呪いが新たな祈りを導く『君のための物語』 作:夜なべ
☆これまでの懐玉編!
星漿体護衛・抹消任務。その任についた五条悟と夏油傑の前に現れた星漿体は、天内理子────だけではなかった。
理子とは違う鳶色の髪と瞳を持つ、理子の1つ年上の兄・天内
かろうじてではあるが呪術師としての素養も持ち合わせた貴弥は、本来であれば、彼が『星漿体』としての役目を果たすはずだった。
しかし、より『星漿体』としての素質が高い理子が生まれたことで、その役目は理子のスペア兼護衛役へと転換されたという。
五条と夏油は天内兄妹と世話役の黒井と共に、様々な困難を潜り抜け、沖縄での日々を楽しみ、呪術高専へ無事到着──したところで、最強の天与呪縛・フィジカルギフテッドを持つ伏黒甚爾の襲撃を受ける。
傷を負いつつも伏黒甚爾の足止めを買って出た五条を残し、天内兄妹と黒井、夏油はついに薨星宮へと辿り着くのだった。
「────待って」
理子が戸惑ったように手を伸ばす。
貴弥は優しく首を振って、彼女の手を一度だけ握り、そっと離した。
「理子、もう本当の願いを隠さなくていいよ。
──理子の願いは、理子の世界は、きっとおれが守るから」
貴弥は困惑した瞳で自分を見つめる、夏油と黒井に向かって微笑んだ。
「理子を頼みます。──星漿体としての素質は理子に劣るけれども、おれだって役割は果たせる。
それに……おれはお兄ちゃんだから。だったら妹を守らなくちゃ」
天内貴弥は星漿体である。しかし実は、それだけの存在ではなかった。
『天内貴弥』ではなかった頃の記憶──所謂前世の記憶と、未発現のとある『術式』を持っていたが、それを打ち明けたことはなかった。
『天内貴弥』であるうちは、彼らにそれを打ち明ける必要はない。
そして、その『記憶』と『術式』をもって自分が同化されれば、天元に新たな『権能』、もしくは『機能』と呼ばれるものを付与することができるだろうと、確信を持っていた。
それが叶うなら──もう『星漿体』は必要がなくなる。もう二度と、理子のような存在を生み出さなくていいのだ。
「生きたいと願っているのに、そう叫んでいるのに、そんな存在が犠牲になることを、おれは許せないよ。
だから行くんだ。それがおれの生まれた意味だと、信じている」
「待ってくれ、貴弥くん、きみは──」
「夏油さん。──多分伏黒甚爾は
五条さんは強いけど……万が一にでも、おれは絶対に家族を失えないから。どうかお願いします」
その言葉を受けて、夏油の表情がさらに強張った。
しかし貴弥の眼差しを受けて、悔しげに顔を顰めつつも、一言「わかった」と頷いた。絞り出すような声音だった。
貴弥は夏油がこちらを案じる優しさと、五条に向ける心配とで板挟みにさせてしまったことを少し悔いた。
それでも現状、理子と黒井を護れるのは彼しかいないから、だからどうかと、頼み込んだ。
「大丈夫。上手くいけば、また会えるかもしれないから。
──『天内貴弥』としてではないかもしれないけど、でも、大切に思う気持ちは変わらないから」
ゆっくりと、彼らから離れて。
最後にとびきりの笑顔を見せて、手を振って駆け出す。
「嫌だ、どうして──お兄ちゃん!!」
理子の涙ながらの叫びを背に、貴弥は薨星宮を貫く大樹の根元を目指して、飛び降りた。
飛び降りながら、天元へと呼びかける。
「天元様! 聞こえているなら! 今すぐ扉を開いて──おれを、受け入れろ!!」
刹那、大樹が眩い光を放ち──薨星宮の全てを飲み込んだ。
それは一体、何が廻った果てだったのか。
異邦人、
この世界には決して存在し得ぬはずの特異点。
しかし限りなく、役割としては最適だった。
「────ああ、なるほど。この『世界』が、俺を呼んだのか。
いや、生み出した、の方が適切だろうか。
こちらとしては、呼ばれた、の方が感覚として近いけど」
広がる真白の無の中で、天元とその客人──星漿体・天内貴弥だけが色を持っていた。
しかし、その表情は、天内貴弥のものではない。
容貌は間違いなく天内貴弥ではあるのに、それはひどく大人びて──まるで世界の全てを理解しているような、この世のものとは思えぬ眼差しをしていた。
「かつて
今度もきっと、
限りなく摂理が近いこの世界なら、役に立てることもあるだろうから」
「──其方の名を、聞いてもいいか」
「名前は……確かにあったけど。
あまりこちらでは呼び慣れないと思うから、まずは
「────『世界樹の守り手』。あるいは『救世主』。
ディセンダー、と、あちらでは呼ばれていたよ」
鳶色の髪と瞳を持つ少年は、愛しきものを見るように目を細め、そう告げた。
その存在は、絵本に描かれる御伽話に出てくるような、そんな名称の役割を負って降り立った。
『呪い』が廻るこの世界の、理そのものを変え得る、ある種の劇薬。
この『世界』に生まれるにあたり、前回の記憶と力とを引き継いで、さらにはこの『世界』の理に馴染ませて。
そうして、天元に『天内貴弥』としての肉体を同化させたあと、現在はただ純粋な『ディセンダー』という存在として天元の前に立っている。
「もう大丈夫だよ、
おれは世界を救うために生まれた。いや、
危機を憂うこの『世界』が、因果を形成する『星漿体』の身体に、もう一つの記憶と魂を埋め込んだ。
そうして、星漿体・天内貴弥が生まれた。
星漿体はもう、その命を捧げなくていい。
天元はもう、誰も取り込まなくていい。
おれが永劫、天元の器で、化身で、端末だ」
『天内貴弥』の姿をしたディセンダーは、ゆっくりと天元へ手を伸ばす。
「ディセンダーは『世界樹』の化身。
『世界樹』の役割は、この『世界』の場合、『負』……『呪力』を取り込み、『マナ』という新たなエネルギーへと変換し、放出すること。
『マナ』はこちらでいう『正の呪力』に近いが、性質は少し違う。呪霊を生まず、逆に新たな生命を育むエネルギーだ。
人間が『呪力』を漏出させること、それ自体は変えられないが、それが『呪霊』を生み出す前に『マナ』に変換することはできると思う」
このディセンダー以外は知らぬことだが、それは『グラニデ』という世界の『世界樹』とほぼ同じ役割だ。
『天内貴弥』の姿をしたディセンダーは、かつて『グラニデ』の危機を救った『世界樹の守り手』であった。
「この『世界』では、この世界樹の
これから天元は、『不死』と『世界樹』の両方の術式を持つことになる。
そしておれはそんなあなたの化身、守り手として、あなたと同じ『不死』と『世界樹』の術式を刻んで、この世界に降り立つ。
──これが、『世界』にどんな影響を及ぼすかはまだ未知数だけど、きっと全てを守ってみせる。
……『天内貴弥』としての願いも、決して捨てられないから」
ディセンダーは何にも縛られぬ自由な存在と言われていた。
その存在意義を文字通り〝縛り〟、この世界の理を変える。全ては、願いと世界と、大切な存在を守るため。
「……今存在する『呪霊』はどうなる?」
「そうだな……呪術師たちに祓われ、呪力──呼びやすいから『負』と呼ばせてもらうが──まずは『負』として世界樹へ還元される。
その後は……もしかしたら、その力の強さによっては、新たに『精霊』と呼ばれる存在にでもなるかもしれないな」
いつかどこかの『
天元は、長く、長く息を吐き出した。
そして、ぽつりと言葉を紡ぐ。
「──人間は『呪力』を生むことを避けられないが……まさか、『呪力』自体を……呪いを生むどころか生命を育む新たなエネルギーへと変換するとは、何故、誰も思い至らなかったのか。
……ああ、良いだろう。私とて、世界が混沌に呑まれることを望んではいない。
頼む、ディセンダー。
そうして天元は、差し出されたディセンダーの手を取った。
此処に、新たな因果は成立した。
世界の理は破壊され、異なる可能性へと歩み出す。
これは、呪いが新たな祈りを導く『君のための物語』。
・例によってネタ吐き出し。鉄は熱いうちに打て精神で投稿。
・マイソロ2どころかテイルズオブシリーズをちょいちょいモチーフ?ネタ?に入れたので、知らない人にはちょっと不親切だったかも知らんです
・あまない・たかや=あたま+かなや(+い)という小ネタ
・あたまの術式は前話とそんな変わらない
・多分羂索はまた同化阻止失敗で一回ブチ切れてから、おや? これはこれで使えるのでは? になってると思う。九十九さんはどうかな……プランの変更は余儀なくされてそう
・玉折は………………お察し案件……? なんとかしたい気持ちはある
・とりあえず世界観設定だけ吐き出しといて、今後広げて書くときには、もう一度しっかり呪術読み直してから書きます。
固有ジャンルもどき:呪いが新たな祈りを導く、君のための
テイルズオブシリーズ風キャッチコピーもどき:「守り手」は目覚める。救いを求める「世界」がある限り。