雨クン。次は絶雲の間の奥深く、()()()()()()()()秘境に生えていると言われる『ほげほげのタケノコ』を採ってきてくれないか?患者のための薬に必要なんだ」

「そんな名前のタケノコが必要な薬なんて珍しいですね…でも分かりました!薬が必要な患者さんがいるなら、私採ってきますね!」

 

 

うん、俗世に馴染んでる馴染んでる!前世ではもはや家族だけ、今世でもこれまで仙人たちとしか話したことないから分からんけど、めちゃくちゃ会話出来てる!

 

いやー、これは完璧ですわ。大人からは甥っ子に接するみたいに物くれるし、子供からは人気すぎてかくれんぼ(僕考案)とか鬼ごっこ(僕考案)とかせがまれてる。

 

魔神戦争が終結したら、町の中でそこそこの職に就いてのんびり過ごすのも良いかもしれない。今の僕なら、ある程度は友達も出来るぐらい前向きな性格に変わってきているし。

…でも、なんで町の人皆僕の格好には触れないんやろ。いや、触れてほしい訳じゃないけど、こんなのただの痴女なのによく馴染めてるよね。

 

……まあ、そんなこと考える必要ないか!僕は元日本人だけど、元のモチーフは中国だ。価値観とか、色々違うんだろう。多分、知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

水辺を吹き抜ける爽やかな朝風が、僕の髪を撫でるのを感じる。

 

「さっ、いよいよ待ちに待った石門だ!」

 

乗り合いの西洋風馬車に揺られながら、目的地である石門の関所がどんどんと近づく。同時に黒色のクソデカ積乱雲が漂うドラスパも接近してきた。こっちは絶対行きたくないわ。

 

お隣に座っている顔の彫りが深い男女は、「今年の税は高い」とか、「正直帰離原に引っ越したいよ」だとか、故郷に帰るというのに心底嫌そうだ。おい、言葉を慎めよ…僕は故郷(日本)なんて絶対に帰れないんやぞ。

 

 

この馬車の本来の目的地は石門の向こう側、ゲームでは『モンド』があるところかな。そっちの国では現在、雪や寒波が厳しく作物が収穫出来ないことがあったり、悪い『竜巻の魔神』がやりたい放題したりしているらしい。

 

ぶっちゃけ意外だ。ゲームでは、飢餓やら魔神の支配やら、そんな物騒な単語はほぼ出てこなかったからだ。僕がほぼ魔神任務しかやってない初心者だったから知らないだけって理由もあり得るけど。

 

ゲームにおけるモンドは序章で訪れることになる城塞国家。モデルは中世ヨーロッパだ。

国とは言え『自由』が掲げられており、王や貴族が統治しているわけではなく、『西風騎士団』という自治組織が治安を取り締まるだけ、まさに『自由の都』。

 

人々は自分の好きなように酒を飲み、食を楽しみ、友と語らい、恋をしていた。うーむ、陽キャかな?陽キャだったわ。

 

また、モンドは『風の都』とも呼ばれ、綺麗な野山をそよ風が吹いている様子はゲームとは思えないほど素晴らしく感動した。

山々と平原の合間から蒲公英の息吹を引き連れた自由の風が吹き、シードル湖を撫でる…あっ、ダメだ。景色の美麗さを言葉で表現しようとしたけど、悲しいことに僕の語彙力が追いつかなかったわ。

 

まあそれほどグラフィックもそこで生きる人間も僕にとっては眩しいものだった。だから今みたいに、支配とか悪天候が重なっている国はもはや別物なのではと思う。

 

 

 

…でも、今回の僕にとっての目的地はここ、石門である。なぜならば、ここは僕が『原神』というゲームで最も好きな場所だからだ。

 

ここをゲーム本編で初めて通ったとき、強く印象に残ったのは、木と一体化した望舒旅館、人々が歩むであろう荻花洲の石橋、そして、広大な璃月の大地。

 

個人的には、辺りには葦が生え、荻が茂ったもの静かな湿原も好きだった。BGMも相まって、ひっそりと寂寥感もあったのだ。思わず高揚して、通話しながら一緒にプレイしている唯一の友達に告げた、「原神、マジすごいな」と。

 

モンドから璃月に移動するとき、地形や建築概念、さらには椅子や机までもが璃月風に変わっていったのを覚えている。

このゲームは本気だ。心からそう思えた。その時の衝撃が忘れられず、僕は仮に魔神任務を進めて、どんな国、どんな人々と出会っても、『璃月』という国が一番のお気に入りで変わらなかったことだろう。結局進めきれなかったけど。

 

 

僕は御者さんにお礼を言い、関所で兵士達が乗客と積み荷を検閲し始める前にこっそりと馬車を降りた。

 

 

 

 

 

炎昼故に汗が吹き出す僕の額を、湿気を含んだジメジメした夏風が襲った。

 

この小旅行を考えた理由は、僕はあのとき覚えた感動の一端を、少しでも良いから探したいと思ったからだ。しかし、

 

「流石に望舒旅館はない…よね。石橋も川もなくて地続きだ…あれっ?ゲームじゃもっと水辺が多かった気がするんだけど、辺りは田畑でいっぱい…」

 

先ほどから周辺を散策しているが、ゲームの頃の面影が感じられない。葦や荻が作り出す寂寥感なんて一切感じられず、農業が盛んな開拓村という印象を受けた。手芸品や旅人向けの携帯食料を売る店の客引きが少しうるさい路村といった感じだ。

 

いや、食糧難な時代だから開拓して土地を田畑にするのは当たり前と言えばそうなんだけど、もうちょっと水辺に葦が生えてるとか、さざめく荻花とか歌うカエルだとか、そんなある種の侘しげな、ゲームとそっくりの風景を期待している自分がいた。

 

今のこの場所は、おそらく帰離原から開墾に来た人々が賑わう、新しい町と言っても過言ではないような発展具合。

 

見たことない景色、嗅いだことのない花々の香り、知らない人々の笑顔。皆が将来に希望を持ち、戦争中だなんて雰囲気が少しも感じられない。「思い出」を辿りに来た僕にはあまりにも眩しい、眩しすぎる。

 

『原神』で最も好きな場所に来たというのに、僕のテンションはあまり上がらなかった。

むしろ……

 

 

僕があまりに無気力そうな顔でとぼとぼ歩いているのに見かねたのか、水田で農作業をしているおばあさんがラズベリーを一粒分けてくれた。太陽の光をいっぱいに浴びて育ったのか、甘さと酸味のバランスが絶妙でおいしい。

 

これはとても良いことなんだ。古い言葉に、『衣食足りて礼節を知る』という言葉がある。

人に食料を分け与えることができると言うことは、おばあさんが特別なだけかも知れないけど、食べるものに余裕があり、心にも他者への思いやりの情が湧いているということ。

 

ピンさんも以前、「人間を含めた全ての生き物が平和に暮らせるようにすること」が『仙人』としての使命だと言っていた。だから、荻花洲でこんなにも優しい人々が育っていることは、『仙人』として望ましいことなんだ。

 

それでも、弱い『僕』としては、ゲームで友人と見た景色を期待してしまっていた。昔の記憶に捕らわれていた僕は、なんて自分勝手なんだろう。

 

 

 

 

 

気温が段々と下がり始めた頃、冷たい夕風が僕の肌を無遠慮に刺した。

 

町の雑踏と人々の談笑の声に耐えきることが出来ず、静寂を求めて町の外れの方へ逃げ出した。周囲には、辺り一面に美しい『瑠璃百合』が咲き誇っている。無論、これも僕は知らない景色だ。

 

もし見たことがあったなら、僕は友人に「綺麗な百合が咲いてる!ここにキマシタワー立てようぜ!」なんて言ってるだろうから間違いない。

そしてショタコンの友人は、「個人的な意見を求められるなら、俺はショタを食べたい」などと脈絡も意味も不明なことを言いだして笑い合うんだ。

 

辺りには、野盗も邪悪な妖魔の気配もしない。少しだけ目を閉じる……

 

「うわぁ~モンド城綺麗なグラフィックしてんねぇ~」

「ウェンティ!ウェンティ!風ショタ!風ショタぁぁああああああああん!クンカクンカしたいお!スーハースーハー!良い匂いだなぁ...くんくん(以下略」

「きしょ」

 

「璃月きちゃ!なあここの雰囲気ガチで良くない?石門から荻花洲までの道のりの静けさとBGM超絶マッチしとるやん!」

「お前ぼっちだから気に入りそうだもんな。ほら、早く像さわりにいけや」

「なんでそんなひどいこというの?」

 

「やっぱり璃月港を眺めたときは壮観だな。何度見てもワクワクするわ」

「甘雨!甘雨!タイツ!タイツぅぅああああああああん!クンカクンカしたいお!スーハースーハー!良い匂いだなぁ...くんくん(以下略」

「きしょ」

 

思い返せば、『原神』に限らず、どんなときだって僕を見限らずに一緒にいてくれたやつだったな。それなのに、僕は一回も「ありがとう」でさえ恥ずかしくて言えないまま……

 

もう帰ろう。どんなに美しい景色を見たって、そばに誰もいない以上、僕の孤独を引き立たせるだけ。

あのとき覚えた感動なんて、もう帰ってこない。楽しみだったはずなのに、逆に沈鬱としてしまった。これでは、もう帰離原の子供とでも良いから、誰かと一緒に居て気を紛らわした方がよっぽどマシだ。

 

そう思って帰路につこうとしたとき、北東からの突風が不意に僕の頭を撫でた。

 

 

 

 

「そこのお嬢さん、悲しそうな顔は似合わないよ。どうして落ち込んでるんだい?」

 

()()()()()()()()()()()()()が頭上に響き、驚いて視線を向ける。

そこには、見知らぬフードをかぶったような白と水色の精霊が浮遊していた。しかし、この気配には見覚えがある。姿は変わっているが、以前理水畳山真君の居場所を教えてくれた元素精霊だ。

 

確かにこの子の言う通り僕の気分は落ち込んでいるけど、それはこの子に話したところでどうにもならない。だって、場所も時間も、世界すら違う場所で迷子になってるなんて、言っても仕方のないことだ。

 

僕はなんとか笑顔を作り、前にお世話になったお礼を告げた。

 

精霊はまるで、「へぇ~覚えててくれてた上に、姿が変わったのに気づいてくれたんだぁ~」と言わんばかりの表情でにんまりと笑い、身の上話を説明し始めた。

 

自分は風元素の精霊で、どこで生まれたかも分からない。自由気ままに風に乗って冒険に出て、各国の音楽や詩歌を聞いて回っていた。

精霊は自分と元素力の親和性が近い相手(パートナー)を探す習性があり、自分も例に漏れず探しながら彷徨った。

 

しかしここ数年で急激に自らの元素力と精霊としての本能が強まって、固有の容姿、人間と同じように意思を疎通できるようになった。

だから今では、本能で自分のパートナーがどこに現れるか分かり、今からその方角へと向かっているそうだ。

 

そうなんだ、そんな設定普通に知らなかったなぁ。そもそも僕は精霊がなんなのかすら分からない領域にいるからね。初心者すぎて、僕が知っている精霊なんて『純水精霊』?とかいうボスと宝箱出してくれるやつしか知らない。前者は普通に勝てなかったから嫌い。

 

「まあまあ、ボクの話なんて一旦置いておいて、まずキミの演奏を聴きたいなぁ~。持ってるんでしょ、フルート♪」

「えぇっ!?そんないきなり!?」

 

近くの木に立てかけていた袋から、僕の『縹笛からくり』を勝手に取り出してきた。しかも、器用に歌口に口をつけてチューニングまでしている。とても綺麗な音色だ。

……待って、何で音が出るの?君なんで仙力使えてるの?今でも僕たまに失敗するのに!

 

「えへっ。気にしない気にしない。好きなように吹いてくれて構わないから、君のホントの声を聞かせて?」

 

 

 

 

 

 

 

甘雨(偽)は自分に正直に音を奏でた…

 

 

 

 

 

 

 

(うーん。風たちは、この子には「出会い」の記憶しかないって言ってる。でも、この歌に込められた気持ちは本物だ。ということは…)

 

「ど、どうです?結構上手く演奏できたんじゃないですか?」

 

この精霊さんがチューニングしてくれたせいか知らないが、冗談抜きで過去最高の出来だった気がする。学生時代の音楽コンクールで、本番後に練習風景すら見たことのない教師が言ってくるような安っぽい感想じゃなくて、ガチで一番上手かったと思う。

 

この子がチューニングした際に、どうやら細工をしてくれたっぽい。そうとしか考えられない具合の上達だった。ほどよい仙力の放出で気持ちよく演奏出来たものだから、ついつい調子に乗って何曲か連奏してしまったぜ。

 

でも、自分から聞かせてほしいなんて言っておきながら、最後にはうつむきながら考え事をし始めた様子だった。子供の演奏だろと思っていたら実は超絶上手な奏者だったから仰天してる…ってわけでもなさそうだし、なに考え込んでるんだろ。

 

「……なるほど。うんうん、キミは数奇な経験をしてここにいる。キミの迷いと孤独も、大切な人との離別の苦しみも、全部曲に乗っちゃってる」

「えっ?」

 

……図星だ。僕はてっきり、「小さいのに上手な演奏だね」とか「音程がしっかりとれてるね」とか、音楽に関する感想が返ってくるものだと思っていた。

 

しかし、思いも寄らない返答だったために、顔に驚きを浮かべて精霊さんの方を向いてしまった。これだと肯定しているようなものじゃん。

 

僕は急に、この精霊がただの元素精霊なんてものではなく、人間や仙人さえも凌ぐ、何か高位の存在のように思えて恐ろしくなった。

 

この精霊の両目は、僕を捉えて放さない。それこそ、心の奥底までも見透かされているように。

 

「でもキミは強い子だね。「過去」に気づいても、必死に「未来」に向かおうとする。正解の道なんて分からないのに。……こんなとき、迷子の旅人はどうするのか知ってる?星空を見上げるのさ」

 

精霊はその頭を上に向かせて星空を仰いだ。僕も釣られて視線を移す。

綺麗な満天の星空だ。雲一つ無く、このキラキラ輝く星達が一面に望めている。

 

「テイワットの夜空に浮かぶ星座は、人によって見え方が変わる。まるで当たり前かのように、自然とその星々が何を表しているかが分かるんだ。でも、いつどんな時であっても、迷い人を導いてくれる。さあ、キミにはどんな星座が見える?」

 

僕の視線の先で飛び回りながら、探せ探せと催促してきた。まあ、減るものでもないし見るだけみてみようかな。星空を観察するなんて久しぶりだ。転生してからはなかったかも知れない。

 

目をこらしながら隅々まで探したのだが、うん…流石に北斗七星や夏の大三角形みたいに知ってる星座はないよね。分かってる。

僕は中二病オタクが故に、一時期星座にハマっていたときがあったから見たことがある。あのときは午前二時に望遠鏡を担いでいったんだ。しかしそれは、このテイワットの空には存在しなかった。

 

その代わり、北の夜空に黄色がかった白い六つの星が強く煌めいて見える。それらを直線で結ぶと、どうやら今世の母親のような、水色の体毛の巨獣が頭に浮かんできた。これは麒麟だな。

 

それから……その後ろに、前陳した星ほどじゃないが優しく輝きを放つ六つの星々も視覚できた。僕の頭の中には、不思議と流れ星と男の子が彷彿とされた。

 

「えぇーっと、モフモフした仙獣…麒麟ですかね。それから……うっすらと東の方角を向いている流れ星と男の子?が見えます」

 

(へぇ、二つの星座か。どんな人、どんな魔神、どんな神でも自分の星座はたった一つしか見えないものなのにね。『仙麟座』はおそらく彼女本来の星座だ。ということは…)

「正直に答えてくれてありがとう。忘れないでね、『どんな状況であろうと、テイワットの星空はあなたのためにある』。いつでもキミを導いてくれるよ」

 

そう言うと、精霊は夜を縫う疾風のように、いつの間にか消え去っていた。い、いったい何だったんだろう…

精霊が消えた風圧で跳ねた『瑠璃百合』の露が、むき出しの肩にかかって少しだけ身が冷えた。

 

留雲真君がくれたこの服も、あまりに寒すぎたり暑すぎたりしたときには適温に保ちにくくなる。僕もそろそろ今の家に帰ろう。

 

「いつどんな時でも、迷い人を導いてくれる」か。先ほどの言葉を思い出し、もう一度だけ星空を見上げる。

………空に浮かぶ二つの星座は、さっきと変わらずただ輝いているだけのようにも思えた。

 

 

 

 

 

 

「…うん。彼女、いや、「彼」かな。凄く惜しいよ。もう少し自分を出してくれたら、ボクの元素を扱える素質は十分にあるのにね」

 

 







『命ノ星座』超解釈。
これ書き終わった後に隕石イベの内容知りました。新規は知らねぇよ過去イベ復刻してくれよ...


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。