疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い 作:雨野坂
ラプチャーとなった主人公は、悠々自適……とまではいかないものの、人間だった頃と比べれば、少しだけ裕福な生活を送っていた。
一方で、ここで気になることが一つある。
彼がかつて所属していた部隊のニケたちは、いったいどうなったのだろうか。
私たちの指揮官が、死んでしまった。
一目散に逃げていった彼を、ラプチャーは容赦なく殺した。
人間として褒められた人物ではなかったことは、おそらく部隊のメンバー全員に共通する認識だろう。
それでも、私たちのようなはぐれ者にとっては、彼こそが指揮官として適任だったのだ。
私たちは少し……いや、大分、性格がおかしい。
更生館に入れられるほどではないにせよ、世間一般とはズレた感性を持っている。
かくいう私も、ひどい臆病者だ。射撃訓練では味方に誤射してしまうほど、メンタルが弱い。
だからこそ、彼を初めて見たとき、私はこう思った。
――ああ、私よりも弱い存在がいるんだ、と。
彼の存在は、私にとって救いだった。
身近な上司でありながら、私よりも貧弱で、放っておけばすぐに死んでしまいそうな人間。もちろん、ニケである私より人間の指揮官が弱いことくらい、百も承知だ。
けれど、彼の弱さはそういうものとは違った。
肉体の強さではない。もっと根本的な何か――魂そのものが弱いのだと、私には思えてならなかった。
そんな指揮官も、死んでしまった。
私たちはこれから、別の部隊へ補充要員として回されるのだろう。
そして、そこでもまた周囲に馴染めず、先の見えない日々を送ることになる。
そう考えると、気が滅入った。
まさか、自分にとって彼がここまで大きな存在になっていたなんて。
あのとき、彼を助けていれば。
そんな、今さらどうしようもない仮定が頭をよぎる。
……ああ、これからどうしたらいいんだろう。
「ねぇ、あいつを探しに行かない?」
突然、モルグが口を開いた。
「モルグ、どうしたのよ急に。そんなこと言い出して」
「いやさ、アタシの勘だとね、あいつはまだ死んでないんじゃないかって思うわけよ」
「はぁ!? モルグも見たでしょ! 指揮官がラプチャーに殺されるところを!」
「そうですよ、モルグさん。彼が生きているなんてあり得ません!」
「ニョル、あんたまでアタシのことを信じられないっての?」
私たちにそう迫るモルグの表情には、妙な自信と期待が入り混じっていた。
……間違いない。
また何か、変な電波を受信したのだろう。
彼女は今までも、こうして突拍子もないことを言い出しては、それを的中させることが何度もあった。
本人いわく、適当を言っているだけらしい。
しかし、七割も当たっていれば、もはや予言と呼んでも差し支えないのではないだろうか。
もっとも、その予言というのも、犬の糞を踏むだとか、石につまずくだとか、指揮官の抜け毛がひどくなるだとか、どうでもいいことばかりだったのだけれど。
……今回の予言も、もしかしたら本当なのかもしれない。
「でも、やっぱり彼が生きているとは思えません! 私の脳内メモリーがそう言ってます!!」
この子はニョル。
脳内メモリーと称して、指揮官との思い出を保存する専用フォルダーを作っている、筋金入りの偏愛者だ。
以前、彼女の部屋を見たときは本気でゾッとした。
主に、指揮官の顔だけを切り抜いて、あちこちの男性グラビアに貼り付けたコラージュ。
そのポスターには、わざわざ『理想の指揮官集』と名付けられていた。
……怖すぎる。
ちなみに、今回の指揮官の死に顔まで、どこで撮影したのか知らないが、しっかりと収録されている。
本当に怖い。
「いや! 生きてる! アタシの勘がそう言ってるんだ!」
「そう言っても、モルグの勘は大きな出来事になると当たらないじゃないですか!」
「うっ……それを言われると辛いけどさぁ。何かこう、感じるんだよね。あいつの脳波的な何かをね☆」
「何の答えにもなってないです!」
まったくもって、そのとおりである。
「モルグ、仮に指揮官を探すとしても、どこを探すつもりなの? 闇雲に探し回ったって、ラプチャーに殺されて終わりだよ、私たち」
サリパがもっともな疑問を口にした。
すると、モルグは待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。
「それがさ! 何となく方角が分かるんだよ! マジで、何でか知らねぇけどさ!」
「……方角が分かるにしても、食料はどうするの? 今、手持ちなんてほとんどないよ」
「ふっふっふ。それはなぁ……これだ!!」
モルグが、懐から何かを取り出した。
「あっ! それは、指揮官が私たちに隠れて、こっそり貯めていたへそくりですぅ!」
ニョルが声を上げる。
「そうそう。もうあいつは公的には死んだ扱いになってるし、それなら私たちが有効活用してやるのが華ってもんじゃん?」
「えぇ……でも、それって相続とかの関係で問題になるんじゃ……」
「構うもんかよ! どうせアークから無断で出ちまえば、もう戻ってこられねぇ。手切れ金みたいなもんよ!」
「モルグ、ナイスですぅ!」
「おっ、ニョルも行く気になったかい?」
「このまま別の指揮官に就くくらいなら、死んだ方がマシですぅ! だから、命懸けで探すですぅ!!!」
「ははは! よし、サリパはどうするんだ?」
「この状況で私だけ残るのも無理でしょ。……ついていくよ」
「おし! 決まりだな!」
モルグは勢いよく立ち上がった。
「それじゃあ――指揮官捜索作戦、開始と行くかァッ!!」