疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い 作:雨野坂
目が覚めたとき、昨日の出来事など夢幻で、実際には家で寝過ごしただけなのだと思いたかった。
しかし、現実は非情だった。
俺の身体は、ラプチャーのものと思われる機械の躰になっていた。
痛覚や触覚といった感覚がほとんどない。実に気色悪いことだが、ラプチャーとしての本能によるものなのだろうか。それらが欠けていることを、当たり前のことのように受け入れてしまう自分がいる。
そのことが、俺はもう人間ではないのだと、改めて思い知らせてくる。
ラプチャーになったことで、その身体の構造が手に取るように分かるようになった。
どうやら、食糧などは必要ないらしい。コアから供給されるエネルギーを糧として活動できるようだ。
レーザーやミサイルなどを使用すると、コアからのエネルギー供給量を超過してしまい、一時的に身体の動きが鈍くなる。しかし、それが原因で死ぬことは、ほとんどないらしい。
アークの上層部も、このことを知っているのだろうか。
……だとしたら、なおのこと悪どいじゃないか。
ちなみに、身体を構成する機械部品はナノマシンによって修復できるようだ。だが、コアや頭脳に相当する部分は別らしい。
それらはファクトリー型のラプチャーによる整備を受けなければ、次第に疲弊し、摩耗していく。そして、その過程でエラーを吐き出すようになる。
つまり、ニケでいう思考転換のような現象が起こり、同族と争う個体になってしまうらしい。
俺の場合、人間の脳がそのまま入っている。果たして、同じような現象が起こるのかは分からない。
だが、最悪の場合、ラプチャーとしての死も覚悟しておかなければならないだろう。
さて、身体についてだが、主な武装は前方に突き出た鋭い脚と、側面から伸びる小型のレーザー銃だけという簡素な造りになっている。
レーザーの出力は、鋼板を溶かせる程度。溶断まではできないらしい。
作業用としてなら、むしろ都合がいいかもしれない。だが、ニケに襲われたら、逃げることさえままならないだろう。
とはいえ、この鋭い脚をうまく使えば、ちょっとした住処くらいは作れるかもしれない。
そんなことを考えていると、前方から様子のおかしなラプチャーがフラフラと近づいてきた。
何事かと思って注意深く観察すると、脚らしきパーツが何かの拍子に胴体へめり込んでしまっているようだった。
ラプチャーとしては、仲間に助けてもらおうとしているのだろう。
だが、俺にしてみれば、この先敵対するかもしれない相手を助ける義理などない。
俺が立ち去ろうとすると、そいつは「キュイ、キュイ」と音を鳴らしながら、行く手を塞いできた。
右に行こうとしても、左に行こうとしても、通せんぼをしてくる。
いよいよ面倒くさくなった俺は、そいつの胴体にめり込んでいる脚を、器用に取り外してやった。
どうやら、感謝しているらしい。
だが、俺としては、さっさとどこかへ行ってほしい。
それなのに、そいつはお礼でもするつもりなのか、何やら親しげな仕草を見せながら、俺についてくる。
……非常に鬱陶しい。
とはいえ、特に害はなさそうだ。
俺は呆れながらも、渋々そいつがついてくることを認めた。
こいつも、ラプチャーの中では爪弾き者なのかもしれない。
そんな考えが浮かぶと、妙な親近感が湧いてきた。
俺はそいつの頭を、カンカンと軽く叩いてやった。
そして、身振りでこう伝える。
――俺についてこい。新しい場所に連れていってやる。
すると、そいつは親愛を示すかのように、自分の胴体を俺の身体に擦り寄せてきた。
……妙に人間臭いラプチャーだ。
いや、待てよ。
もしかすると、こいつも俺と同じように、元は人間だったのではないだろうか。
俺よりも完全な形でラプチャーになった、元人間。
そんな憶測が頭をよぎった。
もし、本当にラプチャーが元人間なのだとしたら。
古来より繰り返されてきた戦争の歴史は、形を変えただけで、今も続いているということになる。
そう考えると、つくづく嫌な気分になった。