Re.呪術師最強が行く異世界生活   作:迷える黒狗

2 / 4
ちょくちょく、原作を部分をそのまま持ってきています、そこを読むのが面倒な人は線まで飛ばして貰えると助かります。


原作開始後
一話 出会い


 

――盗品蔵・夜

 

 

 

「あとは俺のネゴシエーション次第か……そこが一番、信用できねぇ!」

 

「さっきからどうしたの? わたわたして、すごーくみっともないけど」

 

 ぐさりとくる一言、スバルもまた胸を押さえてラインハルトと同じリアクション。もっとも、そこにはひょうきんさがあるだけで、彼のような凛々しさは微塵もない。

 

 そんなこちらのやり取りを見て、ラインハルトは小さく嫌味なく笑う。それから彼は黙してこちらをうかがうフェルトの方へ、片手を挙げて迎えにいった。

 颯爽とした後ろ姿には嫉妬心すら浮かばず、スバルは肩を落とすしかない。これが持てるものと持たざるものの違いか。

 

 警戒しつつも、助けに応じてくれたことへの恩義を感じているのか、歩み寄ってくるラインハルトからフェルトは逃げようとはしない。

 そんな二人を若干、微笑ましいような感じでスバルは見守り、

 

「――スバル!」

 

 ふいにこちらを振り向いたラインハルトの叫びに、窮地を脱していなかったことを悟る。

 

「――――ッ!!」

 

 廃材が跳ね上げられ、その下から黒い影が出現する。

 影は黒髪を躍らせて、血を滴らせながらも力強く足を踏み出し、加速を得る。

 ひしゃげたククリナイフを握りしめ、無言で疾走するのは流血するエルザだ。

 

「てめぇ――ッ!」

 

 あの苛烈な斬撃を掻い潜り、命を拾った殺人者の目には漆黒が宿っている。

 それはこれまでの相対でもっとも、スバルの背筋に氷を差し込む殺気を放っていた。

 

 接触までのわずかな数秒、その間にスバルの思考はめまぐるしく回転する。

 ひしゃげたナイフ。一瞬の邂逅。おそらくはたった一発に賭けている。ラインハルトも駆けよってくるが間に合わない。一撃だけしのげば、ラインハルトがどうにかする。偽サテラは振り返る余裕もない。狙いはどっちが。俺は三度目、彼女を守る。

 守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守るるるるるる!!

 

「狙いは腹狙いは腹狙いは腹ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 偽サテラを突き飛ばすように庇い、腕の中に残っていた棍棒を引き上げ、とっさに腹の上をガード――衝撃。

 

 横薙ぎの一発の威力は斬撃というより、重厚な鈍器による打撃に近かった。

 土手っ腹への衝撃で地から足が離れ、世界が百八十度回転する感覚を、血を吐きながらスバルは味わった。

 

 ぐるぐると視界が回る。実際に吹き飛ぶ体が回転しているのだ。

 どれだけ飛ばされたのかもわからないまま、受け身も取れずに壁に激突させられる。

 

「この子はまた邪魔を――」

 

 ぶっ飛んだスバルを見ながら、エルザが悔しげに舌を鳴らす。

 それから彼女は立ち尽くす偽サテラに目を向けるが、

 

――――――――――――――――――――――

 

……周囲には人が居る、けど先に確実に倒す!

男は素早く走りながら考える。

 

「術式順転「蒼」」

 

瞬間、周りの家具や廃材、盗品がエルザを中心に強力に吸い込まれる。

そしてその裏から長身白髪の目隠しをしている男が出てくる。

 

「よし、一件落着!無事ですかいな皆様方?」

「ありがとう助かったよサトル」

「あ、ありがとうございます、助かりました」

「お、おう」

 

突如現れた白髪目隠しに対してスバルは若干の困惑したがラインハルトが親しげに話していたり白髪の名前を理解している事から特に警戒すること無く感謝を述べる。

 

「それで?この騒ぎの原因は何なんだラインハルト」

「……いや、1度それは後にしようか、どうやらまだ動ける見たいだよ、彼女は。」

「わぁお…流石にドン引き、へい彼女!そろそろ投降しな、僕もラインハルトと同じくあんまり女性に乱暴するのは趣味じゃ無くてね。」

 

サトルがニコニコしながらエルザに投降を促すとエルザは心底不機嫌そうに、

 

「いずれ、この場にいる全員の腹を切り開いてあげる。それまではせいぜい、腸を可愛がっておいて」

「逃がすと思うか?」

「いや、追わなくて良いよサトル」

 

廃材を足場に跳躍するエルザを尻目にラインハルトは追撃しようと構えるサトルをその場に留めさせる。

 

「何でだよ、別に2人で追い掛けようって訳じゃ無いないんだぞ。」

「いや、おそらく彼女は吸血鬼肉体を消し飛ばすか限界まで殺し続ける他ない、そんな技を周囲に人が居る中で使えるかい?僕達は基本怪物狩りが専門こういう場所での戦闘は向いていないのは分かるだろ?」

 

納得の行っていない様子のサトルだったがラインハルトに耳打ちされ若干落ち着きを取り戻す

 

「……わーったよ、その代わり報告書はラインハルトが書けよ?」

「ああ、それくらいなら別に今回は構わないよ」

「それで?後ろの2人は?」

「ああ、まず銀髪のハーフエルフの御方が王選候補者のエミリア様、そして黒髪つり目の青年がスバル僕の親友さ。」

「黒髪黒目か…」

 

ラインハルトから2人についての解説を貰い、一言誰にも聞こえないような小声で呟いた後、振り向き2人に話し掛ける。

 

「初めまして御二方、近衛騎士団所属でラインハルトの同僚の五条悟と申します、是非悟とお呼び下さい。再度聞きますが、怪我はございませんか?」

「ええ、私は大丈夫それより……」

 

エミリアは壁際に寄りかかっているスバルに目を向け駆け寄る。

 

「ちょっと大丈夫!? 無茶しすぎよっ」

「お、ぉぉお……ら、楽勝楽勝。あそこってば無茶する場面だべ? 動けんの俺しかいねぇし、あいつがとっさに狙う場所もこっそり当てがあったし」

 

心配そうに顔を寄せてくる偽サテラに手を掲げ、スバルは一撃をもらった腹を軽く撫でる。尋常でない打撲傷に、服をめくった下が真紫になっているのが見えた。

 「うええ」とその見た目の悪さに舌を出し、それからスバルは逆さまの体をひっくり返した勢いで立ち上がり、

 

「今度はもう、完璧にいなくなったよな?」

「すまない、スバル。さっきのは僕の油断だ。君がいなければ危ないところだった。彼女を傷つけられていたら僕は……」

「タンマタンマタンマタンマ! そっから先は言及無用だ。それにほぼ悟のお陰だしな!」

 

謝罪を口にしかけるラインハルトを制止して、押し黙る彼にスバルは笑みを向ける。それからゆっくりとした動きで振り向き、自分を見上げる銀髪の少女と視線を合わせた。

 

 彼女は身じろぎし、それから立ち上がる。二人の間の距離は二歩分、手を伸ばせば届く位置だ。ずいぶんと遠回りしたものだと、ここまでの道のりを感慨深く思い出す。

 

 突如、瞑目して黙り込んだスバルに少女は物言いたげな顔をする。

 しかし、彼女がその口を開くより先に、スバルが指を天に突きつける方が早かった。

 左手を腰に当て、右手を天に向けて伸ばし、驚く周りの視線を完全に意識から除外して、スバルは高らかに声を上げる。

 

「俺の名前はナツキ・スバル! 色々と言いたいことも聞きたいことも山ほどあるのはわかっちゃいるが、それらはとりあえずうっちゃってまず聞こう!」

 

「な、なによ……」

 

「俺ってば、今まさに君を凶刃から守り抜いた命の恩人! ここまでオーケー!?」

 

「おーけー?」

 

「よろしいですかの意。ってなわけで、オーケー!?」

 

 OとKを上半身の動きで表現するスバルに、銀髪の少女はひきつりながらも、「お、おーけー」と応じる。

 そんな彼女の態度にスバルはうんうんと頷き、畳みかけるように続ける。

 

「命の恩人、レスキュー俺。そしてそれに助けられたヒロインお前、そんなら相応の礼があってもいいんじゃないか? ないか!?」

 

「……わかってるわよ。私にできることなら、って条件付きだけど」

 

「なぁらぁ、俺の願いはオンリーワン、ただ一個だけだ」

 

 指を一本だけ立てて突きつけ、くどいくらいにそれを強調。そのあとに指をわきわきと動かすアクションを付け加えて少女の不安を誘い、喉を鳴らして悲愴な顔で頷く彼女にスバルは好色な笑みを向ける。

 

「そう、俺の願いは――」

 

「うん」

 

 歯を光らせて、指を鳴らして、親指を立てて決め顔を作り、

 

 

「君の名前を教えてほしい」

 

 

 呆気にとられたような顔で、少女の紫紺の瞳が見開かれた。

 しばしの無言が周囲を支配し、決め顔を維持するスバルは静寂の中でかすかに震える。

 外した感が半端ない羞恥となって込み上げてくるが、こういう状況で周りがリアクションする前にイモを引くのは最悪のパターンだ。

 故に黙り、スバルは彼女からのアクションを待つ。

 

 氷塊でも氷柱でも冷凍ビームでもなんでもこい。やっぱ冷凍ビームは勘弁な。

 

「ふふっ」

 

 そんなスバルの極限状態すぎる高速思考は、ささやかに届いた笑声に打ち消された。

 口元に手を当てて、白い頬を紅潮させ、銀髪を揺らしながら少女が笑っている。

 

 それは諦めた笑みでもなく、儚げな微笑でもなく、覚悟を決めた悲愴なものでもない。ただ純粋に、楽しいから笑った。それだけの微笑みだ。

 

「――エミリア」

 

「え……」

 

 笑い声に続いて伝えられた単語に、スバルは小さな吐息だけを漏らす。

 彼女はそんなスバルの反応に姿勢を正し、唇に指を当てながら悪戯っぽく笑い、

 

「私の名前はエミリア。ただのエミリアよ。ありがとう、スバル」

 

 「私を助けてくれて」と彼女は手を差し出した。

 その差し出された白い手を見下ろし、おずおずとその手に触れる。指が細く、掌が小さく、華奢でとても温かい、血の通う女の子の手だった。

 

 ――助けてくれてありがとう。

 そう言いたいのは彼女だけではない、スバルの方だった。スバルの方が先に彼女に恩を受けていたのだ。だからこれは、それがようやく返せただけのこと。

 

 通算して三回、刃傷沙汰で命を落として辿り着いた結末。

 あれだけ傷付いて、あれだけ嘆いて、あれだけ痛い思いをして、あれだけ命懸けで戦い抜いて、その報酬が彼女の名前と笑顔ひとつ。

 ああ、なんと――。

 

「ああ、まったく、わりに合わねぇ」

 

 言いながらスバルもまた笑い、固く少女――エミリアの手を握り返したのだった。

 

――――――――――――――――――

 

「うんうん、青春だねぇ」

「フフ、そうだね、ふたりが仲良さようで何よりだ、所でサトルは何故ここに?」

 

ラインハルトが悟と少し話した後疑問に思っていた事を尋ねた。

 

「ああ、ついさっきミミ達に会って次会う時喜久福が食べたいって言ってたから材料を買いに来てたんだよ、そしたら何かドンパチ大きな音が聞こえてきたからな。」

「それは申し訳ない……」

「別にそんな気にすんなよ、一応僕も騎士な訳だから見にこない訳には行かないでしょ。」

「……フッ、良かった良かったちゃんと騎士としての自覚は持ててるようだね、推薦した甲斐が有るよ。それにほんと助かった、さっきスバルに言った通り僕は油断していたようだ。」

「確かに怪我人は出ているが別に取り返しのつかない怪我を負った訳じゃ無いだろ、しょぼくれた顔で反省すんのは自分家に帰ってから1人でしてろ。

それに今回の分怪物狩りで活躍すれば良いだろ。」

「……そうだね、じゃ今からちょっとひと狩り行こうかな。」

「いや、違うそう言う事じゃない、…いや違うな行くなら僕の報告書を書いてからにしてくれ。」

「ハハ、冗談だよ」

 

そうして二人で少し笑いながら話をしている時、ラインハルトが何気なく拾った、スバルがつい先程まで使っていた棍棒が滑らかな切断面をさらして鈍い音を立てて落ちた。

…………

………………

するとすぐに後ろからエミリアの切羽詰まった声が聞こえる。

 

「――ちょ、スバル!?」

 

ラインハルトと悟はすぐに振り向きエミリアとスバルが居る場所に向かう。

 

「ど、どうなさいました、エミリア様!」

 

そこには腹部か横一文字に裂け大量の血を噴出しながら倒れているスバルの姿とそれを必死に治療しているエミリアの姿があった。

 

「っ!一旦離れよう、サトル」

「ああ、そうだな」

 

 




評価頂けると非常に助かります。m(*_ _)m

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。