疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い 作:雨野坂
今日は家の地下に養殖場を作ることにした。
地下室は二坪ほどの広さで、鉄筋造りの殺風景な空間だ。だが、空調設備やエアコン、さらには外気を取り込むための防塵フィルターまで設置してある。育成環境としては完璧と言っていいだろう。
ここでは主に、野菜に付いているような小動物? やら、野菜? やらを育ててみようと思う。
……いや、そもそも何を育てればいいんだ?
俺には生物に関する知識がほとんどない。何が食べられるのかも分からないし、体に害のあるものを仲間に食べさせるわけにもいかない。
仕方がないので、近辺の廃墟を巡って、農業や食用生物に関する書籍や資料を探すことにした。
ニケは家に置いてきた。
彼女は目が見えない。それでも「何とかお手伝いします!!」などと言ってついてきたが、正直なところ、資料があちこちに散乱する未来しか想像できなかった。
……まあ、彼女が悪いわけじゃない。全部俺が悪いんだけどな。
そんなことを考えながら廃墟を探し回っていると、ラプチャーの彼が何やら紙切れと、妙な石ころのようなものを持ってきた。
いや、石は流石に食べられないだろう。
ニケだって、さすがにこんなものを食べるとは思えない。
そう思いながら紙切れを読んでみる。
『長期保存芋! 遺伝子改造によって百年くらい保存できます!!! たぶん』
……すんごい胡散臭い。
百年くらいって何だ。最後の「たぶん」は何なんだ。
これ、本当に大丈夫なのか?
俺は紙切れと彼を交互に見た。
すると彼は、任せろと言わんばかりに堂々と胸を張っている。
……いや、そこまで自信満々にされると、逆に信じていいのか悩むんだが。
そのとき、彼の頭の中に何かの映像が浮かんだ。
麦わら帽子を被った、恰幅のいい男性。
男は満面の笑みを浮かべ、全力でサムズアップしている。
……さては、こいつが怪しい芋の開発者なのか!?
俺がそう疑った瞬間、謎のおっさんはうんうんと満足げに頷いた。
そして、キラキラと輝きながら消えていった。
……何なんだ、あのおっさんは。
まあ、いいや。
こうして俺たちは、彼の尽力によって、晴れて怪しげな芋を発見することができたのだった!
ちなみに俺の成果は、よく分からない草だけである。
不甲斐ないクズでごめんよ……ヨヨヨ。
家に戻った俺は、さっそく地下室の土に謎の芋を植えてみた。
すると――
みしみしみしっ!!
「なんじゃああああ!?」
芋は植えた途端、地面を押し広げるように急成長を始めた。
なんだこいつ、化け物じゃねぇか!
……あ、俺もだったわ。
などとセルフツッコミを入れている場合ではない。
芋はみるみるうちに巨大化し、地下室の空間を圧迫していく。
「うわぁ、かなりデカくなっちまったぞ! 大丈夫なのか、これ!?」
その直後だった。
巨大化した芋から、無数の蔦が超高速で伸びてきた。
「マジで!? ヤベェよ、こいつ!!」
とんでもない化け物に遭遇してしまった。
このままでは地下室がボロボロになってしまう!
せっかく四時間くらいかけて作ったのによぉぉぉ!!
「くそっ、もうどうにでもなれ! この野郎、こなくそぉぉぉ!!」
俺は全力で謎の芋の怪物にタックルをかました。
その勢いのまま、どっせい! と怪物を宙に放り投げる。
そして、全身の筋肉を総動員した渾身の正拳突きを、奴の土手っ腹に叩き込んだ。
ドゴォンッ!!
怪物は壁のコンクリートに激突した。
「さあ、まだまだこっちの攻勢は終わってないぜぇ!!」
俺は間髪入れず、次々と全力の拳を叩き込む。
右! 左! 右! 左!
拳を打ち込むたびに、地下室が揺れる。
……いや、待て。これ、地下室の方もヤバくないか?
そんな疑問が頭をよぎった頃、怪物は蔦を器用に横へ振り始めた。
フリフリ、フリフリ。
……これは、もしかして。
「白旗か?」
どうやら、降参の意思表示らしい。
つまり、俺は勝ったのだ!
この異種族間格闘技戦に!!
「ンンンン、ウィナーーーッ!!」
……暑苦しいノリは、ひとまずここまでにしておこう。
降参した怪物は、器用に蔦を操り、芋を五個ほど差し出してきた。
「マジか。これ、俺に献上するってことか?」
なるほど、そういうことか。
俺は差し出された芋を受け取った。
「いいじゃねぇか! ハハハハーッ!」
こうして俺は、食料にもなりそうなミュータントを手に入れたのだった。
……ペット権、食料権、その他もろもろ込みでな。
ただし、地下室の修繕費については、まだ考えないことにする。