ついに弊ワットのフォンテーヌ人は許されました。今現在、溜まりに溜まった世界任務を消化しているところでごぜぇやす。
あと、リクエストの欄にちょっと追加したので一読のほど、是非おねしゃす。
Q,自身を形容するならば
「私は色々あるよ。初級から高級料理人、縫製工、保険数理士、健康管理士、人事管理士...でも最近はもっぱら荒瀧派の二番手、かな。...あんたは? 研究者?」
「俺? 確かに鎖国中はスメールで研究室に篭ってたけど、今となっては先駆者とか呼ばれることが多いかも」
翔は家柄は大したものではなかったが、両親は比較的開放的で、「やってみたい」という翔を否定することなく、あるいは手本を示してくれた。
一方、忍の家柄は代々巫女の家系であり、幼い頃は鳴神大社に引きずって行かれたものだ。
鳴神大社から星を見上げることが2人の楽しみでもあった。
「なぁ忍、あの星はどこにあるんだろうね?」
「なに急に。どこって...星なんだから空にあるでしょ。というか見えてるじゃん」
「...そうだけど、そうじゃないんだ」
この時、久岐忍は「変なこと言ってんな」くらいの認識だったのだ。
して、翔が天才だと判明するのにさほど時間はかからなかった。
両親は「割と頭いいかもしれんこの子」と特段不思議には思わなかった。
翔は疑問を疑問のままにしておくことを嫌った。疑問が生まれては、誰かに聞き、本を読み、鳴神大社の狐巫女や稲妻城に突貫してでも探求心を抑えることは不可能であったのだ。
八重神子は忍と面識があり、その伝手で翔のことも知っていたから、アポなしでもすぐに取り合ってもらうことが出来た。
雷電姉妹や刀の魔神も、最初は警戒し、追い払っていたのだが、刀について質問したところ、宗政を懐柔することに成功。割と可愛がられ、刀に関しては一から十どころか、おそらく百や千では足りないほどの知識を身につけた。
一方、久岐忍といえば、巫女になることに嫌気がさすお年頃になっていた。束縛を嫌い、城下町に繰り出しては、自身がしたいような経験をしていた。
久岐忍が荒瀧派に加入したのもこの頃であった。
そして、久岐忍が城下町で色んな経験を積むにあたって、大量の知識を持つ翔の存在は生き字引のようなものだった。
一を聞けば十でも二十でも帰ってくる。特定の分野に至っては壊れた蛇口のようなマシンガントークを聞かされることもあったが、翔が隣にいて、こういうモノがあるよ、と教えられて、それで2人で実践する時間こそが久岐忍が最も落ち着く時間でもあった。
だから翔がスメールに留学に行くということを忍が聞いた時は大層取り乱した。
もちろん翔はいの一番に忍に話したし、忍も病んでいる訳ではない。ただ、今までの安息が無くなることを考え、これからの息抜きについてしばらく考え込んでいたのだった。
ただ、落ち込んでいるのはあからさまであり、荒瀧派のバカ共に気を使われることとなった。
「...じゃ、行ってくる」
「行ってらっしゃい。...手紙、家族に少しは送りなよ」
「そうだね。...あ、忍にも送った方がいい?」
「...私はアンタの研究とか分かんないし」
「いやいや、俺はただ忍と手紙のやり取りがしたいだけ。忍の字ってキレイだし、なにより忘れたくないから」
「...っ。......好きにすれば。ただ向こうの住所教えてくれないと、こっちから送れないよ」
「あぁ、そっか。了解。...じゃあ、またね!」
久岐忍が翔に対する恋を自覚をしたのは、悲しいかな、このタイミングだった。
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そして、4年が経った。
「・・・以上の事柄をまとめると、まだ私の研究分野には未開の点が多く、さらなる発展とテイワット全体の技術に革新をもたらすことも可能になるのではないかと考えます。...つきましては、研究予算のアップをお願い致します」
「...いつから俺はお前より偉くなったんだ翔。堅苦しいのは嫌いだと知っているだろう」
「...建前だけでも受け取ってくれ。俺だってお前がこんな形式ばったのが苦手なのは知っている」
教令院の内部において、翔は1人で賢者の立ち位置であるアルハイゼンと対峙していた。
実の所、スメールに留学してきた翔は、若干の失望を隠せないでいた。大賢者による抑制に辟易していたのだった。が、旅人によりスメールの問題は解決され、アルハイゼンが賢者になってからは、翔は好き放題(もちろん常識の範囲内で)していた。
研究テーマは『宇宙』。スメールの研究において、『罪』とされる6つの内の一つのように思えるが、
「禁止されているのは宇宙の『外』だろ。俺は宇宙そのものの研究をする」
と屁理屈としか思えない暴論で、周りを黙らせていた。
アルハイゼンやカーヴェも頭を抱えたが、狂気に飲まれる様子は微塵もなく、試しに『神』の缶詰知識をアーカーシャ端末にねじ込んでも、「だからなんだ」と言わんばかりにケロッとしていたのを見て、ナヒーダすら頭を抱えることになった。
ちなみに翔はどこの派閥にも所属していない。宇宙を専門にするその希少性のこともあるが、考え方が近い明論派はアザールの一件以降、翔の中では印象が悪いのだ。
「
「え、なんだ唐突に...。雲とか...。天空の城があるぞ...」
「そうか。ありがとう、パイモン。で、旅人、お前はなんとなく知ってるんだろう?」
「...それを知ってどうするの?」
「さあ? 知ってから考える。スモールステップは大事だからな」
「えぇ...。なんかすごい無責任な気がするぞ...」
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「.........................ふぅ」
久岐忍は憂鬱と言わんばかりにため息をついた。
頬杖にため息、面頰さえなければとてつもない絵になる美人なのだが、面頰の威圧感も相まって、荒瀧派の面々は久岐忍が不機嫌なのではなかろうかと気が気でなかった。
「...おい、お前姉御に何かしたか?」ヒソヒソ
「...まさか! ...親分は心当たりあります?」ヒソヒソ
「...俺様だってなんもしちゃいねぇよ! ただ...まぁ、元気がねぇなら、なんとなく想像つくぜェ...? 最近聞いた事があんだよ...」ヒソヒソ
「さすが親分!」ヒソヒソ
荒瀧一斗は、すっくと立ち上がり、ズカズカと久岐忍の座る椅子の後ろに立つと、「おい」と声をかけた。
「...なに? 親分」
忍は握っていたペンを置いて、椅子に座ったまま、左手を机の上に置き、右手を椅子の背もたれに置く半身の姿勢で、一斗の次の言葉を待った。
一斗は「おっほん」と大きく咳払いをすると、
「〇理が辛いなら、お腹をあっためるといいらしいぜ!!」
「は?」
この後荒瀧派は無事ボコボコにされた。
派中法度にも『女に生〇の事を言及しない』という一文が書き加えられた。
「........」ピクピク
「はぁ...。全く、どんな教育を受けたらこんなデリカシーのない人間が生まれるんだ...」
さて、と久岐忍は机にむきなおった。
不機嫌と見られた原因の面頰も一応外して、ペンを再び持ち、頬杖をついた。
『久しぶり。こっちは相も変わらず過ごしてるよ。たくさん友達もできたさ。君が前に言ってた旅人にも会えたよ。少しばかり旅に同行させてもらう事になった。
そっちは元気にしてるのかな。君と仲がいい鬼の彼も元気でやってるかい?
研究も順調に進んでるよ。俺が知りたい事について、スメールにはその足がかりがあった。卒業して稲妻に帰るためには、論文もいくつか書き上げないといけないんだけど、もう2つ書けたから、余裕もって帰れると思う。
ただ、少し寂しいからさ。忍が作ってくれたスミレウリを焼いたアレのレシピを教えてほしい。最近こっちでも稲妻の食材が売ってるからさ。その中にスミレウリを見つけて思い出した。』
「...たくさん、書きたかったんだろうな。ギチギチだし、脈絡も滅茶苦茶。...会いたいな」
『久しぶり。こっちも相変わらず。旅人に会えたんだ。かなり刺激的な旅になると思うから気をつけて。
親分たちとも上手くやってるよ。最近は目立った迷惑行為も減ってきて、ありがたい限り。ほんとにさ。
宗政さんも会いたがってたよ。「しっかりやってから帰ってこい」って本人は言ってたけど、やっぱり知り合いが1人居なくなるのは辛いみたい。神様っても案外人間っぽいんだね。
そっちの卒業の詳しい条件は分からないけどさ。たまにはこっちに帰ってきなよ。
スミレウリの焼き方は帰ってきた時に教えてあげる。』
「......なんか、めんどくさいな。私」
そう思って最後の一行は、素直になってみようとして、何度も消した。
クシャクシャになった手紙を見て、アイツは笑わないだろうか。笑ったりしたらぶん殴ってやる。
『私も翔に会いたい』
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翔は忍の警告の通り、割かし刺激的な旅を送っていた。
特にメロピデ要塞に共に収監された際には、
「経年劣化か? メンテナンスくらいしたらいいのに」
と愚痴りながらも、蛍パイモンコンビの2倍近いスピードで仕事を終わらせていた。
ついでと言わんばかりに、経年劣化していた機械をメンテナンスし、必要なマンパワー数はそのままに効率をあげたため、一部から大いに感謝された。
「アンタだな。翔とか言ったか。メンテナンスして色々便利にしてくれたってのは」
「感謝されるようなことはしていない。必要なマンパワー数は変えてないからな」
「それがいい。それがいいんじゃないか。アンタとは気が合いそうだ。旅人、コイツ置いてけ」
「公爵の一任で終身刑になったら、たまったもんじゃない」
とはいえ、旅人について行くという名目のフィールドワーク中である翔には、しばらくメロピデ要塞に居ることは悪い選択ではないように思えた。
というのは、ココ最近のフォンテーヌは原始胎海の水に絡む諸々の問題が浮かび上がっており、翔にとっても非常に興味深いことであったが故である。
旅人と共に尋ねたヌヴィレットさん曰く、原始胎海の水は、元々この星の表面にあったとかなんとか。
単純に考えるのならば、全て蒸発しきったか、帯水層が地下に存在するか。どちらも「海」と名のつく水を全て云々できるかと聞かれれば、「無理じゃね?」となる。
「原始胎海の水とは、なんなんだ...?」
「ちょっと! それどころじゃないから! 地下! 地下の部屋の封印!!」
と、リオセスリと翔、クロリンデがアフタヌーンティーを楽しんでいるところに蛍が飛び込んできた。
本人曰く、メロピデ要塞の地下の封印はおそらく原始胎海の水を封じているもので、その圧力が上がっているということは、もうすぐ原始胎海の水が飛び出してくるかもしれない。との事。
ドタバタと4人(+パイモン)が地下に降りた時には、既に圧力メーターが振り切れており、
即座に囚人に退避命令を出し、蛍とパイモンにヌヴィレットを呼びに行くようお願いし、なんとかこの場を収めようと祈ってみるが、大して意味はないだろう。
「こんな事にお客人を巻き込みたくなかったんだが」
「同感だ。今から離れれば間に合うのでは?」
リオセスリとクロリンデのおそらく本心からであろう言葉を、翔は右から左へ受け流し、
「考えたくないが、あなた達が溶けた場合、ヌヴィレットさんが来るまで誰が持ち堪えるので?」
と、戦闘態勢に入ると、リオセスリは「フン」と鼻を鳴らし、クロリンデは表情を変えずに、眼前にそびえ立つ降ろされた壁を睨んだ。
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「あ、荒瀧んとこの。おーい!」
「...神里さんとこの。どうしたの?」
荒瀧派二番手の久岐忍と神里家の付き人のトーマ。なかなか珍しい組み合わせである。絡みがゼロというわけではないが、町で目が合っても会釈する程度の仲である。
「いやぁ、今度旅人がまた稲妻にやってくるらしくてさ。お嬢も嬉しそうだったし、一応伝えておこうと思って」
「...! そっか、旅人が。ありがと、親分にも伝えとく」
そして忍が踵を返そうとすると、
「あぁ、待って待って。旅人は多分腕試しに稲妻に来ると思うからさ。ちょっと身体動かした方がいいかも」
「...あぁ、そういうこと」
忍は旅人の
しかしながら、同時に気がついた。今、旅人は翔と一緒に旅をしている。ということは旅人に頼めば、翔を引き摺ってでも連れて帰ってきてくれるのではないだろうか。
ともすれば、善は急げ。今から旅人に手紙でも送ろう。
近所のガキと喧嘩していた親分達に拳骨を落としつつ、旅人が稲妻に帰ってくるかもしれない旨を伝え、踊るように飛び跳ねて喜ぶ荒瀧派の面々を尻目に、またまた筆をとることになった。
と、思っていた矢先、空から一筋の閃光が目の前に落ちてきた。
諸々が吹き飛び、呆気にとられていると、そこに立っていたのは、稲妻が誇る強者。刀神。
「のう、荒瀧の。旅人に手紙書くならよ。あのガキんちょも連れて来いって書いとけよ。それと、俺も身体を動かして待ってるってな」
「......っ。は、はぁ...。...もちろん書くつもりですけど...。...どうするんですかコレ。片付けてから帰ってくださいよ?」
「...こりゃすまん。どうにも昂ってしまってな」
『旅人へ。
今度、稲妻に来るって聞いたよ。どんな目的で来るのか分からないけど、もちろん何かあるならウチら荒瀧派は協力する。
それと、旅人が来るって聞いてから色んな人が体を動かして待ってるってさ。私が知ってる中だと神里家のお嬢様と剣の指南役、ウチの親分、あとは雷神と刀神も。愛されてるね。
追伸:それはそれとして、今さ、翔と一緒に旅してるんでしょ? 稲妻に来る時にソイツも引き摺ってきてよ。どうせ、自分本位で研究ばっかりしてて迷惑かけてばっかりだろうけどさ。しばらく家族とも顔合わせてないし、正月にすら帰ってこないからさ。少しくらい顔見せろって言っといて。』
「.........」
追伸が本文に匹敵する長さになってしまった...。
さすがに今度は『私が会いたいから』なんて恋心剥き出しの文章は書けなかった。
書いてみようものならパイモンにからかわれるのが見え透いている。
「...」
忍は書き終えた手紙から目線をひとつの写真に移した。
近くの戸棚に飾ってあるのは、もう何年前かも忘れた2人の写真。多少ホコリをかぶっているが、未だに大事にとってある。
気まぐれで写真立てを手に取り、指でツーっとなぞると、案の定ホコリがついた。
「......また...」
また、いつか。一緒に桜の下を歩いて、何もない青い空を見て笑おう。
お互いに歳月を重ねた今はちょっと気恥しいけど、また隣を歩いて、どうでもいいとりとめのない事を話すことができるのだろうか。
...最近、アイツから手紙来ないし...。
もしかして向こうで彼女、できたのかな。
......だとしたら...彼女も連れて帰ってくるのかな。
...いや、アイツに彼女? ないない...
だってアイツ、人の話聞かないし、かなり冷たいところあるし...。
「.........」
アホらし。なんでこんなにナイーブになってんだろ。
...なんで、こんなに辛いんだろ。
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フォンテーヌの大洪水よりしばらく。結局、あの後は蛍やヌヴィレットの大立ち回りによって大体解決した。
ただ、翔にとっても原始胎海の水から水龍、さらには呑星の鯨まで非常に広い知見を得た、非常に有意義な旅であった。
「稲妻に帰る?」
「ああ。それとついでに教令院は卒業する」
「そうか...。まぁ卒業要件は満たしているし、好きにするといい。...少し寂しくなるな」
「...卒業するってのは、もしこのまま教令院所属だと教令院が泥塗れになると思ったからだ。むしろ、これから俺がやることは糾弾されて然るものかもしれない。だからこそ心から信頼できる人が多い稲妻に帰るんだ」
「......待て。何する気だ?」
「ーーーーーーー」
翔の急な卒業は教令院を大いに騒がせたが、皆笑顔で送り出してくれた。自らが開発した機械を特大のバックパックに背負いながら大きく手を振って、蛍とパイモンと共に翔は教令院を卒業した。
「はい。これ」
「? なんだ?」
「翔の家に届いてた手紙だってよ。船に乗ってる間にでも読んでみたらどうだ?」
「あぁ...。手紙か...。やべ...」
今更になって翔はしばらく忍に手紙を書いていないことを思い出した。
ちょっと帰りたくなくなってきた。1枚くらい手紙書いてそれが届く頃に帰ろうかな...。
と考えていたところ、蛍に思い切り引っ張られた。
「とある人から引き摺ってでも稲妻に連れて帰ってきてって言われてるの。今更帰るのやっぱやめたとか、ダメだからね」
「...マジ?」
「マジだぞ。お前、どんだけ心配されてたと思ってんだ?」
「...ごめん。それ誰だ? オカンか? そんな心配性じゃなかっただろ」
「...本当に忘れてるか、思い出せないなら刺される準備しといた方がいいよ」
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「旅人!」
「忍! 久しぶり!」
果たして船に揺られ揺られて、旅人は稲妻にやってきた。城下町にて久方ぶりに再開した荒瀧派と旅人は与太話に花を咲かせた。
そして、荒瀧一斗が他の奴らも読んでくるぜ! と飛びだしていったと同時に、忍はそれとなく旅人に質問した。
「...ねぇ。アイツは? やっぱり来なかった?」
「ううん。ちゃんと稲妻に来てるよ。今は離島と紺田村の間の浜辺辺りで、準備があるからって実験道具広げちゃったから。多分そこにいると思う」
久岐忍は旅人に「ありがと」と短く告げて、即座に飛び出して行った。
そして、蛍は久岐忍の横顔を見逃さなかった。面頰をしていても分かる。
親からプレゼントをもらう子供の表情と、恋する乙女の表情が介在していた。
飛び出した忍は、一直線に浜辺への道を駆けていた。途中で何度か「面頰してたら分かんないかな...」と足を止め、紺田村を通り過ぎたあたりで面頰も外し、久しぶりに会う青年を姿を夢想しながら歩を進めた。
「翔!!」
過去に何度も見た背中に面影を感じ、思わず忍は叫んだ。
さすがに気がついたのか、青年はこちらに視線を移した。そして、忍はいても立ってもいられなくなり、青年の胸に飛び込んだ。
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「忍!!」
胸に飛び込んできた少女を受け止めながら、翔も強く、強く抱き締めた。本当に久しぶりの再開である。2人は抱きしめ合った衝撃で少しばかりふらつきながらも、お互いの背に腕を回したまま離さなかった。
「久しぶり忍。本当に会えて嬉しい。手紙送れなくてごめんな?」
「...手紙くれなかった分、たくさん話してくれたら考えるよ」
「分かった。たくさんお話しよう。今まで会えなかった分、たくさん」
しばらくして、ようやく抱擁を解いた2人は、ゆっくり浜辺を歩きながら城下町へと歩いていった。
「帰ってきて早々だけど、またしばらく実験したいんだよね。大規模なのをさ。だから割とスペースに余裕あるあそこで色々広げてたのよ」
「その前に挨拶回りが先でしょ。アンタ久しぶりなんだから、忘れられてるかもよ?」
「少なくとも忍は覚えててくれたな」
「...恥ずかしくなるような事言わないで」
2人の間にはちょうど人ひとりが入れる隙間があるが、そこに入り込もうとするモノは例え五分の魂を持つ虫でさえ居なかった。
「...アンタ、神の目なんて持ってたっけ?」
「あぁ、フォンテーヌに行った時に授かったんだよ。色々あったんだよ、ホントに。下手したらフォンテーヌって国自体が消えてたんだから」
「なにそれ、すごい興味ある。そっちの話聞かせてよ」
「おっけー。でも先に皆に挨拶が先かな。もうあそこに見えてる。...懐かしいなぁ! ただいまーー!!」
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翔が旧友との再会を満喫をして、ハグやらハイタッチやらをしている間、忍は蛍と話をしていた。
「忍、翔を紹介してくれてありがとね」
「なに? どうしたの? アイツなんかした?」
「うん。彼が土壇場で神の目を貰ってなかったら、ホントにやばかった。しかもすごい頭いいから今までに見た事ないような使い方してたよ」
「ふーん...。ま、頭がいいのは元々そうだったし、思いつきやヒラメキもすごいし、神の目が貰えたらすごいヤツになりそうだとは思ってたよ。で、どんな感じだったの?」
「うーん。......パイモン、説明できる?」
「ヴぇっ!? オイラに丸投げするなよ! 旅人が分かんないならオイラに分かるわけないだろ!」
「......後で本人に聞いてみるよ」
蛍はどう説明したものかとうんうん頭を捻っていたし、忍は翔をずっと目で追っており、お互いにお互いを見ずに会話するという謎の空間が生成されていた。
ふと蛍が忍に視線を戻すと、忍は眩しいものを見るように目を細めて翔を見ていた。
「ははぁ〜ん? さては忍、翔のことが「好き。アイツがスメールに行く前から」...あ、すっごい潔い」
ちょっとからかってみようとした蛍の試みは、呆気なく真正面から物凄い威力で殴られて崩壊したのだった。
すっかり話し込み、宵の口が迫ってきていた。翔は両親にももちろん会って、またしばらく実験に入る事を伝えると、「がんばれ」とだけ言われた。
忍は「せっかくだからゆっくり休んでからでも」などと言われるものだろうと思っていたから、この家族はとんでもない放任主義なのではなかろうかと一瞬疑った。ただ、その時の両親の目と、話し方を見ると、寂しいという気持ちはありつつも、どこまでも息子に期待し、やりたいようにやってほしいという信頼が見て取れた。自らの姉とすごく似ている。と忍は感じた。
それはそれとして、忍は「しっかり見張っといてくれ」と言われたので、二つ返事で了承した。
「で? フォンテーヌではどんな感じだったの」
「...いやぁ、ホントに色々あった。なんか機械に襲われるし、レジスタンスみたいな人達と一緒に行動したと思ったら、今度は監獄にぶち込まれるし。あ、でもそこの看守長とは仲良くなったよ」
「...なにがどうしてなんだって?」
結局色んなところに首突っ込んだのか…と忍は頭を抱えた。
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「扉の耐久力がどんなモンなのか分からない以上、最初からフルスロットルで対処にあたる」
「異論はない。看守長、「リオセスリでいい」 ではリオセスリ、あなたの氷のソレが鍵になるのは間違いない。...ところで、原始胎海の水の密度というのはどれくらいなんだ?」
「分からない。俺たちだって初めて見るのが普通だ。...急にどうした。こんな時にも科学者の血が騒ぐのか?」
「いや...神の目を授かった。たった今。岩元素だ」
「...今、なんと?」
「...なんでもいいが、クロリンデさん。あなた力はあるか? いやすまない。舐めているとかそういうのではなくて、単純なパワーの問題だ」
「ゴタゴタ喋ってる暇はない! 来るぞ!」
クロリンデがスイッチを入れて、シャッターが下がり、リオセスリがガントレットを展開し、ひとまず第一波は凌いだ。大量の質量がシャッターにかかり、耳を劈く轟音が響いたが、ひとまずは凌いだ。リオセスリはシャッターの縁を瞬時に凍らせて、漏れるのを防いでいる内に、
「シャッターの追加だ。リオセスリさん。コイツの周りも氷で補強してくれ」
「...瞬時に壁を作れるたァ、便利な能力だな。オラァ!」
「...岩元素の特権は、無から質量を持った有を生み出せること。あの壁は可能な限り、密度を高めた。あとは、水とのおしくらまんじゅうってところです」
「ということは...」
「ひたすら同じような壁を作るから、なんとか隙間にねじ込んでもらうことになる。だがまぁ、ねじ込むのもリスクがある」
「...てっきりクロリンデにやれとか言うのかと思ったぜ」
「...」
「ま、密度が高いってことはそれだけ重いってこと。今もほら、すっげぇ地面にめり込んでる。...これで刑の延長とかは勘弁して欲しいが」
リオセスリもクロリンデもなんとも言えない微妙な顔をしている。この危機が迫っている状況で地面にヒビが入る程度のことなど気にしていない。むしろ言われるまでは全く気が付かなかった。
微妙な顔をしている原因は、翔の背後で着々と生み出されているソレにあった。
「アンタ、それ...」
「...色々と考える必要がありそうだな」
「
背後で生み出されていたのは、岩の兵。しかしながら、その見た目はフォンテーヌに治安をもたらすマシナリーのそれとそっくりであり、岩元素特有の黄色のラインが入った岩で構成されている。若干ずんぐりむっくりな事は否定できないが、新型のマシナリーと言われれば納得する人も出てくるだろう。
「コイツに壁を押し込ませる。元のシャッターが壊れても、この壁をシャッターがあった位置に押し込む。漏れ出た原始胎海の水は、リオセスリに任せる」
結果としてシャッターは決壊し、岩元素の質量による壁がなければ少なくともこの場にいるリオセスリとクロリンデは水に溶けていたのではないだろうか。
その後、パレ・メルモニアにおいて、フリーナの死刑判決を見届けた。
「...旅人、また面倒事が増えそうではないか?」
「奇遇だね。私もそう思う。でもフリーナの死刑なんて絶対におかしい」
そんな事を話しつつ、ヌヴィレットにも話を聞きつつ、フリーナを救出しようとするも、『フォンテーヌの治安』を体現する男にせき止められた。
「退いてよ! フリーナが死刑って、そんなおかしな事、あるわけないでしょ!?」
「...お前がフリーナと面識があることは知っている。俺とて辛い。しかし、判決は絶対だ。これ以上暴れるようならば、一切の容赦はしないと警告する」
「...ッ! このッ! 人でなし!!」
あらまく大渦の剣に何度も吹き飛ばされながら、蛍はフリーナの元に向かおうとするも、その度に必ず男が間に割って入る。
翔はマシナリーの相手をしており、男と蛍の剣戦にはある程度の援護をするのみで、時間のみが過ぎていった。
「...
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「さて、もう遅いし、話はここまでにして、寝るか。おやすみ」
「は? ちょっと待って、今イイところだったじゃん。その戦いの結果めっちゃ気になるんだけど?」
「ま、その後鯨とか色々あって水神は普通の女の子になったし、龍は完全体になった」
「省くな!」
翔は布団を被ると、即座に寝息をたてている。
彼が寝ている布団の横には、おそらく忍のために用意されたのであろう。少しくたびれた布団が敷かれていた。翔の両親は忍が泊まっていく事に何も言わなかったし、夜ご飯も4人分用意してくれていた。それどころか、忍にも「大きくなったねぇ!」などと迎え入れてくれた。
忍は今、目の前で寝ている男を見て、驚くほど冷静だった。
心がここまで静かなのはいつ以来だろうか。よくよく考えてみれば、2人同じ部屋で寝るのは初めてではない。数え切れないほどに泊めてもらった。巫女の修行が嫌で逃げ出した時には、毎度迎え入れてもらった気がする。
「...だからって、すぐに寝られちゃうと少し傷つくんだけど」
乙女の囁きは誰の耳にも入ることなく、月明かりに照らされ消えた。
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「...いないし」
朝起きて隣を見ると、既にそこに翔の姿はなかった。
居間に行ってみると、翔の両親に「おはよう。よく寝れた?」と聞かれたので、当たり障りのない返事をして、それとなく翔が何処にいるかを聞いて、そしてまたあの浜辺にやってきた。
「なにやってんの?」
「実験の準備」
そんな事は見れば分かる。
なんかデカデカと機械が置いてあれば嫌でも目に入る。
「その実験の中身を聞いてるの」
「殻を破る」
「殻?」
曰く、このテイワットという世界には殻が存在していて、宇宙との間に壁があるらしい。そして、旅人の復讐対象もその殻の外にいる可能性があるんだって。...天空の城は?
「ま、旅人の復讐に協力したいのが1割、残りは単純な俺の興味」
「それで? 今まで誰もやってなかったって事はなんかあるんでしょ?」
「宇宙からヤバいのが来る」
「ヤバいじゃん」
曰く、昨日言っていた鯨というのは、テイワットの生物ではないらしい。なんでそんなヤバいのがいる宇宙との道を繋ごうとしているのか、私には分からない。
「...テイワットにはいずれ限界が来る。今は俺もお前も、雷神の加護の元で生きているが、命は永遠じゃない。雷神だってそうだ。そうしたら誰が外の脅威から守ってくれるんだ? だから先手を打つ。鯨もそうだけど、はっきり言って、今のテイワットには力がない。生き残るだけの力がない」
「じゃあ、どうするの?」
「迎え撃つ。敢えて殻に穴を開けて、そこで待ち構える」
「...誰が?」
「俺が」
「...さすがに自惚れすぎじゃない?」
「だとしてもやる」
結局話している内容はよく分からなかったが、旅人のためだとか、テイワットのためだって言うのは分かった気がする。
「確かに、少し突飛過ぎねぇか、ガキんちょ」
「えぇ、私たち雷神が死ぬのに何年かかるとお思いで?」
「...貴女達を信頼していないという訳ではない」
「おう、分かってら。でもまぁ、お前はまだ物を知らなさすぎるな。人の身にしちゃ、その知識量は褒められたモンだが」
「...あまり思い出したくはありませんが、貴方と同じような考え方をする人達が集まった国があったのですよ」
「...ここは神様たちの言う通りにしておいたら?」
忍は恐る恐ると言った具合に翔の返事を待った。
忍は気が気でなかった。
「後のことは後で考えれば良いのです。少なくとも、貴方の世代どころか、もうしばらく世代を重ねても、私たちは居なくならないでしょう」
「...そんな無責任な」
「あら。無責任なのはどちらでしょうね? 誰にも話をつけずに居なくなろうとする貴方の方がよっぽど無責任では?」
「......!?」
忍は目を見開いて翔の方を見た。そこには、それまであまり表情を変えなかったのに、今になって迷っている翔の姿があった。
「そう焦るな。お前の考え方は悪くない。だが今すぐにそれが必要かと問われれば、答えはいいえだ。これからゆっくり次世代に語り継いでいけばいい。ま、俺もそうそう死ぬ気はねぇし。天理でさえ、今のこの関係性を崩そうとはしないだろうさ」
「...それでも、と言うのならば。無理やりにでも止めねばなりません。テイワットや未来の事を貴方が不安に思うのも理解できますが、たった一人でできることなど限られています。それ以前に、貴方は私の元で生きる稲妻の民ですから」
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それからと言うものの、翔は実験を取りやめた。
取りやめる事を誓ってから、忍は前よりも強く翔に抱きついて、
「勝手に居なくなろうとしないでよ! バカぁ!」
と怒鳴りながら翔の胸に顔を埋めてわんわん泣いていた。
忍のその姿に翔は酷く狼狽し、「なんでそんな泣いてんの?」と質問しようとしたが、それよりも先に喉元に雷神の薙刀が迫り、「それを聞くのは野暮というやつですよ」とにっこり笑顔で忠告された。
「分かった、忍。今度からは勝手に居なくなろうとしないから。ね? だから泣き止んでくれると嬉しいなって」
「......」
「忍?」
「もう泣き止んでるし。...ただちょっと酷い顔だから、しばらくこのままで...お願い」
それを聞いた翔は、少しギクシャクとした腕を忍の背中にまわし、同じく強く抱き締めた。
しばらくして、忍がようやく顔を上げると、目元こそ腫れているが、心の底から心配そうな表情で、
「もう居なくならないで」
と翔にこれまでグツグツと煮えたぎっていた恋心をぶつけた。
翔がスメールに旅立つ直前から、今の今まで抑え込まれていた恋情が、業火となって身も心も焼いていた。
「どんだけ我慢したと思う? 想いを伝えようにも伝えられない。やっと会えたと思ったら、またすぐ居なくなろうとする」
「ごめんって...」
「...許さない。これからはずっと私の傍にいてもらうから」
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「めでたしめでたしってとこかな」
「はい。人の身で宇宙に挑戦しようとは、人の成長とは恐ろしいですね」
(あぁ、もう! じれったいですね!!)
「え゛っ」
「姉さん?!」
(せっかくくっつきそうなのに見逃すなんてできません! ちょっとやらしい雰囲気を作ります!)
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「えっ?」
「ここ、どこ?」
いつの間にか翔と忍はいつの間にやら一心浄土に飛ばされていた。
とはいえ、昔のそれとは違い、今は盛った雷電姉妹によって諸々改造されており、
「なんか書いてある...『イチャイチャしないと出れない一心浄土』...? 忍、これ...忍?」
(私たちが使う媚薬を10分の1にして彼女に投与しました。神でさえ発情する薬です。...では、ごゆっくり〜)
「ちょっ!? ちょっと待て! イチャイチャってなんだよ!! そんな投げやりで無責任な事あるか!?」
翔は見えない雷神(姉)に向けて叫ぶが、悦楽スイッチが入ったコイツはてこでも動かない。
そのうち、翔はガッと肩を掴まれた。
「フーっ♡...フーっ♡......か、ける。...早く...ゥん♡...出よ、う。フーっ♡...なん、っかぁ♡...お、かしい...の。...フーっ♡」
「忍!? 大丈夫か!? え、なんで服脱いでんの。ちょっと!? ハグ! ハグでいいでしょ!? あっ!? 俺の服まで脱がさないで!? アッー!?」
「...ッは♡ 最高♡...」
(...自分でやっておいてなんですが、とんでもないサキュバスを目覚めさせてしまったかもしれません...。うわぁ、搾り取ってる。エッチですねぇ)
おわり
邪神め!(言いがかり)
なんか色々書いてるうちに迷走した結果、こうなりました。
許してくださいなんでもしますから(なんでもするとは言ってない)
初めにも書きましたが、原神以外のキャラでもリクエストは受け付けることにします。とはいえ、来年より本格的に就活やらを始めるので相も変わらず更新はゆっくりだと思います。就活大事だからね。仕方ないね。
あと感想もモチベに繋がるんで是非オネシャス
どっちが好き?
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視線だけで殺せそうな冷徹胡桃
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感情丸出しバチ切れ胡桃