疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い 作:雨野坂
流れのニケちゃんの為に食糧を探したよ、見つけた食糧は偶々故郷の味だったらしい、良かったね。
流れ者のニケは食料を食べ終えると、再び眠りについた。
俺たちラプチャーには人間との交渉などできないため、彼女を拾ったわけだが……俺が仮にも人間の姿を取り戻した今、彼女の世話を続ける意味はあるのだろうか。
しかし、結論を出すにはまだ早い。
人間との交渉が本当にうまくいくと確信できるまでは、生かしておいてもいいだろう。ひとまず、そう仮定しておくことにした。
本来なら、このような状況で足手まといを抱えておく必要などない。
それなのに、彼女に対して同情に似た奇妙な感覚を抱いていることに、俺はまだ気づいていなかった。
現在の俺たちは、廃墟群の中にある一軒家を改造し、そこに潜伏している。
流れ者のニケである彼女、ラプチャーの彼、そして俺――人型ラプチャーの三人だ。
以前、ヘマをやらかした人間とニケの部隊について、捜索のための人員が送り込まれてくる様子はない。どうやら、人間側にとってこの土地の優先度は限りなく低いらしい。
ラプチャー側から見れば、この辺りは大型の個体の縄張りにあたるため、決して住みやすい場所とは言えない。ただ、幸いにも縄張りの主はあまり活動的ではない。少なくとも当面の間は、ここで暮らしていけるだろう。
そんな状況の中、俺たちは先日と同じように拠点の強化に取りかかった。
新たに手に入れた人型ラプチャーの躰には、特殊な能力が備わっているらしい。念動力によって、周囲の物質に直接干渉できるのだ。
これを利用すれば、風化した煉瓦の構造を再構築し、強度を高めることもできる。壁や床を補強し、侵入しにくい要塞のような拠点を作り上げる。それが今回の目的だ。
そもそも、ラプチャーは元来エネルギー体に近い存在だと、書籍で読んだ記憶がある。
エネルギーに指向性を持たせることで、物質として安定させている……という話だったはずだ。
ならば、この力を使えば、新たな物質そのものを創造することもできるのではないか?
そう考え、実際に試してみた。
結論から言えば、できないことはなかった。
ただし、エネルギーの消耗があまりにも激しい。おまけに、短時間で崩壊してしまうほど不安定な物質しか作れなかった。
危険なうえ、エネルギーの加え方によっては深刻な放射線被曝を引き起こす可能性まである。
……あ、これは駄目だな。
俺はすぐに実験を中止した。
攻撃手段として使うにしても、まともな戦術には組み込めない。せいぜい、どうしようもなくなったときの最後っ屁くらいだろう。
そんな危険な能力に頼るより、周囲にある物質を利用した方がよほど効率的だ。
俺たちは改造したリアカーを使い、近辺にある資材を片っ端から集めることにした。
リアカーといっても、ただの荷車ではない。サスペンションの弾性率を調整し、ゴムタイヤの強度も見直してある。荒れた地面でも荷物を運びやすくした、いわば改造運搬車だ。
集めた資材を使って、一軒家を徹底的に改造していく。
まずは出入口だ。パスワード式のオートロックを設置し、屋内には防犯カメラをはじめとした簡易的なセキュリティ機構を組み込む。簡単な演算装置も作ることができたので、制御系統も何とかなるだろう。
俺やラプチャーの彼にとって、キッチンやシャワーなどは必要ない。
だが、流れ者のニケである彼女には必要だ。
彼女の精神状態が悪化して、いわゆるメンタルブレイクを起こされても困る。人間に近い生活環境を整えておくことは、彼女をここに置いておくうえでも無駄ではないだろう。
……別に、彼女のためだけに作っているわけではない。今後、人間と接触する機会が増えたときにも役立つはずだ。
そんな理屈をつけながら、必要な設備を次々と整えていった。
ただ、俺には内装を整える心得などまるでない。
完成した部屋は、質素という言葉がよく似合う仕上がりになった。
下手をすれば、改造前の瓦礫だらけの家の方が、まだ趣があったかもしれない。
まあ、住めれば問題ないだろう。
家屋の一室には、リカバリールームも設けておいた。
要するに、工房と手術室を兼ねた整備施設である。ロボットアームや精密作業用のカメラなどを備え、機械部品の修理や細かな作業を行えるようにした。
以前、流れ者のニケに取り付けた、彼女の戦死した仲間たちのパーツにも、いずれ不具合が生じるだろう。
そのためにも、簡易的な人間ドックならぬニケドックを実施できる環境は必要だ。
ついでに、俺たち自身の整備もここで行うことにしよう。
そうして、ようやく家屋の改造が一段落した。
外観は、あえて元のように少しばかりボロく見える状態にしてある。
こんな場所に傷ひとつない建物があれば、どう考えても怪しいからな。外から見れば廃墟の一軒家だが、中に入ればアークの設備にも劣らない環境が整っている。
我ながら、とんでもないものを作り上げたものだ。
これだけの技術があれば、設備関連の会社に勤めても、それなりにやっていけるかもしれない。
……まあ、今のところ、その予定はないのだが。
俺が家の改造に没頭している間も、ラプチャーの彼はせっせと物資を運んできてくれた。
おかげで作業は随分と捗った。
やはり、持つべきものは信頼できる仲間だな。