疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い 作:雨野坂
私は量産型。過去の記憶は、ほとんどない。
それなのに、かつての故郷への郷愁だけは忘れられず、私の脳裏に強烈な印象を残し続けている。
あの家に刻まれた傷。家族で囲んだ食卓。大好きだったペットのチロ。家の裏を通り抜けた先に広がる田畑で遊んだ記憶。
どれも、忘れられない思い出だ。
しかし、私はアークが造られてから生まれた存在のはず。
ならば、この過去への思いは一体誰のものなのだろうか。
私ではない私が、頭の中にいる。
それなのに、案外心地よい。
そんな不思議な気分を抱えながらも、過去の自分がどんな存在だったのかにかかわらず、今の私は生き抜くために、そして人類のために頑張ろうと、これまで任務に励んできた。
それなのに、どうだ。
私は生きたデコイとして、ラプチャーに捧げられたのだ。
何もかもが虚しくなった。
復讐に生きるほどの気概もない。今まで本当に仲良くしてきた仲間たちに裏切られ、自分という存在そのものを消してしまいたくなった。
もう、何もかもが嫌になった。
そんなとき、彼が現れた。
そう、指揮官様だ。
素性も分からない、怪しい人物。そもそも人間ですらないのかもしれない。地上で長い間彷徨い続けるなんて、私の経験則からすれば馬鹿げた話だ。
もう、自分が死んでも構わないと思っていた。
それでも、なけなしの生への執着だけは、まだ私の中に残っていたらしい。
情けないことに、私は彼に命乞いをした。
その結果、彼は私を助けた。
仲が良かったはずなのに、私を生贄として差し出した仲間たち。
赤の他人であるにもかかわらず、私を助けてくれた指揮官様。
どちらが正しくて、どちらが間違っているのか。そんなことを考える気力すら、今の私には残っていなかった。
もう、生きる理由なんて特にない。
それでも、私を助けてくれた指揮官様への恩だけは返してから死のうと思う。
そうでもしなければ、あまりにも自分が惨めだから。
「指揮官様、なぜ私を助けたのですか?」
そう尋ねたところで、きっと指揮官様は「役に立つと思ったから拾った」とでも仰るのだろう。
私は役に立てない。
少なくとも、指揮官様が思い描いているような働きは、とてもできそうにない。
だから、聞かないことにした。
尋ねたところで、意味のないことだから。
私の目は壊れていて、何も見えない。
けれど、昔からの特技のおかげで、目が見えなくとも、目を閉じたままでさえ、ある程度なら物の輪郭を感じ取ることができる。
その感覚で捉えた指揮官様の姿は、人間のようでいて、人間ではない。
そして、その隣にいる人物は、そもそも人の形をしていなかった。どことなく、ラプチャーに似ている気もする。
仮に指揮官様たちが人類に仇なす存在だったとしても、今の私にはどうでもよかった。
人類を救おうとする心には、すでにひびが入り、もう使い物にならなくなってしまったのだから。
だからこそ、これからは彼に付き従い、彼の力になれるよう尽力しよう。
そうすることでしか、私は自分の存在意義を保てない。
そうしなければ、自分が何のために存在しているのか分からなくなり、立っていることすらできなくなってしまいそうだった。
私は、そうやって生きていく。
今までの自分を軽蔑し、過去の自分に別れを告げ、私は生まれ変わる。
明日になっても、指揮官様が私を見捨てていないことを信じながら。
今日もまた、眠りにつく。