side チュチュ
あーしらはその後教室から式典会場に移動し、そこで入学式に参加した。もちろん入学式の最中、あーしらはずっと白い目で見られていた。それもそうだ。
「見て見て〜、あの子全裸だった
「しかも服着るの嫌がってたという……」
「うぉ、マジ⁉︎スケベ過ぎるでしょ‼︎」
「俺も見たかったなぁ〜‼︎」
「アホか‼︎」
好き好んで全裸で入学式に登場した女だ。あーしだって同じ目で見る。というか外野に居て、同じ目で見ていたかった。でも、それも出来なくなってしまった。友達になってしまったから。
「きっと隣にいるチビも変態だぞ。」
「出会って早々猥談したのかな?」
「あの髪の毛、中に絶対エロ本隠してるぞ。」
そしてあろうことか、あーしまで変態扱いされる始末。本当に最悪、腹立たしい‼︎エロ本隠してるわけねえだろぉが‼︎
「うるせえよ‼︎これだからスペーシアンはコイツみたいに変態なんだよ‼︎」
「はぁ、変態だと⁉︎」
「ソイツと一緒にするんじゃねぇ‼︎」
「スペーシアンで一括りにするな、この変態アーシアン‼︎」
「金無しアーシアンは学も無いってかw」
「あぁ⁉︎テメェら全員ぶん殴ってやる‼︎」
思わずブチギレたら逆ギレされる始末。これだからスペーシアンは変態クズ野郎なんだよ。本当に腹立たしい。感情に任せて拳を振るい、乱闘騒ぎを起こしてやろうかと思ったが………
「皆、式典中だぞ。騒ぐ者は我が
「「「ひぃ…………」」」
エバーグリーン・ウラヌスことグリグリがスペーシアン共をドン引かせたので、あーしは何もせずに済んだ。
そして無事………ではないが、入学式が終わった。
「これで服脱いでもいいな。」
「ダメだろ‼︎」
そして、いきなりグリグリが脱ごうとしたので、全力で止めた。
「何故だ、チュチュ。式典は終わったのだぞ?もうアスティカシアの正装で居る必要が無い。」
「グリグリ、そこは合ってる。」
「ならば全裸で良いではないか!」
「良くねえよ‼︎」
「全裸は我の私服ぞ?」
「服じゃねえじゃん‼︎着てねえじゃん‼︎」
どうやら天王星ではプライベートでも全裸らしい。というか、単純に全裸が好きなのだろう。本当に理解できない。服着ないで恥ずかしくないのか?
「いやしかし、服を着ていると隠し事をしているように感じてしまうな。」
「大事なところを隠してんだからい〜んだよ!」
服を着ていることは隠し事をするって意味になるのか。つくづく天王星はぶっ飛んだ惑星だな。隠し事をしないから全裸が正装になっているのかと、一人納得出来てしまった自分が嫌になった。
そんなことを考えながら歩いていると、地球寮に到着した。
「ここがあーしの寮だから、お前とはここでお別れな。」
ここはアーシアンの為の寮。グリグリはもちろんアーシアンでは無いので、ここでお別れとなる。グリグリを受け入れる寮は、きっと彼女の変態行為に悩まされながら過ごすのだろう。全裸で廊下を徘徊したり、会う人会う人に猥談を振ったりなどなど………。想像するだけで恐ろしい。スペーシアン共め、変態の洗礼を受けやがれ‼︎
「我も地球寮ぞ。」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
洗礼を受けるのはアーシアンだった。
「なんでお前が地球寮なんだよ⁉︎アーシアン専用じゃね〜の、ここ⁉︎」
「
「そういうことかよ‼︎」
最悪だ………。きっと学園側がアーシアンに変態を押し付けたのだろう。そうでなきゃ説明がつかない。貧乏人にゴミ投げつけて楽しむ。スペーシアンのやる事の非人道さにますます腹が立ってきた。
「ということで、寮でもよろしくな。」
「あ〜もう、分かったよ‼︎こうなりゃ24時間一緒に居てやるよ‼︎」
「本当か⁉︎ありがたきお言葉………感謝する‼︎」
あーしはヤケクソになりながら、この変態と学園生活を共に過ごすことを誓った。それに、心の底から嬉しそうな、そして意外にも穏やかなこの笑顔を見ると………まあいいんじゃないかと思えてしまうから。
建物の中に入り、
「うぃ〜っす、ただいま〜。」
「お邪魔する。」
軽く挨拶をすると、
「おっ、チュチュも来た!」
「しかももう
「良かったぜ!」
皆が出迎えてくれた。あーしらアーシアンはアスティカシアに来る前から、来る人同士で親交がある。もちろん同期のリリッケもそう。そして、本来なら彼女と過ごすはずだったのだが………
「おい、リリッケ!お前寝坊したな‼︎」
「そうだよチュチュ〜、ごめんね〜。」
そうはならなかったのだ。あーしの隣はグリグリになってしまったのだ。
「お前が寝坊したせいで、あーしはこの変態とずっと一緒だったんだぞ‼︎」
「もう仲良くなれたの〜?いいな〜!」
「よくない‼︎」
どうやらリリッケは変態になりたいらしい。でないとあーしの事を羨むはずがないからだ。
「私はリリッケ・カドカ・リパティ、経営戦略科の1年だよ〜、よろしく〜!」
「我はエバーグリーン・ウラヌス、チュチュと同じパイロット科の1年。長いからグリちゃんでもグリグリでも何でもいい。」
「それじゃあよろしくね〜、グリちゃん!」
あっ、あーしがつけたあだ名採用してくれたんだ。きっと気に入っているのだろう。少しだけ嬉しい。
それはそうと、皆はグリグリが痴女で
「ねぇニカ姉。」
「何、チュチュ?」
「コイツ来る事あーし知らなかったんだけど。」
「ごめん、伝え忘れてた♪」
「ニカ姉‼︎‼︎」
ようやく分かった、単なる伝え忘れ。そしてニカ姉の軽い口ぶり。きっと仲良くなれたんだからいいじゃん、という風に思っているのだろう。彼女は尊敬する人だが、珍しく心の底から殺意が湧いた。
その後適当に自己紹介していく中で、ニカ姉がある事を聞いた。
「そういや天王星ってどうやって住んでるの?結構大変だと思うけど………」
確かに、天王星に住むのは大変だ。太陽からめちゃくちゃ遠い*1せいでめちゃくちゃ寒い*2上に、地面が無い*3らしい。あーしもあんまりよく分かってないけど。
「アスティカシアみたいな結界と仮想地面*4を併せて住んでいる。言い換えると、天空の城だな。」
天空の城か、なんかカッコいいな。それにアスティカシアでも使ってる結界を足したのだろう。
「えっ、本当なの⁉︎」
「ああ。」
そして、この話題に一番飛びついたのがニカ姉。彼女は大の機械好きで、いつも部品をいじったり機構を調べたりしては、それを楽しそうに早口で話す。まさにオタクだ。
「実際に浮遊している仕組みは⁉︎エンジンとかどうなってるの⁉︎あとは重力の作り方とか、結界の材質とか……」
「も、申し訳ない!我もそんなに詳しくなくて………」
「というか天王星の技術ヤバくない⁉︎天王星オリジナルのメカとか商品とかあったりするの⁉︎」
珍しくグリグリがたじろいでいる。流石に機械絡みのニカ姉はまだ早かったか。だが、ここでグリグリの逆転の番だ。絶対にエロい機械を出してくる。
「う〜んと………例えばこの『浮遊操作型小型ローター』とかか?リモコンで操作して、遠く離れた相手の
やっぱり、ろくなもんがない。エロに情熱を注ぎ過ぎだろ。まあニカ姉は下ネタ好きじゃないし、ここでたじろいでアウトかな〜。やっぱりどんな状況でも、最後に相手を引かせるのはグリグリだな。
こうしてあーしの中で、一つの結論が………
「本当に⁉︎天王星の技術ヤバくない⁉︎まずそれどうやって動いてるの⁉︎まずは1mm2サイズの物をラジコンみたいにどうやって操ってるのか、あとはどうやって回転させてるのかと、あとはね、回転数の調整と………」
「すまぬ、流石にそこまでは分からん………」
出なかった⁉︎嘘でしょ、ニカ姉⁉︎なんで食いついてるの⁉︎
「ニカ姉、ニカ姉‼︎その機械の目的分かって言ってる⁉︎」
「うん、エロい事でしょ?」
「じゃあなんで食いつくの⁉︎ニカ姉別に下ネタ好きじゃないじゃん‼︎」
「私はメカが絡めば使い道はど〜でもいいの。」
「嘘でしょ⁉︎」
目的をそこまで度外視できるもんなの⁉︎しかも目を宝石のようにキラキラと輝かせて。機械オタクもここまで極まれば変態だな‼︎
「それでね、グリグリ………」
「分かった分かった、ニカ。専門家を呼んだビデオ対談を開いてやる。」
「本当⁉︎やった〜♪」
痴女との出会いに始まり、憧れの人の変態的一面を知ってしまった。あまりにも濃すぎた1日に、思わず頭が胃もたれするのを感じる。早く布団に入って寝たい。人生でこう思えたのは、本当に初めてだった。
こうして、あーしのアスティカシア初日は幕を閉じた。