スキー教室も終わって、帰り道。
楽しかった。
それに、明日から冬休み。
もう、ずっと虹夏と一緒にいたい。
「いやー、スキー楽しかったねー!」
「最高だった」
「料理も美味しかったしねー」
「虹夏が告られた時は、寿命がなくなった」
「それ死んじゃうよ!? 私もびっくりしちゃった」
「虹夏、魅力あるから当然。断らなかったら、俺泣いてた」
「あはは、断るの悪いことしちゃった気分になるよねー」
「わかる」
距離は前よりも近い。
というか、手を繋ぎながら歩いている。
もうこれ恋人でいいよね?
まだ俺告白してないんだ……。
「で、ユウトはまだしてくれないのかな?」
「え、なんの話?」
「とぼけないでよー。こ、告白……」
「俺の告白途中で遮ったくせに」
「わ、忘れて〜! あの時はごめん!」
「いいよ」
告白ね。
改めてするとなるとめちゃくちゃ緊張するな。
あの時は勢いがあったし………。
でも、こういうのは形として残しておきたい。
恥ずかしがってる場合じゃない。
「虹夏」
「な、なに?」
こういう時こそ雪が降っていれば雰囲気も出るんだろうが、生憎と満点の星空だ。これはこれで悪くない。
虹夏も緊張しているのか、ぎゅっと手を握り返してくる。
虹夏はかわいいな。赤いチェックのマフラーを巻いていて、制服の上に黒いコートを羽織っている。
リボンはいつも通り首元に。可愛らしい。
「俺の、彼女になってほしい」
「……喜んで!」
い、言えたー! 超無難だけど!
「んふふー、ユウトの彼女だなんて幸せだなー」
「大袈裟だ」
「大袈裟なんかじゃないよ! 私は今世界で一番幸せなんだから!」
「気が早い」
「んもー! 認めてよ!」
ぷんぷんと怒る虹夏。
幸せ。
口にはできないけど、俺も虹夏と同じ気持ちだ。
もう、君の気持ちを知りたいって思うことはない。
だって、俺はずっと君だけを見ているから。
#
翌日。
今日は虹夏の家にお邪魔させてもらっている。
店長は今はスターリー。
虹夏は前に俺が選んだパンダを模倣した部屋着を着ている。やはり、可愛い。
しかし、虹夏が構ってくれない。どうしてだ。
今は俺があぐらをかいてその上に虹夏が座っている感じなのだが、虹夏はずっとスマホをいじっている。
もう倦怠期? はやない?
「虹夏ー」
「何ー?」
虹夏のお腹に手を回して抱きしめるが、なんの反応もない。悲しいです。
彼女のスマホを覗き込むと、大きなショートケーキのネット注文画面であった。
「何してるの?」
「お姉ちゃんの誕生日ケーキ買おうと思ってね」
「店長の誕生日いつ?」
「明日ー」
なんと、店長さんの誕生日はクリスマス・イブだったらしい。なんてロマンチックな人なんだ。
「今から店長の誕生日プレゼント見にいくか」
「いいね、行こ行こ」
近くのショッピングモールへ行くためにコートを羽織る。最近はかなり冷え込んできたからね。
ショッピングモールに到着してから、色々と散策する。
虹夏は流石にあの部屋着じゃあ外が出れないらしいので、俺がコーデしてあげた。
ゆったりとしているデニムパンツ。内側はもこもこしている。白いスウェットの上に赤いベストのセーターで合わせる。
まぁ、コーデリングしといてアレだけど、どうせ茶色いロングコートで隠れちゃうんだけどね。
「お姉ちゃん、ぬいぐるみないと寝れないから新しいぬいぐるみでも買ってあげようと思うんだよねー」
「へー、店長にも可愛らしいところあるんだな」
「でしょー! 私のお姉ちゃんは可愛いんだよ!」
「すごいドヤ顔。まぁ、虹夏の姉だしな」
「えー、それどういう意味ー?」
ニヤニヤしながら俺の脇腹をつつく虹夏。
最近虹夏がずっとこんな感じ。
俺自身、素直にいうのは少し恥ずい。
いや、可愛いよ。でも、言葉にするのを躊躇っちゃうというか……。
「…………可愛いって意味」
「誰が誰がー?」
「あーもう! なんだよ、わかるだろ」
「めんごめんごー。で、なんの話だっけ?」
「おいコラ」
立場逆転した気がする………。
虹夏に振り回されるなんて、なんか屈辱だ。
仕返ししてやろう。
俺は虹夏に気づかれないように後ろから手を回して首元を掴む。
「ひゃっ!? めっちゃ冷たいんだけど!!」
「ひゃっ、だって」
「ふんっ!!!」
「ガハッ!?」
俺の腹に虹夏のボディブローが炸裂。
痛い。
それから色々回って、ぬいぐるみを選定した。
誕生日パーティーのチキンも買った。
帰り道。
暗くなってきた夕方にしんしんと雪が降り始める。
この冬初めての雪だ。
この時期に東京に雪が降るのは、珍しくもあり少しロマンチックだ。
綺麗に飾られたイルミネーションを眺めている虹夏の横顔を見る。
思わず写真を撮りたくなってしまうほど雪との景色が様になっていた。
写真撮ると雰囲気壊れるからやめておく。
「綺麗だね」
「そうだな」
「そこはもっとかっこいいこと言ってくれてもいいんじゃない?」
「無茶言うな。誰かとイルミ見るの初めてなんだよ」
「そっか。私が初めてか」
妙に嬉しそうにはにかむ虹夏。
なぜか知らんが満足してくれたらしい。
俺は彼女の手をぎゅっと握る。
「また、来年もイルミを見たいな」
「来年には私のバンドが忙しくなっていてそんな暇ないかもよ〜!」
「メンバーいないだろ」
「これから、これから集めるんですー!」
そう言って唇を尖らす虹夏。
バンドね。
夢は応援してあげたい。
俺の夢はかなり遠くなってしまった。
選手権も全国出れなかったし。一年だからって油断できるほど甘い世界じゃない。
「ユウトの夢、私応援してるよ」
「ありがと。まぁ、メンバー集まらなかったら俺がギターボーカルしてやるよ」
「嬉しいけど、ユウトの力を借りないで夢を叶えたいんだ」
そうか。そりゃ、立派なことだ。
「そろそろイルミ飽きたし行こ」
「雰囲気ぶち壊しだよー! まぁ、早く帰んないとお姉ちゃん拗ねそうだしね………」
俺たちが仲良くなるにつれて拗ねる頻度が上がっている気がする店長。
あの人、俺たちのこと応援してるんだよな……?
「ユウト」
帰ろうとした時虹夏に呼び止められる。
「ちょっと屈んで」
「っ!!!」
「この前のキス、お返しするね!」
屈もうとしたとき、虹夏の手が俺の後頭部にまわされてそのまま唇を奪われる。
そんなことされたら惚れちゃうわ。
顔に熱が帯びていくのを感じながら、虹夏の方を見る。
やっぱり恥ずかしかったようで顔が真っ赤に染め上げられる。
俺の彼女は世界一可愛い。
「………顔真っ赤だぜ?」
「ユウトなんてトマトみたいに真っ赤だよ!」
お互いが赤くなっていることがおかしくて一緒に笑う。
そう、こんなふうに将来二人で笑い合いたい。
お互いを支え合って、夢を応援して。
結婚式だってあげたりして。
子供が産まれて、幸せな家庭を作りたい。
そして、最期は君と子供達に囲まれながら終わりたい。
そこまで考えるのはまだ早いか。
でも、彼女とそんな未来を歩みたい。
「虹夏」
「なに?」
君とのこれからを夢想する。
何度も伝えた自分の想いをもう一度。
世界で一番愛しい君へ。
「俺は、虹夏を愛してる」
粉雪に紛れる君は、最高の笑顔を咲かせていた。
♪
クリスマス・イブ。
お姉ちゃんの誕生日。
お姉ちゃんの誕生日パーティーで必要なものをユウトと一緒に用意する。
イルミネーションの前での君の言葉は、私の心に響き渡った。
んふふ、愛してるだなんて最高の言葉だよ。
君の隣にいて恥じないぐらい魅力的な女性にならないとね!
「よくきたな。また一段と仲良くなりやがって………」
私はユウトを迎えに行っていた。ぶつぶつと何かを呟くお姉ちゃんは恨めしそうに手を繋いでいる私たちを見てくる。
私たちが仲違いを起こさなかったのは、きっとお姉ちゃんのおかげだ。お姉ちゃんにはどれだけ感謝してもしきれない。
私はこの恩をいつか返しきれるかな? ううん、返してみせる。
今日がその一日目だ!
「お姉ちゃん、29歳誕生日おめでとー!!!!」
「おめでとー29歳」
「ありがと。でも、年齢については具体的に言わないでくれ……」
料理は豪勢。
唐揚げに、お姉ちゃん用の高級ワイン。
私とユウトで作ったポテトサラダにネギ塩チャーハン。
「うん、うまい」
「リョウ、なんでいるの?」
「お金が、なくて………」
「まったくもう、しょうがないなー。ちゃんとお姉ちゃんお祝いするんだよ?」
「おめでとーございます、もぐもぐ」
行儀が悪い。
うちにたまに棲みついてくるベーシストの一人、山田リョウ。
「ん、リョウじゃん」
「ユウト。これユウトが作ったの?」
「それは俺が作ったネギ塩チャーハン」
「今度私の家に来て作って」
「いや、彼女の私が許さないよ!?」
「そうやって束縛するのは良くない」
「え、これ束縛になるの……?」
ま、まずい。重い女なんて言われたらどうしよう。
ユウトに視線を向けると、美味しそうにネギ塩チャーハン食べていた。なんも気にしていなそうである。てか、聞いてた?
「冗談。取らないから安心して」
「もー、からかわないでよね」
「私の前でイチャイチャするのはやめてほしい。心がもたない」
「そういえば、リョウ。カップル苦手だったね……」
「まぁ、二人の関係は応援してる」
「っ! ありがと!」
やっぱりリョウは親友だ。
一通り料理も食べて、ケーキを出す。
「お姉ちゃん、誕生日おめでと!!」
「「おめでとー」」
「ありがとう。ろ、蝋燭がたくさんあるな。ハハッ」
なんかお姉ちゃんが壊れてるけどどうしたんだろ。蝋燭って年齢分置くんじゃないの?
ほら、ちゃっちゃとケーキ食べてお姉ちゃん!
「ケーキ美味しい。虹夏、ありがとな」
「えへへ〜、はいこれ!」
私はユウトと一緒に選んだパンダのぬいぐるみをお姉ちゃんに渡す。
「…………可愛いな。ありがと」
「店長、ぬいぐるみないと寝れないらしいっすね」
「ユウト、この写真見て」
「ふっ」
「鼻で笑ったなお前」
お姉ちゃんに捌かれているユウトは置いておいて、プレゼント喜んでくれて何より!
と、ここでユウトがお姉ちゃんに誕生日プレゼントを渡すらしい。案の定リョウは持ってきてない。
「おめでとうございます」
「これは、髪飾り……?」
「名前、星歌っていうんですよね? 星の髪飾りあげます」
「おー。お前にしてはまともなプレゼントだな。………なんか子供っぽくないか?」
「お姉ちゃん似合ってるよー!」
「ま、まぁありがとな」
ユウトもいつもはお姉ちゃんを揶揄ってるけど、ちゃんと祝ってくれるのは妹としても嬉しい。
誕生日パーティーの片付けをしながら、スキー教室を思い出す。
確か、告白してきた男の子がいたんだよなー。
「伊地知さんの笑顔が好きです! 俺と付き合ってください!」
その子はクラスの男子で私もちょっとしか話したことはなかった。
ユウトとの仲直りした後だったから付き合う気はなかったから、断るのは少し億劫だった。勇気を出して告白してくれたのは嬉しいんだけど、私はユウトのことが好きだし………。
「や、やっぱり日賀のことが好きなのか……?」
「ご、ごめんね。うん、私ユウくんのことが好きなんだ。だから、その、君とは付き合えないな」
「そ、そっか。ありがとね……」
あの時は罪悪感を抱いてしまった。
そして、彼から告白されていないことも思い出した。
あれ、私とユウトってまだ恋人関係じゃなくね? ってね。
まぁ、帰り道ちゃんと告白してくれたから今はいいけどね!
と、片付けもひと段落した時、お姉ちゃんを寝かせに行ったユウトが戻ってこないことに気づく。ちなみにリョウは帰った。
いや、まさかね? そんなことないよね?
私は不安になってお姉ちゃんの寝室に行ったが、お姉ちゃんがぐっすり眠りについているだけだった。
あれ、じゃあどこ行ったんだろ。
もしかして、と思って家の外に出るとマンションの廊下から夜空を眺めていた。
昨日の雪は降り積もることはなかった。ちょっぴり残念。
「なーにしてるの?」
「そろそろ今年も終わると思ってな」
「ねー、一年はあっという間」
この一年。ユウトとの記憶でいっぱいだ。
彼は星空を見上げてる。その瞳には星空じゃなくてもっと遠いところを見ているような感覚を抱く。
「虹夏」
「なに?」
「俺は、虹夏と一緒に笑って過ごしていきたい」
もしかしたら、彼の視線の先には彼の思い描く未来があるのかもしれない。
彼は語る。
「虹夏と一緒に何かをしたい。お互いに支え合って、夢を応援して。そうだな、結婚もして。子供もほしい。正直、俺より先に逝って欲しくないから最期も見届けてほしい」
「…………嬉しいけど、気が早いんじゃない?」
彼がそこまで考えてくれることは本当に嬉しい。
け、結婚もしたい。こ、子供も、きっとユウトと私の子供だから優しい子が生まれるはずだ。
「確かに、早いかもしれない。でも、付き合ったら別れるか添い遂げるかの二択だ。俺は、別れるなんて考えられないし。添い遂げる未来を見ていたいんだ」
「んふふ、そっか」
君の言葉に感化されて、私も彼との未来を想像する。
きっと、彼はいいお父さんになるだろう。
「だから、これからもよろしく」
「うん! 私も、君だけを見てるよ」
彼の微笑む姿が、私の瞳に映る。
この一年間、彼の笑う顔を見てきた。
でも、この笑顔だけはちょっと違うな。
彼と一緒に夜空を見上げる。
二人で歩む未来に想いを馳せる。
きっと私と彼では、見ている景色は違うものだろう。
だけど、私とユウトがこれから歩いていく道はずっと一緒だ。
君とのこれからの日々が、未来が私の頭に鮮明に思い浮かぶ。
君と一緒に、これからを生きていきたい。
「ユウト」
「なんだ?」
とびっきりの笑顔で、私の想いを伝えたい。
「私は、ユウトを愛してる!」
夜空を背景に君の無邪気な笑顔が咲く。
彼の背後には流れ星がきらりと輝いていた。
完結じゃ!
でも、これから原作書いてくよ! でもでも、そろそろテスト期間だよ!
ここからTS要素とか、ガールズラブ要素が出てくるかも。
完結できたのも応援してくれたみなさんのおかげです!
この作品読んでくれてありがとうございました!!!
これからもこの作品、どうぞよろしくお願いします!