君の気持ちを知りたい   作:烏兎 満

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思った。ぼっちちゃんとうちの主人公、相性悪くない?


路上ライブ

 新学期が始まった。

 新しい出会いの溢れた四月。

 去年を振り返ると懐かしい思い出が蘇ってくる。

 隣の席から虹夏に声をかけられたことは今でも記憶に残っている。

 

「虹夏と出会ってもう一年が経ったな」

「早いものだよねー」

「そうだな」

 

 ただクラス替えだけが一番不安だ。虹夏と一緒のクラスじゃなかったら、死ぬ自信がある。

 学校に到着してから、クラスを確認する。

 

「あ、見てみて! ユウトと同じクラスだー!」

「おー」

「リョウもいるよ! この一年楽しくなりそうだね!」

 

 よっしゃ!!!

 虹夏と同じクラス。まじで違うクラスだったら校長に問い詰めに行ってたわ。

 てか、あいつも同じクラスなのか。

 

「そういえば、メンバーが一人見つかったんだよ!」

 

 そういって嬉しそうに振る舞う虹夏。

 まぁ、なんとなくメンバーは察せられるが、あの状態からよくまたバンドやろうと決意したな。

 

「なんかあんまり驚いてなくない?」

「なんとなくメンバーが思い浮かぶ」

「じゃあ当ててみて?」

「リョウだろ?」

「なんでわかったの!?」

 

 別になんとなく、と答えてから教室に入る。

 残念ながら虹夏とは席が離れてしまった。

 

「おはよ」

 

 その代わり俺の隣に座ってきたやつは先ほど話題に上がっていた山田リョウだった。相変わらずの無表情。俺も大概か。

 

「いいなー、リョウ」

「虹夏はいつもユウトと一緒にいるから別にいいじゃん」

「んー、そういう問題じゃないんだよなー」

 

 それから始業式を済ませてから簡単な授業を受ける。始業式から授業とは流石進学校。

 

 虹夏は今日は他の友達と遊ぶようなので、今日は一人帰宅。久しぶりにスターリーでも行こうかな。

 スターリー。一年前にあそこに訪れたのも何かの運命だった気もする。

 

「ユウト」

 

 名前を呼ばれて振り返ると最近どこかと俺に絡んでくるリョウがいた。

 あの日以来、たまに家の前に来るので追い返している。というか居留守を使って誤魔化してる。

 まぁ、追い返しても虹夏の方に行くからあんまり変わらないのだが。

 

 俺は今スターリーに行きたいので、無視しようかな。変に構うと面倒臭いのはこの一ヶ月でよく知っている。

 

「振り返ったのに無視するのはひどい」

 

 手を掴んで歩みを止めてくるリョウ。ひどいも何もお前の性格が面倒なんだよ。面白くもあるが、面倒臭いが勝つ。

 リョウは無表情だが、今回は何か用事でもあるかのような雰囲気を纏っていた。

 よし、帰ろ。

 

「はぁ、手を離してくれ」

「離したら走り出すでしょ」

「はぁ」

「今から路上ライブしない?」

 

 何を言い出すのかと思えば、ちょっと面白そうなことを言い出したな。

 あの文化祭からギターに少し興味を持てたのでちょくちょく触ってはいた。人前で披露したいな、と思ってもバンドを組むほどの熱量はなかった。なるほど、路上ライブという手もあったか。

 俺がそう考えていると、リョウに手を引っ張られる。

 

「おっけー、ってことだよね?」

「強引だ。でも、悪くはない」

 

 リョウとの久しぶりの演奏。文化祭以来だが、少し楽しみだった。

 

「おい、機材どうすんだ?」

「ユウト、お願い?」

「はぁ、仕方ない。俺が運ぶ」

 

 上目遣いでお願いしてくるリョウにうんざりしながらも、今回ばかりは俺も楽しみなので協力させてもらう。

 アンプやらシールドやらスピーカーやらをリョウの指定した道路にリョウの家から運び込み、俺も制服から着替える。

 マイクが二つ欲しいって、リョウも歌うのか?

 

「ふぅ、これで全部か?」

「うん。ユウト力があって助かる」

「はいはい」

 

 路上ライブ。下北沢ではよくみる光景だが、まさか自分がやるとは思いもよらなかったな。

 ギターを装着。ギター持ってると自分がカッコよく感じてくるから気分がいい。

 マイクスタンドの位置を調節して、不思議そうな顔で寄ってくる客たちに挨拶をする。

 

「どうも、今回限りのタッグです。ん、ちょっと音小さいか」

 

 リョウにマイクの音量を上げろ、と指示を出してから改めて自己紹介を始める。

 

「改めまして、今回限りのライブです。ギターボーカルは俺、ユウトです。で、ベースがリョウ。じゃ、早速始めまーす」

 

 道行く人が結構足を止めている。まぁ、容姿効果だな。俺は顔面スペックが高い。自覚はある。

 少し癪だが、リョウも男女問わずに人気のあるユニセックスな見た目なので、客引きにはもってこいだ。

 あとは下北沢では路上ライブが盛んなので立ち止まってみていく人も少なくない。

 だが、これだけじゃ路上ライブは成り立たない。客引きに成功して実力がある上で路上ライブが完成するようなものだ。

 

 すでにギターのチューニングは完了している。リョウも問題ないようで視線を向けると頷き返してくる。喉の調子も良好。

 

 ここを最高のライブ会場に変えてやる。

 

 演奏が始まる。文化祭から半年を過ぎたが、ギターというものは奥が深い。やればやるほど、その難しさに引き込まれていくような感覚を感じることがあった。

 選曲としてまず、人気がある上でインパクトのある曲だ。

 

 そして、歌う時へのこだわりは己の感情を歌に乗せること。そして、それを制御することだ。音程とかリズム感とかを大前提としての話だがな。

 

 客がどんどんと集まってくる。いいぞ、気分が上がる。道行く人たちが足を止めるほどのライブを実現できているという実感を得ることができる。それが、自信へとつながっていく。

 

 ギターの調子もいい。歌う時は客の方に視線を向けているので手元は見れないが別に問題ない。体が覚えている限りをギターで奏でる。感情的になり過ぎず、それでいて正確なコードで。

 

 リョウのベースは合わせやすい。他のベーシストとやったことがないので比較対象はいないが、やはり上手いという一言に尽きる。

 

 一曲目が終わり、客はざっと見て三十人ほど。まぁ、これ以上集まられても困るからな。

 

 それから何曲か弾いたところでお開き。人数は最大五十人ほどを集められて十分すぎる成果であった。集金とかはしていなかったが、どうしても払いたいという客がいたので全部山田リョウの財布に吸い込まれて行った。俺はそこまで金に困ってないし、いらん。

 

 客の中にすごい山田リョウのファンらしき人が目をキラキラとさせていたのは印象的だった。赤くてよく目立つ子だったな。一番お金出していたのも目立つ要素だった。

 

「お疲れ」

「ん、やっぱりユウト、もったいないよ」

「知らねーな。こうやってたまにやるぐらいがちょうどいい」

「ふーん」

 

 なんだその意味深な反応は。俺は速やかに機材を片付け始める。ちょいと疲れた体を動かして移動を始めようとした時、リョウに声をかけられる。

 

「また、二人で路上ライブやろう」

「…………いつかな」

 

 満足そうに頷いてから荷物運びを手伝ってくれる。大体リョウの私物なんだがな。

 路上ライブも悪くなかった。今度は虹夏も含めてまたあの三人でやりたいものだと思わせるほどには。

 

 ん? なんで二人で路上ライブをやるんだ? 虹夏も含めればいいのに。まぁ、忘れていただけってのもあるか。

 

 ギター、もう少し上手くなってみたいものだ。

 

 

 

 #

 

 

 

 路上ライブから一週間。学校の帰り道。

 虹夏と一緒に下校していると、一人の少女が声をかけてきた。

 見覚えがある。確か、あの山田リョウの熱心なファンの子だったような。

 

「すみません! ユウトさん、ですよね?」

「そうだが」

 

 虹夏が小声で、だれ? と聞いてきたので知らないと答えておく。説明するのが面倒だ。

 赤毛の子は何か覚悟を決めてきたような表情を作る。

  

「あ、あの、私をリョウ先輩とのバンドに入れてくださいっ!!」

「え、無理」

「ガーン!」

 

 わかりやすく変な効果音をつけて落ち込む高橋さん(仮)。

 虹夏はどういうこと? と耳元で囁いてくる。ちょっと背筋がぞくってするからやめて欲しい。そして、俺も知らん。

 

「じ、自己紹介が遅れました! 私喜多って言います! ギターなら弾けるので………」

「まずな話、俺とリョウはバンド組んでないし。リョウはこの虹夏と組んでるぞ」

「そ、そうなんですかっ!?」

「喜多ちゃん、うちのバンド入る?」

「入ります!!!」

 

 なんだこのスピード感。そして、虹夏。そんな簡単にメンバー決めてもいいのか。

 やったー! と喜んでいる虹夏は置いといて、喜多さんが不思議そうに俺の方を見てくる。なんだ。

 

「ユウト先輩はそのバンドに入ってないんですか?」

「入ってない」

「そ、そうなんですね………」

「じゃ、喜多ちゃん! 明日スターリーってところ集合ね!」

「はい! ロイン交換しましょう!」

 

 すごいコミュ力だな。俺にはとても真似できない。

 

 まぁ、メンバー三人いればバンドはできるか。本当に今年にメンバーを集めてしまうとは。

 まぁ、楽しみにしておこう。

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