丸山彩「えっ...エッチしないと出られない!?」   作:我来也

7 / 8
なんか長い。

確認せずまずは投稿したので気付いたら訂正します。


Winking☆Cheer

 少し歩き俺たちは近くの小さな公園に着いた。周りの遊具は実にシンプルで滑り台とブランコそして木でできた長椅子と近くに街灯が1つ。

俺と丸山はその長椅子に座っている。とても近すぎる訳ではない。普通に友達と座るくらいの間隔に俺たちは座っている。ただ不思議と繋いだ手は最後まで離さず握っている。いやいつのまにか握り合っている。というべきか。まるで行動と気持ちが矛盾している。いや行動に関しても矛盾している。握り合ってるのなら座る間隔もバカップルのように触れ合ってる感じでも良いのに、中途半端な感じだ。

 

 ───無言。元々丸山の話をしっかりと聞く為にここに来た。だから丸山が話し始めるか俺が話して下さいと催促することで会話が始まるのだろうが中々それが出来ない。お互い前を向いたまま、目線はそこから少し下を向いている。

 流石にこのままだと永遠に進まない気がしてきた為俺から何か話そうと思ってきた。こういう時は相手から何か話した方がきっと丸山の心情は軽くなると思ったからだ。

 

「.......今もかどうかは分からないが昔俺は自分の気持ちを、本音を誰かに言わない事が多かった.....。姉が2人いてね、何か言ったところで歳上の権力には勝てなかった。何か言ったところで結局何も変えられないなら何も言わない方が争うきっかけも起きないし面倒ごとも起きない。なら何も言わない方が良いよねって思ってね。そこから俺は自分の思いを伝える事をやめたんだ。」

「.......。」

「......ただある時変化が起きた。俺に“レース”というものに出会ってしまった。新しい世界で自分が求めてた何かそこにあったんだ.....。初めてレースをした時予選は5位だったんだ。初めてにしては上出来だったらしいんだが決勝はどうだったと思う?」

「悪かったの?」

「あぁ、コテンパンにやられて最下位さ。悔しいを通り越して清々しかったよ。決勝は皆領土戦争みたいなものだった。ここは俺のものだ。そんな気持ちをはじめ色々主張しないと勝てないんだ。───だから思い知ったさ。人は伝えないといけない生き物だって、伝えない想いは無いのと一緒なんだって。」

「うん....。」

 

 人は聞くべきかどうか迷った時はどの選択肢が無難なのだろうか。冷静に考えると聞かないべきだと思う。

 聞くべきかどうか迷うような質問は少なからず相手の心情や事情に踏み込む事になる。生半可な覚悟や思いで踏み込むと却って失礼だったりもするしその責任を負うことにもなる。

 相手はその責任をとって欲しいと思うだろう。一緒にその思いを共有して一緒に笑って泣いたりと。

 だからお互いの為に背負う覚悟がないのなら聞かない方が良いのだ。

 

 だがそれはあくまで自分ではなく相手の心情の問題だ。それは当の本人でしか分からないことだ。相手の心情を必要以上に考え込んだりする事で分からない問題を考え続ける。その結果人は意味のない悩みを抱える。

 世の中の悩みを抱えてる人の中でおそらく半数を占めるのは自分ではなく相手のことを考えて悩んでることが多い。例えば□□さんがどう思うだろうか。とかだ。

 はっきり言ってそんな事は考えなくて良い。そんなのは相手が考え決めることだ。自分ではない。問題は相手ではなく自分自身。自分はどうしたいのかだ。

 先程は聞くべきかどうかについて、あの問題は相手の問題だとすると自分の問題は伝えるべきかどうかだ。そこだけを考えるべきだ。そしてその答えは伝えない想いは無いのと一緒。その想いを無いことにして良いのであれば伝えなくても良い。

 だが俺は彼女の想いを無かったことにしたくない。

 

「だから丸山。俺はあの空間で起きた出来事や丸山が気付いてたけど言えなかった事に関しては気にしてない。無事生還出来たし丸山も無事だった。それだけで十分さ。それが今の俺の気持ちの一つさ。」

 

 今思えば目覚めてから例のメッセージを観た時丸山が小声で「聞いてないよ。」と言っていた時には既にある程度分かっていた、という事か。あそこで丸山が素直に伝えていたらきっと俺は丸山に対して一定の距離感を保ってドアのトリックでも考えていただろう。何せこれは丸山の知人からの嫌がらせって分かってることだからだ。

 あの時丸山がその事を言わずに一緒に謎を解いていく内に彼女との距離感が縮まった。そう思うと吊り橋効果というのは恐ろしいものだ。分かっていても好きになるのだから。いやもしかしたら単純に丸山の良さが不思議と感じたのかもしれない。

 

「....うん。◯◯君ありがとう。私....◯◯君に嫌われたんじゃないかって....そうなったら.....私....どうしようって....。」

「そんな事はない。嫌いになるなんてない。」

 

 彼女に伝えたいがどうしても緊張する。分かっている。丸山に想いを伝えてそれが実を結ぶかどうかなんて結局丸山の問題でしかないということに。だったら今のこの曖昧で片想いでも良いのかなと思ってしまう。

 

 

 

 だけど人というのは不思議なものだ。片想いのままの方が傷付かず済むしその方が楽だと分かっているのに

 

 

 人はそれ以上に何かを伝えたいものらしく、その先を知りたいものだ。

 

「丸山......来週の日曜日空いてる?」

「....え?来週の日曜日?うん.....空いてるけど、どうしたの?」

「来週良かったら俺のレース観に来てくれないか?まぁ場所が三重県だからここから遠いけど、あぁ、お金は諸々出すよ。チケットも。遠征費も」

「三重に...!?ふふっ...!結構遠いね。旅行みたい。.....いいよ。応援しに行く!あ、でもどうしようかな。」

「ん?何が?」

「折角の旅行みたいな感じだから誰か誘おうかなって思ったんだけど....」

「ふっ.....誘いたいなら誘ったらいいさ。何、チケット代くらいは出すさ。」

「パスパレの皆は予定入ってたから.....あ、花音ちゃん誘おうかな!バイトも休みだったし。」

 

 すみません。チキっちゃいました。お酒ではないが何か勢いがないと言えないみたいです。でもこうなったら来週丸山が観に来てる前で何が何でも優勝してみせる。そして伝えたい。

 

「あ、丸山。前言ってた2つ伝えたいことのもう1つは何?」

 

 ふと思い出した事を丸山に聞いてみたが

 

「それは....その.....ま、また今度でいいかな....!?ちょっと今はまだ言えそうにない。」

 

 彼女も俺と同じくタイミングがあるらしい。ちょっかいをかけてみようかと思うが、自分が出来てないのにそれをするのも何だか卑怯な気がしたからやめた。

 ついでに思い出した事があった。

 

「そうだった、丸山。来週の事についてと例に約束も兼ねてスマホ出して、連絡先交換しよ。」

「あ、うん!脱出した後の約束覚えてくれてたんだね。ありがとう。」

「礼を言う程じゃないでしょ。」

 

 つい照れ臭く感じて応えてしまう。お互いL◯NEを交換して終わりかと思ったが、丸山が念の為にと言って電話番号も交換しよう。と言ってきた為電話番号も交換した。人混みが多い時とかL◯NEより電話番号で電話掛けた方が都合の良い時があるし問題はないだろう。

 

「なんだかんだで脱出した後の約束3つの内2つ叶えられて嬉しい。」

「3つ....?あぁー、お互いの観に行って応援しようって話だっけか?」

「そうだよ。え....?もう忘れてたの?」

「い、いや忘れてた訳じゃない。他の事考えてて今思い出しただけだ。」

「いやそれ忘れてるじゃん。もー!私のも観に行きてよ?」

「.....あぁ。観に行く。ペンライト買っとくか......。」

 

気付いたら泣いていた丸山はもういない。もういつもの丸山に戻ったようだ。安心した。後は俺が結果を出すだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────丸山────

 

 私は今花音ちゃんと一緒に三重県に向かって新幹線に乗ってます。あの後彼が家の途中まで送っていただいてその後は色々疲れが溜まって爆睡してました。

 その後L◯NEでやり取りをしてたんだけど、男の人ってあまり絵文字使わないのかな?◯◯君と連絡しても絵文字使わないからよくわからないんだよね...。でもその変わりスタンプは送ってくるんだけど、変わったスタンプなんだよね。正直他の男の人が使ってたらちょっと反応に困るかな....?「なんでこのスタンプ買ったの?」って送って聞くと「面白いから」って、◯◯君らしい偶に変なところの一面。

 

 それから◯◯君からチケット送るから住所教えてとL◯NEで聞いてきたから住所を送ると数日後私宛の郵便物が届きました。中を確認すると予想通り観戦チケットが私と花音ちゃんの分の2枚とまさかの新幹線往復券が2人分ありました。これにはびっくりしました。しかもグリーン車!直ぐに電話して礼を言いました。彼は「俺が誘ったのだからそれなりにもてなして当然だから気にするな。」と彼らしい変わった返事でした。花音ちゃんに新幹線のチケットのことを伝えると「ふえぇ〜、いいの?」といつもの可愛い反応が来ました。

 花音ちゃんは道に迷いやすいので、花音ちゃんが分かる範囲で待ち合わせを決めて一緒に駅に行き新幹線に乗ってます。彼女は私の恋愛事情を勿論知ってる為色々聞いてきます。どこまで進展したの?とか今日は楽しみだね。等ガールズトークで盛り上がってます。

 今日も一緒に恒例の旅の栞のような物を作りました。内容は、メインの彼が走る鈴鹿サーキットを中心に観戦スポットやサーキットの歴史、彼の参戦するF4というカテゴリーの解説。後は食べる事が出来るか分からないがグルメ等、まるで公式のガイドブックのような出来た。きっとこの旅の栞をレース関係者が見たら出来の良さに感心するだろう。

 

 新幹線から降り電車やバスに乗り換えて私たちはサーキット会場に着きました。他のサーキット場には足を運んだことはあるけど鈴鹿サーキットと花音ちゃんと一緒に来るのは初めてです。

 花音ちゃんも「すっごく大きいねー。人も沢山いるね。」と感想を述べている。私もいつもとは違う気持ちの昂りを感じる。こっそり応援しに行ってた時とは違う、◯◯君から来て欲しい。と招待されたのだ。期待してしまう。

 

「ふふっ、彩ちゃん。今日楽しみだね。行こう。」

「うん!行こう、花音ちゃん!」

 

 鈴鹿サーキットには世界でも類をみない特徴がいくつかある。1つはサーキットと遊園地等リゾート施設が一緒になってる事、もう1つは世界で唯一と言っても良い、8の字サーキットとなっている。通常のサーキットは大まかな括りでいうと丸の字型となっており、立体交差がないのだが。鈴鹿サーキットは立体交差があるのだ。

 特別なサーキットで彼からの特別な招待。何か起きないわけがない。

 

 彼が走るのが昼の2時からなので最初は遊園地で遊んだりグルメも堪能した。花音ちゃんはクルマのこともましてはレースの事なんて何も知らないけどこの場所でとても楽しんでるみたい。良かった。これならパスパレの皆と機会があったらここに来て遊びたいな。

 

 あっという間に時間が迫り私達はとある場所で席を取って始まるのを待ってます。ここはバトルも多い上に大型モニターがありレース全体が分かるのでとてもオススメの場所なのです。私たちはちょっとした小腹を満たせる物と飲物を持ってこれから始まるレースを待つ。

 

 各マシンがグリッドに着き実況者がチームと選手を紹介しています。そして予選1位の紹介が始まったのですがまさかの彼、◯◯君でした。白色をベースに以前見た赤色ではなく、パステルピンクのラインがかかったデザインのヘルメットで私と同じ色だったから直ぐに覚えた。

 

 レースが始まるとあの少し小さなクルマなのに迫力のあるエンジン音が凄い。正しくモータースポーツの”甲子園“と言った感じです。だから彼の後ろにいるクルマも彼にピッタリ付いてて色々な場所で勝負を仕掛けてます。でもそれを彼が上手に防いで私達も観客も実況も興奮してます。

 

「彩ちゃんの好きな人凄いね。皆その人のバトルに夢中だよ。」

「んふふっ。そうだね。本当に、凄い。」

 

 凄い。

 語彙力がなくなっていくってこう言う事なんだろうなって思う。身体の五感や心に刺激が加わりただその一点だけに夢中になっていくと、何も考えられない。

 私達だけじゃない。周りをこんな風にしてしまうことを彼は、彼とバトルをしてる人はしている。

 

 私もこんな風な心を奪われるライブをしたい。

 

 

 

 

─── ────

 

 

 

 今回は予選で上位を狙う方を重点的にマシンをセットアップした。その甲斐もあり予選で1位をとったが、レースペースはあまり良くはなない。それを分かった上でやってきたから案の定決勝は後ろのクルマの方が速い。

 でもルール上問題ない範囲で出来る限りブロックする。そうすれば予選1位の俺からポジションを奪われることなんてない。相手のマシンを抜くポイントなんて限られてるし、それさえ分かってれば怖くない。

 今日は、今日だけは絶対にこのポジションを誰にも奪わせない。

 丸山達がどこから観てるかはフォーメーション・ラップで既に見つけた。好きな人が俺のレースを観に来てるんだ。情けない姿なんて見せられるか。

 

 後ろからライバルが勝負を仕掛けに揺さぶりをかけるのをサイドミラーで確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───しゃしゃり出るな。1番の場所(レースと丸山の隣)は、俺のものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───丸山───

 

 凄い戦いを制して優勝したのが彼、◯◯君だった。早く彼の元へ会いたくて花音ちゃんと一緒に彼のいる場所に向かう。ただ私たちは関係者としてではなく一般として応援しに来たので柵の1番前に来たけど、それでも彼との距離は若干遠い。でももし彼がここに気付いて来てくれたら勢い余ってハグしたくなりそう。それくらい私も嬉しかった。

 

 インタビュアーが今日の優勝者である彼にインタビューをしている。よくある今日の結果に賞賛のおめでとうと、今の気持ちを聞いてます。それについて彼が

 

「今日はスポンサーをはじめチームの皆には感謝です。今日は自分の中で特別でいつも本気だけど、今日だけは執念といいますか、強い意志と意地がありました。」

『なるほど。その特別負けられなかった理由は何ですか?」

「今日はある特別な人が観に来てくれてるんです。その人に恥ずかしくない姿を見せたかったんです。」

『そうなんですね、では良かったらその特別な人に向けて一言頂けますか?」

 

「はい。今日は本当にありがとう。────大好きです。」

 

 

 彼がそう告げた後インタビューをそっちのけである方向に向かって走って来た。それは私のいるところだった。こんな人混みの中でどうやって気付いたのか分からないけど彼が嬉しさと恥ずかしさが混ざった表情でこっちに来た。

 周りの視線なんて今は見えない。そう今はあの時の密室と同じ周りが真っ白で今見えるのは彼だけ。

 私は腕を広げて柵越しにいる彼を抱きしめた。彼は私と違って優しく抱き返してきた。

 

「丸山、今日はありがとう。

.....泣いてるけど、俺の声聞こえる?」

「うん.....。聞こえる....よ?」

「ん、分かった.....。本当はあの公園で伝えたかったけど、こういう感じじゃないと言えなかった....。────俺は、丸山。君が好きです。」

「私も!◯◯君が好きです。大好きです。」

 

 やっと私の想いが伝える事ができて貴方の想いが知る事が出来た。恋愛相談をしたら友達が変わったやり方だったけど動いてくれた。貴方と一緒に脱出方法を考えた。あの空間で少しずつアピールをしていたけど、段々自分の気持ちが分からなくなってきた。貴方は真剣に脱出方法を考えていたけど、私はそれよりも自分の気持ちや考えを優先した。その不純な考え方が嫌になった。

 でもそんな私を貴方は()()導いてくれて私を好きになってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──── ────

 

 あのレースからしばらく経ち俺はとある場所に向かっている。それはとあるライブイベント会場だ。彼女───いや彼女達Pastel*palletesが出演するとのことでやって来た。他にも彼女達と変わらない年齢のガールズバンドも出るらしい。なんでも今は大ガールズバンド時代とのことだ。

 

 アレから連絡こそはお互いしてるがあのレース以降会ってはいない。お互い忙しいのもあるが彼女は一応アイドルでもあるのでバレると色々問題が起きると思ったので控えていた。だったらレースのあれは大丈夫だったのか?って思う人がいるだろうが奇跡的にバレなかった。本当に次は気をつけます。

 だが彼女はアイドルの自覚はしておりそういう恋愛を公にしてはいけない事は理解してるが気持ちが勝ってるのだろう。会いたい。会って遊びたい。的なことが電話やL◯NEで伝わってくる。───可愛い。

 

 とりあえず会場内で座るところを探すことにしたが全然ない。なんで?仕方なく立ち続けて待つしかない。幸いにもあと数分後に始まるから問題ない。

 程なくして大きな音色とそれに合わせて観客の歓声でライブが始まった。初めて観るライブ。正直彼女以外殆ど興味がない。知らないバンド、知らない演奏曲。

 だというのにどのバンドも特徴がありそれが曲として伝わる。個性というべきだろうか。それが個人的に良かった。どのバンドも素敵だった。

 何組かのバンドの演奏が終わった後、彼女達の出番が来た。ペンライトも丸山のパステルピンクにして皆と一緒に振って彼女の輝きを俺は楽しんだ。

 

 

 しかし素敵な彼女のライブはあっという間に過ぎてもう終わりが来てしまった。ここで丸山が最後の曲に入る前に一言言ってきた。

 

「皆今日は本当にありがとう。あっという間に最後になりました。最後の歌を歌う前に、その曲について一言下さい。」

「その曲は私の大切な人に向けた応援ソングでもあり私の想いでもあります。聴いて下さい。」

 

 

 

 

 

 

『Winking☆Cheer』

 

 

 




次回で完結予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。