レ級に転生したんだけどどうすりゃいいですか?   作:ウィルキンソンタンサン

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書いてる途中、物語の進行速度が亀より遅いと気付いたので次回から加速します。
今回ちょっとテイストを変えてみました。


七撃目 お別れっぽい

「お疲れ、夕立。どんな感じだ?」

 

報告会を終えた提督は、レ級とネ級の様子を見るため間宮食堂に来ていた。

 

「あ、提督さん。お疲れ様っぽい!えっと、今のところ何も問題は無いっぽい。ご飯食べて、デザート食べてる。ぽい。」

 

離れている間監視をして貰っていた夕立に話かける。

どうやら、特に怪しいことは起きていないらしい。

奥にいる2人に目をやると、確かにデザートを食べている。というか、既に何度もおかわりをした形跡がある。

室内は閑散としており、間宮さんもいない。どうやらあそこにはあの2人以外誰もいない様だ。

 

今後の方針を伝えるため、夕立と共に2人に近付く。

 

「…んお?提督サンか。」

 

話しかけるよりも先に、レ級は首をこちらに向ける。ネ級は軽く会釈。

 

「あぁ。どうだい?ここの食事は。気に入ったかな?」

 

「いやぁ、凄いよこレ。飛ぶヨ。」

 

こくこくと頷くネ級。

 

「それは良かった。間宮さんにも伝えておくよ。」

 

あぁそれと、と言葉を繋ぐ。

 

「こっちは夕立。駆逐艦だ。」

 

「よ、よろしくっぽい…」

 

やはり安全だと思っていても恐ろしいのか、いつもの元気のある挨拶が出来ない夕立。

 

「ん、よろしク。レ級だヨ。君ずっと見てたでしョー。」

 

「え!?バレてたっぽい!?」

 

「バレてたっぽイ。」

 

驚く夕立に、ニヤニヤと笑うレ級とネ級。夕立の特徴的な語尾に合わせて返答する辺り、かなりノリは良いのかもしれない。

 

「これは驚いたな…夕立はこの鎮守府でも隠密能力は優れている方なんだが……」

 

「いや、下手とかじャないゾ?オレらは深海棲艦だからナ。何となく察するってだけダ。」

 

「うぅ……自信無くすっぽい…」

 

「大丈夫だって、普通に上手かったヨ。ジャパニーズニンジャだネ。」

 

そう笑うレ級に、肯定のジェスチャーをするネ級。

 

さて、と転換接続。

 

「何をするんだい、提督サン?」

 

「そうだな、まずは…うん。そうだな。定例会で報告しなきゃならない。」

 

「ほう、定例会。」

 

「そう、定例会。月イチで各鎮守府の提督と本部の人が集まる会議だ。来週末にあるんだが…それまでは自由かな。仕事してもらうのはその後だ。」

 

「自由!解放カ!?」

 

「まぁ、他の提督達と本部の判断次第ではあるが…一時的にそうなるな。」

 

「でもどっちにしろ鎮守府の中だけっぽいかも。」

 

と、レ級の枷を外しながらの夕立の補足。

 

「そうかもな、流石に深海棲艦を外に出す訳には……」

 

「問題無いヨ。全く、枷があると食いにくいんダ。ただ、聞きたいことがあル。演習とかはアリなのカ?」

 

「そうだな、深海棲艦と演習が出来るとこちらとしても得るものが大きいからな…アリかな。」

 

レ級はおぉ、と声を漏らす。

 

「やったなァネーちャん!長門と一戦いけるんじゃないか?」

 

こくこく、と興奮気味に頷くネ級。

 

「いやネ級は無理だが……」

 

「エ?」

 

からん、と手に持っていたスプーンを落とすレ級。

 

「──ワケを聞いてモ?」

 

「レ級はまだしも、ネ級は難しい。敵性は無いにしろ、君とは大きな戦いをしている。こちらも決して少なくない犠牲者が出たんだ。──とにかく、こちらにも事情があるんだ。すまない、分かってくれ。」

 

それを聞いて、レ級はネ級に一瞬目配せをして…少し躊躇ったような素振りをみせてから、ゆっくりと口を開く。

 

「『こちらはワタシ以外のほぼ総員が沈められたんだがな……まぁ、だからと言ってどっちが正しいかなんて事は無いし、ワタシ達としてもそちら側のセンユウを沈めたのは事実だからな。そういうことなら仕方がない。

素直に諦めるよ。関係の艦娘にも謝罪する。』……だとサ。まぁ、風あたりは強いよナ。」

 

それを聞いて、うっと言葉が詰まる。それもそうだ、犠牲の数はこちらは数名であちらは数百にも及ぶ。むしろこんなに友好的な方がおかしい。

 

「それと……本当に申し訳ないが、プライベートで他の深海棲艦と話すことも原則、禁じなければならない。」

 

レ級とネ級の瞳に、明らかな動揺が映る。当然だ。友人と自由に話すことを禁じられ、話す事を許可されるのは尋問時のみ。

こんな事を伝えられた2人の心情は察するに余りある。

 

「──まぁ、理由は聞かずとも分かるヨ。気にスルナ。」

 

「……すまない、ありがとう。」

 

そんな当たり障りのない言葉しか、出なかった。

 

 

『ワタシの発言から静かになったな。なんかまずいこと言ったか?』

 

──いやぁ、なるよそりゃあ……

え、なに?そんな闇深かったん?提督さんと夕立ちゃんめっちゃ気まずそうな顔で行っちゃったよ。

 

「いや、いやいヤ。なんでそんな飄々としてられんだヨー……」

 

『昨日同じ釜の飯を食ったヤツが次の日には沈んでるなんてことはワタシ達にとってそんな珍しい事じャ無いんだよ。

それにあの戦いは、艦娘サンらは海の自由を取り戻すため。私らは住処を、ナカマを守るための戦いだった。そこに善も悪も無いダロ?』

 

「ホーン、強いなァ。ネーちャんハ。」

 

正義の反対は、また別の正義である。そんな言葉をふと思い出した。

 

『カッカッカッ、冷たいとも言うけどな!あぁ、別にみんなこんな考え方な訳じゃないぜ?ナカマをやられたら怨むヤツもいる。ワタシのナカマだったクウボスイキはそうだった。夜戦で沈んだけどな。』

 

なんか連撃で凄まじい威力出す艦娘が3人いてさ、それでやられたんだよ。と笑う。

…その艦娘、覚えがあるなぁ。

 

『辛うじて撤退出来てた奴らはどうしてるんだろうなァ。ここに来てからどれくらい経ってるのかも分からん。最後に深海を見たのはいつだったかな?またあの変な顔したサカナを食べたいものだ。』

 

そう懐かしむような目をしながら言う。だよなぁ……ここにいる深海棲艦はあくまで捕虜だ。ネーちゃんより長い間囚われている深海棲艦もいるだろう。

それら全てがこのネ級のような性格だとは限らない。艦娘を酷く怨んでる者もいるのではないか?

 

俺がやる予定の、深海棲艦の通訳。並びに情報提供。これはかなり難航しそうだな……

 

最初こそ、好きなゲームに転生してラッキーと思った。

けどなぁ……全然ラッキーじゃない。闇深過ぎる。そりゃあ、人造人間(ホムンクルス)とか、亜人とか、アビス教団とか、原生生物とか、そういうがいないだけマシだけども。それとこれとはベクトルが違う。

 

『なァ、レの字。』

 

「ン?」

 

『無理してワタシを解放しなくていいんだぜ?』

 

呟くように、言った。

無意識に、無自覚に目を逸らしていた、最大の壁。

 

「──なんデ?自由になりたくないノ?」

 

『そりゃあなりたいさ。できることなら、また深海に潜って海の冷たさを肌で感じたい。あとアノ艦娘─ナガトと戦いたい。』

 

けどナ、と言葉を紡ぐ。

 

『無理なんだよ。ワタシが艦娘達に敵意を向けなくても、友好な関係を持つことは出来ない。ワタシが深海棲艦である限りはね。』

 

「……」

 

『その顔、どうせ何とかして自由にしようと考えてるダロ?』

 

「……なんで分かっタ?」

 

『分かるさ。数時間前からの長い付き合いダロ?』

 

「……たった数時間前ダゼ?」

 

ワタシ達にとっては、数時間前から一緒なのはもう長い付き合いなんだよ。と笑う。

 

『ワタシにとっちャ、1日だけでも檻から出れたのは奇跡に等しいンだよ。それだけでも十分だってのにな。ちョっと夢見ちまったかな。

思えば、ワタシは初めてあんなに美味い飯を食べた。初めてニンゲン達と話せたし──』

 

そこで1呼吸置いて、絞り出すように言う。

 

『──初めて、初めてこんなに長い時間、誰かと話せた。こんな事を言っても迷惑かもしれないけど……コレからも、仲良くしてくれたらワタシはとても嬉しいな。』

 

目尻に水滴を浮かべながら、そう言った。

答え?そんなの、決まってるだろ。

 

「もちろんダヨ、オレ達もう"友達"……ダロ?」

 

そして、笑みを浮かべる。重巡ネ級(ネーちゃん)という友達に向けた、とびっきりのヤツを。

 

『"トモダチ"か……これも、初めてだな…』

 

そう彼女は、へにゃりと笑った。水滴を、涙を零しながら。

 

『オカシイな、別に今生の別れって訳でも無いのに。水が溢れてくる。コレも、初めてだ。もっとオマエと一緒にいたいって、喋りたいって思っちまう。ハハ……今日は随分と、初めての事が多い。』

 

「おかしくなイ。普通だヨ。それが、普通なんダ。」

 

そう、普通だ。普通なんだ。

深海棲艦も、普通だ。人となんら違いの無い、普通の心。

 

「いつか、いつか必ず、あそこから出す。出してみせル。それまで待っててくれヨ。ネーちャん?」

 

そう言うと、彼女は目をゴシゴシと擦ってから、素敵な笑みを。本当に、本当に心の底から素敵な笑顔を浮かべ、こう言った。

 

『あァ。待ってるよ、戦艦レ級(レの字)。』

 

 

「……」

 

間宮食堂の出口前廊下。壁にもたれて立っている艦娘が1人。

 

「あのネ級さんは何言ってるか分かんないっぽいけど……ココロで、タマシイで伝わったっぽい。」

 

壁から離れ、廊下を歩く。行先は、きっと彼女にしか分からない。

 

「提督さんはああ言ってたっぽいけど、夕立は……夕立は。」

 

夕立は1歩1歩、確かな歩で進む。

 

「たとえハンモックを張ってでも…やらなきゃいけないこと、あるっぽい!」

 

段々と、歩く速度は速くなっていく。夕立の心情に比例するように。

街もとうに営みを止め、月も傾いてきている時刻に。薄暗い廊下に、一筋の光が差し込んだ。

それはまるで、最高にステキなパーティの開始を合図するかのように。

 

 




夕立「Every Body!!!シャッフルしよう世代!!連鎖!する!スマイル!!!!Let’s Party!!!!エンジョイ!しなきゃもったいない!!だって!人生は1回!!!レインボー!は!空だけじゃない!胸にも架かるぜ!!!どんなミラクルも起き放題!!ユニバース・フェスティバル!!!!!!(PARTY P.A.R.T.Y. )」
春雨「ゆ、夕立姉さん?どうしたんですか急に?」
夕立「ステキなパーティの歌っぽい!いい曲でしょ?っぽい!」
春雨「えっと…そうですね。はい」
夕立「心がこもってないっぽい!ぽーい!!」





ハーメルンさん絵文字非対応でしたのでエクスクラメーションでゴリ押しました。
完全体を見たい方は「P.A.R.T.Y.コピペ」で調べて下さい。
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