レ級に転生したんだけどどうすりゃいいですか?   作:ウィルキンソンタンサン

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短めです。
更新が遅くなると言ったな、あれは嘘だ。
風呂食ってたら急に構想が浮かびました。シャワーって偉大。


四撃目 鹵獲

「やっ…た……?」

 

目の前にはうつ伏せに大の字で倒れ、ピクリとも動かないレ級。彼女の身を包んでいた赤い瘴気は消え失せ、重苦しい雰囲気もどこかへ消えていった様だ。

恐る恐る、といった仕草で雪風が近付く。

 

「……ふん、ふん。気絶してるみたいですね。──どーしますか?」

 

沈めてしまうのならば簡単だ。しかしながら、このレ級は普通の深海棲艦とはわけが違う。

人語を理解し喋る。そして何故か、艦娘達の詳細を知っている。

武蔵はこう言っていた。本能的では無く、理性的な戦い方をしていたと。ただの単純な殴り合いではなかったと。

深海棲艦と思えなかったと。

それは、長門も感じていた。

 

その上での選択肢の提示。『沈めるか、連れ帰るか。』

 

「はぁ……鹵獲、か。胸が熱いなー……。」

 

「ため息つかないの長門。私が運ぶから、暁ちゃんは提督に連絡を、ゴーヤちゃんは周囲の警戒を。長門を帆艦に、他のみんなは護衛をお願いね。」

 

そう言ってレ級を小慣れた手つきで拘束していく陸奥。

 

「了解です!──司令官!聞こえる?」

 

「はいでち!ゴーヤ、潜りまーす!」

 

「分かった。では帰投するぞ!続け!」

 

 

「……ん…」

 

どこだここ?俺は……寝てたのか?

目覚めた、というには何かがおかしい。沼のようなものから這い出てやっと息を吸ったみたいな……あと身体の節々が痛むし、後頭部や肩、腹などがジクジクと痛む。

しかしさっきまで何してたんだったか……あぁそうだ、接敵して……被弾して……

──うん、そっから覚えてない。

 

とりあえず現状把握。俺はどうやら海ではなく地面に座っている状態だ。目の前には鉄格子があり、尚且つ腕が動かない。いわゆるバンザイのように腕が上がったまま動かないのだ。

動かそうとすると、ジャラ、という音と共に何かに阻害される。

足も同様、多少動くものの長座から姿勢を変えることは叶わない。

うん…まぁ…拘束…されてるねぇ……。

手足を鎖に繋いだ枷で拘束されている。艤装もそうだ。砲を外され、鎖でガチガチに拘束されている。

 

つまりこうだ。

俺気絶→確保→拘束←今ココ

って感じだろ。どうせ。

 

薄暗い檻の中で鎖に繋がれた美少女(尚中身)って……同人誌じゃないんだから。

 

ほーりょほーりょほりょつかまった♪

って、ポニョの替え歌作っとる場合か。

 

「誰かいなイっすカー?」

 

……返答無しっと。

というか、よく分からんが声がだいぶ出やすくなっている。何故?分からん。まぁ良いか。

 

『よう、新入り。』

 

「ッ!?」

 

声が聞こえる。どこからだ?

 

『目の前だよ、目の前。』

 

言葉通り、目の前……通路を挟んだ向かいの牢屋を凝視するとそこには。

見覚えのある大きな角を生やした白髪頭が。

 

「重巡ネ級……!」

 

『あァ、そうとも言うな。1回イジったから改って言うらしいぜ。』

 

なんてことだ、ネ級改がいる。しかも喋ってる。

こいつもこいつで悩まされたな……某ダイソンより厄介なんだもんなぁ、懐かしい。

と、懐かしき記憶に思いを馳せていると。

 

『オマエはいわゆる戦艦レ級か…珍しいな。実物を見るのは初めてだ。』

 

しみじみとそんな事を言ってくる。

俺はお前のことはn回見たよ。

 

『しかし、オマエは喋れるンだなァ、レの字?』

 

「まあナ。てかオ前も喋ってんじゃんカ。」

 

『喋ってねェよ、テレパシーだ。なんだオマエ他の奴と話したこと無いのか?』

 

テレパシーか。確かに脳内に声が響く感覚がある。

こいつ……直接脳内にッ!……ってやつだ。

 

「そうだナ。会わなかったかラ。」

 

『ほーん。じャあテレパシーのやり方は?』

 

「分からン。」

 

『そうか……そンならここの連中としか話せないな、レの字は。』

 

「? どういう事ダ?」

 

『ここに囚われてる奴らは人語が分かる。それが理由で鹵獲とやらをされたからな。アタシもそうだ。

──そしてテレパシーの使えないレの字、オマエサンが話しているのは人語だ。……もう分かったろ?』

 

なるほど、大体分かった。

つまりあれだ。深海棲艦のコミュニケーションはテレパシーを使うから、テレパシーが使えず人語しか使えない俺は、人語が分かるここの連中以外の深海棲艦と話せない……ってことだ。

 

「1つ聞いてもいいカ?」

 

『なんだ』

 

「ここに北方棲姫はいるカ?」

 

『いないぞ。』

 

クソがぁぁぁぁぁぁ!!!!

ほっぽちゃんと話すのが夢だったのに!!!!!!

 

『……っと、お客さんが来たようだ。』

 

カツン、カツンと靴の音が通路に響くのを耳が捉える。

誰だろうか。

 

「──人語を理解し、喋る……接敵時は大人しかったのが確認されるが、1度倒れた(のち)に凶暴化……ふゥン… あ、ここね。」

 

そんな独り言と共に、鉄格子の外から帽子をかぶった金髪の女性が現れる。

 

Guten Tag(こんにちは). 私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。あなたが例のレ級ね?」

 

ビス子……だと!?生ビス子だ、感動……

 

「あ、どうモ。」

 

「あら、本当に喋ったわ。面白いわね、どうなってるのかしら?」

 

「声帯はあるんだヨ、みんな使わないだけデ。」

 

「そう……っと、聞くことがあるんだったわ。あなた、撃たれた後の記憶はある?」

 

「撃たれたアト……いヤ、気付いたらここニ。」

 

「本当?暴れたような記憶は?」

 

「あばれ…?いや、無いナ。そもそも暴れテなんかいないんだガ?」

 

「ふん……そう。」

 

そう言ってビス子は手に持っていた書類に何かを書き込む。その後、牢屋の扉を開け、俺の手足に嵌められた枷を外し始めた。

 

「ええと……釈放かイ?」

 

そんな問いかけを無慈悲に両手首へ手錠をかけることで返答するビス子。

あ、全然釈放じゃないですね──

 

「ついて来なさい。Admiral(提督)があなたと話したいらしいわ。それと、逃げようなんてことは思わない方が良いわよ。

なんたって私はドイツの誇るビスマルク級超弩級戦艦のネームシップなのだから。あなたなんか恐るるに足りないわ。」

 

「そんな事はしないサ。むしろ大人しくここにいれば艦娘から攻撃される事も無いだろうし……うん、逃げる理由が無いナ。」

 

ここはおそらく鎮守府。ならば!安全に艦娘が見放題なのだ!

ウェヘヒwwウォホホはハww すまんなみんな……俺はここで艦娘ちゃん達を堪能させてもらいますわwww(激キモ笑い)

 

「そう、変わってるわね。まぁ良いわ。早くついて来なさい。」

 

「はいヨ」

 

そうして俺はぐったりとしている艤装を抱え、ネ級に『気を付けて行けよ、レの字。』という言葉と共に見送られながらビス子の後を追うのだった。

 

 




ビス子はドロップで複数いるので欧州で雑に使ってます。zweiにする余裕は無いです。
見た目的に戦艦棲姫はダイソンというよりはiRobotだと思います。

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