優人が、見たロボットとは、
果たして……
2023年 夏 世界の、ネットは、静止した。
システム・イルマーレ、世界の国家群が作り出した新時代戦争及び人間管理システム、人間を高次の存在に進化させる。
イルマーレに、選ばれた人間は、細胞高次適合手術を受け、≪ネクスト≫と呼ばれる、ハイテクノロジーの人間に進化する。ネクストは、常人より身体能力に優れ、思考力があり、シックスセンスも備わっている。
ネクストは、イルマーレの為に戦い、報償を受ける。
イルマーレの起こす戦争は、「イルマーレウォー」と呼ばれた。
某県森澤町
夏、深い切り立った崖の近くの山道を少年が歩いている。
町には、絶景の観光名所があり、夏になると、観光客で溢れる。
田舎だが、賑やかな町だ。
蒼井優人は、森澤中学に通う15歳。中学三年生だ。
崖の上、樹々の折り重なる、車道の側道を、優は歩く。
学校に通う途中。
学業の成績は良く、卒業後は、私立の進学校に通う予定だ。
整った顔立ちで、クラスの女子に噂された事もあった。
だが、友達は少なく、性格は、少し暗い中学生だった。
ふと、周囲を見渡すと、折り重なった山の向こうの空に、巨大な黒い人型の機械が浮遊していた。
「なんだあれ?」
巨大な人型の機械は、静かで、排気音や、駆動音は、聴こえてこなかった。
機械は、細く、鋭角的で、頭部から、角の様な物が伸びていた。
機械が通り過ぎようとする。
空を切り裂いた巨大な黒い塊の起こす風圧、樹々がミシミシと音を立てる。
呆気にとられて見つめていた。
どこへ向かうのだろう。
しばらく、惚けていた。優人は、自分のしていた事を思い出す。
ああ、そうだ学校に行かないと。
学校に行くと、鞄から教科書を取り出し、机の上に並べる。
授業には、間に合ったようだ。
隣の席の友人の松川が、優人に声を掛ける。
松川は、陽気な奴で、クラス替えの時から、よく話しかけてきて、話すようになり仲良くなったのだが、お喋りで、話を合わせるのが疲れる。
「おはよう」
「ああ」
「どうしたんだ、訝し気な顔して」
「今日、黒いロボットを見たんだ、宙に浮いてた」
「なんだ、ロボットって、寝ぼけてたんじゃねーか」
「いや、確かに見た、牛追山の方に向かっていった」
「SFじゃあるまいし、なんだロボって、動画ないの」
「学校はスマホ禁止だ。通学途中持ってないよ」
「どっかで、動画バズってないかな」
「わからん」
「どこかの兵器かな」
「見たところでは、人型だった、誰か乗ってたのかな」
「今日、探しに行こうぜ」
「探すって」
「気になるじゃん」
教師が、教室に入室した。
授業が始まる。
いったい何なのだろうあの黒い機械は、
見に行けば解るかもしれない。
教室の外で蝉が喧しく鳴いていた。