三年間逃げ切ったら勝ちでは?   作:なつめ

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 丁寧語が得意です。
 敬語は苦手です。

 ばかやろう




きっかけ

 

『付き合わない? 私たち』

 

 どうしてこうなったと、僕は頭を抱えた。

 いや、ひょっとして、もしかすると何かの見間違いかもしれない。もう一度スマホを覗き込み、映し出されているトーク画面を上からゆっくり読み直す。

 最初は単なる雑談だった。ごはん食べたかとか、今度また遊ぼうとか。いつもと変わりないおしゃべり。

 問題はここから。時間もいい感じだし、「そろそろ寝るね」と僕は送信した。普段なら「おやすみ」と返ってくるはず――だった。

 

『ね』

『付き合わない? 私たち』

 

 どうしてこうなった。

 いくら恋愛経験のない僕とはいえ、この流れがいささかおかしいことはわかる。かといって彼女が――新庄(しんじょう)佐奈(さな)がこういう冗談を言うタイプではないこともわかっていた。

 佐奈との付き合いは長い。そもそも親同士の仲が良く、家もすぐそこ。顔を合わさない日のほうが少ないくらいで、いわゆる幼馴染として僕らは育った。

 意識したことがないといえば噓になる。というか僕らは付き合うもの、付き合っているものとして親たちからは見られていた。酒が入れば与太話は加速して、やれ結婚式はいつにするかだの、子供は何人作るかだの。思春期を迎えていたのも相まって、否が応でも意識させられる。そんな時期があった。

 そんな時、佐奈が爆発した。盛り上がっていた親たちに「やめてよ!」と怒声を上げ、泣いた。初めて見る彼女の姿に、僕はどうすることもできなかった。

 後日、思い直したらしい両親たちから謝られた。幸いにもというか、佐奈に嫌われているわけではなかったようで、頻度こそ減ったものの付き合いは継続した。近すぎず、遠すぎず。ほどほどの距離感を保っているうちに、僕がそういう意識をすることも減っていった。

 僕と佐奈はただの幼馴染。あるいは親友。そういった関係性なのだとずっと思っていた。

 でも、どうやら、このトーク画面を見るに。彼女はそうじゃなかったらしい。

 まいった。返事が思いつかない。

 とりあえず既読スルーに思われないように、

 

『また買い物? 昨日付き合ったばっかでしょ。買い忘れ?』

 

 無理がある気がする。

 文字打ちながら気付いたけど、これ「付き合って」って言い方をされたときにしか使えない。くそ。

 でもまあ、送信してしまったものは仕方がない。切り替えていこう。再び思考の波に溺れようとしたところで、ぴこん、と通知音。

 

『わかってるよね』

『ごめんなさい』

 

 そっと送信を取り消して反省の意を示した。

 結果的に茶化してしまったみたいで気まずい。まあ、時間稼ぎをしてる時点で不誠実なのに変わりはないんだろうけど。でもこの返事を決めるのは本当に困難なのだ。

 佐奈のことは好きだ。でもそれは恋心じゃない。でもいいえと答えて今の関係を壊したくはない。――なら。

 

 なら、「付き合おう」と、昨日の僕なら言えたのに。

 

 ぴこん、と通知音が鳴る。

 佐奈とのトーク画面に変化はない。つまりはほかの人からのメッセージ。

 画面をスワイプしてみれば、そこには今、いちばん見たくない人物の名前。いちばん考えたくなかった人物からのメッセージが届いていた。

 タップして開く。

 

『こんばんは』

告白のお返事なんですけど(・・・・・・・・・・・・)、いつでも大丈夫です』

『でも』

『ごはんに誘うとかは許してくださいね』

 

『わたし、本気なので』

 

 ため息がでた。

 ほんとに、どうしてこんなことになったんだろう。

 

 百瀬(ももせ)はる。

 同じクラスで席が隣の女の子。今日、告白された。

 ひとめぼれだったらしい。席が隣だから話す機会も多くあり、その中で僕の仕草や表情、授業中の姿勢がかっこいいやら、うっかり寝てしまった時の寝顔がかわいかったやらでますます好きになったと小一時間ほど語られた。最後に「返事はまだいい」「考える時間、必要だよね」という僕への配慮をしてみせて今に至る。

 実際、気の合う友達くらいにしか思っていなかった僕にとって彼女の配慮はありがたかった。お言葉に甘えさせてもらって、交際についてちゃんと考えるつもりだった――が。

 

 百瀬さんには悪いけど、むりだ。彼女のいう「いつでも」がどの程度を許容しているかは見当もつかないけれど、明日明後日とかじゃあとても返事は出せない。

 だって、これは。佐奈と百瀬さんのどっちを切り捨てるか――そういう話だから。

 

 二人に対して誠実であるために、僕がやるべきことは、なんだ。

 とにかく必要なのは時間だろうか。それも長期的な。これを認めてもらうためには――ううん、言い訳が思いつかない。男として情けない対処法になるけど、何が起きてるかを正直に話すしかない気がする。事情を知らせないまま返事を待たせたら、「意を決して告白したのにスルーされた」と思われかねない。

 よし、やろう。

 優柔不断と貶されるかもしれない。卑怯者と罵られるかもしれない。それはまあ、仕方ない。受け入れる。

 

『明日のお昼、体育館裏に来てください』

 

 佐奈(さな)百瀬(ももせ)さんに同時送信する。

 そして、速やかにスマホの電源を切り、布団にもぐりこんだ。

 あとはもう、しらない。あとのことはあとの自分がなんとかしてくれる。きっと。いや、まあ、なんとかするしかないんだけども。

 

 ぶっちゃけ胃が痛かった。

 

 現実から目を背けるように、僕は夢の世界へと旅立った。

 

 

 





 他人の修羅場ってめちゃくちゃ面白くないですか?

 お前もそう思うだろハム太郎!!!!!!!
 へけ!!!!僕も!!!そう!!!!思うのだ!!!!!!っぺ!!!!!!!!!

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