レ級に転生したんだけどどうすりゃいいですか?   作:ウィルキンソンタンサン

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試験期間中+燃え尽き症候群で投稿サボってました。申し訳ナス。

お気に入り数が1000件行ってました。感謝感激雨あられ、ありがとうございます。
応援コメント、評価コメントもありがとうございます。読んで頂けるだけでも、評価して頂けるだけでも有難いのにコメントまで……!全て余すことなく目を通させて頂いておりますッ!

お知らせですが、少し投稿頻度が下がります。理由は雑絵から解読して下さい。

【挿絵表示】



十撃目 決着

「なン……コレ……」

 

!?

レ級ちゃん!?

 

今日は欠席だったはずの元帥さんの足元から、レ級ちゃんがひょっこりと顔を出した。

辺りを見回すように目を動かすレ級ちゃんが、スクリーンの写真を発見するのにそう時間は必要とせず、羞恥からか動かなくなってしまった。

 

それとは対照的に元帥さんはどんどんテンションが高くなっていく。

 

「みんな敬礼は下ろして良いわよ…それより!ねえコレ、このレ級ちゃん?ちょっと舞鶴ちゃん、どうしてもっと早く見せてくれなかったのよ!」

 

「…はぁ、すみません。」

 

「あんな無骨な証明写真なんかじゃなくてこっちの方が良いわ!書類写真コレにしましょ!」

 

「!?」

 

勢いよくレ級ちゃんが元帥さんの方を向く。真っ赤な顔には「何言ってんだこいつ」と書かれているのが見て取れた。

 

「それは本人が羞恥心で爆発してしまうのでやめた方が……」

 

「──ビスマルクさん、どうするっぽい?このまま継続はちょっと……」

 

「……そうね。はぁ、まさかこんな事になるなんて。」

 

そうため息を吐いて帽子を被り直すビスマルクさん。

 

「アノ……」

 

と、今にも消えそうな声でレ級ちゃんが言う。

 

「セメテ…コウナッタケイイヲ……」

 

「経緯ね。ワタシも聞きたいわ、大まかでいいからこんな国宝みたいな写真を投影することになった経緯を教えて頂戴?ほら、アンタらも座りなさい!」

 

「「「はッ!失礼します!」」」

 

立っていた提督達が座るのを確認し、ビスマルクさんが喋り始める。

 

「……分かりました。説明させて頂きます。」

 

そうそれは、数十分前の事だった……

 

─────

数十分前

─────

 

「とにかく、儂は深海棲艦を仲間にするなぞ認めんからな!」

 

「はぁー、話が平行線ですねぇ……」

 

「全くよ。佐世保、あなたの身内の不幸は知ってるわ。深海棲艦絡みだってことも、それがきっかけでここの門を叩いたのも。だけどね、あの子はその深海棲艦じゃないのよ。しっかりと自己を確立している"個"なの。」

 

「それでも奴は深海棲艦だ。人を殺し、不幸の渦中へ放り込む。それが奴らなのだ!」

 

「それを言ったら人間の方が人間を殺してるし、不幸にしているわ。いい事?佐世保。不幸な人や苦労した人がいつだって正しいなんて、そんな事ある訳が無いわ! 」

 

「大体、当時は圧倒的に深海棲艦の情報がなかったみたいだからねぇ……

佐世保さんも戦いは情報が命なのは当然知ってるでしょ?

なら安心だ!最高の情報源がこの会議室の外にいるよ!」

 

「…貴様ら……人をあまりバカにするなよ……」

 

「佐世保さん、レ級は僕が保証します。だからどうか許諾を……」

 

 

「……全く、提案は全員からの賛成が必要なんて……ままならないものね。」

 

そう提督達に聞こえないように呟く。

レ級が部屋を出てからも全くもって話が進まない。そろそろお腹が空いてきた。

しかし困った。予定にあった話の流れから大きく脱線してしまっている。これでは"アレ"が使えない……

どうする?もう無理矢理にでも使うか?いや、流石に脈絡が無さすぎる……

 

「そもそもお前の所の他の艦娘はどうなんだ舞鶴!お前や秘書艦やらが納得していても、他の人員がレ級にストレスを感じていたらどうする!」

 

──その言葉を聞いた途端、ニヤリ、と提督が笑った。提督だけじゃない。私も、夕立も笑った。

 

『その言葉を待っていた。』

 

心情を表すとしたら、この一言だろう。

 

「ようやく軌道修正ね……。提督(Admiral)、これを。」

 

そう抱えていた書類を提督に手渡す。

 

「うん、コレを見て欲しい。僕の鎮守府人員の署名です。」

 

「……それがなんだ、義務感から書いてるやつもいる、そもそも上司の頼みを断れないだろう!」

 

「なるほど確かにその通りです。しかし……」

 

「夕立、お願いね。」

 

「やっと出番っぽい!」

 

「うん、タ立よろしく。」

 

「了解っぽい!」

 

夕立が虚空に合図を出す。すると、突然会議室のプロジェクターが作動し始めた。

 

「!リモコンが無くて、元帥くらいしか本体ボタンに届かない位置にあったプロジェクターが……」

 

これが夕立を連れてきた理由だ。

夕立は、私達の鎮守府で最も妖精の扱いに優れている。その結果、武器の操作だけでなくこんなこと……つまり機械の操作も出来る。

夕立がいなければ、この手段は出来なかっただろう。

 

「よし、じゃあ動画流すっぽい!」

 

スクリーンに投影された画面が、動画ヘと切り替わる。

 

『……ん?夕立か。どうした?』

 

投影されたのは、左目に眼帯をして動物耳のようなアンテナを付けた艦娘。

天龍だ。

 

『ん?あぁ、レ級か?…フフ、アイツは強いぞ。この鎮守府で負け無しだったオレに、唯一土を付けやがったんだ。』

 

と、不敵に笑う。

 

『奴のファルコンは凄まじいぞ、こちらの攻撃を素早い動きで回避し、怒涛の連撃を叩き込み場外に押し出して、タイミング良く膝を繰り出すんだ。万が一吹っ飛ばなかった時のリカバリも完璧だ。上Bで地上から遠ざけ、ジャンプを復活させてまた上Bを叩き込むんだよ。

オレはあの動きを自らファルコンを使うことでひたすら研究していたんだが……未だに勝利は掴めずにいる。……ふふ、怖いか?』

 

……大乱闘の話だこれ。

また動画が切り替わる。

──そろそろ分かった人もいるだろう。これは夕立が鎮守府内を駆け回って撮ってきた艦娘達のレ級に関してのインタビューだ。

 

書面では分からない、艦娘達の生の声。これはレ級の信頼性を保証するのと共に、艦娘達のレ級に対しての評価の証明に足り得るだろう。

 

ヤマトやナガトなどの顔馴染みを初めとした、様々な艦娘達がレ級への印象を語っていく。話の系統や方向は千差万別だが、その中に彼女のことを疑う等の旨を語ったものは無かった。

 

『最初こそ怖くてまともに話すどころか…目も合わせられなかったけど、ちょっとずつ触れ合ってる内に……悪い人じゃないって、怖くないって思えて…ライブにも来てくれるし…それでも、まだビクついちゃうけどね……』

 

『あの子、潜水艦じゃないのに潜水艦としての立ち回り方を良く教えてくれてるのよね……とっても参考になるけど、なんであんなに知識豊富なのか……気になるでち。』

 

『あの子、いつも私の作った食べ物を美味しそうに食べてくれるんです。特にスイーツね。あの子監修のスイーツはもう大人気でいつもすぐ売り切れちゃうの。』

 

などなど。

 

「……いかがでしょうか。こちらが我々鎮守府の総意となっています。」

 

「やるねぇ舞鶴さん。いや……この場合は夕立ちゃんかな?」

 

「これは顔や声音で分かるわ。嘘は100%ありえないわね。……約1週間一緒に過ごした艦娘達の証言……ふふ、これはもう疑う余地は無いわねぇ。」

 

そうケタケタと愉快そうに笑う。

 

「……ぬぅ……」

 

「あれ?まさか深海棲艦だけじゃあ飽き足らず、艦娘も疑うなんてことないよねぇ?」

 

「……それは、勿論だ!儂は艦娘を疑ったりなぞしない!……だが、深海棲艦だぞ!もしあのレ級が演技の達人だったらどうする!?」

 

「そうかしら?目に星は無かったけれど。」

 

「完璧で究極でも、正義の疾風(かぜ)が荒れる訳でもないね。」

 

「?」

 

「あ、いや何でもない。」

 

「──そうですね。その可能性も絶対無いとは言えません。……ですが。」

 

そこで提督は私を一瞥する。

 

しょうがないわね……

この手は、あまり使いたくは無かったのだけれど。

 

「夕立、プランCよ。アレを出しなさい。」

 

「分かったっぽい!妖精さん、GO!」

 

「…ッ!」

 

「あらあらあら……」

 

「おやおや……おやおやおや」

 

そうしてプロジェクターに投影されたのは1枚の写真。

間宮食堂にて、新作のスイーツを食べているレ級の隠し撮り写真であった。

 

 

───────

現在へ戻ル……

───────

 

「と、まぁこんな感じかしらね。」

 

「ぶち飛ばスゾ……と、言いたいとこだけド。はァ、まァそんならしょうがないカ。とりあえず元帥サン、写真撮るのを止めてくレ。コラ、連写しなイ。」

 

「そうね、確かにプロジェクター越しじゃ画質悪いものね……」

 

「そういう事じゃなくテ。」

 

「あの、よろしければ後で写真差し上げましょうか?」

 

「なに!?誠か舞鶴ちゃん!」

 

「え、ええ……」

 

「ッスゥーーーー……1億出そう。」

 

「ちょっと待テ。」

 

こんなんに1億出すなって。

てかそんな当たり前のようにポンと1億出すな。10万ドルかよ。

 

「これには某元コマ〇ドーもニッコリだね。」

 

「誰が分かるんダそレ。もう付き合いきれネェ、7時半に空手の稽古があるんダ。」

 

「今日は休め。」

 

「……」

 

「……」

 

((こいつ……出来るッ!))

 

「ほら横須賀、レ級ちゃん。何通じあってんの!それで?この写真を出したのはなんで?」

 

「あ、えとこれは……えーとその…あれだ…ビス!」

 

「この笑顔が嘘だと言うのでしょうか?」

 

「そうそれだ!彼女…レ級はこの1週間、非常に献身的に鎮守府に協力していました。この功績並びに、見て下さいこの屈託のない無邪気な笑顔を!こんな笑顔をしているこの子のどこが邪悪だと!?」

 

「ホント何コレ。国宝?」

 

「レ級は可愛いですね……」

 

「……イッソコロセ」

 

なんだろう。つい忘れてたけど…そうだよな。今の今までずっとデカデカと投影されてたんだよな。俺の生き恥。

どうした?今になってようやく恥の自覚が芽生えてきたか?ってか?

うるせーな某代理賢者みたいな事言いやがって!そうだよ!恥ず過ぎて死ぬわ!爆散しそう!

 

「ねぇ、他には無いの他には!」

 

黙れ筋肉ダルマァ!!!

 

「夕立、aの6を。」

 

「OK!ぽい!」

 

「ちョ待」

 

静止も虚しく、次々と投影されていく俺の写真集(生き恥)。マジでいつ撮ったんだよ。

 

「いかがでしょうか?まだ何か……申し開きはありますか?」

 

「私達は勿論無いけど……佐世保は?なんかずっと固まってるけど。」

 

「……くそ…」

 

「ん?」

 

「──どうなっても儂は知らんぞ。」

 

「お、ってことは?」

 

「えぇい!許可すると言っておるのだ!儂はこれで失礼する!!」

 

と、ダンダンと荒々しく足音を鳴らしながら部屋を出ていく。その後ろを申し訳なさそうな顔をした秘書艦が追いかけて行った。

 

「あぁちょ、まだ話は……はぁ。」

 

「なんか今日はいつも以上に荒れてたなー。深海棲艦絡みだから?」

 

「……佐世保ちゃん、もしかして妹ちゃんとレ級ちゃんを重ねちゃってたのかしら……」

 

「そこら辺に関しては私達には分からないわね……ところで佐世保の詳細を知ってるって元帥さん一体いくつ……」

 

「──乙女に年齢を聞くなんて良い度胸ね、呉ちゃん。」

 

「アッイエスミマセンデシタ」

 

──────

 

ガツンガツンと苛立ったような軍靴の音が廊下に鳴り響く。

 

(くそ……何故儂はあそこで反論出来なかった?しようと思えばいくらでも反論はあった。……一体、何故だ?)

 

佐世保である。

 

(一体何故だ?一体……)

 

頭にチラつくのは、例のレ級の写真。そして、既にほとんど記憶から薄れてしまっている……深海棲艦の被害に遭った、妹。

 

(……違う、あんな鉄クズと妹は容姿は全く似ていない!なら何故こんなに!)

 

その時、言語として形成して考えるよりも先にこんな思いが浮かんだ。

 

『確か妹もあれくらいの歳だった。』

 

(……そういえば、アイツも甘味が好きだったな。ひとたび口に含めばだらしない顔をして……)

 

「……そうか。」

 

(無意識に重ねて、しまっていたのか。)

 

佐世保はそれは、あの写真を見てからのことでは無いことにまた気付く。

 

(儂があそこまでレ級を仲間に迎えるのを拒んだ理由……深海棲艦だから?確かにそれもある……だがもしや、無意識にも妹と同じような歳の見た目をした少女に、こんな戦争に関わって欲しくなかったからだとでも?)

 

鹵獲、捕虜としてではなく、人員として。それはこの永きにわたる戦争に直接的に関与させることに他ならない。

 

(それが?嫌だったのか?この儂が、あんな得体の知れない深海棲艦に情を向けたと言うのか?)

 

「……はっ、儂も(ぬる)くなったものだ。」

 

そう、自虐的な笑いを浮かべる。

 

「……だが。」

 

そして1度立ち止まり、振り返って後方を歩く秘書艦の名を呼び、こう言葉を紡ぐ。

 

「とはいえ、やはり深海棲艦が我々の砦とも言える鎮守府に出入りするのは看過できん。奴をいつでも相対できるように我々も一層、演習に励むとしよう。特に、舞鶴とはな。」

 

そう言うと、秘書艦はクスリと笑ってこう返す。

 

「とか言って、本当はあの子に会う口実を作りたいだけでしょ?私は知ってますからね、提督がああいう子に弱いの。」

 

「う、うるさい!黙っておれ!」

 

「はーい」

 

(儂が?あんなのに会いに行きたいだけ?全く、忌々しい。そんな訳が無いだろう!大体、そもそもだ!あの舞鶴が儂に対してのリスペクトが足りないから少し懲らしめてやろうと……待て、それは横須賀のクソガキもそうだな。ここはやはり横須賀も懲らしめて儂の狙いはそんなものではないと証明してから──)

 

と、脳内でグルグルと言い訳のような事を呟きながら歩き出す。

 

佐世保の顔は相変わらず不機嫌だ。だが、足音に先程のような粗暴さはもはや、どこにも存在していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




レ級「ところで、結局完璧で究極なゲッターってなんなんダ?」
横須賀「エンペラーじゃないの?」
舞鶴「いや、ゲッペラーはあれでも進化の途上という設定のハズだ。」
元帥「現時点で完成形じゃなくても、進化をし続ける存在ならその意味で『完璧で究極』と表現してもいいんじゃないかしら?」
呉「ちょいちょいちょい、私らの分かんない話で盛り上がらないでよ!ほら、そこのビスと夕立と加賀を見なさい!飽きて指スマしてるわよ!」
加賀「いっせーのせ4……上がりです。」
ビス子「まったく、相変わらずカガは強いな。」
夕立「もういっかい!もういっかいやるっぽい!」

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