レ級に転生したんだけどどうすりゃいいですか? 作:ウィルキンソンタンサン
あとローソン前段作戦、クリアファイルとタペストリーを全て確保しました。タルトがどこにもないです。ほっぽちゃん欲しいお……
薄暗い留置所のような場所を抜けて、階段を上りドアを開ける。するとそこには赤いカーペットの引かれた明るい洋風な廊下があった。
「ここを右よ。ほら、着いてきなさい。」
「はいヨ」
廊下の右を曲がろうとすると──
「左だ、ビスマルクさん。」
「えっ」
「えッ」
後ろから声がする。この聞き覚えのあるイケボは!
「長門ッ!」
「……やはり知っているか、レ級。」
「あっいやそノ」
しまった、初対面なのに名前知ってるとか怖すぎるわやってもーた。
「…雰囲気が違うな、やはり響の仮説はあっているのか……?」
「ン?なんか言っタ?」
「いや、別に大したことではない。それよりビスマルクさん、執務室はあっちだと何度言ったら……!この鎮守府に来て何年経ってると思っているんだ!」
「う、悪かったわね。どうにも慣れないのよ。」
「はぁ…あぁそういえば、提督が『間宮さんのところに昼ごはん置いといた』と。」
「本当!?
「えっちょ!」
「うわっト」
俺の手錠に繋がっている鎖を長門に押し付け、どこかへと走り去っていくビス子。反動でふらつく俺。勘弁してくれ、艤装がダウンしてるからバランスが取りにくいんだ。
てかビス子、ここでも提督に飯作らせてんのか……
「しょうがないな。レ級、私に着いてこい。」
◆
「ここが執務室だ。私達の提督がここにいる。──いいか?提督に何かしようものなら、命は無いと思え。」
「怖いナ……そんな事しないヨ。」
コンコンとノックをし、扉を開ける。
大きな本棚が壁に立ち、部屋の中央には長いテーブル。それを挟む形でソファが置かれている。なにより、その奥。大きな窓の前にある机。立派な椅子。そこに座する軍帽を被った若々しい男。
あれが提督だろう。
「ようこそ、戦艦レ級。よく来たね、まぁ座ってくれ。ビスは…やはり間宮さんの所か。ありがとう長門、ここまで連れてきてくれて。」
「いや、なんてことはない。気にしないでくれ。」
「それは助かるよ。さて、レ級。」
にこりと笑った後、提督は軍帽を被り直してからこう言った。
「……君は何者だい?」
瞬間、執務室を包んでいた雰囲気が一変する。彼のあの鋭い眼光は、見た目が若くとも間違いなく熟練のものだった。
「オレが、何者なのカ?」
「そうだ。」
「戦艦レ級…皆さんご存知深海棲艦…と言えば納得すル?」
頭を振る。
「ノーだ。人語を理解するはまだしもそこまで流暢に喋り……理性的な人格も形成している。これは深海棲艦とは呼ばないさ。
それは最早、艦娘だよ。」
そうだろうか?あのネ級も普通に人の人格があったが。
あ、分かんねぇのか。
「深海棲艦が艦娘……?提督、それは流石に」
「──オレが艦娘?やめてくレ。こんなのが艦娘なんてものになれる訳無いだろウ。」
俺が艦娘なんかになったらもう理性持たんよ。ただえさえいっぱいいっぱいなのに。
「ふむ……長門、済まないが一旦出てくれないか?」
「提督!?それは……いや、分かった。レ級、くれぐれも間違いを犯してくれるなよ。」
部屋から出る長門。なんか凄くいい匂いがした気がする。
「さて、これで僕以外に君の話を聞くものはいない。改めて聞かせて貰おうか。──なんで君は、そんなに我々に似ているのかな?」
「1部の艦娘しか知らない事だが、喋る深海棲艦は存在する。だが、そこまで流暢に、極めて人間的に喋る個体はいなかった。」
「……」
うん…そういえばそうだねぇ。知ってるよ。
「結果には過程がある。必ず。」
「……」
「教えてくれ、何故だ?何故君は"そう"なんだ?」
全てを見透かすような目で俺を見てくる。
別に言ってもいいんだけどな……性別がなぁ、前世男だと知られたらもう完全に危険な奴だもんな。間違いなく艦娘達から遠ざけられるだろう。言えない。俺は艦娘達を堪能するんだ。
「ふむ…仕方がない。使うか、最終兵器。」
最終兵器だと……?痛いのは嫌だぞ俺は。
提督はおもむろに席を立ち、冷蔵庫に手を伸ばす。
「これを喰らって口を割らなかった者はいない……」
「……!」
ガチャリ、と冷凍室を開け、中から謎のカップを取り出す。
「それは……」
間違いない、それは数多の艦娘を骨抜きにした究極の兵器。
発するエネルギーは間違いなく、最終兵器の名にふさわしいだろう。
「──間宮さんのアイスだ。」
「──全て……話そウ!」
◆
「なるほど、君は1度死亡しており、目が覚めたら海の中に。」
「うン。だから深海棲艦の細かい秘密とかはよく分からなイ。」
話しちゃったZE☆
しょうがねぇじゃん、あれは抗えないわ。無理無理。
え?味?…やべぇよあれは。犯罪だよ。
ちなみに話した内容だが、記憶があやふやだと伝えた。あと性別も分からないって言ったぜ。全部嘘だけどな!!!記憶バッチリだけどな!!!!あぁ!!!間宮さんのアイス美味かった!!!!!!!
「そうか、元人間。では艦娘達の名前を知っていたのも?」
「そういう事なんじゃないカ?オレもよく分からン。まぁとりあえずさ、オレは危害を加えるようなことはしないし、極めて人畜無害ダ。だからさ、解放してクレヨ。」
「それはダメだ。」
「くそウ。」
「人間が深海棲艦になる?これは漫画やアニメの世界ではない。おいそれと、手放しに納得出来る話ではないのだよ。
僕の判断にこの鎮守府の命運が託されている。もし君の言っていることがでまかせで、心は邪悪そのものなのだとしたら?気付いた頃には最悪、ここは更地だ。」
犠牲になるのが僕だけならまだ良い。だが僕は大事な艦娘達の命を背負っているものでね。と、目を伏せる。
「うーン……言わんとすることは分かるゼ?なんたってオレは"あの"レ級だからナ。」
レ級は1人連合艦隊と呼ばれる程だ。壊滅とまでは行かずとも、この鎮守府に多大なダメージを負わせる事は可能だろう。
だからこその、躊躇。聞けば今の俺は鹵獲され、妖精とやらに力を抑制されている状態(鎖をちぎれなかったのもそれが原因だろう)。
しかしながら俺を解放してしまうと、それは驚異的な力と知性を持ったバケモノを野放しにすることに他ならない。
そんなのが鎮守府を自由に徘徊してるとか、艦娘達のストレスもマッハだろうなぁ。悲しいけど。
「じゃあさ、枷付けたままでいいかラ。」
「それも難しい。たとえ枷が付いていたとしても、我々への攻撃方法はザラにある。」
そうだよなぁ……
「うーン……他の深海棲艦の情報を教えてもナァ…」
「え?」
「え?」
提督は鳩が豆鉄砲でも撃たれたみたいな顔で俺の事を見てくる。
「…分かるのか?」
「まぁ…大体?──でも、あんたらも知っている様な情報かもしれんガ……」
「構わない、教えてみてくれ。そうだな…では、コイツの情報を。」
そう言って1体のゴスロリ風の服を着た深海棲艦の絵を見せてくる。
あれは…離島棲鬼?
「離島棲鬼カ?えっと、ソイツは唯一の「棲鬼」の陸上型だナ。
特性自体は他の陸上型と一緒だけど、いつも行動を共にする深海棲艦が厄介だナ。制空値も高くて、一時期深海棲艦の中でもトップだったナァ。あと中部海域のピーコック島沖では姫クラスになったナ。
姫になるともう硬いし型が変わるし艦爆だしで、だいぶ厄介だヨ。」
アイツには苦労したなぁ…懐かしいな。
「なるほど、では…こちらは?」
「ソイツは港湾棲姫だナ。深海棲艦の中でも比較的穏やかで、戦いは好まない印象があル。
北方棲姫の姉的存在で、北方棲姫に何かあるとブチギレる事があるナ。
最終形態は徹甲弾を持ってるカラ、大型艦への命中補正があるゾ。
あぁそれと、ソフトスキン型だから三式弾系列がよく効くナ。他の対地装備も組合せ次第でよく効くゾ。」
「そうか、そうか…」
提督は眉間を指で押さえ、こう言う。
「所々我々の知らない情報があったぞ…君、本当に何者だ?」
「あれっマジでカ」
「マジだよ。いや性能云々はおおよそこちらも把握している。だが、そんな内部情報は知らないぞ…」
マズったな、調子に乗りすぎた気がする。
「い、いやぁ…捕まる前に色々見聞きしててサ。それのせいかナ?」
「そうなのか?でもさっき細かいことは分からない、と。」
「細かいことってのはアレだヨ、えーとえーと…そう、なんで戦うのかーとか、どこから来たのかーとカ。そういうやつだヨ!」
「そうか…そうか?」
「そうだヨ!ほら、もういいだろロ?解放してくレ!あの間宮さんのアイスもっかい食わせロ!!あと純粋に艦娘見たい!!!」
「いやしかし…」
「あぁ分かったヨ!じゃあ他の鹵獲されてる深海棲艦の通訳やるヨ!!!なんだったら一緒に戦ってやるヨォ!!!!」
「なんだってーー!??!!!」
ヒートアップしていた所、突如として勢いよく扉が開く。
「提督!外にも声が聞こえたがどうした!!何をしたレ級!!!」
「長門待て!そのレ級とんでもないぞ!!」
「とんでもない!?一体どういうことだ!!!」
「深海棲艦の通訳が出来る!!らしい!!!」
「な、なんだってーー!???!?!」
催促されるとちょっとだけ執筆速度が上がります。
放置されると1ヶ月くらい書かないのでどんどん催促してください。