疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い   作:雨野坂

7 / 15
クズ7

ニケかと思ったが……人間なのか?

廃墟のそばに倒れているのは、人間のように見えた。しかし、四肢がない。

非合法な処置を受けた債務者だろうか?

俺たちは、今にも命が尽きそうなその姿に脅威を感じなかった。とはいえ、警戒を緩めるわけにもいかず、慎重に近づいていく。

そして、目の前まで来て、ようやく正体が分かった。

やはり、ニケだった。

おそらく、どこにでもいる量産型のニケだろう。

ただ、センサーが故障しているのか、俺たちが近づいても気づいていないようだった。

俺は彼女の肩を、前腕で軽く小突いた。

「……そこに誰かいるのですか?」

ニケが反応した。

さて、どう返事をしたものか。

俺たちの正体がラプチャーだと知られるのは、絶対に避けたい。そのうえで、この場所で何が起こったのか情報を引き出せれば上々だ。

「意識はあるのか。俺は別の任務でここを訪れている者だ。お前は、なぜそんな状態になっている?」

……久しぶりに人間と話したせいか、うまく言葉が出てこない。

そもそも、今の俺の声が相手にどう聞こえているのかも分からない。ちゃんと意思は伝わっているのだろうか。

「指揮官様でございますか!? 私は助かったのでしょうか? お願いです、私を助けてください!!」

どうやら、かなり錯乱しているらしい。

これでは情報を聞き出すどころではない。まずは落ち着かせなければ。

「待て、落ち着け。そんなに騒ぐとラプチャーが寄ってくるぞ」

「落ち着くことなんてできません!! まだこの近辺に、あの大型ラプチャーがいるはずです! 早くここを離れないと!!」

……なるほど。ラプチャーに襲撃されたというわけか。

大型となると、タイラント級のラプチャーだろうか。

だとすれば、この辺り一帯がそいつの縄張りになっている可能性もある。

ううむ、面倒なことになった。

今は姿が見えないものの、いつ戻ってくるか分からない。しかも、家からさほど離れていないこの場所で、ニケとラプチャーが戦闘を始めれば、俺たちまで危険にさらされる。

……しかし、妙だな。

ラプチャーに襲われたというのに、なぜこいつは四肢を失い、目まで潰されているのだろうか?

俺は改めて、目の前のニケを観察した。

どうにも腑に落ちない。

「今のところ、ここは安全そうだ。だから、あまり大声を出すな」

俺は一度言葉を切り、彼女の反応をうかがった。

「……それとも、自分から死にたいのか? そういうことなら、俺たちはここを離れる。そうされたくなければ、ここで何があったのか、速やかに話せ」

脅しが効いたのか、ニケの声が急に小さくなった。

「あなたに見捨てられたら、私は死ぬしかありません……。ここで起きたことは、すべてお話しします。ですから、どうか助けてください……」

よし。ようやく話ができそうだ。

「私たちは、小型ラプチャーの群れを討伐するために、ここへ来ていました」

ニケは震える声で語り始めた。

「ですが、途中から次第に様子がおかしくなっていったのです。そして、ラプチャーたちが一斉にコーリングシグナルを発した、そのときでした。空から巨大なラプチャーが現れたのです」

「私たちの指揮官は……その状況で生き延びるために、ニケの一体を囮にすることを決めました」

彼女は一瞬、言葉を詰まらせた。

「……それが、私です」

「ですが、あのラプチャーは私には目もくれませんでした。その一方で、指揮官と、残ったニケたちは殺されてしまったのです」

……囮にされた、か。

卑怯なことを考える人間もいるものだ。

まあ、俺も人のことは言えないけどな。

しかし、話が本当なら、妙なことがある。

なぜ、こいつはラプチャーに襲われなかったのだろう?

改めて見ても、ごく普通の量産型ニケにしか見えない。これといって変わったところもない。

……そういえば、彼はどうしている?

俺は隣にいるはずの相棒へ視線を向けた。

彼は特にニケを気にかける様子もなく、ただ俺たちの会話を見守っていた。

何の反応もない。

もちろん、彼がニケに対して特別な温情を持っているわけではないだろう。

だとすれば……これは?

何か引っかかるものを感じたが、今はまだ答えが出ない。

ひとまず、話を先に進めることにした。

「つまり、お前は仲間たちに見捨てられたんだな」

「……はい。そういうことになります」

「お前を連れていってやってもいい。ただし、条件がある」

「条件、ですか?」

「ああ。一つ目、俺たちのことを詮索するな。二つ目、自分でできることは、できるだけ自分でやれ」

「そうはおっしゃいましても……私は四肢を失っているのですが」

「四肢なら、あそこに転がっているお前の仲間たちの物があるだろう」

「なっ……仲間たちのパーツを使うのですか?」

「なんだ、嫌なのか? それなら、俺たちはこのまま立ち去るが」

「いえ、パーツを装着すること自体が嫌なわけではありません。ただ……自分を裏切った者たちと一つになるようで、どうしても嫌悪感が……」

「そうか」

俺は短く答えた。

「だが、嫌悪感があろうとなかろうと、装着してもらうぞ。今の状態では、足手まといにしかならないからな」

「…………分かりました。装着します」

「よし。パーツを持ってくる」

さて、散らばっているパーツを回収するとしよう。

周囲を確認してみると、破損したニケの残骸がいくつも転がっていた。どうやら、ここには三体のニケがいたらしい。

しかし、使えそうなパーツは思いのほか少なかった。破損が激しく、どうにか一人分の四肢を揃えられる程度しか残っていない。

……まあ、ないよりはマシか。

「これから四肢を装着する。ただし、センサーは修復しない」

「なぜでしょうか? 目が見えた方が、あなた方のお役にも立てると思うのですが……」

「俺たちの姿は機密事項に当たる。お前自身の命が惜しければ、余計な詮索はするな」

「……はい。分かりました」

これ以上、不信感を抱かせるのも面倒だ。

とはいえ、念を押しておく必要はある。調子に乗って俺たちの正体を探られでもしたら、取り返しのつかないことになるかもしれないからな。

……それにしても。

こいつをうまく利用すれば、人間との衝突を避ける手段が増えるかもしれない。

そう考えると、なかなかの拾い物だった。

俺はそんなことを考えながら、回収したパーツを抱えて彼女のもとへ戻った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。