いやマジでほんっっっっっとうに難産でした。
多分今回の話気に入らない人も多いと思います。
でも読んで! お願いします何でもしますから(何でもするとは言ってない)
ある麗らかな昼下がり。
モンドに暮らす稲妻生まれの
内容はモンドの歴史と文化について。つい最近にここモンドに引っ越してきた義門としては一刻も早く馴染みたい思いが強かった。
隣人への挨拶も早々に済ませ、贈り物を渡し、ご近所との関係も良好であった。
義門はモンドの鍛冶屋で働いていた。稲妻特有の刀と呼ばれる剣に造詣が深い義門はモンドでも重宝され、少なくとも食いっぱぐれることはないであろう額を貰える仕事も見つけた。
そして、稲妻からモンドに越してきて、順風満帆な生活を過ごしている義門の元に、冒険者がやって来た。
「黒田義門さん、で合ってるかな。お届け物だよ!」
「これはこれは、ご苦労さまです」
「...はい! 確かにお渡ししました! ...にしてもこの人と仲がいいんですね! 住所が詳しく書いてあって助かったんですよ!」
冒険者は義門に小包を渡して去っていった。義門は「旧友が何か送ってくれたのだろうか」とウキウキしながら後ろ手に扉を閉めて、自室に戻って差出人を確認した。
そこには簡潔に、質素に、それでいてどこか狂気に満ち、猟奇的な文字でこう書かれていた。
『差出人:神里綾華』
「ヒェッ」
思わず声が出た。仕方ないと思う。
義門は稲妻の旧友にしか引っ越すことを伝えていない。さらに住所なんて誰にも教えちゃいない。
なのに...
『差出人:神里綾華』
これである。
見間違えかとも考えて1度ひっくり返しても書いてある名前は同じであった。
先程の冒険者は「住所が詳しく書いてあった」と言っていた。引っ越して1か月、既に神里綾華に義門の動向は把握されていた、と考えるのが妥当だ。
「...おぉ...。寒気が...」
義門はもうすぐ齢30になろうかというおじさんだ。寒気を感じるのは仕方ないのかもしれない。もっとも、原因は分かりきっているのだが。
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さて、ここも神里家にバレてしまったとあらばまた高飛びの日々である。別に悪いことをしたわけじゃない。なのに義門はなぜか稲妻でお尋ね者として指名手配されているのである。依頼人は社奉行であって、天領奉行ではない。
要はどういうことか。
『神里家が私的に天領奉行を使い、1人の男を追いかけている』のである。職権濫用甚だしいのである。
「...」
そして目の前にはいつの間にか禍々しいオーラ(義門にはそう見えた)を放つ小包。何が入っているのだろうか。
恐る恐るカッターで箱を開け、中身を確認してみると、そこには大量の巻物が入っていた。「巻物...?」と義門は訝しみ、一つ手に取って封を解き、中身を確認してみた。
『拝啓』
すぐに義門は巻物を閉じた。
「え? 嘘だろ? これ全部俺宛の手紙?」
その通りである。
『拝啓、黒田義門さん
お元気ですか? 稲妻では桜が既に散り始める季節になりましたね。散りゆく桜を見ると幼き頃のことを思い出します。貴方に教えてもらった剣技、精神を胸に、今日を私はゆっくりと生きています。
最近では鎖国令も解除され、こうして今まで溜まっていたお手紙をこうして遠くにいる貴方の元に届けることが出来ました。冒険者様様ですね。そして、夢で貴方を見るのです。私は貴方から剣を教わりましたが、貴方に1度も勝ったことがありません。それが私の心残りなのです。
...いけませんね。疲れているのでしょうか。
やはり貴方が見るものだと考えると気が抜けて、書きたいことがたくさん思い出されるのです。社奉行のこと、稲妻のこと、最近できた友人のこと、どうかお会いしてお話したいものです。
なぜ稲妻を離れてしまったのですか? お尋ね者になってしまったからでしょうか...。それのことならば心配ありません。確かに天領奉行に身柄を拘束されるかもしれませんが、その後社奉行にて身柄をお預かり致します。決して悪いようには致しません。ただ貴方の苗字が変わるかもしれないというだけなのです...。ですからどうか…。1度稲妻へ帰ってきてください。私とお話をしましょう。私はいつでも屋敷で待っております』
「苗字が変わるってなんだよ!?」
これが1つ目の巻物(手紙)の内容であった。
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「ふむ、ではここまでにしようか」
「はい...。ありがとう、ございました...」
「...そう落ち込むことはないさ。大人を相手に充分戦えているよ。私だっていつ1本取られるかヒヤヒヤするくらいさ」
時は義門がまだ綾華の剣術の指南をしている時期まで遡る。綾人が忙しい時にはこうして義門が綾華の剣術を見ていたのだ。
「私は今勝ちたいのです!」
「それは無理だなぁ...。なんせ私もまだまだ現役だからね。もう少し大きくなったら、もしかしたら私が負けるかもね」
「むぅぅぅう...!」
「はっはっは! 綾華さんは負けず嫌いだなぁ!」
綾華はまだ幼い時から苦難の連続であった。両親を失い、兄が仕事に奔走することになり、自らも自立しようと決心した。強い子であった。
しかしながら精神は未だ未熟。確かに同年代の子よりは仕上がっているだろうが、それでも子どもなのだ。
故に、
「...? 何があった」
社奉行が襲撃された時、綾華は部屋の隅に固まって動けなくなっていた。当主が幼いとあってか、社奉行の座を狙う他家が浪人を雇ったのだ。義門は怪我をした門番に応急処置を施し、神里屋敷へと入っていった。
「くっ...」
「お兄様!」
「おいおい。天下の社奉行サマもこんなもんかァ!?」
「これじゃ他の家に譲った方がいいんじゃねぇのか!?」
賊は既に屋敷の内部へと侵入し、綾人と綾華を見つけ出していた。2人の前には婆やが手をめいっぱい広げて抵抗しているが、刀を持つ相手にそんなことをしても無駄なのは分かりきっている。
「きゃぁ!?」
「綾華!」
「綾華様!」
綾華は賊に掴まれると宙吊りの状態で浪人に凄まれた。
「おうおう、コイツが社奉行のお姫様か」
「離しなさい! うおお!!」
「婆や!」
婆やは綾華を持つ浪人へと薙刀を持って突貫するも、歳もあり、あえなく返り討ちにあった。
「生意気なババアだ。おい! よく見ておけ。お前らも俺達に逆らったらこうなるってなぁ!」
「婆や!!」
そう叫ぶと男は刀を構え、婆やに振り下ろした。
しかし、その刃は婆やに届くことなく止められた。義門が鍔迫り合いで受け止めたのである。
「大丈夫か綾人。助太刀に来た」
「よ、義門さん...」
義門は鍔迫り合いから浪人の刀を弾くと、そのまま袈裟懸けで1人を斬り捨てた。その浪人は即死し、その場でピクリとも動かなくなった。もう1人はそれを見て、
「おもしれぇ。アンタ、腕が立つな?」
「...」
「斬り合ってもらおうか」
そういうと綾華を投げ捨て、男は刀を抜いた。綾人は綾華を受け止め、そのまま婆やを引き摺って少し後ろへと下がった。それを確認した義門は、
「手前が襲撃したのは社奉行と知っての狼藉か」
「あぁ? ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇぞ!」
「綾華。目を塞いでいなさい」
「えっ、はっ、はい」
綾華は言われるがままに目をキュッときつく閉じた。
「...よろしい。では、参る」
「おりゃぁ!!」
賊は力任せに刀を振るうばかりでまるで芸がない。それに対して義門は非常に洗練された身のこなしでひらりひらりとかわしていく。
「我が太刀筋。黒田の名を冠さば、人を斬るは五手にて」
「何を!?」
綾人は目を見張り、綾華は細めでその戦いを見ていた。
「我が太刀。一の筋にて腕を落とす」
「うぎゃあ!?」
逆袈裟からの袈裟懸けにて賊は両腕を失った。
「二の筋にて足を狩る」
「あがっ!?」
下段横薙ぎ一閃にて足の腱を斬り落とした。
「三の筋にて目を抉る」
「ぎゃああああ!?!?」
そのままくるりと回転し今度は上段横薙ぎ。
「四の筋にて心を断つ」
「ぐはっ...」
もはや肉人形となった浪人の心の臓を貫いた。
「五の筋、これにて終い。首を斬る」
もはや賊は物言わぬ肉塊と成り果てた。
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『あの時から私は貴方のような剣を目指して精進してまいりました。幼い頃の私は貴方が恐ろしくてたまりませんでしたが、今となってはようやく命の恩人なのだと認識することが出来ました。旅人さんもすごく剣の腕がたつのですよ。ですから、早く稲妻に帰ってきてください。私は貴方に会いたくて胸が張り裂けそうです。貴方のあの剣技もできる限り体得してみせます。氷の神の目も手に入れました。ですから、どうか...』
「...あの剣技体得したの? ヤバくない? イメージダウンどころの騒ぎじゃないぞ?」
義門は戦慄した。黒田流はかなり野蛮な流派で、人を斬るのを厭わない頭のネジが2〜3本飛んでいる狂人でないと出来ないものだ。それを体得したということは...
「綾人、生きてるかな」
綾人の胃が心配である。
義門が稲妻から高飛びした理由は、このように綾華が黒田流の剣術を学びたいとせがむのが理由の一つである。これが1割。
9割は綾華に迫られたら断れないからである。
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時は現代の稲妻。今日は社奉行に八重神子がやって来ており、綾華にちょっかいをかけていた。
「のう、姫よ。その巻物はなんじゃ? ...小説か? 妾が見てやってもよいぞ」
「いえ、手紙です」
「てがっ...。...それにしては少し分厚いような気もするのじゃが...」
「...私の想いを綴っておりますので、どうしても長くなってしまうのです。...はぁ...義門さん...」
こりゃ重症だと八重神子は思いっきり話を逸らした。
「で、ではこんな話はどうじゃ? 最近、とある童が鳴神神社に参拝に来るのじゃが...」
「まぁ。鳴神神社に歩いて? 向上心の塊のような方なのですね。...さて、八重神子さん。私は少し出ます」
「ほう。何処へ?」
「少し...モンドへ」
「気をつけて行ってまいれ。......ん? モンド?」
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迫り来る差出人。気付かぬ義門。どうしたものかと考え込んでいた。というのも、住所がバレている以上さっさと逃げた方が吉のような気がする。
恐ろしいのだ。神里綾華という女は。ここまで放置しておいたのだ。何をされてもおかしくない。
正直なところ彼女が義門に対して抱いている気持ちを義門は感じ取っていた。でも自分はただの野蛮な流派の血で、かたや社奉行の一人娘である。釣り合うわけがないのだ。
なのに迫ってくるんだもん。主に手紙で。逃げるしかないよね。
「とりあえず辞表でも書くかぁ」
なんて軽めに考えていたのだが、とりあえず全ての手紙の文を読んでみようとしたのが運の尽き。義門は量質ともにとんでもない怪文書を読むこととなり、引きつった笑みを顔に貼っつけることしかできなかった。
なお、黒田義門にはもうひとつの悩みの種があった。
その種とは、蛍のことである。宵宮の話で蛍が稲妻に来ていたのは、実はこの義門と手合わせをするためであったのだ。
しかし、その時既に義門はモンドに高飛びしていた。
以下、そのことを聞いた蛍と神里綾華の対話である。
「どっか行っちゃったの!? 綾華を置いて!?」
「はい...。数日前から姿が見えず...天領奉行に指名手配をお願いしましたが、未だに見つかっておりません」
「えっ...。...綾華ってさぁ。確か義門さんのこt「お慕いしております。愛しています」...う、うん。そうだよねぇ...」
以上の会話で何が悩みの種なんだ? と思われた方も多いだろう。
しかし、皆さんご存知この
「あ! 見つけた! 今日こそ戦ってもらうよ!」
「お嬢ー! 助けてくださーい!! 曲者がー!!」
「曲者じゃないよ! ただ手合わせして欲しいだけだって!」
「手合わせでは普通真剣は使わねぇんだよダボが!! 木刀にしろ木刀に!!」
「ふふ...。楽しそうですね義門。少し妬けちゃいます」
「お嬢! ...お嬢? なんで刀抜いてるんです? お嬢? ねえお嬢!?」
この後義門は2人と手合わせ(死と隣り合わせ)した。
何がめんどくさいって何故か義門が行く先々で蛍とエンカウントするのである。その度に
「...なんで蛍にゃ場所がバレんだ...?
義門は必要最低限の物しか常備していない。理由は単純に引越しが多いからである。せっかく慣れてきたモンドのこの貸家から一刻も早く離れなければお嬢が飛んでくるだろう。
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「もし、長野原さん」
「ん? あぁ! これはこれは綾華様! いかがなさいましたか?」
「少し宵宮さんにお話があるのです。いらっしゃいますか?」
「呼んできますよ。...おーい! 宵宮ー!」
すると母屋の方からドタバタと足音が近づいてきた。バタン! と扉が開き、宵宮が顔をのぞかせた。
「なんや源太...。あっ! 神里の!」
「お久しぶりです宵宮さん。少し聞きたいことが...」
「うん分かった! 上がってき!」
綾華は少しばかりかさむ荷物を宵宮に預けて宵宮の部屋へと通された。
「で? わざわざウチを呼ぶっちゅうことは、女の子同士の話っちゅうことやんな?」
「えぇ。...宵宮さん。結婚生活はいかがですか?」
「ん? 幸せや! ...腰は痛なるけど...。なんや。アンタもお相手居るんか?」
「えぇ。近いうちに...。...宵宮さんはどうやってあの方を捕まえたのですか?」
「ん〜。ウチは捕まえたっちゅうか...飛び込んできたっちゅうか...」
しばらくその会話は続き、宵宮の話を聞くごとに綾華は鼻息が荒くなり、なんとしてでも義門を捕まえなくては、と意気込んだ。
粗茶を出した時に話を聞いた源太は義門の無事を祈っていた。
(義門さん逃げて...。超逃げて...)
「...では、そろそろ失礼します。お身体にお気をつけて。...もう貴女だけの身体ではないのでしょう?」
「ん? おぉ。よく気づいたな...。そうや。ウチはもうウチだけの身体やあらへん」
慈悲深い顔で自分のお腹を撫でる宵宮を見て、綾華は長野原家を後にした。
「...絶対に、私のモノは手放しません...」
神里綾華 は ケツイ が みなぎった !
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「さて...ひとまずはこれだけ持っていけばいいか」
義門はひとまずモンドを出た。行動力が凄いとよく言われるが、ただシンプルに綾華から逃げているだけである。
さて、綾華はおそらくモンドにやってくるだろう。故に義門は稲妻から離れたスメールに行こうと考えた。
現時点(ver.3.6)では1度璃月の領地を経由してから層岩巨淵をくぐり抜けるのが手っ取り早い。そして今現在、義門はその層岩巨淵に足を踏み入れていた。
だが、
「崩落ぅ?」
「あぁ、すまない。どうやら少し前にここら一帯の岩盤が脆くなっててな。旅人曰くなんでも大穴が空いたらしいんだ。そこからうじゃうじゃ魔物が出てきててな。今はとりあえず封鎖させてもらってる」
魔物くらいどうとでもなるのだが、あまり印象を悪くさせたくない上、先程出てきた「旅人」というワードが気になった。
この崩落を確かめたのは旅人で、層岩巨淵はついさっき封鎖されたばかり...。
「...いやいやいや...。さすがに...」
と、とりあえず引き返そうと義門が1歩後ろに踏み出し、身体を反転させると、そこには白刃が首元までやってきていた。
「...みぃ〜つけた。...アハッ♪」
「旅人ォ!!」
別に義門は蛍の親を○した覚えはないし、諸々蛍に害を成した覚えがない。
対して蛍側はシンプルに強者である義門と戦ってみたいという純粋な戦闘欲から義門に斬り掛かった。義門からしてみればはた迷惑な話である。
ちなみにパイモンは蛍が義門を匂いで探知し始めたあたりから止めるのを諦めた。
「いいの? こんな所で止まっててさ。綾華、来ちゃうよ?」
「なんでおんどれが知っとるんじゃ」
「だって綾華に義門の住所教えたの私だし」
「...ぶっ殺ォす!!」
と啖呵をきったものの、一応相手は璃月では英雄の旅人だ。さすがに斬り殺すのはマズい。
「そもそもなんで綾華を避けるの? 悲しがってたよ?」
「捕まったら何されるか分からないからに決まってるでしょうが! あのお嬢が暴走したらどうなるか想像つくか!?」
「...ごめんつかない」
「ダルォ!?」
「そんなことはありませんよ。ただ2人で生き、愛し合うのみですから」
急激な冷気が周囲を包んだ。百戦錬磨の旅人と義門はすぐに冷気の出処を捉えたが、義門の顔は寒さとは別の意味でドンドン青くなっていった。
「お久しぶりです義門さん。2年と6ヶ月2日、12時間4分39秒振りですね...」
「お嬢...」
「...貴方は稲妻で指名手配されています。なのでここで逃げるようならば璃月でもお尋ね者になってしまいますよ...ふふ...賢い義門さんならどうすればいいのか、お分かりですね?」
「くっ...。...!? しまっ...!」
義門は綾華の動きに集中していたせいで自分の足元を疎かにし過ぎた。
足が凍りついている。剥がそうにも無理やり剥がせば大怪我どころか壊死も免れない。
とどのつまり、詰みという訳だ。
『呆気ない話である。流石の黒田も社奉行の姫相手では手も足も出なかった』--社奉行秘蔵ノ巻第3章『婿ノ見ツケ方』より1部抜粋。
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「..............はっ!?」
義門は柔らかい布団の上で目を覚ました。
見知った天井であった。
慌てて周囲を見渡すと、屏風や茶器、手入れされた刀など、どこをどう見ても神里家の綾華の間である。
すると、屏風の隙間からひょっこりと綾華が顔を出した。
義門は叫び声をあげそうになったがさすがに失礼がすぎるのでなんとか堪えた。
「大丈夫ですか義門さん。随分魘されていたようですが...」
「え...、あ...。いや...」
「とにかくお兄様に報告してまいります!」
「ま、待ってください! お嬢!」
義門は強烈な違和感を抱いていた。
目の前にいる神里綾華はあの「神里綾華」なのか? その割には手錠もなければ、今自由に身体を動かせる。
綾華は義門の呼び声に反応するとスタスタと駆け寄って義門の隣に座った。
「...大丈夫ですか? どこか痛むところは...?」
「い、いえ...」
「ならよかった...。義門が倒れて社奉行は大騒ぎだったんですよ?」
「倒れ...?」
「...まぁ。覚えてないのですか? 義門さん。貴方は高熱で倒れてしまったのですよ」
義門には熱を出した記憶となんなら倒れた記憶もないが、今この状況から推測できるのは自分が熱を出して倒れたという綾華からの情報だけ。その綾華も少し外すと、今度は神里綾人とトーマも一緒に入ってきた。
「義門さん...! 良かったです...。本当に...」
「若、憔悴しきってましたもんね...。俺だって心配しましたよ!」
真だ。
この2人の反応は間違いなく嘘をついていない。では、あのバイオレンスな綾華は全て熱にうなされたただの悪い夢...?
「あ、あぁ。済まない。迷惑をかけたな。さて、久しぶりに動くとしようかな。トーマ、俺は家に戻って着替えを取ってくるから少し服を貸してくれないか」
今、義門は綾人の寝間着を借りている状態だ。サイズはちょうどいい。しかし、社奉行の長である綾人を服を借りるのは気が引けるのでトーマに服を借りようとしたのだ。
「...? 何言ってるの義門さん。あなたの着替えはあそこにしまってあるじゃないか」
「......は?」
「トーマ、綾華曰く義門さんはまだ寝起きで記憶が朦朧としているようですので、教えてあげてください」
「分かりました。...ほら、ここですよ」
「...俺の...服だ...」
トーマが引いた引き出しの中にあるのは間違いなく義門の服であった。
義門が感じている強烈なものとは反対に、着替えてもなんの違和感もない。あるのはただシンプルに「義門の服がそこにある」という事実だけだった。
綾人は仕事に戻ってしまったが、トーマがまだそこにいる。
「...トーマ、俺は...どうやら長い間寝ていたらしいな?」
「え? ...えぇ、そりゃもう。3日...と半日は寝てましたね」
「...そうか。その間、俺は悪い夢を見ていたらしい...。現と混同しているかもしれない...。この服の場所のように。いくつか質問するぞ」
「分かりました。なんなりと」
「...お嬢は......お嬢の刀の腕は...俺を打ち破る程か?」
「え? ...そこまでですか...。こりゃ重症ですね...。お嬢は貴方には勝ってませんよ。勝てるわけないでしょう? 黒田の末裔に」
「そうか...。ではもう1つ...。『2年と6ヶ月2日、12時間4分39秒』...これに聞き覚えはあるか?」
「に、2年と...?」
「...まぁ、2年と6ヶ月でいいだろう。これくらい前の期間に何かあったか...?」
「それ、ホントに忘れてます?」
「...? なんの事だ」
「だって、2年と6ヶ月前って、ちょうどお嬢と義門さんが結婚したくらいじゃない?」
「......は?」
「だからほら、今から2年半前にお嬢があなたに結婚してくれって頼み込んだじゃない? 体裁的には義門さんの婿入りになってるけど...。黒田と神里の結婚だーって、結構大事になったんだけど...。忘れちゃったんです?」
義門は思考をフルに使って記憶を掘り出した。相も変わらず夢と現がごちゃ混ぜになっているが、確かにそんなことがあったような...なかったような...。
「あらあら。結婚した日を忘れるだなんて。義門さんも悪いお人ですね」
「お嬢...」
そこに綾華がやってきた。音を立てずにやってくるものだからトーマはビクリと肩を一瞬弾ませた。
「まぁ。お嬢だなんて...。何時ものように『綾華』と、呼んでください」
「あ、綾華...?」
もはや義門はかわいた笑いしか出なかった。夢ではバイオレンス綾華から逃げ続け、現では既に綾華とは結婚しているときた。
綾華は義門の横に座り、耳に顔を近づけると、トーマに聞こえない声量で囁いた。
「...私との鬼ごっこは、楽しかったですか...?」
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「はいカァァァァァァット!! オッケェイ!!」
グザヴィエが高らかに叫ぶと綾華と義門、トーマは大きく息を吐いた。
これでグザヴィエ監督のホラー映画の撮影は終わりである。綾人や旅人もゾロゾロと出てきてはお互いに労っている。
「お疲れ様、綾華」
「はふぅ...。いつかのお祭りよりも緊張しました...」
「ハッハッハ! 可愛かったよ。いつもと変わりないね」
「も、もう! からかわないでください!」
するとグザヴィエが2人に歩み寄ってきた。
「いやー! 本当にありがとう! 夫婦役は本物にやってもらうに限るな! 剣技も上手いし! あなた達以上の適任はいないよ!」
「...変な編集を入れるんじゃないぞ」
一応、義門がドスを効かせた声でグザヴィエを脅し、忠告するがグザヴィエは「分かってる」とヘラヘラするだけだった。
そんなグザヴィエに呆れていると蛍もやってきた。
「お疲れ様! 2人とも!」
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
「...あの...図々しいのは分かってるんだけど...、出来たら本当に剣術を教えてもらえたらーなんて...」
「もちろん。いいですよ」
「本当に!? やったぁ!!」
すると、その会話に綾華が横槍を入れてきた。
「旅人さん? その...義門さんは私のですから、あんまり長く取らないでくださいね?」
「え!? 嫉妬!? 綾華かわいいー!!」
そう言われると綾華は顔を真っ赤にしてぷいっと向こうを向いてしまった。
「綾華、大丈夫だって。すぐ戻ってくるから」
その義門の言葉にジト目で綾華は抗議の意を示すと、グイッと義門を引っ張って映画のラストシーンよろしく耳元で囁いた。
「3回...いえ4回で許してあげます...。宵宮さんから体位を教わったので...試してみましょう♡」
「...はいはい。ホントに強欲なお姫様だなぁ」
その日の夜。神里屋敷では姫の艶めかしい嬌声が響いたという。
...朝まで。
「...若、お嬢の部屋防音しましょう。ね?」
「...奇遇ですね。私もそう考えていたところです」
2年と6ヶ月、これは原神リリース日からの逆算です。日数以下はテキトー。
書いてて「幼なじみ要素どこ...?」ってなりましたねハイ。
一応、綾華の小さい頃から剣技を教えてたってことにしといてください(丸投げ)。
アンケート作ったZE! 推し出せとかはよ書けって人はぜひ活動報告にリクエストと怪文書でも投下してくれよな! 待ってるぜ!