君の気持ちを知りたい   作:烏兎 満

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君の過去

 五月下旬。下北沢高校一年生は、高校初めての定期テストに向けた準備を始めていた。

 下北沢高校は、一応進学高の部類に属しており試験が結構難しいらしい。

 そして、日曜の朝。日曜日は鳴らないはずの目覚まし電話で目を覚ます。

 

「もしもしー?」

「…………もしもし」

「めっちゃ機嫌悪そうだね。ごめんごめん。あのさ、今日って暇?」

 

 流石に日曜の午前七時に電話は誰でも嫌だと思う。

 今日はテスト週間なので、部活はない。特に予定がないと伝える。

 

「暇」

「よかったー! 実は勉強を教えてほしいなー、なんて」

「よかろう」

 

 伊地知さんも今日一日暇らしいので、今から伊地知さんの家にお邪魔する運びとなった。

 

 勉強道具をまとめて、軽く準備してから伊地知さんの部屋に向かう。

 チャイムを鳴らすと、ガチャリと扉が開かれる。鳴らした瞬間に開いたため新手のドッキリかと思ったぞ。

 

「おはよー! 今日はよろしくねー!」

「ん」

「あはは、今日はいつにも増して口数少ないね。やっぱり怒ってる?」

「もう少し寝たかった」

「ごめん! 許してー」

 

 伊地知さんは両手を合わせて片目を瞑って上目遣い。あざとい。

 ふむ、今日の伊地知さんの服装は、灰色のミニスカに肩の見えるシャツ。首元にはリングのようなものがつけられていた。

 うん、可愛らしいね。やっぱりそういうセンスあると思うよ。

 

「許す」

「やった!」

「で、早速勉強するか」

「あ、そうだね」

 

 これが女子の家か。可愛らしい装飾品や生活感あふれる日常品。うん、どことなくいい匂いもするな。

 

 伊地知さんに丸テーブルが中央にある部屋に案内される。

 むむ、なんか変な物がたくさん不規則に飾られている。

 

「あー、これはリョウのだね。うちに入り浸ることが多いの。あの子の世話はもうしない! って決めてもついつい許しちゃうんだよね」

 

 山田さんのか。仲良いな。

 そういえば、ここは店長さんの家でもあるのか。何か店長さんの弱みを握りたいな。

 

「店長さんの部屋ってどこ?」

「え"、何する気?」

「店長さんの弱みを握りたくて」

「あ、そういう……。だったらあんまり案内できないかなー」

 

 そうか。諦めよう。逆に弱みを握ったらより怖い目に遭わされそう。

 伊地知さんの家を見て回って思ったけど、両親とかいないのだろうか。普通の家庭ならこの時間帯は洗濯物とかやってる時間だろうし。

 

「実はね、ここの英文法がちんぷんかんぷんでね……」

「まず、英文法は………」

 

 伊地知さんは結構学力がある。少し教えたらすぐに理解するし、かなり要領がいい。

 そして、集中して勉強を開始して二時間半。時刻は十二時前。昼飯時だ。

 

「そろそろお腹すいたねー、私作るよ」

「おー、それは嬉しい。焼肉がいい」

「作らないよ?」

「ごめんなさい伊地知さんの作る料理ならどんなものでも食べます」

「よろしい」

 

 待ち時間、リビングに移動してテレビのチャンネルを適度に変えながら待つこと三十分。香ばしい匂いがキッチンから漂ってくる。

 

「お待たせー!」

「ネギ豚塩丼。俺の好みだ」

「わー、すごい偶然」

 

 手を合わせていただきます。これ大事。

 ふむ、美味しい。やっぱりネギ塩のしょっぱさがたまらないな。

 

「うまい」

「我ながら結構出来作!」

「伊地知さんエプロン姿似合ってるね」

「えへへー、そう?」

「うん、今度一糸纏わない姿でエプロンつけてみて」

「オブラートに包んでもセクハラ発言には変わらないよ」

 

 それから、ネギ塩豚丼を完食。今度自分でも作ってみよう。

 

「洗い物はやるよ」

「大丈夫大丈夫。勉強教えてもらってるし、これくらいやらせて!」

 

 そういうのなら仕方ない。

 トイレに行きたくなってきたため、借りると一言伝える。

 トイレを済ませた後、リビングの片隅に仏壇を発見した。

 

 好奇心には勝てなかった。こういうのは正直触れちゃいけないことなんだろうけど、知りたくなってしまった。

 

 仏壇には金髪の優しそうな女性。笑っている。そして、顔は伊地知さんにそっくりだ。推測するにきっと母親なのだろう。

 

 これを見て思う。今存在する自分の母親がいきなり死んでしまったら。きっと、すぐには受け入れられない。伊地知さんは、いつ母親と別れたのかわからないが、思わず眉間に皺が寄ってしまう。

 

「戻ってこないから何してるのかと思っちゃったじゃん」

「伊地知さん」

「あー、言ってなかったっけ? 私が九歳くらいの時にお母さん、交通事故で亡くなっちゃったの」

 

 どういう顔すればいいんだ。

 

「あはは、変な顔。お父さんはいつも家にいなくて、実質家族はお姉ちゃんだけなんだよね」

「あのスターリーはお姉ちゃんが私のために作ってくれた場所なんだ。お姉ちゃんは絶対にそう言わないけどね」

「その過程でお姉ちゃんはバンド辞めちゃったんだ。すっごく上手かったのに。だから、私ね。いつかバンドを組んでお姉ちゃんよりも有名になってこのスターリーを盛り上げたいんだ! それが私の夢。………ちょっとー、いつまでダンマリしてるの?」

 

 立派だな。勝手に仏壇を覗いたことに罪悪感を感じてしまう。

 

「家事は?」

「お姉ちゃんそういうの苦手だし私がまわしてるよ」

「本当、立派だな」

「日賀くんにそう言われるとなんか照れる」

 

 そう言ってはにかむ姿は、とても眩しい。過去なんかにとらわれないで前を向いている。強いなぁ。俺とは違うや。

 

「俺にもちょっとした過去がある」

「別に無理に話さなくていいよー」

「まぁ聞いてくれ」

 

 それから俺の過去を話してから、今日の夕飯は俺に任せてほしいと伝える。

 

「え、夜までいるつもりだったの!?」

「夜ご飯は任せて」

「ま、まぁいいけどぉ……。お姉ちゃんいるよ?」

「………覚悟の上だ」

「日賀くんにとってお姉ちゃんってどんだけ怖いの…?」

 

 魔王だからね。いつかは倒せるようにならないと。店長さんの苦手な食べ物とかあるかな。

 

「ん、このゲームやろう」

「ちょっとちょっと。勉強は?」

「問題ない」

「私が問題あるの! ………そんな目で見ないでよ。一回だけだよ?」

「ママ!」

「誰がママじゃい!」

 

 結局午後は、伊地知さんが俺に負け続けて、負けず嫌いなのか何度もやっているうちに夕方に突入してしまった。

 

 豚の細切れ肉を温めたフライパンに放り込む。肉は混ぜすぎると味が不味くなってしまうため、片面に焼き色ができるまで一度放置。

 もう一つのフライパンで薄切りにした玉ねぎと短冊切りにしたにんじんを炒めて、にんじんがしなったらもやしとウインナー、ピーマンを放り込む。

 野菜を炒めながら、肉の焼き加減も調節する。

 肉の中まで火が通ったら、野菜炒めで余った玉ねぎを入れてケチャップを適当にドバッとかける。料理は適当が命。

 

「で、何? 伊地知さん」

 

 俺の背後には伊地知さんが興味深そうにこちらを見つめている。

 

「いや、本当に料理できるんだなーって。あと、エプロン姿にあってるよ」

「まぁ、俺何でも似合うからな」

「その自信、どこから湧いてくるの……?」

 

 肉にかけたケチャップを混ぜ混ぜし終わったら、チーズをかけて蓋をする。

 野菜炒めは塩と胡椒を振りかけて完成。

 きゅうりともやし、缶のツナを使って胡麻とか醤油とかなんか色々混ぜて、お酒のつまみらしいものも作り上げる。

 

「おい、つまみ食いすんな」

「あ、ごめんごめん。美味しそうでつい」

 

 野菜炒めをガッツリ箸でフライパンから一口食べている伊地知さん。全然悪気はないようで、口に含んでから幸せそうな顔を作っていた。

 その顔を見れて俺も満足だ。

 

「ん〜! 美味しい! もしかして私より料理できるんじゃ……!」

「並の女子よりはできる」

「やっぱり棘のある言い方だなぁ。あ、そろそろお肉の上に乗ってるチーズが溶けてきたよ! そろそろじゃないかな…?」

 

 目をキラキラさせながら、まだかなまだかな? とチラチラとこちらを見てくる伊地知さん。まだですよ?

 

「俺はこの肉見てるから食器とか出してくれ」

「りょーかい!」

 

 チーズがある程度肉と同化したら、蓋を開けて完成だ。

 時刻は午後八時。店長さんがあと三十分ほどで帰ってくる。

 

「ただいま」

「げ、店長」

「なんでお前がいんの?」

「店長さん、これには深いわけが。だから、百十番かけようとするのやめてください」

 

 それから伊地知さんが色々と説明してくれた。

 

「まぁ、いいけど」

「見てみてお姉ちゃん! これ全部日賀くんが作ったんだよ!」

「………ふーん」

 

 口をへの字に曲げて未知の物体でも見るかのような視線を料理に向ける。いや、変なものとか入れてないから。

 

「「「いただきます」」」

 

 うん、やっぱり家族二人だけだと寂しいだろうな。まぁ、俺いつも一人だけど。俺の家が特殊なだけか。

 

「…………」

「美味しい! 定期的に作ってもらおうかな〜」

「それはめんどいから気が向いたら」

「残念! どう? お姉ちゃんも感想言いなよ」

「悪くない」

「素直じゃないんだから〜!」

「うっさい!!」

 

 いや、寂しくはないか。家族二人しかいないと形だけ見れば寂しく見えるが、そうじゃなかった。二人もいるんだ。仲睦まじい姉妹だ。

 

「何みてんの?」

「すいません。お酒注ぎましょうか?」

「今日はいい」

「あ、はい」

 

 俺の醜態にクスクスと笑う伊地知さんの姿が。いや、店長さん怖えんだって。

 

 食器洗いは店長さんがやるらしいので、伊地知さんのお母様に挨拶をしてから帰宅することに。

 

「今日一日色々とありがとね!」

「任せろ、なんでも頼ってくれ」

「おー、頼もしいね」

 

 店長さんに会釈してから、マンションの廊下に出る。伊地知さんはエレベーターまで見送りに来てくれるそうだ。

 

「じゃ」

「うん! バイバイまた明日!」

 

 伊地知さんの姿が見えなくなったところで息をつく。

 あんまり話したくなかった過去をなんで伊地知さんに簡単に話せたんだろうか。自分でも不思議だ。

 でも、伊地知さんに話して気が楽になった気がする。

 

「また明日、ね」

 

 少し明日が待ち遠しくなってきた。

 

 

 ♪

 

 

 期末テストも残るところあと三日。最後の確認って訳じゃない。でも、わからないところをできるだけ減らすために日賀くんを頼ることにした。

 

 きっと今の時間寝てるだろうなー。ごめん!

 心の中で謝りながら、電話をかけて五コール目。そろそろ彼が出るはずだ。

 

「…………もしもし」

 

 うわー、不機嫌そう。やっぱりもう少し遅く電話すればよかったかな。

 暇かどうか確認してから勉強を教えて欲しい旨を伝える。意外にもあっさりと了承してくれた。

 というか、今から来るらしい。

 

 急いで動物の柄が入ったパジャマを脱ぎ捨てて、私服に着替える。

 後から思ったけど、簡単な部屋着の方が良かったかもしれない。ただ勉強するだけなのに気合い入りすぎだと思われちゃうかも!

 

 い、一応歯も磨いておこう。あ、髪まだ結べてない!?

 

 チャイムが鳴った瞬間に扉を開ける。

 

「うおっ」

 

 若干驚いたような声をあげていて気づく。普通はチャイムなってからちょっとして出るよね? 

 恥ずかしくなってきたけど、ここは持ち前の明るさでなんとかする!

 

「おはよー! 今日はよろしくねー!」

「ん」

「あはは、今日はいつにも増して口数少ないね。やっぱり怒ってる?」

「もう少し寝たかった」

「ごめん! 許してー」

 

 日賀くんは少し間を置いてから許してくれた。

 よ、よかったーっ! 本気で怒ってるのか少し不安になっちゃったよ。

 

 ふと、彼の服装に目が行く。

 ダボっとした白いパーカー。それとは色が真反対の黒のオーバーオールを着用しており、ちょっとパンダっぽい。

 この前は優しめだったけど、今回は可愛い感じなんだ。

 なんでも着こなせることに、もう尊敬の念しか抱けないよ。

 

 髪型もいつもと違う。

 いつもは長い前髪を横に流してるだけだったけど、今日はピンクのヘアピンでおでこが丸見えだ。外してくるの忘れちゃったのかな? まぁ、可愛い一面も見れたしいっか。

 

 何かお姉ちゃんの弱みを握りたい、とか言ってきたけどお姉ちゃんはアレ。ツンツン、ツンツンツンツンツン、デレ〜、だから意外と可愛い面もあったりするんだよ。今もぬいぐるみがないと寝れないしね!

 

 それからは真面目に勉強。

 やっぱりわかりやすいな〜。全教科完璧に答えられるのは流石です。

 きっと学年一位とか取っちゃうんだろう。

 そうなるとちょっと遠い存在に感じちゃうかも。

 

 時計を見ると気づけば十二時前。

 よしっ! ここは私の料理の腕を見せてあげようっ!

 焼肉がいい、とか言ってきたけどそれ料理の腕前関係ないから。

 

 この前下駄箱に『ユウトはネギ塩が好き』と書いた紙があった。

 多分だけど木下くんだと思うなー。あの子、何がしたいんだろ。

 でも、そのおかげで彼の好みを知れたのはよかった。

 

 ネギを斜め薄切りに。

 ボウルに酒、鶏がらスープの素、すりおろしにんにく、みりんを入れてかき混ぜる。

 フライパンに先ほど切ったネギと豚の細切れ肉を入れて肉に色がつくまで炒める。

 あ、日賀くんがドロドロ関係のドラマ見てる。ああいう系好きなのかな?

 肉に火が通ったら先ほど作ったボウルの中身を入れる。

 サッと混ぜ合わせてから塩コショウを適当に振って、完成!

 

「お待たせー!」

「ネギ塩豚丼。俺の好みだ」

「わー、すごい偶然」

 

 日賀くんの好みだったようだ。木下くん、なんか知らないけどありがとう!

 あと、日賀くんはサラッとセクハラ発言はやめようね。私じゃなかったら警察のお世話になっちゃうよ。

 

 ネギ塩豚丼は、ちゃんと美味しかったらしい。

 箸も結構進んでいるからだいぶ気に入ったようだ。

 表情には出ていないけど。

 

 日賀くんはしっかりと完食。洗い物をすると申し出てくれたけど、勉強を教えてもらっている身なので、それくらいは任せて欲しい。

 

 日賀くんがトイレを借りると言ってから帰ってこない。

 まさか、お姉ちゃんの部屋に入ってたりしないよね?

 

 洗い物も一通り終わったことだし、見に行くか。

 と、思った時案外すぐそこにいた。死角で見えにくくなっていたのだ。

 

 日賀くんは私のお母さんの仏壇の前でじっと佇んでいる。

 あ、そういえばまだ言ってなかった。

 

「あー、言ってなかったっけ? 私が九歳くらいの時にお母さん、交通事故で亡くなっちゃったの」

 

 変な顔。眉間に皺が寄っていて、顰めっ面のような表情。

 また日賀くんの新しい一面、見ちゃったな。

 やっぱり気にしてくれているのだろうか。私の夢について語ってもまだ顰めっ面のままダンマリ状態だ。この顔、写真で撮りたいな。

 

 もうずっと前のことだから、気なんか使わなくていいのに。

 私のことを立派だー、と言ってくれた彼は、ほんの少しだけど自嘲的な表情を浮かべていた。彼らしくない表情に少し不安になる。

 

「俺にもちょっとした過去がある」

「別に無理に話さなくていいよー」

「まぁ聞いてくれ」

 

 日賀くんは私と比べて大したことないと言っていた。だけど、そんなことない。人はそれぞれ感じる辛さが違うのだから。

 

 つけっぱなしのテレビは、まだ昼ドラ特有のドロドロとした関係の最期を迎えていた。酷いバッドエンドだったなぁ。最終話しか見てないけど。

 日賀くんはテレビを見ながら話し始めた。

 

「中学生の頃、かなりモテたんだ」

 

 うん、今もモテてるよ。

 

「別に誰とも付き合う気は無かったから結構振ってた。それで、ちょうど去年ぐらいか。振った女の子がその翌日から俺の後をつけてくることが度々起こったんだ。ストーカーってやつ」

 

 わ、わー、それは大変だ。確かに日賀くんぐらいイケメンで超人じみたハイスペックだとそういう被害にあっちゃうのかな。

 

「まぁ、それだけなら別にいい」

 

 いや、良くないよ。

 

「ただ、俺の家って結構誰もいないことが多いのよ。帰ってきた時、変な違和感を感じてな」

 

 え、もしかして……。

 

「変な女の子がつけてそうな私物がたくさん俺の家にあったんだ。見覚えはなかった。まだ何かありそうだなって思ってそういう業者を呼んだ」

 

 う、嘘。ってことは勝手に家の中に入られたりしてたってことだよね? 

 

「で、盗聴器やらGPSやら色々見つかった。流石の俺でも少し鳥肌が立ったね」

 

 日賀くんはいつも通りの無表情で淡々と語る。

 日賀くんにそんな過去があったなんて……。

 その女の子はしっかりと学校やら警察やらで対処してもう何もないらしいけど、きっと彼は今でも色々と不安に思っているはずだ。

 

「悪い。少し空気重くしたか」

「う、ううん。でも、そんな出来事があったらなんで私と友達になってくれたのかなって不思議に思っちゃって……」

 

 だって、そんな出来事があれば普通女子が怖くなるはず。

 私は告白されたことないけど、もし自分が告白された男の子に今のようなことをされたらと思うと………。

 私、今どんな顔してるんだろう。

 

「………。なんでだろうな」

 

 あ、わからないんだ。

 

「………別に女子が怖くなった訳じゃない。女子との関係性を見直すべきだと考えただけ。俺だって彼女とか作りたいし恋愛感情だって………多分いつか湧く」

 

 意外だなー。日賀くんも普通の男の子とおんなじで彼女はやっぱり欲しい物なんだ。

 私はなぜか少しだけ安堵した。

 

「でも、付き合うなら俺から告白したい。俺のことが好きな女の子じゃなくて、俺が好きな女の子と付き合いたい。女の子は後から俺のことを好きになって貰えばいい」

 

 あー、そっか。でも、なんとなく私と友達になってくれたのはなんでかわかった気がするなー。

 でも、やっぱりこんな話を聞いてどんな顔をすればいいんだろうか。

 

「いつまで俺に喋らす気だ。そんな顔すんな」

 

 いつの間にか日賀くんはテレビを消して、ゲームソフトの方に意識を持って行っていた。

 この話を聞いて私にできることは、今まで通り彼と接するだけ。うん、それがいい。

 

 その後、ゲームを夕方まで熱中してしまい、勉強をするという目的をすっかり忘れちゃってた。それもこれもなんでもできる日賀くんが悪い。

 

 日賀くんが夜ご飯を作ってくれるらしい。てっきり帰るかと思ったけど、夜ご飯は何も考えていなかったため任せることにした。

 

 エプロンをつけて料理する姿はまさに料理できる系男子って感じだ。

 彼が料理する背後から手際を覗いてみる。

 スムーズに料理を作り上げており、スマホでレシピを確認したりもしない。普段から料理をしている証拠だ。

 

「で、何? 伊地知さん」

 

 ケチャップをお肉の上にかけながら、ジト目でコチラを見つめてくる日賀くん。

 誤魔化しついでにエプロンを褒めてあげると、当たり前だと少しドヤ顔。うん、なんかリョウに似てる。

 

 出来上がった野菜炒めを見て、思わず涎が垂れそうなのを我慢する。お、美味しそうだ………! 私のより美味しそうだったのは悔しい。

 日賀くんがもう一つの作業に集中している隙をついてお箸でパクリとつまみ食い。

 お、美味しい! 塩と胡椒の加減も完璧でにんじんが硬いってこともない。塩のかかったもやしが染みる〜!

 

 思わずもう一口食べちゃおう、と思って箸を伸ばした時、日賀くんに見つかってしまう。

 もう一つのお肉チーズの方にも目を向けていると、日賀くんにまだできてないからつまみ食いするなよ、とお言葉をもらってしまった。ごめんなさい。

 

 完成してからお姉ちゃんが帰ってきて結構賑やかになった。

 お姉ちゃんにビビってる日賀くんはちょっと面白かったりしたけど、この団欒はとっても楽しかった!

 

 日賀くんは仏壇の前に行くと、お母さんに線香をあげてくれる。

 

「虹夏、話したの?」

「うん」

「………お前たち、そういう関係じゃないよな?」

「え、なんのこと?」

「はぁ、もういい」

 

 なぜかお姉ちゃんが拗ねてしまった。

 

 帰り際になって私はエレベーターまで彼を見送ることにした。

 

「じゃ」

「うん! バイバイまた明日!」

 

 彼はいつも通り無表情のままエレベーターに乗って行った。

 けど、最後に見えた彼の表情はどこかスッキリしたような感じがした。

 私に話してくれたことで何か気が楽になってくれてるといいな。

 

 それになんでも頼ってくれ、とか言ってくれたし色々と頼っちゃおうかな!

 マンションの廊下を歩きながら夜空を見上げる。

 快晴の空には一際大きな光を放つ星が私の瞳に映ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近、自分の書いた小説を読んでニヤニヤしてる。誰か虹夏ちゃんメインヒロインの小説を書いて俺を救ってくれ……!
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