私のテイワットはまだフォンテーヌ人が許されておりません。
そして空くんは罪人になりました。ケーキ食ったら1ヶ月半て...
夜蘭はサボることが好きである。
浩然はサボりが嫌いである。
なぜなら甘えさせてくれるから。
なぜなら罪悪感を感じるから。
夜蘭は仕事前には調整が必要だと言う。
浩然は仕事前には準備が必要だと言う。
なぜなら高いパフォーマンスに繋がるから。
なぜならしないと最悪の結果に繋がるから。
「はぁーあ。疲れちゃったわ。浩然ー。お茶入れてー」
「はいはい。稲妻の珍しいのがあるから、それでいい?」
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浩然は璃月に住む一商人である。
商売で大成功したこともなければ大失敗したこともない。
人生の山も谷も経験しないまま、もうすぐ齢30になろうかというくたびれた男である。
食いつなぐことに苦労は感じていない。資産は趣味に費やせるくらいの余裕はある。
なんなら最近は引越しでも考える余裕があるのだ。
え? 引越しの理由?
「ただいまー。浩然ー? いるんでしょ?」
コイツだよコイツ。夜蘭。
何サラッと人の家に入り込んでんだ。茶屋はどうした茶屋は。
「何しに来たんだお前。茶屋は?」
「何よ。そんなに来て欲しくなかったのかしら? ...ははぁん。さては何か隠してるわね?」
なんだコイツ。俺の質問に答えろよ。
ムカつくから今すぐその「図星でしょ」みたいな顔をやめろ。殴るぞ。グーで。
「別に、今度新しい商売ルートを開拓するから、その確認をしてただけだよ」
「あら。私が知る限りだと、君はあまり自分から新しいものには突っ込まない性分だった気がするけど?」
「...俺もそろそろ30だからな。動けるうちに動いておこうと思ったまでだ。...はいお茶」
これは本音だ。30を超えて体が思うように動かなくなってきてからでは遅い。
今のうちに交易なり何なりのルートや伝手を作っておいて、商人同士で支え合う。いい事じゃないか。
「ありがとう。...そうなの。私はてっきり世帯でも持つのかと思ったわ」
「...その話はお互いにしないって約束しただろ。俺たちもうアラサーだぞ?」
悲しいかな2人揃って独身である。
なんだったら浩然は世帯を持とうとはしているが、何故かすぐに付き合いをした女性と破局してしまうのだった。
大体2回目のデートで振られてしまうのだ。大体こっぴどく、「浮気者」と。
浩然は夜蘭の男事情は全然知らない。
...なんかだんだんイラついて来たな。なんで俺がこんな振られまくっててコイツは音沙汰ないのに余裕ぶっこいてんだよ。
「...そういうお前はどうなんだ。お前だって歳は同じだろ。逃すぜ? 適齢期」
「あら、聞かない約束じゃなかったかしら? ...ま、いいわ。教えてあげる。私はね、もうそろそろいい男が捕まえられそうよ」
「............そうか。式には呼んでくれよ」
いやマジでムカつく。なんなんだコイツ。さっきは自分に余裕があるから煽ってきたのか?
はぁ〜〜〜? 性格わっる!
「あら、何よ。張合いないわね。君が貰ってくれても良かったのよ?」
「バカ言え。人のモンに手ェ出すほど腐ってねぇよ」
「...ふーん」
夜蘭は浩然が出したを茶に1口つけると立ち上がって値踏みするように、舐めるように浩然を眺めた。
「...それにしてもなんで君は上手くいかないのかしらねぇ。...安定した収入、そこそこ整った容姿、整頓された家、高望みしない性格...こう言ってはなんだけど、君、結構な優良物件よ」
「バカにしてんな? バカにしてんだろお前。俺毎回振られる度にお前に言ってると思うんだが?」
「まさか。私は思ったことを口にしただけよ」
絶対嘘だよコイツ。ニヤニヤしてるもん。てかさっさと飲めよ。冷めるぞ。後こっち見んな。集中できない。
「...無理はしたらダメよ」
「わかってらァに」
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「さてはて...」
スメールの方角はあっちで...、宝盗団がいないルートとなると...大きく南側に迂回しないとダメか? 層岩巨淵を通るのは...どないしよ。行ってから考えればええか。
「ま、行ってみてダメだったらダメだったでまた考えればいいな」
浩然は璃月を離れ、青々とした木々の隙間を木漏れ日を浴びながら、流れる渓流と、雄々しく立つ竹林。
老後にでも散歩のコースにしようかと思えるほどに静かで、静か故に小鳥のおしゃべりがよく聞こえる。無意識に蹴った小石が跳ねる音が、木々が身を寄せ合う音が、滝壺に叩きつけられる水の音も、鮮明に聞こえる。...野生の動物もいるのだろうか。
全ての音が混ざりあって、浩然は自分を見失いそうになるほどに、雄大な自然と溶け合っていたいとまで感じていた。
しかしながら、雑音というものは存在する。
竹林を抜けて、石英を違法に採取するファデュイを尻目に、しばらく歩いていると、目の前に大きな岩がドン、と道を塞ぐようにそそり立っていた。
「.........落石か」
よく見るとだいぶ層岩巨淵に近くなっていたらしい。少し見上げると渦のようになっている層岩巨淵の一部が崩れているようだ。危険極まりない。
落石がある中でスメールまで行かせてくれっかなぁ。と呑気なことを考えている浩然の耳は呻き声を捉えた。
「......あっちか」
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層岩巨淵に入るルートから逸れて、浩然は声の主を探した。
而して、声の主は見つかった。2人組の男である。
見つかりはしたものの、呻き声をあげている男は脚が変な方向に曲がっている。
浩然に医療の心得はない。せいぜい薬草について2、3種類知っているだけで、骨折については勝手が分からなかった。白朮先生を呼びに行こうにも、ここは層岩巨淵である。
「...一応お聞きしますけど、大丈夫ですか? いや、大丈夫じゃないのは分かってるんですけど...」
「あ、あぁ...。俺は無事だったけど、コイツがあの馬鹿でけぇ落石に脚やられちまって...」
「ふ...ゥー...ヒュー...ぐっ...ぅ...」
「助けは?」
「コイツがこんなだから呼べてないんだよ...悪いんだけど呼びに行ってもらえないか?」
「...そうか。分かった」
浩然はバカ正直である。人生諦めが肝心と自分に言い聞かせているが、根っこは人を見殺しにできない苦労人である。商人であり、利益を追求するものの、困っている人が見逃せない故に、赤字の商談にも応じ、璃月の外れにある孤児院に寄付をしたり、カモだと笑われようと、浩然は断ることはしなかった。
その性格が災いする事など、いくらでもあったが、今回ばかりは少々悪い方向に振り切れたようである。
いざ、永くを共にした足腰に鞭打って、来た道を戻ろうかと後ろを見ると、屈強な男たちに囲まれていた。宝盗団である。
「......そういうことぉ...」
先程の2人組も何事もないように立ち上がり、パンパンとついた砂埃を払っている。骨折したように見えた脚は巧妙なフェイクであり、実際には骨折どころか傷など全くついていない。
...ツイてねぇなぁ。
これから何をされるのだろうか。痛いのは勘弁して欲しいところであるが、目の前の男たちに倫理観について説いても無意味だろう。であれば今この場で舌を噛み切って死んでしまおうか。層岩巨淵へのルートを外れたせいで声をあげようとも千岩軍には届かないだろう。
「さ、逃げ切れる自信がねぇなら、全部置いてってもらおうか」
手に持つククリを舌で舐めながら宝盗団の1人が交渉(?)を持ちかけてきた。
うわ、舌先切れてんじゃん。蛇みてぇ。
...そんな事を考えてる余裕も時間もないんだけど。
「あいにく、財布とスメールまでの地図程度しか持っていないんだ。ここにあるもの以外は何も持ってない。ほら、ね」
浩然は着の身着のポケットをひっくり返して、何も持っていないことを示した。
宝盗団は浩然の財布を手に取って、ある程度満足した顔をすると、
「じゃ、これは貰ってくぜ」
と、リーダー格の男の懐に財布が消えた。
それと同時に、下っ端であろう3人が同時に浩然に飛びかかった。
分かりきっていた。本当に財布だけ盗って去ろうものなら、後々千岩軍に通報され、指名手配になってしまってもおかしくない。
どうせ通報されるなら、他人の目がない場所で通報者を消し去ってしまった方が俄然マシなのである。もちろん、人を殺した方が罪が重くなるのは当たり前だが、捕まらなければ、問題にすらならない。
ましてや家族持ちではないなら尚更。
「...少しは抵抗する気概を見せたら?」
刃がその身を裂こうとする刹那、下っ端が青い糸に包まれ、吹き飛んだ。
浩然は瞑っていた目を開けると、目の前には倒れ伏す宝盗団4人と、それらを青い糸で縛る夜蘭の姿があった。
「...夜蘭」
「あなた、もう少し人を疑うことを覚えた方がいいわよ」
珍しく怒った口調だった。...いや、本当は彼女は怒りやすくて、自分が何も知らないだけかもしれないが。
とにかく、怒っていることを隠しもしない夜蘭を見るのは、初めて彼女ができた時以来かもしれない。と浩然は土埃を払いながら思った。
「ねぇ。分かるかしら。私は今とっても怒ってるわ。...えぇ。とっても」
「...そりゃまたどうして」
「あら。女が怒ってる理由を聞くなんて、分かってないのね。察することくらいできないのかしら?」
「......」
どうしろと?
目の前にいる女は間違いなく命の恩人だ。
それと同時に扱いがクソだるい女でもある。
礼を述べるにも今述べるのは違う気がする。
「...」
「...」
沈黙が場を支配して数分。夜蘭は大きなため息をついて、浩然の元へと歩み寄り、
「あなた、今回の取引の内容は?」
「...層岩巨淵の黒泥の対策になるであろう流明石とそれを粉末にした薬」
「取引相手は?」
「ここの鉱夫」
「それ、全部でっち上げの嘘よ」
「...は?」
「だから、全部嘘。虚偽の依頼よ」
夜蘭がどこからともなく取り出したのは浩然が保管していたはずの契約書であった。ピラピラと風になびかせて右手に収まるそれを広げて、
「よくできてるわ。かなり精巧な契約書。冒険者協会に提出しても通るんじゃないかしら。...けど、私の目はごまかせない」
夜蘭は紙の印鑑が押してある箇所を叩くと、
「璃月にこの名前の人は居ないわ」
「...何から何まで嘘ってことか?」
夜蘭は手に持っていた偽の契約書をビリビリと破り捨て、腰に手を当てて、ジト目で浩然を見た。
「浩然、あなたの
「...分かった」
浩然は不満であった。小さい頃からずっと他人のためを行動指針としていたのだ。どうにも親切な青年であった。決して自分を蔑ろにしていた訳ではない。比重が他者へ偏っていただけで。
今回だって、「層岩巨淵で鉱夫が苦しんでいる」という声を聞いたから、態々こっちまで足を伸ばしたのだ。
「不満そうな顔をしてもダメ。私が命を救ったのだから、しばらくは私に生殺与奪の権利があると思わない?」
「...」
暴論がすぎるだろう。とは口が裂けても言えなかった。
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「なぁ夜蘭。これはなんだ」
璃月に帰ってきた翌日、早速と言わんばかりに浩然の寝室に侵入した夜蘭によって、浩然の左手には夜蘭の青い糸がふわりふわりと漂っていた。
「監視の糸。あなたが私の許可なく遠くに離れようとすると、小指から順に飛ぶわ」
「飛ぶってのは?」
「物理的によ」
「物理的に」
なんてことだ。指がなくなる。
「暴力的すぎやしないか?」
「首に巻き付けてもいいのよ?」
浩然が少しでも反論をしようとすると途端に糸が首筋を這うような感覚がやってくる。糸とはいえ、人の首なぞ容易く切断できるのだろう。
故に浩然は押し黙る他なかった。
「範囲は?」
「50m」
なんだ。意外と良心的じゃないか。てっきり5mとか言い出すのかと。
...ん? ちょっと待て
「ここから茶屋までどれくらいだ?」
「直線距離で200mくらいかしら」
「...」
「...じゃ、私茶屋の準備があるから」
「ちょっと待て。待てって。なぁ。夜蘭。待ってください」
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「...お待たせ致しました」
「...ふむ、君は商人であったと記憶しているが、ここで働いているのだな」
「鍾離先生。まぁ、色々ありましてね。今夜蘭に命を握られているので」
「...そうか」
鍾離は元の夜蘭と浩然の仲を知っているからこそ「人類の営みってホントに色んな形があるのだなぁ」と遠い目をして現実逃避した。
「様になってるわね」
「...夜蘭」
「せっかくだから、しばらく働いてもらうわね。はいこれ、あっちのピンばあやに」
「へいへい」
その後も夜蘭に弱みを握られた浩然は、行く先々で、若干締め付けてくる糸に四苦八苦しながら一通りの仕事を終えた。
門番の2人組に、夜蘭が買い出しに行ったって言われた時は死ぬほど焦った。
糸は四六時中、左手を漂っている。浩然は家に帰ることも叶わず、許されるまで夜蘭の家で寝泊まりすることとなった。
そして1ヶ月程が経過した。
「...あなた、意志が固いのか、枯れてるのか、どっちなの?」
「なんだ唐突に」
「常識的に考えてほしいの。...男と女が1ヶ月以上同棲、しかも未成年とかの年齢のしがらみもない。ベッドだって隣同士。私、今彼氏がいないことも言ったわよね?」
「...だいたい言いたいことは分かったが最後まで聞いてやるよ」
「私、自分で言うのもなんだけどそこそこ魅力的だと思うのよね。顔だってある程度整ってるし、スタイルにも気を配ってるわ。胸だってそこそこ大きいし」
お前のそのナリである程度とか、そこそことか言ってたら、世の中の女が泣くぞ。
「......襲って欲しいならそう言え。お前の機嫌を損ねて指が飛んだら堪らんからな」
「...」ムスッ
「...」
やばい。機嫌損ねたかも。
夜蘭は自らの左手をパッと前に出した。浩然はその夜蘭の行動をすぐに警戒した。
「20、15、12、10...」
「待て、なんだその不気味なカウントダウン。カウントダウンなのか?」
浩然が夜蘭のカウントダウンに警戒していると夜蘭は勝ち誇ったドヤ顔で、
「左手、こっちに寄せた方がいいわよ?」
「っ。ちょっと待て、そういう事かよ」
「8、5、3、2、1...」
ついに夜蘭と浩然の左手の距離は0となった。夜蘭は浩然の左手と自身の左手を絡み合わせて、捕食した。
「ふふっ♡ ここからどうするかはあなたに任せるわ。あ、5mだけなら離れてもいいわよ。あなたのベッドと私のベッドの距離はそれ以上あるけどね」
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「きゃっ♡ ...ふふ。意外と積極的なのね」
「...1ヶ月だ。1ヶ月。どれだけ我慢したと思う?」
「さぁ...? 私は......あら♡ ちゃんと反応するじゃない♡ やっぱり胸は大きい方が好み?」
「...まずはその邪魔な服から引き裂いてやろうか」
「ふふ。乱暴ね。心配しなくてもいいわ。すぐに...ほら、脱げるから。さ、あなたも脱いで」
「...」
「いい子ね。......はぁ♡ 立派なのをお持ちね。これで何人泣かせてきたのかしら...」
「...お前だってどうやら準備がいいみたいだが?」
「んッ.../// もう。私はもう少しお話してからするタイプなのだけれど?」
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やってしまった......。
今、隣には生まれたままの姿で夜蘭が寝息を立てている。
お互いに煮えたぎった情欲が爆発して、何度も何度もお互いの欲をぶつけあった。
そこに普段の落ち着いた夜蘭の姿はなく、むしろ情熱的にその恵体を浩然の上で踊らせた。
夜蘭は綺麗な肌をしていた。
しかし、綺麗に見えるのは普段服に隠れていない露出部くらいで、服に隠れているところには隠しきれないアザや傷が見える。
少し前に宝盗団と争った際にもらった傷だろうか。だとすれば、その責任の所在は俺にある。
「...」
そっと、そのアザに手を添えて、早いこと癒えますように、と祈ってみる。モラクスはもう死んじまったけど。
その瞬間。グイッと夜蘭に強く抱き寄せられた。マズイ。起こしたか? 何を言われるか、分かったもんじゃない。
「......ダメ...。...いかないで......。......置いてかないで......」
「...っ。...なんで......」
夜蘭は涙を流していた。
その理由は分からない。寝言の意味もわからない。
俺の目に映るのは、小さい頃からの腐れ縁で、なにかとサボりが好きな夜蘭だった。
...サボりが好きで、茶室で賽を振っているだけのぐうたら野郎に神の目は与えられるだろうか。
いや、俺の知る限りでは、少なくとも神の目を持っているやつは使命感や信念を持っているヤツらばっかりだ。
ということは、俺が知らない夜蘭が存在する。
「......」
聞かなくてはならない。
嫉妬とか、そういうのではなくて、腐れ縁として。その身体の傷と、寝言の意味を。
熱かった夜は急激に冷えた。浩然は夜蘭を強く抱き締めて眠りに落ちた。
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また1ヶ月が過ぎた。
ハッキリ言って夜蘭についてはほとんど何も分かっていない。
...というか聞こうとすると、
「なぁ夜蘭、お前、茶室以外にもなんか仕事やってるのか?」
「えぇ、賭場で賽子振ってるわよ?」
「...そうか」
このようにはぐらかされた。てか璃月に賭場なんてあるんだ。
「じゃ、ちょっと動かないで。......はい」
「何したんだ?」
「あなたの指が飛ぶ条件を緩めたわ。私の個人的な用事があって、しばらく開けるから。お留守番よろしくね?」
「...分かった」
「ありがとう。浩然、大好きよ」
結局分からずしまいだ。夜蘭は隠すのが上手い。雲隠れなんてされたら、たまらないだろうな。あと露骨に冗談を言うようになった。
...だが、これはチャンスでもある。帰ってくるまでに夜蘭のことを調べ尽くすチャンスだ。あいつは絶対に隠し事がある。ミステリアスな女は魅力的とは言うが、傷を作る腐れ縁を見逃すことは出来ない。
...なんだか、久しぶりだな。自分の家に帰ってくるの。ホコリ被ってら。
して、整理しよう。
夜蘭との情事及びその後に見える身体のアザ、傷。
本人はあまり気にしていないようだ。
しかし、見過ごす理由がどこにある?
賭場は...よく知らないが、おそらく治安はそこまで良くないだろう。そこで殴られた可能性は?
だとしたら顔に真っ先に傷がつくはずだ。傷を隠すような化粧はしていなかった。それどころか寝る時にも顔に傷は見受けられなかった。
それ以外で傷がつく可能性。茶室...火傷か?
火傷のそれではなかった。あのアザは明らかに外からの打撃によるものだ。
だとするとやはりあの時の宝盗団...?
...そもそも夜蘭は宝盗団とインファイトしていなかった。
......まて。ただの茶室の主なら、なぜ腕っぷしがきく? 茶室には門番がいるが、夜蘭が4人の宝盗団を打ちのめしたのはこの目で見た。
腕っぷしがきいて、隠し事が上手い。それでいて...おそらくハニートラップだって上手く仕掛けるだろう。
「......絞れてきたな」
と、すれば夜蘭にその仕事を依頼した奴がいるはず。
夜蘭の仕事の内容を一括りにすると、「諜報」とまとめられるだろうか。
なら話を聞きに行く人物は決まった。確か法律家の恋人が諜報を得意にしていたな。
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「こんにちは、旅人」
「夜蘭! 待ってたよ!」
一方その頃、夜蘭は層岩巨淵の入口で旅人と待ち合わせていた。なんでも、層岩巨淵の最深部でまたまた異常が観測されたらしく、璃月とスメールの交通路が遮断されてしまったらしい。最近は泥も増えていると聞く。
「じゃ、気をつけて行きましょう。最近のここは大人しかったのだけど...」
「魈は見つからなかったんだよなぁ。でもでも! 夜蘭がいてくれれば百人力だぞ!」
層岩巨淵の調査は楽なものではない。ただ、夜蘭は己のスリル欲を満たすため、ひいては璃月とスメールの交通網のために足を踏み入れた。
層岩巨淵はかなり入り組んでいる。水が流れ、削りとったモノだと言われているが、そんな事は建前だと大体の人間が感じていた。
上層の鉱夫曰く、最近は地震が増えたとのこと。元々地形の都合上、地震はそこそこ起こる地形ではある。最近は頻度が増えたらしい。その証拠と言わんばかりに聞き込み中にも地震に遭遇した。幸い大きいものではなかったものの、続くようであれば現場の人間に危害が及びかねない。
「ぴぇ...さっさと解決して地震を止めようぜ...」
「パイモンは飛んでるから地震は感じないんじゃない?」
「音とか怖いんだぞ!」
「旅人、パイモン、こっちよ。ここから飛び降りてしまいましょ」
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層岩巨淵の異常の原因は割とすぐに見つかった。というのも、深くに行けば行くほどに泥がかなり増えている。
最深部からとてつもない量の泥が吹き出ていたのだ。
「これは...」
「これが最近の異常の原因でしょうね。これだけ吹き出ていれば、周りの岩を吹き飛ばして地震が起きても不思議じゃない」
「ど、どうやって止めるんだ...?」
「これだけの泥が自然に飛び散るなんて考えにくいわ。離れたところから衝撃を加えて、原因をおびき寄せましょう」
「ちょっと待って。あそこに何かいる」
蛍が指さした先には泥によって汚染されたヒルチャールが集まっていた。
凶暴になっているそれらは、手当り次第に破壊行動を繰り返し、行き場のない苦しみをそこらの岩で発散しているようだ。
「...参ったわね。あれだけの数は...」
「倒せはしそうだけど...」
「...えっ」
夜蘭は暴れ回って更なる被害が出るのを食い止めたいようだが、既に旅人は剣を片手に戦闘モードに入っている。パイモンが必死に「後先考えろよぉ!」と後ろから引っ張っているが、今にも旅人は飛び出しそうだった。
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「つまり、夜蘭とはあくまで個人的な関係で、あいつのスリル欲を満たすための依頼を出している、と?」
「えぇ。彼女はどうにもスリルがある仕事を好き好んでよく引き受けるみたい」
「なるほど。あいつが行く先に心当たりは?」
「層岩巨淵」
「...感謝する。煙緋さんも、わざわざありがとう」
「いいってことさ」
「あっ。ちょっと待ちなさい」
「なんでしょう。天権?」
「夜蘭は...ハッキリ言ってマゾヒストよ。怪我をしてもそのままにしておくこともあるし、麻酔を使わないこともあるみたい」
「......それを知ってどうしろと?」
「さあ? 好きになさるといいわ」
「......」
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浩然は再び層岩巨淵へと足を運ぶことにした。しかしながら今回ばかりは勝手が違う。内部まで侵入しなくては夜蘭を探すことはできない。
正直に言えば、なぜ夜蘭を探して層岩巨淵に行こうと考えたのか。秘密を暴くためだけとは思えなかった。
浩然は、ただ漠然と、夜蘭の助けになりたいとそう思った。
そのために、彼は実家の倉庫から小さな木箱を取りだした。
「...神の目...」
そこには岩元素の神の目が鎮座していた。
ある日起きたら枕元にあったのだ。その頃の浩然は使命感も信念も感じておらず、配達が住所を間違えたのではないのかとさえ考えていた。
レプリカを疑って元素力を込めると、意外にも使えてしまった。
しかし、やはり当時の浩然は、自らに相応しくないと判断。木箱の中に封印していた。
「...行こう。夜蘭は、もう傷つけさせない」
夜蘭は層岩巨淵にいるとは限らないうえ、神の目が必要になるかどうかも分からない。ただ、浩然は不思議な確証を持って神の目を掴み、ポケットに突っ込んだ。
そして、層岩巨淵へ繋がる道を今度はダッシュで駆け抜けた。
「...体が衰えてないといいんだが」
ちなみに走る前にしっかり準備運動した。
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蛍と夜蘭は大立ち回りを演じていた。
数の暴力を軸に据えるヒルチャール相手に、2人は対多数の戦い方を熟知している。相性としては悪くなかった。
「さて、一通り片付いたかな」
パンパンと手を払いつつ、蛍はヒルチャールの仮面を拾い集め、夜蘭は泥の噴出口を睨んでいた。
「夜蘭!」
パイモンの声で咄嗟に跳ぶと、その場所に泥が降ってきた。それと同時に、大地の揺れも大きくなっていく。
「これは...」
「でっかいヘビ!?」
「...っ! 旅人! 尻尾がくる!」
地面を掘って進む遺跡サーペントの尻尾に気づけず、蛍は思い切り叩きつけられた。
「旅人!」
夜蘭がすぐさま駆け寄り、蛍の安否を確認する。
蛍はすぐさま瓦礫を振り払い、立ち上がった。
「ごめん油断した! 大丈夫!」
しかしながら、戦況は悪化していく。
泥の対処、頭部と尻尾の同時攻撃、それに加えてよく分からないキューブの攻撃もある。現在蛍が泥をすぐに破壊しているものの、流明石のエネルギー結晶をなかなか壊すことができずにいた。
「チィッ! よく頭の回る!」
蛍の落星でひとまず破壊しているが、泥の生成速度に間に合っていない。そして遺跡サーペントは意図的にかは分からないが、蛍が泥に近づけないような攻撃を繰り返していた。
よく頭の回る蛇である。物理的にも。
そして、泥をジャンプして回避した夜蘭に遺跡サーペントの横薙ぎがクリーンヒットした。
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走って走って、深く、もっと奥底へ。
浩然は息切れしながら走り続けた。
そうしてようやっと最深部へたどり着き、最初に目に入ったのは、吹っ飛んでくる夜蘭の背中だった。
「うおっ!?」
「きゃっ!?」
浩然はそのまま夜蘭を受け止め、呆気にとられていると、蛍とパイモンが駆け寄ってきた。
「夜蘭!」
「大丈夫か!?」
「え、えぇ。なんとか...。それより、浩然!? どうしてここに来たの!? 危ないから離れてなさい!」
「なっ...。傷だらけじゃねぇか! お前! やっぱりなんか隠してやがんな!? どうして言ってくれないんだ!」
「......また、他人のため......後でいくらでも教えてあげるから! 今はここから離れて! あなた戦えないでしょ!?」
「戦える!!」
浩然は神の目を夜蘭の前に持ってきた。
「今まで、ずっと他人第一で生きてきた。けどな! 今回は俺の意思だ! 俺が! お前を助けたいと思ったからここにいる!」
屁理屈なのは浩然も分かっている。それでも声高々に浩然は宣言した。これは俺のワガママで、お前を助ける、と。
「旅人! また泥が!」
「分かった! 戦えるなら早く来てね!」
旅人はまた泥の解除に向かっていった。
場は夜蘭と浩然の2人きり。夜蘭の傷の応急処置の最中、夜蘭はゆっくりと口を開いた。
「...ホントに...呆れた。どこまで行っても他人のため...」
「悪かったな」
「でも...嬉しい。あなたが助けに来てくれて」
「......よし。とりあえず応急処置はできた。旅人が頑張ってるし、早く行こう」
「浩然、大好き」
「......突然なんd」
振り向きざまに浩然が感じたのは、柔らかい感触だった。それが夜蘭による頬へのキスだということに気がつくのに時間はかからなかった。
「...帰ったらもっとイイこと、しましょう?」
「...じゃ、生きて帰らないとな。まずは...あの結晶を砕けばいいんだろ?」
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「ゔぅ゙♡♡ ダメっ゙♡ ゆ゙る゙じでぇ♡♡」
「なんだ、ホントにアザ押されるのが好きなのか」
「あぁ゙っ゙♡ うぅぅ♡♡」
「痛っ。...この野郎。小指から血が出たんだが?」
「はぁ...はぁ...んっ.../// ...運命の、赤い糸...なんて...ね...ぁん♡ あっ♡あっ♡」
こうして、無事層岩巨淵から生還した2人は自宅療養中に身体を重ね続け、婚約を交わし、結ばれましたとさ。めでたしめでたし。
ふふっ。全ては私が糸を引いた結果なんだけどね。
なんだ。まだそんな事言ってんのか? 懲りねぇ奴だな。
やん♡ ちょっと。いきなり鷲掴みにしないでくれる?
直接的描写はないのでセーフです()
まだフォンテーヌに囚われてるため、ナタのキャラの話どころか名前も知りませぬ。
一応、リクエストを順番に書いていくつもりではいるので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
リクエストの欄に少々手を加えますた。読んでいただけると作者が喜びます。