疲れめクズ野郎のラプチャースローライフ、俺は指揮官辞めて自由に生きる!!!追放(死亡)された後に後悔してももう遅い   作:雨野坂

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クズ9

恐ろしい光景に出くわした俺たちだったが、その後は特に何事もなく、無事に拠点まで戻ることができた。

ラプチャーの体に疲労はない。……はずなのだが、人間だった頃の感覚が残っているせいか、なんとなく疲れたような気がする。

なので、俺は少し休憩を取ることにした。彼とニケにも、そのことを伝えておく。

ニケの方も疲れていたらしい。俺と少し話した後、すぐに眠り始めた。

さて、俺も休むとしよう。

そうして意識を手放した俺は、不思議な夢を見た。

まるで、自分がラプチャーとして生まれ、そのまま生きてきたかのような夢だった。

夢の中の俺は、さまざまな場所を旅していた。

多種多様な水生生物が暮らす海。あたり一面に緑の絨毯が広がる山々。ほかにも、数え切れないほどの場所を訪れた。

アークでは映像でしか見たことのないような景色ばかりだった。

俺は、その光景の数々に感動していた。

……だが、分かっている。

これは夢だ。

どれほど鮮明で、どれほど現実味があろうとも、これは俺の記憶ではない。

そう思っていた。

しかし、その夢にも終わりが訪れた。

人型の生命体に襲われたのだ。

俺は必死に逃げた。

あいつらが追ってこられない場所を目指して、ひたすら走り続けた。

だが、数の暴力には抗えなかった。

とうとう追い詰められ、逃げ場を失った。

俺は、まだ生きていたかった。

こんなところで死にたくない。

死にたくない。

死にたくない――。

頭の中で何度も繰り返し願った。

しかし、願いが届くことはなかった。

人型の生命体が放つ銃弾が、容赦なく俺の体を撃ち抜いていく。

金属の外殻が砕け、体がぐちゃぐちゃに壊されていく。

そして、俺の意識は途切れた。

次に目を覚ましたとき、俺はまた別のラプチャーになっていた。

今度のラプチャーは、人型の生命体と戦っていた。

劣勢ではあったが、ただ追われるだけの獲物ではない。

迫りくる敵に立ち向かい、最後まで抵抗を続ける。その姿には、確かな矜持が感じられた。

……それでも、結果は変わらなかった。

俺は再び、人型の生命体に殺された。

次も、また別のラプチャーだった。

そいつも人型の生命体と戦い、そして敗れた。

また次も。

その次も。

何度も、何度も繰り返す。

まるで、テープを巻き戻して再生するかのように。

ラプチャーとして生まれ、人型の生命体と戦い、殺される。

その繰り返しだった。

……この夢に、終わりはないのだろうか。

そう半ば諦めかけていたとき、俺はある夢にたどり着いた。

その夢の俺は、人型の生命体と戦っていた。

しかも、あと少しで相手を倒せそうだった。

俺は歓喜した。

ようやく、今までの俺たちが報われる。

これで、今まで殺されてきた俺たちの無念も晴らせる。

そう思い、目の前の相手を殺そうと意識を集中させた。

……しかし。

その相手の顔を見た瞬間、俺は言葉を失った。

そいつは、俺だった。

正確には、人間だった頃の俺。

かつての俺自身が、そこにいたのだ。

人間の俺を殺そうとした、その瞬間だった。

横合いから銃弾が飛んできた。

俺は咄嗟に身をひねり、それを回避する。

弾丸の飛んできた方向へ目を向けると、そこには、かつて俺の部隊に所属していたニケたちがいた。

……なんで、あいつらが?

よく見ると、ほかのニケたちもいる。

俺が銃弾を避けている隙に、彼女たちは人間の俺を助け出そうとしていた。

そして、無事に彼を救出すると、互いにかばい合いながら戦線を離脱していく。

その姿を見て、俺は気づいた。

あいつは、ニケたちから信頼されているのだ。

……なんでだ?

俺とあいつで、何が違うというのだ。

俺は憤った。

俺だって、同じ人間だったはずだ。

それなのに、どうしてあいつだけが、あんなふうに信頼されている?

どうして、俺は……。

怒りに任せて、なんとか人間の俺を殺そうとする。

だが、俺がそちらに意識を集中させた、そのときだった。

注意を向けていなかった瓦礫の隙間から、弾丸が飛んできた。

気づいたときには、もう遅かった。

俺の体は撃ち抜かれ、またしても意識が途切れた。

……あまりにも、無念だった。

あの場で、あいつを殺せなかったことが。

俺よりも優れているあいつが、何事もなかったかのように生きていることが。

許せなかった。

俺は、そこで目を覚ました。

……いや、目を覚ましたと思った。

そこは、真っ白な部屋だった。

壁も、床も、天井も、どこまでも白い。

何もない空間の中に、彼女は立っていた。

黒く、もやもやとした輪郭。

その姿は人間の女性のように見えたが、体の境界は曖昧で、まともな生き物とは思えなかった。

「うん? ここに来たのか。お疲れ様。ここは、お前の心の中だ」

女が口を開いた。

「俺の心の中? じゃあ、お前は誰だ?」

「私か。私は、すべてのラプチャーの始祖と呼べるような存在だ」

「ラプチャーの始祖? ……頭は正気か?」

俺は思わず吐き捨てた。

「ラプチャーの親玉が、なんで人間の姿をしているんだ。妄想も大概にしろ」

「妄想などではないが……まあ、信じられないのも無理はなかろう」

女は、少しも気にした様子がなかった。

「しかし、私はラプチャーを統べる存在。それだけは紛れもない事実だ」

「……」

何を言っているのか、さっぱり分からない。

だが、ここが夢の中だというのなら、こんな存在が現れたところで不思議ではないのかもしれない。

「改めて言おう。お疲れ様」

女は、穏やかな声で続けた。

「お前は、ここまでたどり着いた。よって、お前の意識はもうじき消える」

「……俺が、消える?」

「そうだ。ラプチャーが死ぬとき、私は永遠の安楽を授けるために、ここに現れる。お前がこうしてここへ来たのも、そういうことだ」

「つまり、お前は俺に死を告げる神だっていうのか?」

俺は女を睨みつけた。

「嫌だ。嫌だ、まだ嫌なんだよ!」

気づけば、声を荒らげていた。

「俺は、まだ……あいつを殺せていない!」

女は、興味深そうに首を傾げた。

「ほう。あいつが誰なのかは知らぬが……まだ生きたいと申すか。ラプチャーにしては珍しい性格よな」

「……」

「そうであれば、もう少し生かしておいてやろう」

女はそう告げると、俺に向かって手を差し出した。

「だが、ここで終わることこそ、お前にとって最大の幸福だと思うがな」

その手を見つめる。

何をされるのかは分からない。

それでも、ここで終わるわけにはいかなかった。

女は、聞いたこともない言語で何かを呟いた。

そして、もう一度、俺に手を差し出す。

……手を握れ、ということか?

俺は、何の迷いもなく、その手を握った。

その瞬間、全身が激しく震え始めた。

熱い。

体の奥底から、焼けるような熱が込み上げてくる。

体の節々から棘が突き出し、肉が裂けるような激痛が走った。

「ぐっ……!」

声を上げそうになる。

それでも、俺は必死に意識をつなぎ止めた。

あいつを殺す。

あいつへの恨みを晴らす。

それだけを、ひたすら頭の中で繰り返す。

どれほどの時間が経ったのだろう。

気の遠くなるような苦痛の果てに、ようやく、それは終わった。

少しずつ意識が戻ってくる。

俺は体を動かした。

ガシャッ。

……あれ?

いつもとは違う感触がした。

視線が、やけに高い。

足を動かしてみる。

体の動きに合わせて、視界がわずかに揺れた。

これまでのラプチャーの体では、こんな感覚はなかった。

次に、前腕に力を入れてみる。

手に力がみなぎる。

……はて?

俺に、手なんてあっただろうか。

そもそも、今までの俺には、人間のような手などなかったはずだ。

そこで、ようやく気づいた。

これは――人間の体だ。

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