君の気持ちを知りたい   作:烏兎 満

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R-15注意。


君の夢、君との関係

 八月二十四日。

 実質結束バンド初のライブと言っても過言じゃない。

 俺は今度こそ聴く側として、スターリーを訪れていた。

 

 しかし、虹夏たちも運がないことだ。

 日本に上陸するはずのなかった台風が進路を変えて関東に直撃。

 まだライブが始まっていないこの時間帯でも、豪雨が降り続いている。天気予報によればこれからもっと強くなるらしい。

 

 虹夏、大丈夫だろうか。

 虹夏はいつも明るくてポジティブな子だ。だけど、彼女はその明るさとは対照的に何か少しマイナスな感情が湧くと、精神的に不安定になることがある。

 それはきっとライブのパフォーマンスにも影響してしまうだろう。

 

 いや、ここは虹夏を信頼するべきだろう。

 俺が不安になってどうする。

 大丈夫だ、客が少なくてその客が虹夏たちに興味がなくたってあの子達はきっとやり遂げる。

 そう信じて待つことが俺にできる最善策だ。

 

「うひゃー! 濡れた濡れた!」

「「げ」」

「あ、せんぱーい! それに少年まで〜! お久ー!」

 

 うわ、酒瓶片手に迷惑客がやってきたよ。なんでここにいるんだよ。

 俺はなるべくガン無視して店長に廣井さんを押し付ける。

 

 虹夏はいつも通り明るく振る舞っているが、少し不安そうな一面も垣間見える。

 俺は背後から虹夏の首に抱きつく。身長が低いからこの抱きしめ方が一番しやすい。これ言ったら虹夏に怒られるけど。

 

「なにー?」

「いや別に」

「もー! 私たちの前でイチャイチャしないでください! 後藤さんが溶けちゃってますよ!?」

「えー、喜多ちゃん羨ましいのー?」

「そ、そういうわけじゃ………。日賀先輩、私にもその………」

「郁代、頑張れ」

「きゃー! 頑張ります!」

 

 うむ、やる気満々なのは良いことだ。

 よし、虹夏なら大丈夫だ。あと、郁代に対してドヤ顔すんのやめろ。郁代が面倒なことになる。

 リョウに関しては俺の背中にもたれかかって眠るのはやめてほしい。緊張感のかけらもない。いや、案外一番今回のライブを気にしているのはこいつなのかもしれない。なんとなくだが、そう思う。

 

 虹夏から離れてリョウを起こす。

 

「おい、起きろ」

「…………ばぶぅ」

「幼児退行すんな。お前、そんなに心配なのか?」

 

 俺の言葉に結束バンドメンバー全員がリョウに視線を送る。

 リョウはこちらをじっと見つめてくる。

 

「で、どうなんだよ」

「別に」

「みんなが今日のライブでやる気無くして解散しちゃったらどうしよー! とか思ってるんじゃないの?」

「お、思ってないし」

 

 目が泳ぎまくってるぞ。

 最近、なんとなくこいつの心情が読み取れるようになって来た気がする。大体天邪鬼だったり、素直じゃないんだよなこいつ。

 

「リョウもたまには可愛いところあるねー!」

「リョウ先輩、そんなに私たちのことを想っていただなんて……!」

「あ、リョウさん、私、頑張ります!」

 

 他メンバー三人に詰め寄られて迷惑そうな顔を作ってるが、どことなく恥ずかしそうにしてる。あいつ、可愛いとこあるじゃん。

 リョウが半目でこちらを睨みながら、中指を立ててくる。ロックだな。

 

「ほら、ちゃっちゃとリハ行ってこい」

「うん! 期待して待っててね!」

「その言葉何回も聞いたわ」

「日賀先輩! ギターはまだまだですけど任せてください!」

「ユウト、覚えてろ。◯ぁっきゅー」

「あ、えっと、その、が、がんばりましゅ!」

「おーう、頑張れよー」

 

 一人物騒な奴がいたが、それもまた天邪鬼なんだなー、なんて思えば可愛らしく見えてくる。

 よし、こいつらの肩の力は完全に、とは言えないがかなり抜けたな。

 

 店長がこちらに近づいて話しかけてくる。

 

「お前はマネージャーかなんかかよ」

「別に。そういうつもりで言ったわけじゃないっす」

「まぁいい。それよりこいつどうにかしてくれ」

「えへへ〜、今夜は打ち上げ、今夜は打ち上げ〜! でへへ〜」

「嫌です」

 

 俺は最前列でライブ開始を待つ。

 周りを見渡すと十人ちょっとの人たちが興味なさげにスマホをのぞいていた。

 これを見て虹夏たちは精神的なダメージを受けなきゃいいんだが。

 

「すみませーん、あなたも結束バンド見に来たんですか?」

「え、あー、はい」

「そうなんですね〜。実は私たち、ひとりちゃんのファンなんです!」

 

 へー、ひとりのファン。

 どこでゲットして来たのやら。

 別に俺には関係ないんだが、ひとりの凄さを知る人が増えたのはどことなく嬉しく感じるな。

 

「一緒に見ましょう!」

「誰推しなんですか!」

 

 お、推し? 推しってなんだ。誰推し?

 ダレオシ?

 誰が好きってこと?

 

「え、あー、金髪のドラムやってる子ですね」

「そうなんですか! どういう形で結束バンドに興味を持たれたんですか!」

 

 この子達遠慮という言葉を知らない。色々面倒になったのでペラペラと適当に話した。

 

 お、はじまるな。

 MCが少し不安だ。虹夏とかそういうの得意じゃないけど、大丈夫だろうか?

 いや、俺は信じてみていよう。

 最初は虹夏が話すらしい。

 

「どうもはじめましてー! 結束バンドです! いやー、この豪雨の中来てくれてありがとうございます!」

 

 おー、無難だ。でも、今の空気的にはそのぐらいでいい。最初から変な台本を用意すると滑った時マジで精神的にくるものがあるからな。

 ギターボーカルの郁代が話し出す。

 

「では! 早速一曲目は私たちのオリジナルで、『ギターと孤独と青い惑星(ほし)』です!」

 

 俺は虹夏たちからオリジナル曲は聴いていなかった。楽しみにしてろー、ということで聴いてない。

 作詞はひとり。作曲リョウ。

 

 ギターと孤独と青い惑星(ほし)ね。ひとりが作詞するってことは、なんとなくネガティブなこと書かれてるんだろうなー。

 それを郁代が歌うのはシンプルに面白い。

 

 虹夏の合図とともにライブが始まった。

 おー、オリジナルにしては完成度がやたらと高い。

 俺自身作詞作曲やったことがないので、いまいち何がすごいかは語れないのだが、一度聴いた限りかなり心に残る歌詞とリズムだな。

 歌詞がめちゃくちゃ暗いのがひとりっぽくて笑えるな。

 

 相変わらず上手いリョウのベース。

 そして、虹夏も前回のライブよりも確実にイージーミスがなくなって来ている。

 流石、期待していた甲斐があるぜ。

 

 後輩二人に関してはまだまだ粗い部分もある。

 ひとりに関しては完熟マンゴーを被らないだけで成長である。

 そして、何より驚いたのは郁代の歌だった。

 

 ギターを弾いているにも関わらず感情的に歌い、それでいて安定した音程と声の抑揚。それは、勘違いじゃなければ俺自身がいつも歌う時に意識していることの一つだった。

 

 思わず笑みが溢れる。

 サビに入った瞬間、爆発するかのように弾けた歌声は興味のなさげにしていた観客を惹きつけるには十分だった。

 

「え、結構良くない?」

「うん、なんというか、すごい……」

 

 その郁代の歌声が爆発すると同時に影ながらライブとしてのボルテージが上がるもう一つの要素が少しずつ際立ってくる。

 

 それは、ひとりのギター。

 彼女のギターから掻き鳴らされる音は、郁代を支えるように徐々に徐々に激しさを増していく。

 あれ、こいつ俺より上手くね?

 

 その二人に置いていかれずにしっかりと後ろから支えるあの二人もすごい。

 

 この短期間でどれほど練習したんだよ。

 本当に驚かされる。

 

 虹夏を見る。

 楽しそうにリズムを刻む虹夏。

 流石、このバンドのまとめ役。ちゃんとリーダーしてるじゃないか。

 

「ギターと孤独と青い惑星(ほし)でした! 会場も温まって来たことですし、じゃんじゃん行きますよー! 次は『あのバンド』!」

 

 それからライブはここにいる少ないながらも全ての客を巻き込んで、十分過ぎるほどの盛り上がりを見せていった。

 

 全員が全員、楽しそうに演奏している姿を見て胸が熱くなる。

 俺、ファン3号になろうかな。

 彼女たちの努力は直接みて来てはいなかったが、今回のライブを聴いて計り知れない努力を積み上げて来たのは想像することができた。

 

 期待通り。いや、期待以上のライブだった。

 まぁ、まだまだ粗いところもあるけどね。

 

 無事、ライブも終わって居酒屋で打ち上げをするらしい。

 よし、酒カスくるから帰ろ。

 

「お疲れー、じゃ俺帰るわ」

「え、えー!? ユウトも来てよ!?」

「いや、俺ファン3号だから、そういうの無理」

「ファン3号ってなに!?」

「じゃ!」

 

 走って逃げようとした時、リョウに腕を掴まれる。

 その後、足を止められた俺のもう片方の腕を郁代に掴まれてしまい、挙げ句の果てにはひとりが背後から腰に手を回して捕まえてくる。

 

 に、逃げられないだと!?

 

「先輩、逃げちゃダメですよ!」

「さっきの報い、受けてもらう」

「あ、その、えっと、い、一緒に行きましょう!」

「ほーら、みんなユウトと一緒に行きたいみたいだよ〜?」

 

 や、やだ。

 面倒だ。お酒を飲んだ大人が一番面倒なんだ。

 

「うわ、めっちゃ行きたくなさそう」

「このまま連行しよう」

「ですね! 日賀先輩、ほら行きますよー!」

 

 結局、あのまま拉致られた。勘弁してほしい。

 

 

 

 #

 

 

 

「はー、食った食った」

「ユウトずっと焼き鳥食べてたねー」

「店長の奢りだからな。店長寝ちゃったし」

「あはは、お姉ちゃん運んでくれてありがとね」

「大丈夫。店長案外胸があって背中に柔らかいものを感じれるから………」

「オラっ!!!!」

「ぐはっ!?」

 

 お、お腹が………!?

 焼き鳥吐き出しちまいそうだったよ!?

 俺は今ぐっすりと眠ってしまった店長を背負っている。まぁ、結構柔らかい感触が背中に当たってるのは事実だ。最高だね。

 虹夏がジト目でこちらを睨んでくる。

 

「わ、私だって…………。まだ、まだ成長中だし!」

「はいはい」

「信じてないでしょ!」

 

 頬を膨らませてぷんぷんと怒ったかとおもえば、若干落ち込み気味の虹夏。

 

「ユウトのえっち………」

「ごめんごめん」

 

 俺にも人並みに性欲ってもんはある。別に虹夏ので興奮しないってわけじゃないから。まぁ、いうの恥ずいから言わんけど。

 

 虹夏の家に到着してから店長を寝かせる。

 

「虹夏、ライブ最高だった」

「ふふん、そうでしょそうでしょ! 私頑張ったんだから!」

 

 ドヤ顔で頭を突き出してくる虹夏さん。

 撫でて撫でて、と言外に伝えているみたいで可愛い。

 要望通り撫でてあげる。無抵抗に撫でられていて実に可愛らしい。猫耳バンドつけてみたい。

 

「ぼっちちゃん、あんな弾けるなんてね! 練習じゃあんな弾けなかったんだよ! 本当、ヒーローみたいだった!」

「そうだなー。郁代もすごかった。あんなに歌えるなんてびっくりだ」

「そうだねー」

 

 チラチラとこちらを上目遣いで見てくる虹夏。

 ったく、わかってるってば。

 

「虹夏、ドラムがまた一段と上手くなったな。しっかり結束バンドを引っ張っていてカッコよかったぞ」

「にへへー」

 

 蕩けたような顔で喜ぶ虹夏。ひとりみたいな顔面崩壊してるぞ。

 

「まだまだ! 私たち結束バンドはここからスタートするんだよ!」

「俺もここからだな」

 

 インターハイは一回戦は勝ったのだが、二回戦で敗退。悔しい結果に終わったが、切り替えていかなければならない。

 

「ふふん、私ずっとユウトのこと応援してるよ!」

「俺も、虹夏の夢を応援してるよ。ずっと」

 

 俺たちはお互いの夢を尊重しあって支え合う。

 それが俺たちの恋人としての形であり、これからもずっと続いていく関係だ。何者にも侵すことができない俺たちの関係性。

 

「………今日ユウトの家泊まってもいい?」

 

 妙に顔を赤らめてそう聞いてくる虹夏。

 思えばお互いの家に遊びに行くことは多かったが、泊まることは一度もなかったな。

 まぁ、恋人だし泊まることぐらいは普通か。

 

「いいよ」

「わ、わかった! ちょっと色々準備してくるね……!」

 

 様子がおかしかったがただ泊まるだけじゃないのか?

 俺は先に家に帰って風呂に入り、適当に部屋の掃除をする。

 最近虹夏がうちの家に私物を持ち込むから、殺風景な部屋が一転、可愛らしい女子みたいな家が出来上がってしまっていた。

 

 家に来た虹夏は軽いジャンパーを羽織っていた。

 髪型もいつものサイドテールを下ろしてストレートだ。まぁ、家だといつもこんな髪型だから見慣れてはいるな。

 

「お、お待たせ……」

「いつもの俺の家だろ。何緊張してんだよ」

「う、うるさい! 私もお風呂入って来たから早く寝よ!」

 

 ま、早く寝るか。

 

「俺ソファで寝るから、虹夏はそのベッドで寝ていいよ」

「い、一緒に寝ようよ………」

 

 い、一緒に?

 その言葉を聞いた瞬間、やけに俺の心臓の鼓動が大きくなった。

 い、いやただ一緒に寝るだけだ。

 

「わ、わかった」

 

 虹夏がジャンパーを脱ぐとそこにはいつもの元気溌剌とした彼女とは全然違う雰囲気を纏った虹夏がいた。

 ジャンパーの下はネグリジェを着ていた。それに加えてネグリジェの色は赤く、いつもの虹夏とはチグハグな印象を抱かせてくる。

 でも、何よりもエロい。

 

 え、ちょっと待って。俺の家に泊まるって()()()()()()

 

 いきなりどうしたんだ!?

 何か変な動画でも見たのだろうか?

 と、とりあえず一回寝ようか。

 お互いベッドに横たわって、俺は虹夏に背を向ける。心臓の音聞かれてないよな?

 

「ねぇユウト、私たち付き合ってもう半年以上過ぎたよね」

 

 背を向けている俺に後ろから抱きついてくる虹夏。

 や、やばい。背中から感じる虹夏の小さいながらも確かな柔らかさに俺の頭がピンク色に染まりそうになる。理性耐えろ。

 

「そ、そうだな」

「こ、こういうのって男の子がリードしてくれるようなものじゃないの?」

 

 やはり勘違いじゃなかったようだ。

 言葉にはできないそういうことをしようとしている。

 改めて今一度考えてみる。

 あ、避妊具ないから断ろう。

 そう思った時、虹夏が俺の手の中に何か柔らかいものを渡してくる。逃げ道はなかった。

 

「や、やっぱり私ってそんなに魅力的じゃないかな………。胸だって小さいし………」

 

 俺がぐだぐだと悩んでいると、虹夏が不安そうな声音でそう聞いてくる。魅力的すぎて逆に困ってるわバカ。

 でも、自分でもよくわからない。

 

 なんで、こんなに渋っているんだろう。

 

「………そんなことない」

「ほんと………?」

「うん、ちょっと今理性抑えるのに必死だから待って」

「へぇ、そっか」

 

 そうか。わかった。

 俺が渋っている理由は、虹夏がやけに焦っているように感じるからだ。このまま勢いでシてしまうのは良くない。虹夏の焦っている理由を聞き出さないでこのまま有耶無耶で進めるのは後で絶対拗れてしまう。

 まぁ、俺がただヘタレってだけかもしれんけど。

 

「虹夏、何か焦ってない?」

「………わかっちゃう?」

「まぁ、なんとなく。正直勢いでそういうことしちゃうのは良くないと思う」

 

 虹夏は俺の背中に額を預けて、ゆっくりと話し始めた。

 

「………最近、ユウト女子と話す時が多くてさ。ちょっと不安になっちゃうんだよね。その、えっと、嫉妬しちゃうんだ。重いよね………」

 

 なるほど。確かに最近結束メンバーと行動を一緒にすることが多かった。特にこの夏休みは。

 でも、嫉妬してくれるのは口には出さないけど嬉しいな。

 重いわけない。

 

「重くないよ。なんなら俺の方が重いぞ。俺虹夏が別れたいって言っても絶対別れないし。それに、俺は虹夏と約束したはずだ」

「…………うん、約束した。でも、どうしても不安になっちゃうんだ。だから、何かユウトと私を繋ぎ止めるものはないかなって考えて……」

 

 これは、俺の失態だ。彼女を不安にさせるような行動を、彼女を安心させるような行動をしてこなかった結果だ。

 でも、理由はわかった。

 

「あ、でもユウトとそういうことするのは全然嫌じゃないよ! ごめんね、ちょっと焦っちゃった。今日はもう寝よ」

 

 そう言って俺に背を向ける虹夏。

 嫌じゃない、か。

 流石にそんなこと言われたら俺の理性飛んじゃうよ。

 心臓がドキドキと破裂しそうなほどの音を鳴らす。

 あーもう。誰がこんな状況で女の子を放置できるんだよ。

 

 俺は虹夏の方に振り返って、先ほど虹夏が俺にしてくれたように後ろから抱きつく。

 

「っ! な、なに?」

「今からもう寝よってどんな焦らしプレイだよ」

「っ!!!」

 

 俺は虹夏の上に跨るとそのまま彼女の唇を奪う。

 たまにするようなただのキスじゃない。

 

「…………」

「…………っ」

 

 たっぷり十秒ほどキスしたところで、唇を離す。

 俺と虹夏の顔の間には銀色の糸が橋のように架かっており、少しして途切れる。

 

 部屋は薄暗くしているが、この距離ならはっきりとわかる。

 とろん、と蕩けたような瞳をこちらに向ける虹夏。

 全身にゾワゾワとした感覚が襲ってくる。

 嗚呼、襲いたい。

 こちらを見上げる虹夏は甘い言葉で誘ってくる。

 

「………来て、いいよ」

 

 ま、待て。まだ俺の理性は働いている。

 でも、ここで逃げたら男の恥だ。

 それに、ここから先に進んだらより虹夏との関係性は深くなる。そう考えると、体に熱が溜まって仕方ない。

 

「…………ユウト、大好きだよ」

 

 その言葉を口にされた時、虹夏は俺の後頭部に手を回して自分の顔に近づける。

 今度は俺が唇を奪われる。

 

「…………っ」

「…………ん」

 

 もう、どうなっても知らん。

 俺は自分の中で理性がぷつりと切れるような音を最後に、自分の本能に従った。

 

 

 

 #

 

 

 

 朝目が覚めると目の前には虹夏がこちらをじっと見つめていた。それも全裸で。

 その時、俺の脳裏に昨夜の甘い出来事が蘇ってくる。

 やってしまった………。

 妙に男女の特殊な匂いがするのもより自覚させられてしまう。

 

「昨日のユウトすごかったなぁ」

「はぁ、もう全部虹夏が悪い」

「えー、私の何が悪いのー?」

 

 ニヤニヤと笑う虹夏に頭を抱える。これから俺は虹夏からの誘いを断ることができなくなってしまったかもしれん。

 俺は虹夏に軽いキスをする。

 

「ん、もう。キスで誤魔化そうとしないでよー。それクズ男がする寸法だからね?」

「勘弁してくれ………」

「でも、意外だなぁ。ユウト結構性欲強いんだね!」

「………今更だけど、痛くなかったか?」

「ほんと今更だね………。別にあたしとしては求められるのは嬉しかったし、痛くないって言ったら嘘になるけど、後からその、気持ちよくなって来たし………?」

 

 もう、俺の彼女は可愛すぎる。

 ダメだ、これ以上一緒にいたらまたもう一回戦してしまう。

 俺は立ちあがろうとして虹夏に引き止められる。

 

「もうちょっとこのままでもいいじゃん。あまーいピロートークでも話そうよ?」

 

 コテン、と首を傾けて魅惑的に微笑む虹夏。

 いつどこでそんなこと覚えて来たんだよ。

 

「もう俺虹夏に敵わないよ」

「ベッドの上じゃあたしがユウトに敵わないんだけどなぁ」

「マジで勘弁してくれ………」

「ユウトはさ、こういうことするの初めて、だよね………?」

「そうだな」

「そっかぁ、よかった。でも、安心したなぁ。ユウト私の体でこんな興奮してくれるなんて。私見ての通り小さいからさ」

「別に大きいからなんでも興奮するわけじゃねぇぞ」

「あ、そうなんだ」

 

「私たち、大人の階段登っちゃったね!」

「虹夏、本当強かになったな」

「ふふ、もう絶対逃さないからね!」

「いや、逃げる気ないし。俺はいつまでも君のことだけ見てるよ」

「にしし、私もずっとずぅっとユウトのことしか眼中にないよーっだ!」

 

 そう言われると妙に安心する。俺だって虹夏が他の男子と喋っていると嫉妬だってする。

 まぁ、俺たちの関係は変わってない。

 ただ、また一段と距離が近くなっただけ。

 

「虹夏、愛してるよ」

「私も、ユウトのこと世界一愛してるよ!」

 

 まったく。彼女には敵わないなぁ、ほんと。

 

 君と一緒にいるだけで安心する、毎日が楽しくなる。

 君が俺のことを支えてくれるから全力で夢に向かって走ることができる。

 君は俺を愛してくれる。

 

 俺も彼女の愛に応えたい。

 彼女の夢を応援して、そばにいて、励ましてあげる。

 俺は君のことを愛してる。

 

 今日はそれをまた再確認する日となった。

 

 また、君と歩む未来に色がついた。

 

 ありがとう、虹夏。

 

「これから改めてよろしく」

「何を今更ー! もちろん!」

 

 君の笑顔は何よりも綺麗だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




夜逃げする準備はできたぞ。

ってことで、もうすぐ原作最初の夏休みが終わります。
パッパと進めていきたいところですけど、そろそろ結束バンドメンバーの他三名の視点をそれぞれ書こうと思います。やる気がでたらね!(久しぶりのエタリ予防)

 じゃ、サラダバー!

男式キャラメーカーで主人公作った。見たい?

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