原神:幼なじみ物語   作:Mrミステル

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あけおめことよろです!

ゴルフで父に勝ちました!(近況報告)
コースに出るのは3回目なんですが、スコアが一気に30近く良くなりました。

自分の才能が怖いぜ...(天狗)


バーバラ

 

紫煙揺らめく夜の教会。

男は1人階段に腰をかけて煙草をふかしていた。

巨大な風神像の後頭部の先。浮かぶ満月を眺めながら佇む暗殺者。

 

さてはて、一応風の神の目を貰っている訳だし、感謝の意でも示しておきますかねぇ。

 

少し立ち上がって、咥えていた煙草を携帯灰皿に入れようとすると、

 

「あー! またタバコ吸ってる!」

 

「うげっ...」

 

背後の教会の扉が開き、そこから金髪をクルクルさせた彼女が出てきた。

 

...まずいな。バーバラから煙草は禁止されてんだった...。まだ出てくる事はないと思ってたから油断した...。

 

お兄ちゃん(・・・・・)! 約束したよね!? タバコはダメだって!」

 

「いやバーバラ、これは煙草じゃないぞ。線香だ。稲妻では煙草の代わりにコレで煙を吹かすんだよ」

 

我ながらよくもまぁこんな訳の分からん言い訳が出てくるなァ...。

 

「え? そうなの?」

 

バーバラは目の前できょとんとしている。

あー...その首コテンって傾げるの可愛いなぁ。

あ、待って近づいてこないで普通に煙草だから。臭いから。

 

案の定匂いでいつもの煙草とバレたようで、鼻をつまみながらムスーと見上げて睨んできた。

...罪悪感がやばいなーこれ。

 

「...ごめん。ウソ」

 

「...身体は大切にしないとダメだよ? お兄ちゃんが死んだら嫌だからね?」

 

「はいはい。悪かったな…。ほら、帰るぞ」

 

「ホントに分かってるの!?」とかぴーぴー騒いでるが、無視して歩き出す。もう夜も遅いし、変な輩が出て来てもおかしくない。

 

ほらそこ。教会の影。バーバラをずーっと見てる奴がいるだろ? ああいうのがバーバラに...

...違ぇやアイツただの厄介オタクの奴じゃん。割と良い奴なんだよな。

よく教会の周り掃除とかしてるし。

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酔っ払い共が跋扈する街中を歩いている最中、たまたま偶然ジンとギルヴァにバッタリした。

 

「よォ。団長に副団長。奇遇だな」

 

「アテンタか。久しぶりだな」

 

「お姉ちゃん!」

 

「ば、バーバラ。こんな時間に出歩いていたのか...?」

 

「ちょうどいいな。野郎2人で呑みに行こうじゃあないか。ジンもいることだし、バーバラちゃんは大丈夫だろ?」

 

「...はぁ。なるほどな。じゃあバーバラ、俺はコイツと呑みに行くから。ジンと一緒に帰ってな」

 

なんだよもー...。ギルヴァ...。マジでコイツ考えてることが分かりにくいな...。ホントにコイツ敵じゃなくて良かったわ。まずは見てくれから裏切りそうなんだよね。糸目だし。

 

いつもの書類がチラついてなかったら普通に気がつかなかった...。

 

そうして俺とギルヴァはサシで呑むという名目の元、エンジェルズシェアに入っていった。

バーバラが最後まで「飲みすぎたらダメだからね!!」と大声で忠告してくれたが多分飲みはしないから平気だろうな。

 

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俺とギルヴァを見るなりディルックは2階の端の席に通した。暗黙の了解というやつだ。

 

アルコールの入ってないソフトドリンクを1つずつ頼み、周りを見計らってほぼ俺たちの専用となっている隠し部屋。そこへと踏み入れる。

 

「...で? 今回は?」

 

「まぁそう焦るな。今回のはデカい話だからよ。酒でもシバいてゆっくり話そうや」

 

「はぁ...。そういう奴だったな、お前は。とりあえず乾杯でもしとくか。あと酒じゃねぇだろ。お前マジで酒弱いんだから飲むなよ?」

 

グラス掲げて、音を出さないようにぶつける事はせずに2人で「乾杯」と1口飲むだけである。書類には魔物による大規模な侵攻についてと書かれていた。そう。現在エウルアに搾り取られている彼が貰ったものと同じ書類である。

 

...彼はいつ精魂つき果ててもおかしくない。南無。

 

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「お姉ちゃん。お兄ちゃんたちは何話してるんだろう?」

 

「さあな。それよりも夜ご飯は食べたのか? もしまだだったら私が作ろうか?」

 

「ホント? やったぁ!」

 

幸せそうな姉妹の背後に迫る影ひとつ。

 

「きひ。きひひひひ! ば、バーバラちゃん...。

今日はお、オレと一緒にか、帰るや、約束した...のに...」

 

先程の教会にいた男は可愛らしいもので、モンドにはこういったかなりヤバめのバーバラのファンもいる。

 

そういったヤバめの輩からアテンタがバーバラを護っているのだ。いわゆるボディーガードと言うやつだ。時間に余裕があればアテンタは毎日でもバーバラを教会に迎えに行く。

 

では、こういったアテンタがいない場合。相手は一応、一般モンド民のためにジンも荒事はできない。どうしているのか。

 

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「なるほどな。大規模な侵攻ねぇ...」

 

「あぁ。そこでお前には教会の防御と橋の前に地雷(・・)を設置して欲しい。」

 

「地雷って言うな地雷って。あれただの風元素の塊だからな? あんな野蛮なモンと一緒にするなよ」

 

「その風元素で四肢欠損させるのお前くらいだけど」

 

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「ば、ば、ばば、バーバラちゃぁぁああ、あああああ!?!?」

 

男はいきなり後ろに吹き飛ばされた。ジンもバーバラも全く気が付かずに男だけが吹き飛んだ。

 

「な、な、な、.........」

 

男はそのまま気を失った。

これが地雷。と呼ばれる風元素の塊。圧縮された風元素に触れると瞬時に膨張。周りを吹き飛ばす。

 

本人はエアーバレットと呼んでいるが、大抵の人(騎士団や旅人)はこれを地雷と呼ぶのだ。

 

「だって地雷だもん」ー旅人

「特徴が地雷に酷似しすぎている」ーアルベド

「地雷を量産してみました!」ーめちゃくちゃな研究室とスクロース

 

「一応射出もできるから! 設置するだけじゃないから!! 地雷じゃねぇっての!! エアーバレットって言えよ!!」ーアテンタ

 

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「んー? 1個起動したぞ...?」

 

「地雷?」

 

「地雷って言うんじゃねぇよ!」

 

少しばかりの作戦会議を終えて、氷を噛み砕きながらギルヴァは既にのんびりとジュースを3杯ほど飲み、アテンタも酒を入れ始めた。

先程もあったようにギルヴァは酒に弱い。それはもうホンットに弱い。びっくりするレベル。かなり薄めた蒲公英酒も途中でダウンしてしまう程だ。なので基本的にギルヴァはジンが近くにいて、なおかつ家が近いところでないと酒を呑まない。

 

「そろそろ帰るかー」

 

「そうだな。別にジンには知られてもいいけどよ、バーバラにはあんまり言うなよ? あの子知ったら絶対あたふたするからな」

 

「分かってるって。酒2、3本買って帰るか」

 

そうして2人は勘定を済ませて、途中で酒を買って、しばらく歩いてアパートへと帰って行った。

 

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「ただいまー」

 

「おかえりなさい!...あれ? お酒飲んでないの?」

 

「野郎2人で呑んでもあんまり楽しくねぇからな。ほら、ジン。お前の分もあるぞ」

 

ジンはエプロンをしてキッチンに立っていた。既に手を洗ったギルヴァが横に立って手伝っている。

 

なんだこの状況? と思った読者の方も多いだろう。

 

これは完全に偶然なのだが、ギルヴァの部屋はこのアパートの3階。アテンタは2階に部屋を持っている。そしてこのアパートは騎士団本部、及び教会に近いため、ジンもバーバラもこのアパートで寝泊まりすることの方が多いのだ。

 

バーバラが眠った後に上の階から聞こえてくる何かが軋む音はご愛嬌である。

バーバラはこの部屋のクローゼットやタンスに入っているものは全て把握しているし、冷蔵庫の中身だって把握している。なんだったらアテンタの好みのお風呂の温度だとか、そういう本の場所も既に把握している。

 

「う〜...。じーんー...」

 

やはりギルヴァはグラス1杯で限界らしく、もうベロンベロンになっていた。

 

「おやおや。もう限界みたいだな。じゃあそろそろお暇するよ。余裕があれば是非とも君の意見も聞かせてくれ。じゃ、おやすみ。アテンタ、バーバラ」

 

「あぁ、おやすみ」

「おやすみ、お姉ちゃん」

 

...俺は見逃さなかったぞ。酔っ払ったギルヴァを見て舌なめずりしたジンを。

...こりゃバーバラには早めに寝てもらわないとな...。

 

ちなみにバーバラはアテンタの本で色々と知識を仕入れているので上の階で姉がナニをしているのかは大体把握している。

バーバラはムッツリなのだ。

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アテンタはバーバラのファンである。

歳はそこそこ離れているが、バーバラはアテンタの事を「お兄ちゃん」と呼んで離れなかった。

 

月日がすぎてバーバラは剣、というか騎士の道を諦めて、自ら選んだアイドル兼シスターの道を歩んでいる。

騎士になることを諦めた時は、泣きながらアテンタに相談していた。

 

泣き虫だったバーバラはもういない。

今は教会で立派に務めを果たすシスターで、モンドの皆に希望を与えるアイドルだ。

 

その成長ぶりをアテンタは隣で一緒に歩んできた。

 

「だからね。隣にお兄ちゃんがいない生活なんて考えられないの」

 

初めてアパートにバーバラが転がり込んで来た時のセリフである。

同じベッドで寝たことに関して(もちろん、一切の間違いは起こしていない)翌日ジンに斬り捨てられそうになったこともあった。

 

仕事が終わって帰ると、家にモンドのアイドルが居ることもある。そんな生活を想像して欲しい。最高じゃないか。

 

大抵はアテンタがバーバラを迎えに行くのだが、アテンタの仕事の都合上、毎日は難しい。そんな時は書き置きを残しておくと、大体バーバラが夜ご飯を準備して待ってくれているのだ。

 

「あ、おかえりなさい! お兄ちゃん!」

 

言われてみろ? 5回は死ぬね。

 

そしてバーバラ特製の激辛料理でもう1回死ぬんだよな。

 

 

「むにゃ......お兄ちゃん...すきぃ......」

 

「はいはい、俺も大好きだぞー」

 

もはや同じベッドで寝ることになんの羞恥も抱かなくなってきた。ヤバいですね☆

寝顔も可愛い。とてもこの世のものとは思えないほど整っている。

ただ俺の枕に顔を埋めるのやめて欲しい。多分臭い。成人男性の枕の匂いとか絶対ヤバいと思うんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...すーっ......ふーっ........すんすん......はぅ♡‬」

 

 

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「エアーバレットの設置完了したぞ」

 

「地雷設置完了!!」

 

地雷じゃねぇよ!

あくる日の朝早く。モンドの橋の前に大量のエアーバレット(地雷)を設置したアテンタはそのまま教会へと向かっていた。理由は、魔物の大規模侵攻時に一般人の避難所になってもらうためである。

 

なんというかこう...結構気が重い。

俺はそこの防衛に当てられるらしいが、後ろには一般人が大勢いる。今のところ空を飛ぶ魔物がいるとの報告がないのが唯一の救いか。

 

...てかロサリアは何処で油売ってんだよ。お前が騎士団に移籍したせいで俺の仕事量跳ね上がってんだぞ? 分かってんのか? 

 

「お、お兄ちゃん...。怪我したらすぐ来てね? ううん。怪我しないでね?」

 

バーバラもやはり怯えている。アイドルである以上、バーバラにはこの教会に避難してきた一般人にも希望を振り撒かなくてはならない。

 

まぁ、モンドの橋さえ抑えておけば侵入できないし、モンドの1番奥のここまでは来ないやろ(フラグ)

最悪ゲーテホテルに泊まってるファデュイどもを身代わりにすればいいしな(ゲス)

 

「大丈夫だ。アテンタ殿はモンドの最高戦力の一角。彼の地雷の威力は凄まじいぞ」

 

そこ。余計なこと言わない。普段から教会の防衛に当たっている騎士団の奴らもいるし、多分一般人の統率はなんとかなる。混乱さえさせなければいい。

一応元素の力を持つ俺とバーバラが前線を張る必要こそあるが、激しい戦闘はあまり予想されていない。ゆっくりおしゃべりでもしながら、時折エアーバレットで援護射撃すればいいか。

 

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とか思ってた時期が俺にもありました。

 

下の方からロサリアとヨハンの声が聞こえてきたからおかしいと思ったんだよ。正面の橋もなんかめっちゃ凍ってるし。なにかあるなとは準備してたさ。使徒は予想外だったけどね。

 

「...また大層なのが出てきたな。使徒とか言ったか?」

 

「......」ガクガク

 

バーバラは初めての使徒に完全にビビっている。仕方がない。人のデカさじゃないし、そもそも人間かも怪しいのに人間の言葉を使う。俺も多分お化け屋敷とかで会ったら気絶すると思う。

 

『我々は復讐のためにここに来た。我らを阻む忌まわしき者共を駆逐するために! アビスに栄光あれ!』

 

「下がってろバーバラ」

 

よく見るとアビスの使徒はところどころに傷を受けている。切り傷でも刺傷でもない。散見できるような鎧の壊れ方からして...徒手空拳じゃん。アイツ...まだやってんのか...? 使徒相手に正気か?

 

バーバラは下がってもらおう。幸いなことに奴が転移してきたのは教会の下の広場だ。

巨大な風神像が壊れない程度には暴れていいとのお達しもある。

 

「かかってきな。古代人」

 

『森羅万象の頂点へと!!』

 

使徒は水の元素を纏い、突貫してくる。

バーバラは息を呑んで後ろから戦いを覗いていた。

 

「通さねぇからな」

 

『我が道を阻むなら、お前も死ね!!』

 

風元素を上手く使って水の刃をいなす。

アテンタの戦い方は基本的には受けにまわる。エアーバレットのシステム上、自分から仕掛けることはほとんどない。

 

また1つ、使徒の足元が爆発した。

風元素は他の元素の補助に優れている。拡散反応が主となるが故に元素シールドを持っている敵には中々ダメージが与えられない。

 

『風元素で我を倒せるとでも!?』

 

「お前もさっさと俺を倒さねぇと、応援が来るぞ?」

 

挑発の応酬。売り言葉に買い言葉。

攻撃が当たらない使徒と攻撃を当てても意味が無いアテンタ。

 

バーバラは後ろに隠れて、アテンタに時折回復をかけるが何も出来ない歯痒さを感じていた。

 

その隙を猛者が見逃すはずもない。

 

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1時間が経過した。

アテンタが優勢なのは目に見えているが、決定打がないために拮抗状態が続いている。

 

バーバラはアテンタに回復をかけ続けているが、元より戦い慣れていないために疲れが見え始めていた。

 

『捕らえた!』

 

「あぐぁ!?」

 

バーバラが気を抜いたその一瞬を逃さず、使徒はバーバラを捕らえた。片手で楽々と持ち上げて、アテンタの方を向いた。

 

『動くんじゃないぞ。お前が動いたその瞬間。この女を殺す。...ふぅ...ふっふふ。あっはははははは!!』

 

「ゃだ...お兄ちゃ...ごめんなさい...」

 

「......」

 

完全に戦闘は停止した。使徒はバーバラの首元に刃を置き、アテンタも人質をとられていては動けない。

 

バーバラは思わず涙を流した。

何をやってるんだろう。

なんで足を引っ張るようなことをしているんだろう。

お兄ちゃんに迷惑しかかけていない。思い返せばあの時も、あの時も...。

 

『おやおやぁ。泣いちゃったなぁ! ま、せいぜい騒ぐがいい。どうせお前も、アイツも、この国の愚民共も、まとめて死ぬんだからなぁ!』

 

「...ひっ...」

 

すると、アビスの転移門がそこら一帯に展開された。中から出てくるのは魔物の群れ。

数えきれない程の魔物が現れた。

 

「お兄ちゃん! 逃げ...! ダメだ...」

 

逃げられない。後ろには一般人が大勢いる。

 

『ははははは! まんまと時間稼ぎに引っかかったな! この女ごと我を殺せば防ぐことができたぞォ? お前のせいで皆が死ぬのだ。ハッハハハハ!!』

 

 

どうしよう。どうする事もできない。

私は...お姉ちゃんみたいに敵も倒せない...。

お兄ちゃんだって...。全部できる訳じゃない...。

 

私はどうしたら...。

 

 

 

 

 

 

 

「バーバラ」

 

力強い声だった。いつも私を導いてくれた声。

応援してくれた声。慰めてくれた声。

大好きなお兄ちゃんの声。

 

涙でよく見えない。けどお兄ちゃんは余裕を崩さずにただ仁王立ちしていた。

 

「バーバラはアイドルなんだろう?」

 

...そう。私はアイドルになる。なにかの本で読んだんだ。

みんなに笑顔をあげる存在。そんな素敵な存在に。

 

「笑顔の準備をしといてくれ。皆が元気になれるように」

 

笑顔。相手を安心させられる最大の武器。

...私が笑顔を崩したら、皆が笑顔じゃ無くなっちゃう。

そう。昔にも言われたっけ。お兄ちゃんは辛くても苦しくても絶対に私には言わなかった。私もお兄ちゃんが辛いって分からなかった。

それはお兄ちゃんが笑っていたから。空元気でも笑っていたから。

 

...バーバラの笑っている顔が好きだって言ってくれたから。

 

「応援してくれよな。アイドルの応援とか、絶対パワー出るから」

 

『御託は終わったか? かかれ! まずはソイツを殺すのだ!』

 

 

魔物はいっせいにお兄ちゃんに飛びかかる。口を塞がれていてくぐもった声しか出ない。それでも精一杯叫んだ。

 

「頑張って」って。届かなくても。

 

「エアーバレット」

 

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『な、なんだ...何が起きた!?』

 

煙が晴れると、そこにはアテンタのみが立っていた。傷一つなく、言われた通り怪我はしてないぞと言わんばかりに両手を広げ、

 

「エアーバレットは圧縮した空気を炸裂させる。時間があればあるほどに圧縮は進み、威力が格段に上がる」

 

声たかだかにエアーバレットの説明をしていた。

 

「そしてその射程は無限。精密にコントロールもできる」

 

『ほざけ! その地雷を使い切ったな!』

 

使徒はバーバラを投げ捨て、自ら斬り刻まんと突進した。

それが最悪の手であると気がついたのは刃がアテンタの首を撥ねる直前。

 

『が...っはぁ...!? な...にを.......?』

 

突然、使徒が苦しみ始めた。

バーバラは受け身をとってその様子を見ていた。するとお兄ちゃんから「目を塞いでいなさい」というジェスチャーが来た。

 

「...よし、いい子だ。さて、さっきも説明したがな。俺のエアーバレットは射程は空気さえあれば無限だ。空気さえあれば圧縮して弾丸にも爆弾にもできる」

 

血を吐いて倒れ込む使徒。

それをゴミを見る目で見下ろしながら、勝利宣言とばかりにアテンタは先程よりも高々に、

 

『な、にが、言いた、い...』

 

「...エアーバレットは既にテメェの肺の中にあるって事だ。...内側から、弾け飛べッ!!」

 

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凍りついた橋の処理に、怪我をした騎士団員の救護、更には桟橋を素手でぶっ壊したための補修もあり、モンドは勝利した後もしばし忙しかった。隣の国である璃月から刻晴と神応も手助けにやってきた。

 

「さてはて、こんな時にも暗殺の仕事はあるんかいな」

 

「...」

 

物言わぬ肉塊となったターゲットを湖に投げ捨てて、アテンタはモンドに帰ってきた。

どこを見てもてんてこ舞いといった忙しさで炊き出しや荷車の担当が忙しなく動いている。巻き込まれると面倒だとアテンタは横門から教会へと向かった。

 

途中でロサリアを見つけたが、彼女も桟橋の補修作業に追われており、ヨハンはずっと首から『私はこの桟橋を素手で壊したバカです』と書いてあるカードを下げていた。

 

教会は無傷だ。その手前の広場はあちこちがボコボコに凹んでいだりするが、風神像だけは綺麗に残っていた。

 

ジンもギルヴァも指示や次の復興計画で忙しく、しばらく会える状況ではないらしい。

となると、やはりバーバラに会いたくなってくるのだ。

 

果たしてバーバラを見つけた。

疲れきったモンドの人々を癒すべく、バーバラは精力的に奔走していた。額には汗が浮かんでいるが、すぐに拭き取ってアイドルらしく、笑顔を振り撒いていた。

 

こりゃ大変だなぁとアテンタは離れようとするが、そのタイミングでバーバラがアテンタに気づいて走ってきた。

 

「お兄ちゃん! ちょっと手伝って!」

 

「えぇ...」

 

そして結局教会の力仕事をほとんど任されて、気がついたら日が暮れていた。

 

「疲れた...」

 

「ありがとう、お兄ちゃん。助かったよ」

 

しかしバーバラは笑顔で乗り切っており、いかにこの子が天性のアイドル気質であるのかを改めて思い知った。

 

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「私、夢ができたの」

 

バーバラは唐突に切り出した。

2人でアパートに帰る最中だった。璃月の人が来ているから、と絶雲の唐辛子を購入して家で激辛料理を食わされると覚悟を決めていただけに、どんな話が来るのかとヒヤヒヤした。

 

「...世界一辛いものでも食べるのか?」

 

「んーん。違うよ。辛ければ辛いほど良いって事じゃないもん」

 

そうだったのか。いやあのスムージーも十分辛いけど。

 

「...お、お嫁さんになりたいの」

 

「ほぉ。そりゃいいじゃんか」

 

アイドルがお嫁さんかぁ...。なんかちょっとアレな気もするが、バーバラ本人の夢だから、俺はとやかく言うつもりは無い。

 

「式には呼んでくれよ」

 

「...絶対出てもらうから。...だから」

 

バーバラはちょいちょいと手招きしている。耳打ちだろうかと中腰になって耳に集中していると、頬に温かくて柔らかい感触が一瞬感じられた。

 

 

「...だから、これは予約なの。お兄ちゃんがどこにも行かないように、私のファーストキスで予約。いつか私がお兄ちゃんに見合うほど大きくなって、立派な女の人になれた時のために...」

 

バーバラなりの誠意はアテンタに伝わった。

これからアテンタはバーバラが大人になるまでの間、手を出さずに悶々と過ごすこととなる。

 

そして、バーバラがジンのように美しく、そしてあの幼さは残したままに成人して、すぐにアテンタとお付き合いを始めて、お互いの我慢は決壊することとなるのだが、それはまた別のお話。

 

 

「アテンタさん...私、まだ帰りたくないな...」

 

「いや、帰るも何も。結局俺の部屋に来るじゃん」

 

「言ってみたかっただけだもん!」

 

幼い可愛さも残しながら。

 

「お兄ちゃん...大好き♡ もっと...しよ...?」

 

「お兄ちゃん呼びは反則だろ...」

 

「うふふ。ほぉら。お兄ちゃん♡‬がんばれ♡‬がんばれ♡‬」

 

妖艶になったバーバラまで余すところなくアテンタは堪能した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え? 牧師なのにそれはいかがなものかって?

 

何言ってんだ。2人は酒飲んで酔っ払ってゲームしてるだけだぞ。大体バーバラがアテンタを手玉にとってるけど。




バーバラにお兄ちゃん呼びをさせてしまった...。

皆の妹キャラ、バーバラさん。
筆者はここみん未所持なので未だに現役で頑張ってもらってます。

次は多分夜蘭書くと思います。

今年もどうぞ本作をよろしくお願いします。
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