疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い 作:雨野坂
この躰は一体、何なのだろうか。
俺は人間に戻れたのか?
しかし、胸元で赤く輝く灯火が、俺の躰が未だラプチャーのそれであることを告げていた。
手足の感覚は、どうやら人間だった頃と遜色ないようだ。ただ、背丈は少し縮んでいる。元々は身長一九〇センチほどあったはずだが、今では一六〇センチほどしかない。
心の動揺はまだ収まらず、考えたいことも山ほどある。だが、拠点の強化を急がなければならない今、いつまでも自分の躰について悩んでいる場合ではないだろう。
なに、少し動きやすくなったと思えば悪いことばかりでもないじゃないか。
ひとまず、仲間たちのもとへ向かうことにした。
一階へ降りると、ラプチャーの彼は暖炉のそばに、流れ者のニケはベッドの上に横たわっていた。二人とも、昨日と変わらない場所にいる。
どうやら、ラプチャーの彼がこちらに気づいたらしい。
俺の姿を見て驚いているようで、手足をわちゃわちゃと動かしている。
俺は彼を持ち上げながら、ふっと笑った。
すると彼は、俺の頭をよしよしと撫でてきた。
……どうやら、俺の方が慰められてしまったらしい。
おかげで、少しばかり動揺も収まった。
彼を抱きかかえたまま、俺は流れ者のニケへと近づいた。
彼女は眠っているようだった。顔色……いや、正確には顔色を確かめられるわけではないが、どうにも具合が悪そうに見える。
それも当然か。
俺たちラプチャーは、よほど大量のエネルギーを消耗しない限り、自らのコアから生み出されるもので事足りる。だが、ニケは人間と同じような思考を持ち、長期間の飢餓にも耐えられる躰を備えているとはいえ、食事を摂らなければ調子を崩すこともあるらしい。
こいつに頭がおかしくなられても、少々困る。
そう考えた俺は、この家に食べられるものが残っていないか探してみた。
見つかったのは、わずかな缶詰だけだった。
アークにいた頃、俺はパーフェクトから作られた料理以外、ほとんど見たことがなかった。かつての生の食材や加工食品に美食家たちがとんでもない値段をつけている、という噂を聞いたことがある程度だ。
当時の俺の給料を軽く超える価値がある食料だったとしても、今の俺にとっては、ただの炭素系物質にすぎない。
……まあ、ラプチャーの俺には必要ないものだ。
流れ者のニケに与えるのは少々惜しい気もするが、ほかに食料がないのだから仕方がない。
俺はベッドのそばまで戻り、彼女の肩を軽く小突いた。
「おい、起きろ」
「ひゃっ……あれ? ここは? 指揮官様、どこでしょうか?」
「お前の目の前だ。それより、俺の姿は見えないだろうが、今から手元に渡すこれを食べろ」
「食糧でございますか! いえ、指揮官様が召し上がってください。ニケが指揮官様より優先されることなどございません!」
「俺はもう食べた。だから、これはお前が食べろ」
「そ、そうでございましたか。では、遠慮なくいただきます」
彼女は缶詰を受け取ると、中身を手で掬いながら食べ始めた。
……ずいぶんと豪快な食べ方だな。手が汚れることなど気にもしていないらしい。
「パーフェクト以外のものでも、ニケは消化できるはずだ。万が一のこともないとは思うが……調子はどうだ?」
「このお料理、少し懐かしい味がする気がします。遠い昔に食べたことがあるような……そんな気がするのです」
「そうか。これは、かつて極東と呼ばれた地域にあった加工食品だ。名前は確か……焼き鳥だったかな。この家に住んでいた人間が、たまたま持っていたらしい」
「やきとり……。何か、思い出せそうな……」
彼女はそう呟き、しばらく考え込んだ。
「そうか。なら、お前は極東の出身だったのかもしれないな」
「そうかもしれません」
彼女は、どこか照れくさそうにはにかんだ。