丸山彩「えっ...エッチしないと出られない!?」 作:我来也
書いては消したりを繰り返したり幾つかシナリオを考えてどれが良いのか考えては、思い浮かんだ展開を忘れたりなど....。
おい、まじか。
これが最初に思った素直な感想である。確かに元々残された時間が少ないのは分かっていたしそれまでに何とかするつもりだったが生理現象に関しては頭が回ってなかった。最低でも残り数日から一気に数分になってしまった。
流石にどのくらい我慢できる?とかは聞けない。恐らく彼女もあまり迷惑をかけまいと我慢してたはずだ。周りを見ても手洗い場がない。何で俺と丸山が何をしても良いように監視カメラがない配慮はしてるくせに手洗い場など必要な配慮はしてないんだ?馬鹿か。
とりあえず落ち着こう。現在ドアの上に重ねてたものは外したので目の前にある壁はちゃんとしたドアだったがドアノブらしきものが見当たらない。そのため先ずは色々調べてドアノブを見つけること。そしてどうにかしかければ開かない。そしてもう1つが丸山のお手洗いに関すること。正直おし◯こなのか否かなんてものはどうでも良いことだ。彼女に聞くなんてデリカシーのないことなんて聞けないし彼女も恥ずかしいに決まってるから答える訳ない。ただ線香花火の如く僅かな時間でその問題を解決していかないといけない。
正直ドアを開けることより丸山の問題を先に解決した方が良さそうな気もする。しかしどうやって解決する?反対側の床にでもトイレをしろって?それかあれか...?俺が彼女のトイレ代わりになるか?いやそれは絶対ない。そもそも彼女がそれを了承するわけない。というより俺もその立場なら嫌だ。他に方法があるとするならあとは問題の先送り。つまりどうにかして我慢し続けその間に脱出を試みるしかない。
皆もトイレに行きたいが我慢しないといけない場面を経験したことはないだろうか?どうしても席を外せない状況やトイレが近くにない時など。俺もそういう場面もあるし、レース直前にトイレに行きたくなったが我慢してレースをした時もある。その時はレースに集中してたのもあってかレースが終わった後トイレに行きたいという事を忘れていた程だ。つまり別の何かに意識を向けるようにするしかない。ただ我慢し続けてる状況で思考が働かないものだ。こういう時は誰かの話に興味を持ってくれれば良いのかもしれない。この場に丸山と俺しかない為必然的に俺の話になるのだが、生憎面白い話もだが興味を持ってくれるような話のネタはない。
昔、日が沈み夜の訪れる時間帯だったか、友達と一緒に自転車を漕いでいた時目の前で友達が消えた話なんて聞きたいか?
そもそもいきなり俺がそういう話をしたってどうでも良い話だったら興味なんてでないものだ。ならここは、丸山に聞こう。
俺はドアノブを探す為ドアに色々触れながら丸山に聞くことにした。
「丸山さん、好きな人をデートに誘うにはどうしたら......いやなんでもない。」
おかしい。何で好きな人の話?しかもデートの話をしたんだ?違うんだ。俺について聞きたい事があるなら何でも答えよう、的な事を言うつもりだったのが.....チラッと丸山を見ると先程まで切羽詰まったような表情から一転、目をキラキラさせすっかり意識が恋愛モードになっている。
「え?◯◯さんって好きな人いるの!?何?デート?話聞かせてー!」
意図しない発言だったがそのおかげで、もぞもぞしていた丸山の仕草が収まった。まぁ良いか。こうなったらこの話題でトークしながらドアノブを探す。と言っても恐らく此処がドアノブなのだろうっていう場所がある。しかしその場所に触れても何も反応がない。ボタンのようにポチッと触っても反応がないし押しても何もない。
内心どうしようかと焦るがここで焦るとせっかくの丸山の抑えているものが我慢出来なくなりそうな為、色々調べてますよというアピールをしながらとりあえず恋バナの話をすることにした。
「いやまだ好き....なのか分からないんだ。ただ少しずつ関わっていってその人の魅力というべきか......なんか色々今までになかった気持ちを知ったというべきか....。」
恋愛の話は聞くことが多かったが自分が話すことが今まで無かった。彼女の魅力、自分が好きになった経緯やらとにかく話の流れを説明するのが難しい。しかも本人にそれを伝えるのって凄く難しい。ただ今その想いを伝えるのは何か違う気がするから彼女だとなるべく気付かせないように大きくぼかすように話すことに意識する。
「んー。なんかぼんやりした感じだなー。んーじゃあ、その人のどういうところに魅かれたの?」
「最初出会った時の第一印象はジ・アイドルっていうかクラスに1人はいる可愛い美人さんっていう感じだな。つまり世界が違うって思っていた。だから極力関わらないでいたんだ。」
「どうして?」
「君の前に一国の美形の王子様がいたとしたらどう思う?」
「そ、それは緊張...するね。」
「それと似た感じだ。世界が違う。俺が決して暗いとか小さいとかそう思っているわけじゃない。ただ彼女が、彼女のいる世界が明るすぎた。そんな印象かな。」
「ただ幸か不幸かその人としばらく関わる事が多かった。嫌でも少しずつ知る事が増えた。心の強さ、そして弱さも。気付いたら俺が何とかしないとって思う気持ちがでてきた。別に本人が頼んできたわけではないのにな。ましては他の誰かからも。」
丸山はただ相槌をして黙って聞いている。
「何というか今は色々な気持ちが彼女に対してあるんだ。憧憬、救済、愛慕とかね。」
自分なりに言葉にして表現することで俺自身の彼女に対しての気持ちを再確認する。以前の番組での一緒に協力して問題をクリアしたこと。その時まではクラスのアイドルから普通に話せるクラスの可愛い子程度だった。ただこの密室でどういう訳か彼女に対しての気持ちが色々変化した。
吊り橋効果の影響だって思ってる人も多いだろう。俺自身もそう理解はしてる。きっとこの恋愛は吊り橋効果によってもたらした勘違いだって。
だが俺はそれでも違うと否定したい。自分の心を、考えを他者に投げてしまってはそれは俺の意志の人生を捨てるということ。
無数にある選択肢は色々な人が、環境が、世の中が提示する。だがその選択肢を決めるのは他の誰でもない。自分が決める。
すると黙って聞いていた丸山が話してきた。
「私が好きな人がいるって話したの覚えてる?」
「あぁ、覚えてる。」
「私ね、今色々あって彼に対しての気持ちが色々分からなくなってきてね嫌いとかじゃないんだけど、今の気持ちは好きなのかなって、依存なのかなって。それともそのどちらでもない何かなのかなって。ねぇ◯◯さん、いや◯◯君はどうしたら正しく好きになれると思う?」
正しい恋愛。その答えはとても曖昧なもの。国、宗教、性別、年齢、世代、信条。それらによって答えは十人十色。千差万別。
皆は正しい恋愛、基正しく好きになれるにはどうしたら良いと思う?俺ははっきりとは分からない。ただこの密室で少しずつ感じ得た気持ちから自分なりの答えを伝えることにした。
「俺は....見返りを求めない事だと思う。見返りを求めるのはそれは取引だ。ただの仕事と同じだ。恋愛は仕事じゃない。自分がこうしたいからそうする。ただそれだ。」
「見返りを....求めない......。ただ自分がしたいからそうする.....。うん....!そうだね。私もそうだと思う。ありがとう。◯◯君!」
「.....。君って、どういう風の吹き回し?まぁ同じ年だからさんでも君でも苗字呼び捨てでも良いけど。」
「だ、だってずっとさん付けだと知り合いっていうだけの関係みたいで違和感があるんだもん。◯◯君もこの際だから私のことちゃん付けでもしてみる?それとも....私の名前にする....?」
「......。はぁ.......。なら丸山でいいか?」
「んー!逃げたね.....?まぁいいよ。私も苗字で呼んでるし。」
「はいはい。いいからさっさとドアの謎解くぞ。彩」
「はーい。って、え?」
「何?どした?丸山?」
「あ、戻った!さっき彩って呼んだよね?なんで苗字呼びに戻したの!?もう一回呼んで!」
揶揄われると無性にムカつくタイプなので揶揄ってやろうっと思って名前呼びを一回だけしてみた。人間不思議なものだ。意識すると好きな人の下の名前を呼ぶのに緊張するが揶揄ってやろうという気持ちで呼ぶと不思議と緊張しない。
ただ稀に訪れるデメリットとしてこういう風に名前呼びにしろって言われる場合もある。因みに俺は下の名前で呼ばれることがほとんどない為下の名前で呼ばれると恥ずかしくて嫌だ。苗字呼びの方が寧ろ好きだ。ただ彼女が出来たら下の名前で呼ばれたい。
とりあえずわがままになった丸山を適当に遇らってドアに意識を向けたい。
「はいはいその問題は後にしてまずはこっちから先にしようか。出ないとお前ここでお漏らしすることになるぞー。」
「あぁ〜!!!もうエッチ!変態!せっかく忘れてたのにー!」
少し前屈みになって口元をむーっとする。可愛い怒り方だ。だがどうしても考えつかないので丸山をこちらまで来て貰い手伝ってもらおう。そう伝えようとした時また丸山が言ってきた。だが少し真面目に真剣な感じだった。
「あの◯◯君。此処から出たらどうしても伝えたいことが2つあります。」
と、真剣な表情で答える丸山に思わず俺は息を呑む。伝えたい事が1つならもしかして告白かと期待してしまうが芸能界で活躍してる彼女の事だから俺ではないだろうとはなから期待してない。だが2つか....。色々考えてみたが予想がつかない。なら考えるだけ無駄だと思い目の前のことに集中する。
丸山も自分なりに解決したいのだろう。こちらに近付いてドアの目の前にくる。するとドアノブが付いていたであろう部分が急に動きだしドアノブとしての突起が出てきた。
「「えっ?」」
そうそれはまるで謎を解いたら遺跡の扉が開かれたようなものだった。しかしそのドアノブはどこか違和感がある。一般的な家屋のドアノブを比べ粗末というべきか壊れやすそうな作りだった。普通のドアでは見られない構造のドアノブだがどこか既視感もある。どこだったか.....。
あっそうか。これ
「クルマのドアノブだ。」
「え?クルマのドアノブ?」
そうそれはクルマのドアノブと非常に似ていた。
「でもクルマのドアノブなら何でこれは今までなくて私がきたら急に出てきたの?」
「それはこのドアノブの構造が格納式ドアノブだからだよ。」
「格納式?」
「“フラッシュハンドル”っていうんだけど、空気抵抗を意識した新しいシステムで最新の高級車やスポーツカーに取り入れられてるみたいだけど....。」
それを自動車じゃなくて普通のドアでやるか?普通。しかし現役のレーシングドライバーなのにそれに気付かなかった自分が情けない。完全に自動車と一般家屋のドアやドアノブを分離して考えていた自分のミスだった。
しかしこれがフラッシュハンドルシステムだと仮定すれば当然疑問に思うことがある。
あのシステムはドライバー、つまり鍵を持っている人がドアに近付くと作動する仕組みになっている。俺は最初目覚めた時手持ちを確認したことから分かるが鍵は持ってない。だが丸山が近付いたら反応したことから分かること、それは
丸山がこのドアの鍵を持っており
犯人と共犯者ということだ。
ドアの謎は元々たいしたものではないもので作っていたのですが段々これで良いのか?本格的な謎解き要素を用いるべきなのか考えましたが、これで良いかって勝手に自分に言い聞かせました。
シンプルな謎解きだけど一つの例題に対しどこまで考えられるか、人の思い込みがこの作品の見所です。
それと途中から恋愛要素を入れたのが原因の一つ。余計なものを入れてしまった影響で脱線が増えました。
でもしょうがないじゃないか。だって私が1番大好きなキャラなのですから。
本来ならとっくに完結してるはずですが後数話続きます。